こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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1話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ
ある日……
奴隷商人の母親が、この世界の女性主人公を連れてきた。
「今日は本当に運が良かったわ。競馬場から帰る途中、雨で滑って事故を起こした馬車を見つけたのよ。メロディ、これを見てちょうだい。」
母親は少女以外にも馬車から集めた宝石やドレスなどを見せびらかした。
「首都の貴族の物でしょうね?そうでしょう?」
母親は満足げに尋ねたが、メロディはその喜びに共感できなかった。
いや、むしろ絶望を感じていた。
メロディは、元々の小説の世界で奴隷商人の娘として生まれて10年目の春を迎えていた。
物語が始まらないようにと願う「原作の初め」にいた。
章がこうして開かれてしまったのだから。
その第1章の始まりは次のようだった。
『5歳の女性主人公は、馬車事故で母親を亡くし、冷酷な奴隷商人に捕まる。』
冷酷な奴隷商人とその娘は、原作において最初に登場する悪役であり、その役割は単純だった。
まだ幼い女性主人公ロレッタを徹底的に苦しめ、読者の怒りと同情を誘発する存在。
そして、第1章の最後の場面では、首都から訪れた「公爵様」によって完全に断罪されることで物語から姿を消す。
どのようにしても再び登場することはなかった。
貴族を騙して奴隷として売り払おうとした計画を立てた者は、裁判にもかけられず死刑に処されるのだから。
「……え。」
メロディは慎重に口を開いた。
母親がたとえ悪役でも、メロディにとっては唯一の血縁なのだから。
「首都の貴族の持ち物をすべて持ち帰るのは危険ではない……ですか?」
メロディの言葉は後ろへ行くほど徐々に小さくなる。
もしかしたら母親が鞭を振りかざすかもしれないという事実に少し怯えていたためだった。
それでも胸に抱いた心配は真剣だった。
……しかし母親は、原作に忠実な人物らしく、軽く鼻で笑うだけだった。
「その貴族たちがこんなものに気を留めるほど暇なわけないでしょ?」
「でも、それでも娘は。」
メロディは母親の手を握る小さな女性主人公を見つめ直しながら説得を続けた。
「その人たちにも娘が……一人だけいるかもしれません。」
そもそもこの原作小説のタイトルは『公爵家の息子が3人、娘が1人という点を考えると確信した。(ファンたちはこれを略して『公爵家の末っ子』と呼んでいた。)
「知らないわよ。」
しかし母親は今回も冷酷な答えをメロディに投げかけた。
「貴族どもなんて、食べて寝るだけの存在なんだから、子供なんて空に星があふれるようにいるんじゃない?」
子供たちの前で言うにはふさわしくないことはもちろん、一つも笑えない話だ。
それでも母親は何がそんなに面白いのか、ヒラヒラとスカートを持ち上げてケラケラと笑い続けた。
・
・
・
メロディが前世について思い出したのは5歳の時だ。
最初は、それが前世だとすら知らず、ただ恐ろしくて泣くだけだった。
誰も笑ってくれなかったし、理解できない世界に一人で立たされていたからだ。
一度、どうしても耐えられず、母親の服の裾を掴み、震えながら恐ろしい記憶について話したことがあった。
「忙しいのにだらしなく振る舞わないで。」
母親を怒らせるとひどく叱られるため、メロディはこの記憶についてそれ以上話すことはなかった。
それでも少しずつ、メロディは適応し始めた。
一つの事実を理解したからだ。
頭の中に浮かぶ世界は、前のメロディがすでに通り過ぎた道にすぎないのだと。
数年が経ち、メロディが10歳になった頃、頭の中で断片的だった場面が具体的な状況としてつながり始めた。
メロディは毎晩、物語の本を読むような気分でその記憶を整理していった。
記憶の中のメロディは大人ではなかった。
一番大きく成長した時でさえ、16歳の少女が限界だった。
その少女はお金の問題で困らされることが非常に多かった。
奴隷の前でも、大人の前でも。
そしてそのせいだろうか。
