こんにちは、ちゃむです。
「捨てたゴミは二度と拾いません」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

7話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ⑦
今回も言葉が通じなければ、彼と大喧嘩をする覚悟もしていた。
しかし幸いなことに、フィレンは私の言葉をよく理解したのか、それ以上その女性について触れることはなかった。
私も同じく、その女性について口にすることはなかった。
こうしてすべてが元の状態に戻っていくようだった。
心の中では少しずつ苛立ちが募っていたが、少なくとも外見上は問題ないように見えた。
フィレンはその女性の服を仕立てるため、手作業でデザインを始めていた。
デザイナーを呼び、その女性が服を選ぶのを私の隣で手伝わせて。
私が首都に行くために服を仕立てなければならないと言って呼んだと察していたのだろう、何の文句も言わずに従ってくれた。
やはりフィレンはその女性に心があるようだ。
薄々感じてはいたが、それだけのことだった。
そもそも彼の愛を求めて彼と婚約したわけではないのだから。
私が望むのはウィルリオ公爵夫人の座だけ。
私がやりたいことを存分にできる地位だ。
その家を離れる理由が必要なだけで、それさえ保証されれば他に望むものは何もなかった。
だからといって、その女性と親しく過ごそうなどというつもりはなかった。
将来その女性が産む子どもを育てることになったとしても、まるで他人のように無視しようと考えていたのだが…。
「こんにちは。」
望まないことはいつも起きるものだった。
しかし家がどれほど広くても、同じ屋根の下で暮らしている以上、一度も出くわさないということはあり得なかった。
今のように偶然に通り過ぎるだけでも、鉢合わせする可能性は非常に高かった。
その事実に気づかなかった愚かな自分を叱りながら、女性を見つめた。
窓から差し込む日差しが、柔らかな白金色の髪の上に鮮やかに降り注いでいる。
その下で見えるのは、初雪のように美しい白い瞳が印象的だった。
女性は特別な装飾のない純白のワンピースに、青い宝石が付いた首飾りだけを身に着けていたが、とても美しかった。
なぜフィレンが彼女に惹かれたのか、ようやく理解できたような気がしながら、女性のふくらんだ腹に目をやった。
彼女のお腹は初めて見たときよりもだいぶ膨らんでいた。
妊娠してから数か月が経ったのだろうか。
妊婦を実際に見たことがなかったので、現実感がなかった。
私の視線を感じ取った彼女は、にっこりと微笑みながらお腹を優しく撫でた。
「触ってみますか?」
「……大丈夫です。」
正気を失ったわけではないのだから、そんなことをするはずがない。
私が即座に断ると、彼女は少し残念そうな表情を見せた。
「そういえば、まだ自己紹介していませんでしたね。」
彼女は明るく笑いながら、自分の歯車を回すように手を軽く動かした。
彼女が動くたびに、首飾りに付いた青い宝石が繊細に揺れて輝いていた。
「シスリー・ヘリオドです。」
ヘリオド……その名は、確か帝国が征服したムリス王国の王族の姓ではなかっただろうか。
彼女の言葉が事実なら、彼女はムリス王国の王女ということになる。
いや、ムリス王国は既に滅んでいるのだから「元王女」と表現するのが正しいだろう。
それにしても、こうして笑顔で会話をしていても、彼女が不快な相手であるという事実に変わりはなかった。
なんとなく無視して立ち去りたかったが、にこやかに自己紹介までされてしまうと無視するのも難しい。
仕方なく、内心の苛立ちを抑えながら自己紹介をした。
「……レイラ・テベサです。」と、短く返す。
すると、シスリーは困惑したような大きな瞳で私をじっと見つめてきた。
何かもっとしてほしいと言いたげな顔をして。
いったい何を望んでいるのだろう。
まさか、彼女と彼女の子どもの様子を優しく気遣ってほしいとでも思っているのか?
