残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【53話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

52話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • カッコいい皇女様

今日はとても天気が良かった。

窓を開けて青空を眺めながら、私は日光浴を楽しんでいた。

ところがその時、大きな声が聞こえてきた。

「10発食らいやがれ!」

チャッ!チャッ!

騒がしい掛け声。続いて響く号令の声。

「ハッ!ドゥル!ハッ!ドゥル!」

勇ましい掛け声に驚いて、とっさに窓の下を覗く。

服装は薄汚れていたが、軍隊のような規律を感じさせる兵士たちの姿が見えた。

「行進だ、軍歌だ。軍歌のタイトルは『カッコいい皇女様』! 軍歌スタート、イチ、ニ、サン、シ!」

私は窓をぴしゃりと閉める。

遮音性の高い窓だったので外の音はあまり聞こえなかったが、なぜか内容ははっきり聞こえてくるような錯覚に陥った。

「か、かっこいい皇女様……?」

私は窓の下に身をかがめ、隠れながらゆっくりと顔を上げた。

そして、手だけをそっと持ち上げ、慎重に窓を少しだけ開けた。

そもそも「カッコいい王女様」なんて言い出したのはどんな子なのか気になってきた。

『聞かない方がいい気がする。』

開けてはならないパンドラの箱を開ける気分だった。

ちょうどデザートを手に部屋に来たユリが私を見つけた。

「王女様?何してるんですか?」

「お姉ちゃん、ギルティ・プレジャーって知ってる?」

「ギルティ・プレジャーですか?」

ユリ姉ちゃんはやっぱり賢かった。

お姉ちゃんは侍女になってから、王女にふさわしい侍女にならなきゃって、いろんな勉強を熱心にしていたけれど、ひとつ入力すれば十の答えが返ってくるレベルの自動辞書みたいな人だった。

「辞書的な意味でいうと、罪悪感を感じながらも楽しむ行動のことです。堂々とできない快楽を指す場合もあります。ここでいう罪悪感は──」

道徳的な意味というよりも、むしろ幼稚で馬鹿馬鹿しくて、他の人に聞かれるのが恥ずかしいような――

「そう、それだよ。」

窓が開いて、軍歌が聞こえてきた。

歌詞を聞いてみると、だいたいこんな感じだった。

「カッコいいぞ!皇女様!たった一人の皇女様!」

私はまた窓を閉めてため息をついた。

ああ、これは聞いていいのだろうか。

何か、罪悪感を覚える。

でも、やっぱり気になってしまう。

この妙な歌がどこまで妙になるのか、好奇心が湧いてきた。

私はまたそっと窓を少しだけ開けた。

「そうだ!オレだ!ハッ!サナ〜イ!イエス!ハッ!皇女様のための戦士!戦いでは無敵!魂は熱く燃える!皇女様をたたえよ、素晴らしき皇女様!」

「皇女様、顔が赤いです。」

「お姉ちゃん、恥ずかしくて死にそう。」

恥ずかしさを通り越して、悶えそうだ。

頭の先から足の先までゾワゾワっと鳥肌が立つ。

隠れられるなら、3日くらいは隠れていたい気分だった。

「歌自体もちょっと恥ずかしいけど、あれを最後まで聞いてた私自身がもっと悶えるわ。他の人たちも全部聞こえてたよね?」

アレナ宮全体が震えるほど大きな声だった。

普段アレナ宮の騒がしさを避けていたデイルサ侍従長ですら、どこへ行ったのか影も形も見えなかった。

私は窓の外にこっそり顔を出して、アレナ宮に突撃(?)してくる兵士たちを眺めた。

「そ、そこの人たち、本気すぎて怖い。」

あの物騒な場所は顔と態度が一体。

角度を維持した行進で最善を尽くし、声が枯れるほど歌っている曲が「素敵な皇女様」だなんて。

チャッ!チャッ!

足音がだんだん近づいてきた。

その足音は私の部屋の前で止まった。

「全員、止まれ!」

チャッ!

止まる音が聞こえた。

私はごくりと唾を飲んだ。

ユリお姉さんが言った。

「追い払おうか?」

「いや、そこまでする必要はなさそう。」

もし最初から危険な連中だったなら、皇宮に入ることすらできなかったはずだし、皇宮内であんな軍歌を堂々と歌いながら歩き回ることもできなかったはず。

重荷に感じて怖かっただけで、彼らが悪い人ではないということは確かに分かった。

(コンコン)

ノックの音とともに、低くて響きのある声が聞こえてきた。

明らかにただの地声なのに、まるで魔力を含んでいるかのようにビリビリと響いた。

「エルベ山脈、第7境界哨所の分隊長ルカイン!ビロティアンの尊き血統、ビロティアン唯一の皇女様に謁見を求めます!」

そして小さな声が聞こえてきた。

小さな声で話すつもりだったようだが、もともと声がとても大きくて、全部聞こえた。

「みんな、謁見って何?私、ちゃんと読んだんだよね?」

少しヒソヒソと話す声が聞こえてきた。

どうやらその大使は誰かに書いてもらったようだった。

ユリ姉さんがまた私を呼んだ。

「皇女様?どうしましょうか?」

「とりあえず開けて。」

ユリ姉さんが扉を開けると、ものすごい威圧感を放つ男性が現れた。

あまりに恐ろしい外見で、まるで山のようだった。

見た瞬間、鼻血が出そうなほどの威圧感だ。

「全員整列!皇女様に敬礼!」

チャッ!