記憶の中のシアエンの高架の下で見かけた擦り切れてシワのついた靴が頻繁に登場した。
メロディは誰かが少女の背中を優しく叩いて慰めてくれることを望んでいた。
しかしそんなことは一度もなかった。
おそらく、そうしてくれる人がいなかったのだろう。
いつも一人だった。
病気の日も。
そして恐ろしい雷が鳴り響く夜も。
こうした状況について、少女はたびたび怒りを感じていた。
しかしその怒りの対象は主に空想上の存在だった。
「ジグジグして!」
それは叫びであり、また叫びが消えた後にも残る怒りの残滓だったが、幼いメロディはそれが何かを知ることはなかった。
ただ、孤独を感じるたびに、それが非常に寂しいことだと思った。
それでも記憶の中の少女には、一つだけ楽しいことがあった。
それは本を読むこと。
メロディは自然と少女が好きな本についても知るようになった。
『公爵家には息子が三人、娘が一人』
この奇妙なタイトルの物語は、他の記憶に比べてなぜか具体的に浮かび上がってきた。
物語の始まり、危機、そして美しい結末に至るまで。
メロディはその物語を好きになった。
前世の彼女がそうだったのと全く同じ記憶と感情で。
「もしかしたら、前世の私は今の私にこの物語を伝えたかったんじゃないかな?」
時々そんな考えが浮かんだ。
もちろん何の根拠もないが。
「あるいは、最初に自分と同じ名前の悪役が登場したから、それが面白くて記憶がさらに鮮明になったのかも。」
それは面白い想像だったので、メロディは一人でクスクスと笑った。
しかし面白いだけだった。
物語を何度も読み、楽しんでいた時間は長くは続かなかった。
ある日、メロディは村の路地で新聞の切れ端を拾う。
そしてその小さな紙に、物語に登場するのと同じ地名がいくつか書かれているのを見つけた。
「どうしてこんなに一致するの?」
短い混乱が過ぎ去った後、メロディは『公爵家の末っ子』の世界と自分の現実を一つ一つ比較し始めた。
そして、その結果一つの結論にたどり着いた。
「最初に登場する奴隷商人の娘メロディって……もしかして私?」
女性主人公を苦しめた挙句、断罪されることで終わる軽い悪役。
しばらく呆然とした。
前世の孤独な記憶と今の生活にはどこか似た構造があると思っていたが……実際はそうではなく。
「……さらに過酷な状況の中で生きることになっただけだ。」
なぜか心の中にこみ上げるものがあった。
悔しくもあり、悲しくもあった。
しかし、どうすることもできなかった。
ただ虚空に怒りの残滓を吐き出すだけだった。
「……じぐじぐして。」
誰もいない場所でその言葉をつぶやく瞬間、前世のようにひどく孤独だった。
それでもメロディは小さな希望を抱くことができた。
「前世の記憶があるから。」
メロディは自分がどのような理由で罰せられるのかを知っている。
だから、「あのこと」さえうまく避ければ、命を守ることができるかもしれない。
彼女は急いで母親に訴えた。
「お母さん、奴隷商人の仕事をやめないといけないよ! そうしないと大変なことになるから!」
叱られる覚悟で、彼女は真剣に訴えた。
しかし当然予想通り、叱られた。
「これだけ苦労して稼いで食べさせてやってる人に何てことを言うの! そんな愚かなことを言うなら、今すぐ家から出て行きなさい!」
メロディはそうして最初の計画を諦めた。
そして1年が過ぎ、母親が奇遇にも女性主人公を連れてきた日。
そこからメロディの第二の計画が始まる。
「女性主人公に親切に接すれば、少なくとも命だけは助かるかもしれない。」
しかし、その計画には二つの障害物があった。
まず、母親。
母親はプロの悪役としての性格を完璧に備えており、それ以外の道を歩むことは到底できなかった。
「メロディ! 私が面倒を見ながら適当にやれって言ったのに、いつこんな風に上から目線で接するようになったの?!」
上から目線のように見えたり、称賛されたりすることはなかった。
最初からこのような貧しい状況でそんなことが可能なわけがない。
メロディはその子の食事を欠かさず準備し、寝るのに必要な布団を提供するだけだった。
しかし、その説明にも母親は納得せず、悪役としての歪んだ信念を惜しみなく発揮した。
