こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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3話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ③
とにかくロレッタは泣き続けた。
メロディと元々住んでいた家が違い、自分がもともと住んでいた場所があったことを忘れたいかのように。
その泣き声を聞いたのか、遠くからメロディの母親が駆けつけてきた。
叱られるのではないかと心配になった。
「お前は本当に何一つまともに見ていられないのか?!家の中が静かになる日なんてないのか!どうせ何一つ満足にやらないんだから、せめてご飯だけでもきちんと食べさせられるくらいにはなれないのか?」
……やっぱり予想通り、厳しい叱責が飛んできた。
「黙りなさい! すぐにその口を閉じなさい! この家が滅びでもすると思っているの?!」
それから泣いている子供に大声で怒鳴りつける母親を見て、メロディはロレッタが聞こえないように両耳をしっかりと塞いであげた。
母親は苛立ちを抑えきれない様子で二人の子供を睨みつけてから部屋に戻ってしまった。
「大丈夫?」
メロディが耳を離して優しく尋ねると、ロレッタは震える手で人形を抱えたまま恐る恐るメロディの胸の中に飛び込んできた。
どうやら母親の怒声に相当驚いたようだ。
「うぅ……ロレッタとメロディの家が違うから、寂しいよね……。」
……いや。
母親が問題ではなく、この家そのものが原因だったのかもしれない。
酔っ払って帰宅した母親が、少し得意げに「良い知らせ」を伝えた。
「この子ね、私が思っていた以上に大金になるみたい。すごい財産家なんじゃないかしら?」
「……財産家?」
ロレッタは母親の言葉を真似してそう尋ねた。
その意味を知りたいのだろう。
機嫌の良い母親は微笑みながら、ロレッタの好奇心に親切に答えた。
「財産家っていうのはね、すごくお金持ちのことよ。」
しかし、その解釈が正しいかどうかは別として。
「とにかくメロディ、あの子が具合悪くなったり傷ついたりしないよう、ちゃんと面倒を見なさい。そんな子を渡す相手が喜ばないと困るからね。」
メロディは少し腹立たしい思いを感じたが、大人しくその場をやり過ごした。
「しっかりやるのよ。無能な娘を見捨てずに育ててくれてることを感謝しなさい。」
「私は愚かじゃありません、お母さん。」
メロディは正式な教育を受けていなかったが、文字をある程度読むことができた。
村の人々の中には、メロディに「これどう読むの?」と新聞のようなものを持ってきて助けを求める人もいた。
つまり、彼女は自分が愚かではないと分かっていた。
「何?じゃあ、私が愚かだって言いたいのか?」
「そんなこと……ないですけど。」
「どこが返事なのよ?そんなにぐずぐず答えたら怒るわよ!」
母親はメロディの頭を強く押し付けて、自分の部屋に戻っていった。
メロディは痛む頭をそっと撫でながら、独り言のように考えた。
“……こんなの全部運命だよ。不運な人間は前に転んでも後頭部をぶつけるようなものだ。”
小説の世界に迷い込んだかのような生活を送っている彼女は、そんな状況下でも何とか順応していた。
例えそれが奴隷商人の娘のような役割だったとしても。
それでもメロディは自分の頭の良さを誇りに思っていた。
そして、ロレッタにもそれが引き継がれていることを願っていた。
「メロディ。」
ふと横にいた小さなロレッタが彼女の服の袖をそっと掴んだ。心配そうな顔で。
「メロディ、痛い?」
「ううん。」
メロディは頭を振りながら、少し体を低くして子どもの顔を見た。
「痛くないよ。」
「メロディ、頭がゴツンってなったよ。」
ロレッタは少し前にメロディがぶつけた部分を小さな手で優しく触れ、さらに息を吹きかけてくれた。
その仕草に、メロディは自然と笑みを浮かべた。
「まるで福の神みたいね。」
そう言って、彼女は小さなロレッタをぎゅっと抱きしめた。
特別な香水を使っているわけでもないのに、この子からは心地よい香りが漂ってきた。
ああ、これが主人公の持つ特別な香りなのかしら。
「……ロレッタは福の神じゃないけど。」
しかし、ロレッタは何か困ったような声でメロディの肩に顔を押し当てた。
「なんで福の神じゃないの?」
「うん、いるよ。シルン。」
ロレッタはもじもじしながらメロディの腕から抜け出すと、一瞬母親の部屋をちらりと見た。
注意深く見るような仕草。そして、非常に小さな声でささやいた。
「だって、シルンはロレッタのポケットに……お金がなくて……。」
子どもは自分の服についている小さなポケットに手を入れ、困ったようにうつむいた。
「お金がなくて……福の神じゃないよ。」
ああ、どうしよう。
福の神の本当の意味を教えてあげたいけれど、ポケットを触りながら困った様子があまりに愛おしい。
