こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
346話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 昼と夜④
「お茶を持ってきましたよ。」
セーブルの声が聞こえ、私はテーブルのほうに歩いていった。
温かなカモミールの香りが漂ってきた。
「ありがとう。いい香り……。あれ、あなた泣いているんですか?」
薄暗がりの中で、彼の瞳が涙で潤んでいるのがわかった。
私が醜いから泣いているわけじゃないわよね?!
私は急いでその涙を拭いた。
「いえ、そうではありません。ブランシュが明日結婚するというので、ちょっと感慨深くて……。」
セーブルの目が再びしっとりと潤んだ。
この調子だと、鉄血王ではなく「玉涙王」と呼ばれることになりそうだ。
後世の人々は彼を「世紀の涙もろい王」として語るだろう。
まあ、それも悪くないかもしれないけど。
「はあ、私の夫よ。本当にこんなに心が優しいなんてどうしましょうね。実は私も少し感動しているわ。」
ブランシュが結婚するなんて。
嬉しい反面、少し複雑な気持ちでもあった。
言葉にできない感情が私の体を満たしている。
私が彼をぎゅっと抱きしめると、セーブルは小さく嗚咽を漏らした。
その音を聞いたら、私も泣いてしまいそうで大変だ。
ここで私が泣いてしまったら、二人とも涙を流し始めて、明日は腫れた顔で結婚式に行く羽目になる。
それだけは絶対に避けなければ!
「泣いちゃダメですよ、セーブル。明日はブランシュに笑顔を見せないと。私たちが泣き顔で現れたら、ブランシュが気まずくなってしまいます。」
「はい、もう泣きません。お茶がいい具合に冷めたので、そろそろ飲めそうです。」
彼はブランシュのことを考えないようにするかのように話題を変えた。
私はカップをそっと持ち上げ、温かな紅茶を一口飲んだ。
いい香りだな。
でも、まだ私には少し熱い気がする。
ふぅ、ふぅと吹いて冷ましながら飲んでいると、セーブルがじっとこちらを見つめているのに気づいた。
「セーブル、どうしてそんなふうに見てるの?」
「あなたが可愛いからです。」
その言葉を聞いた瞬間、私は思わず顔が赤くなった。
アビゲイルだった頃に聞いた言葉だ。
私はくすっと笑いながら言った。
「全然可愛くなんてないですよ。」
「いいえ、可愛いです。」
「私が不機嫌でも可愛いって言うんでしょう?」
「もちろん知ってますよ。リリィは何をしても可愛いです。」
彼は笑顔を浮かべながらそう言った。「リリィ」と呼ばれるその名前が、妙に胸をくすぐる感じがした。
私が百合の姿で生きることを決めたあの日。
私はセーブルに真実を打ち明けた。
私は実はアビゲイルではない。
死んで、目が覚めたらこの体に入っていただけだと。
この世界の人間ですらないと告げた。
セーブルは驚いた目で私の話をじっと聞いた後、一つだけ質問をした。
「そうですか。それではあなたの本当の名前は何ですか?」
その後、彼は私を「百合」、そして「リリィ」と呼び続けた。
私は前世の姿と名前を取り戻し、そのまま生きていくことになった。
さまざまな理由から、公の場では「アビゲイル」という名前を使い続けているが、私は茶杯を手に取りながらつぶやいた。
「本当のところ、まだあなたに申し訳ない気持ちがあります。やはりアビゲイルの姿のほうが、あなたにとっては良かったかもしれませんね……」
彼の態度は変わらなかったが、それでも私はどこか申し訳なさを拭えなかった。
セーブルは椅子から立ち上がり、私のそばに近づいてきた。
そして、そっと私の頬にキスをした。
セーブルからほのかに甘いお茶の香りが漂ってきた。
「どんな姿であろうと、あなたは私にとってこの世で最も愛おしい人です。」
彼の吐息と同じくらい甘いその言葉は、私の心を深く揺さぶった。
こんな言葉、一体どこで学んできたのだろう。
まるで夢のようだ。
愛さずにはいられない。
私もセーブルの頬にキスをした。
お茶を飲んだせいか、彼の頬がほてっている気がした。
私の唇もだ。
少し熱くなったような……。
そんな時、不意に今日もらったプレゼントのことを思い出した。
「そういえば、クララがプレゼントを送ってきたんです。まだ確認していませんが、一緒に見ませんか?」
「ええ、楽しみですね。」
私は丁寧に包まれた箱を手に取り、赤いリボンをほどき、箱を開けた瞬間、私たちは同時に沈黙した。
「わあ……これは……。」
「斬新ですね。」
まさに「ファッション界の異端児」と言われるクララらしい。
まさに実験精神が貫かれている。
「可愛いけど……。」
私はその品物に手を伸ばせずにいた。
なんと言えばいいのだろう。
アビゲイルなら似合うだろうけど、この体でこれを着ても大丈夫だろうか。
そんなことを考えていると、セーブルがそっと微笑みながら言った。
「リリーに似合いそうだね……。」
「……見たいですか?」
彼はすぐに喉を軽く咳払いした。
顔が少し赤くなり始めている。
私はそんな彼を見てくすっと笑い、彼の首に腕を回して引き寄せた。
「分かりましたよ。プレゼントをもらったんだから、着るべきですよね。」
「着るならまず脱がないとですよね。お手伝いしましょうか?」
彼はそう言いながら、そっと私の服の裾に手をかけた。
ああ、結婚式の前日だというのに、どうやって自制しろと。
「お願いするわ、セーブル。」
「光栄です、リリー。」
私たちは互いを抱きしめ合い、彼は私を「リリー」と呼びながら微笑んだ。
彼の目には依然として変わらぬ愛情が蜜のように流れ込んでいるようだった。
セーブルは私を抱き上げると、静かにベッドの方へ向かった。
そして蝋燭を灯し、その灯りに息を吹きかけて消した。
部屋に闇が訪れると、もう何も見えなくなった。
そこには私とセーブルしかいなかった。
それだけで十分だ。