「他の場所に行ったらこれよりもっとひどい扱いを受けるかもしれないよ? この臭い布団でも使えることをありがたく思いなさい。」
息もつけない母親の悪行の中で、メロディはどうにかして女性主人公に優しく接しようと努力した。
しかし、優しくすることと別に信頼を築くことは非常に難しかった。
よく考えてみれば、優しさとは、人とそれを受ける人との間に「共感」が必要なのではないだろうか。
「でも、ロレッタと私はあまりにも違うから……。」
恐ろしい奴隷商人の娘として育ったメロディ。
そして、優しい母親の元で愛されながら育ったロレッタ。
世界中の人々が交流を深めたとしても、この二人が分かり合うことはほとんど不可能に思えた。
そんな中、身寄りのない場所にやってきたロレッタは、奴隷商人である母親はもちろん、メロディに対しても非常に怯えていた。
「ねえ、ロレッタ。」
メロディが名前を呼ぶと、子供は小さく震えながら、石のように縮こまって隅に隠れた。
「ああ、そこにいるじゃない。」
子供が驚かないよう、そっと優しく説明を付け加えた。
「君が首にかけていた小さなペンダントに名前が書いてあったんだよ。」
メロディは指先で丸みを帯びたペンダントの形をなぞりながら言った。
「『ロレッタ』って書いてあったから、それが君の名前なんだね。」
実際、原作を読んで名前くらいは既に知っていたが、それでも何か短い会話を交わしたくて、メロディが言った言葉だった。
「……。」
もちろん効果はなかった。
子供は壁の方を向いて、体を丸めたままだ。
メロディは、まるで叱られたような気分になり、少し気まずさを覚えた。
とりあえず今日はここまでにすることにした。
「お腹空いた? ここにパンと牛乳を置いておくから、好きな時に食べて。これは君のだよ。」
彼女はバスケットを子供の近くにそっと置き、扉の外へ出ていった。
「ちゃんと食べてくれるといいんだけど。」
心配したメロディは、扉の隙間からそっと中をのぞき、ロレッタの動きを見守った。
子供が近づいてくる気配がなかったので、彼女は周囲を観察し続けた。
しばらく音が聞こえないと、安心したように息を吐いた。
少し不安が和らいだのか、ロレッタは慎重に周囲を見回し始めた。
そしてすぐにパンが入ったバスケットを見つけた。
メロディの予想通り、お腹が空いていたのだろう、ロレッタはすぐにパンを食べ始めた。
「よかった。」
メロディは安堵の息をついた。
しかしその様子を見ていたロレッタは目をそらし、パンを持ったまま再び隅で身を隠した。
まるでメロディの視線から逃れるように。
「やっぱりまだ怯えているみたいだね。」
メロディの努力は夜になっても続いた。
原作によれば、ロレッタは母親の部屋に置かれた固くて狭い椅子で何とか眠りについていた。
メロディは幼い子供がそんな不便を強いられるのを見て、胸を痛めた。
そこで、母親が眠りにつくのを待って、ロレッタを自分の部屋に連れて行った。
「今日も私のベッドで寝るんだよ。分かった?」
たとえ貴族のお嬢様が使うには粗末なものだとしても、椅子で寝るよりははるかに良い。
子供はメロディの目をうかがいながら、躊躇いつつもベッドの上に登った。
何かが怖かったのか、子供は小さく丸くなり、静かに泣き始めた。
声をあげることもできず、息を殺しながら。
どうしたらいい?
メロディは震える子供を慰めるべきだという気持ちで、慎重に手を伸ば柔らかい金髪にす。
指先がほとんど触れるところまで届いた。
しかし、メロディはそれ以上進めなかった。
ロレッタがさらに怖がったり、悲しんだりするのを避けたかったのだ。
ためらいながらも、どこか懸命な態度で、子供は布団の中に体をすっぽりと包み隠した。
まるでメロディが頭を撫でようとしているのを阻止しようとしているかのように。
……それでも、私はロレッタにとって奴隷商人の娘でしかないのかな。
メロディは、宙に浮かせていた手をそっと引っ込める。
ベッドから少し距離を取った彼女は、雨が降る窓辺で物思いにふけりながら立っていたが、結局何も言葉をかけることはできなかった。
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