もう少しこのまま見守っていたい気分になる。
「これならあるけど。」
そして子どもは一瞬の間に細い指をポケットから出した。
ポケットから丸くてつるつるした小石を一つ取り出した。
昨日の午後にままごと遊びをすると言って草むらで拾った石だ。
丸い石の片側にはまだそのときの草が付いていた。
頻繁にままごと遊びに夢中になっているロレッタは、小石をポケットに詰め込んで持ち歩いていたようだ。
メロディはロレッタの頭をなでながら、「ままごと遊びしようか?」と尋ねた。
「うん!ロレッタがお姉ちゃんするね。メロディは赤ちゃん。」
そう、なぜかいつもメロディが赤ちゃん役になるのはわからないが、とにかくメロディはロレッタのご機嫌をとって、ひそかに気になっていたことを確認してみることにした。
「じゃあ、ママは誰がやるの?」
「ママ?」
「うん。ロレッタのママのことだよ。」
メロディは緊張した気持ちを押さえつつ息を呑んだ。
もしかして「ママ」という言葉にロレッタが何か反応するのだろうか。
泣き崩れてしまうのは嫌だ。
しかし、思ったより子供の気分は悪くなさそうだった。
ただし、指先を口元に当てて困ったように前髪をいじっていた。
「ロレッタ、それはよくわからないけど……」
メロディは不安げな表情で問いかけたが、ロレッタは屈託のない笑顔を浮かべ、先ほどと同じ言葉を繰り返した。
「ロレッタがお姉ちゃんやるよ。メロディは赤ちゃん。」
メロディはどう返せばいいのかわからず、とりあえず前髪を撫でた。
「うん、赤ちゃんは心配しなくていいよ。お姉ちゃんが全部やってあげるからね!」
ロレッタお姉ちゃんがこんなに頼もしく言うなんて。
でも、なんだか心配になるのはどうしてだろう。
この展開は原作にはなかったはずなのに。
原作ではロレッタが母親に関する記憶を失ってしまう、なんて話は出てこなかった。
『本当に大丈夫……だよね?』
メロディの心配そうな顔が消えなかったせいだろうか。
ロレッタはぱっと走り寄り、メロディをぎゅっと抱きしめた。
その温もりに、メロディは締め付けられるような不安を一瞬だけ忘れることができた。
「メロディ、大好き。」
・
・
・
出来事は、秋の近づいたある夜に起きた。
母親の夕食を準備していたメロディが、不意に皿を割ってしまったのだ。
ガシャーン!
割れた皿はそのまま粉々になり、床に散らばった。
熱いスープがメロディの脚に飛び散り、火傷しそうになったが、そんなことは今の彼女には問題ではなかった。
「メロディ!」
驚いたロレッタが駆けつけ、床にこぼれたスープを拭こうとしたが、バランスを崩して床に倒れ込んでしまった。
それでも、グラスが割れたその上に――。
「ロレッタ!」
メロディは急いで子供を起こした。
小さな子供がケガをしていないことを祈りながら。
しかし、いつものように神は今回もメロディの祈りを聞き届けてはくれなかった。
ロレッタの手から床、そして膝の下まで赤い血が止まることなく流れていた。
「どうしよう?もっとひどくなったらどうしよう?もっと痛かったらどうしよう?」
メロディは子供がどうにかなってしまうのではないかという恐怖に駆られ、自分でも気づかぬうちに涙が溢れた。
「この出来損ないの子が!一体どうなってるんだ!」
母親の怒声が響いたのはその時だった。
彼女は皿が割れる音を聞きつけ、急いで駆けつけると、その場で娘を叱責した。
「ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい。お母さん。私が悪かったです。」
メロディは両手をしっかりと合わせて謝罪したが、母親の話は耳に入ってこなかった。
しかし、子供の幼い肌が切れて赤く染み出していく様子を目の当たりにし、次のような言葉がこぼれた。
「何をぼんやりしているんだ!すぐに医者を呼んで来なきゃならないだろう!ぐずぐずしているうちにもっとひどくなったらどうするつもりだ!」
医者、そうだ、医者を連れて来る必要がある。
メロディは迷うことなく外へと飛び出した。
しとしとと降る秋の雨が冷たかったが、走る速さを遅らせる理由にはならなかった。
雨に濡れる中、彼女の心には後悔が渦巻いていた。
「皿が割れた時に、まずロレッタに注意を向けておくべきだった。いや、その前に皿を割るべきではなかった。私が悪かった。すべて私のせいだ。」
おそらく今頃ロレッタは痛みに耐えきれず泣き叫んでいるだろう。
さらに、窓の外ではロレッタが恐れているあの雨音が降り続いている!
「少し待ってて、すぐにお医者さんを連れて来るから。」
『急いで行くぞ。』
忙しそうに走る彼女の横を、高貴な貴族かあるいは豪華な馬車が非常に速いスピードで通り過ぎた。
しかし、メロディはその事実に気づくことができなかった。
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