もしそうなら、それは無駄な期待だった。
私はそんなことを考える気もなかった。
彼女やその子どもが不幸になることを望んでいたわけではないが、健康であることを願うことすらしなかった。
子どもに関心がないというのが正確な表現だ。
自己紹介も済ませたし、これでもう立ち去ってもいいはずだ。
シスリーはまだ私に何か言いたそうだったが、私にはそのつもりがなかった。
そっけなく彼女を見つめ、彼女の話を聞くつもりもなく、ただその場を去ろうとした。
しかし、シスリーが再び私を呼び止めた。
「テベサ嬢。」
普通、国が滅びると王族や貴族たちは平民、あるいはそれ以下の身分に落ちるものだ。
したがって、かつて王女だったシスリーが私を「テベサ嬢」と呼ぶのは正しいことではなかった。
「お嬢様」と呼ぶのが妥当だ。
しかし、すべての事柄には例外がある。
たとえば、その王国が滅びたとしても、皇帝がその王族の正統性を認めた場合や、母国が異国出身でその母国の身分が保たれる場合。
シスリーの態度を見たとき、それがそうでない場合でも否定することはできず、私はしばし考え込んだ。
どちらに該当するのか直接尋ねるのが最も確実で手っ取り早い方法だが、それは礼儀を欠く行為でもあったため、容易にはできなかった。
「滅びた王国の王女も、王女として遇するべきなのでしょうか?」
そんな私に代わって話を切り出したのはサラだった。
私はサラの驚きの発言に面食らいながらも、一方で長い間抜けなかったトゲがようやく抜けたような、すっきりとした気持ちを感じた。
反対に、シスリーは小さくため息をついた。
どうやらサラの言葉が気に入らなかった様子だ。
彼女の反応を見て、彼女が例外に属しているのだろうと感じた。
それなら当然、私を堂々と「テベサ嬢」と呼ぶのも納得がいった。
「申し訳ありません。」
すでに失礼な言葉を発してしまった以上、早急に謝罪するのが正しい対応だった。
「私の侍女がこのような面で無知なため、失礼を働いてしまいました。戻ったらしっかりと叱りますので、今回だけは寛大に許していただけませんか。うーん……。」
ヘリオドを「王女」と呼ぶには、彼女の王国はすでに滅びており、ヘリオドを「令嬢」と呼ぶには、彼女は帝国や他国の貴族ではなかった。
「ヘリオド嬢。」
それでも彼女を適当に呼び捨てにするわけにはいかないので、どう呼べばいいか悩んだ末、適切な妥協点を見つけた。
私が謝罪しても彼女の気分が晴れないのか、シスリーは終始ため息をついていた。
しかし、これ以上謝る気にはなれなかった私は、そのまま無視して立ち去った。
背後でシスリーがじっと私を見つめている視線を感じたが、振り返ることはなかった。
「はぁ、はぁ。」
またシスリーが何か問題を起こす前に、急いでその場を後にした。
私が軽く息を整えながら部屋に入ると、本を整理していたミサが戸惑った目で私を見た。
「お嬢様、誰かに追いかけられてきたのですか?」
私は答えずにソファに腰を下ろした。
私の機嫌が良くないことに気付いたミサが、サラに尋ねた。
「外で何かあったんですか?」
「それが……」
「サラ。」
私はサラの名前を呼んで彼女の口を塞いだ。
ミサは状況を察して、それ以上追及しなかった。
私はソファに深くもたれ、目を閉じた。
その時、シスリーのことで混乱した頭と心を整理しようとしていると、ミサが私の表情を伺いながら慎重に話し始めた。
「お嬢様、少し前にテベサ伯爵夫人からの手紙が届きました。」
テベサ伯爵は私の親戚であったが、テベサ伯爵夫人はそうではなかった。
彼女は戸籍上の母親にすぎない。
テベサ伯爵夫人は、自分の夫が犯した些細な過ちを埋め合わせるために私を娘として迎え入れたが、それ以上の意味はなかった。
彼女は徹底的に私を無視し、冷たくあしらった。
気分が悪い時や何か問題が起これば、彼女は手加減せずに私を叱責することもあった。
しかし外では、良き母親のふりをする演技派だ。
そのことが余計に嫌悪感を抱かせた。
私がどうしてもその家を出たかった一番の理由が、このテベサ伯爵夫人の存在だった。
そしてもう一つの理由は、彼女の息子であり、私の義理の兄であるアンタンド・テベサの存在だった。
今でも目を閉じると、あの日の出来事が鮮明に蘇ってくる。
「レイラ、いい子だよね?」
嫌悪感を抱かせるほど強烈な酒の匂いと腐敗した眼差し。
そして……。
「お嬢様?」
「あ、すみません。」
私は一体何をしているんだろう。
辛い過去を思い出しても、良いことなんて一つもない。
ただ軽く首を振り、記憶の中の忌まわしい出来事を振り払った。
「伯爵夫人から手紙が来たって言った?持ってきて。」
ミサが冷たい手紙を持ってきてくれた後、サラと一緒にそっと立ち去った。
私が読みやすいように手紙を整えてくれたのだ。
私はナイフで封筒を切り、中の手紙を取り出して読んだ。
手紙にはいつもと変わらない形式的な挨拶や、ミサ嬢が慌てて書き足したような言葉が記されていたが、肝心な点は一つだった。
明日、ウィリアット侯爵邸に訪問するということだ。
なぜ訪問してくるのかについての理由は書かれていなかった。
「久しぶりに会いたいから訪ねる」とは書かれていたが、それは他人の目を意識して記された白々しい嘘だった。
彼女が私に会いたいと言うのだ。
明日、何かが始まるというのが、手紙から感じられる真実味だった。
「どうすればいい?」
特に会いたくはなかったが、来るなとは言えない理由もなかった。
彼女がなぜ訪ねてくるのか、興味もあった。
テベサ伯爵夫人と会うべきか迷った私は、しばらく考えた後、ミサに話しかけた。
「ミサ、明日伯爵夫人がこの家を訪れるそうだね。」
「まあ、伯爵夫人ですって?事前に準備しなければなりませんね。」
「その必要はないわ。」
「そんなことありません。伯爵夫人がいらっしゃるなら、しっかり準備しなければなりません。」
ミサは急いで準備をすると言って外へ出て行った。
サラを見送り、まだ終わっていなかった仕事を片付けていると、突然メイドが慌ただしく駆け込んできて、予想外の知らせを伝えた。
「今、何と言ったの?」
「あの女性が突然倒れたそうです!」
あの女性とはシスリーのことだった。
さっきまで元気そうに見えた彼女が倒れるとは。
好きな相手ではなかったが、彼女がフィレンの子どもを身ごもっていることを考えると、関心を持たずにはいられなかった。
「医者は?」
「ちょうど到着して、その女性を診ているところだと聞きました。公爵閣下も驚いて慌てて駆けつけたそうです。」
「それで?」
フィレンが行ったなら、私が行く必要はないだろう。
行きたくもなかったし。
気にせずにやるべきことを片付けていたところ、ノックもなくドアが勢いよく開いた。
「レイラ!」
フィレンだった。
彼は苛立った表情で私を睨みつけ、言葉を続けた。
「シスリーに何を言ったんだ?」
やはりそうだった。
私は驚きつつも、ほっと息をついた。
「何も言ってないわ。」
「嘘をつくな。」
フィレンは鋭く私の言葉を否定した。
「お前が何も言わなかったなら、シスリーがなぜお前に会った後に倒れたんだ?」
「その女が?私のせいでショックを受けて倒れたって?」
「いや。シスリーはまだ正気に戻っていない。医者が言うには、心理的ショックが原因らしい。それにシスリーの侍女たちが、お前が今日シスリーに会ったと証言している。」
「それで?侍女たちは私がその女に何を言ったと言ったの?」
それにはフィレンも返答せず、口を閉ざした。
それでも憤慨しながら私に食ってかかる姿は、言い分が通らないことに苛立ちを感じさせた。
「シスリーのお腹の中の子供に何かあったら許さない。」
フィレンの炎のような眼差しが私を見つめた。
「だからこれから気をつけろ、レイラ。さもないと、俺がどうするか分からないぞ。」
フィレンは冷酷な表情で脅迫を残し、そのまま外に出て行った。
彼の言葉を聞いて、ようやく私は真実に気づいた。
フィレンのシスリーに対する想いが、私の想像以上に深いことに。
そして私は、自分が安心していたことに愕然とした。公爵夫人の座をシスリーに奪われるはずがないと高を括っていた自分に。
この婚約の行方が、結婚ではなく破談となる可能性があることに、私はまだ気づいていなかったのだ。