彼らは右手を高く上げて私に敬礼した。

私はそのあまりに圧倒的な気迫と鋭さに、思わずびくっとしてしまった。

ユリ姉さんが代わりに尋ねた。

「エルベ山脈の兵士の皆さんが、ここには一体どういったご用件で?」

「皇女様に深い恩恵とご加護を賜った者として、皇女様に……あの……その……ですから。」

自分をルカイン分隊長と紹介した男は、手のひらをしょんぼりと動かした。

手のひらにはカーニングペーパーのような何かを折ったものを持っていた。

「私が皆さんに恩を与えたって言うんですか?」

「はい、そうです!」

うわっ、びっくりして耳がちぎれるかと思った。

『でも私、恩なんて与えたことあったっけ?』

いくら考えてもそんなことはなかった。

ルカインが何を言っているのか、まったく理解できない。

「とりあえずお入りください。」

ルカイン分隊長が言った。

「エルベ山脈は、私たちのようにがっしりとした体格しか取り柄のない者たちが集まる場所です。」

言ってみれば、3D労働種だった。

みんなが敬遠するが、誰かがやらなければならない仕事。

「つまり、無知で不細工なやつらってことですよ!ウハハハ!」

「………」

「ミハエル皇子様が移動ゲートを自由に使って、雪景色を楽しまれている姿を見るたびに、すごく羨ましかったです。」

イサベルは何も言えなかった。

大陸の北側、冷たい北風に吹かれながら日々任務を遂行している彼ら。

移動ゲートを使える手段もなく、家族にも会えない彼ら。

彼らがミハエルを見て何を思ったのか、どんな剥奪感を覚えたのか、容易に想像がつく。

「いや!もちろん、それが悪いってわけじゃありません。ただ、あまりにも当然のことだったのです。ミハエル皇子様は高貴なお血筋で、私たちはただの血筋ですから。」

けれど、初めて関心を寄せてくれたのがイサベルだった。

「ある日、皇子様がこうおっしゃったんです。“申し訳ない”と。」

いつか、ミハエル皇子が直接、国境警備兵たちを訪ねてきた。

そして一人ひとりと目を合わせて、直接謝罪した。

『ごめんね。私の考えが浅はかだった。』

皇族が自ら平民を訪ね、頭を下げて謝罪するなんて、めったにあることではなかった。

めったにないどころか、歴史的に見ても稀な出来事だ。

前例を探すのも難しいほどだった。

ミハエルはこんなことも言っていた。

『妹にめちゃくちゃ怒られたんだよ、なんで?』

いつも何も考えていなかったミハエルだったが、その日は少しだけ思慮が芽生えたようだった。

イサベルの言葉を聞いて、自分があまりにも無神経だったことに気づいたのだ。

イサベルは知らなかったが、その日を境にミハエルは大きく変わった。

他人の立場で物事を考えられるようになった。

「実際、皇族の前では私たちはただの価値のない石ころのような存在なんでしょうけど。」

「………」

ルカインは手のひらをそっと撫でる。

難しい話をするには、少し気合いを入れる必要があった。

「ええ……だから、皇女様が注いでくださったご関心とご厚情に報いるためにやってまいりました。皇女様に心より感謝申し上げます。」

「価値のない石ころのようには見えません。」

地球とは違う世界であるということは明らかだった。

身分制度を否定するつもりはなかった。

それはすなわち、皇帝と皇族を否定することになるからだ。

「私は皆さん全員が尊いと思っています。剣術帝国は帝国民と共に築かれた国です。帝国民なしでは自ら存在することはできません。本当の強さは帝国民から出てきます。だから、そんなことをおっしゃらないでください。」

その言葉に、兵士たちは一斉に口をつぐんだ。

皇族であるイサベルからそのような言葉を聞くことになるとは思わなかった。

彼らはイサベルの言葉に感動し、しばらくの間沈黙した。

一方、話していたイサベルは昔の記憶を思い出した。

彼女を支援してくれた人のうちの誰かと会って話を交わしたことがある。

名前を明かさなかったその支援者は、こう言っていた。

『私がしたことなんて大したことじゃありません。だからくじけずに乗り越えてください。それが私の喜びなんです。』

そして今度はイサベルが言った。

「私がしたことなんて大したことじゃありません。ただお兄様に、ほんの数言をかけただけです。」

「その数言が多くのことを変えましたよ、皇女様。私たちに本当に必要だったのは、その小さな関心と、思いやりだったんです。」

ルカイン隊長は「ウハハッ!」と笑い声をあげた。

イサベルがそれほど立派な言葉を話したわけでもないのに、目を赤くした少年兵士もいた。

その姿を見て、イサベルの胸はじんわりと温かくなった。

彼女が昔もらったその温かい関心を、ほんの少しでも誰かに伝えられたような気がした。

ルカイン兵長が言った。

「皇女様が持っておられたその小さな関心が、世界を変えるのではありませんか? テイ……テイ、何だったか?」

ルカインは隣にいた副官に助けを求める視線を送り、副官は耳打ちで小さく伝えた。

「ティサブルです、兵長。」

「ああ、そうだ、ティサブル!ティサブルの移動ゲートのような素晴らしいものも作ってくださいましたよね?」

テイサベル移動ゲートは、ただの魔道工学の産物ではない。

少なくともエルベ山脈の兵士たちにとっては「希望」だった。

イサベルは彼らに希望を贈った皇女だった。

「私も目に入れても痛くないほどの息子たちに、たびたび会えるようになるなんて、本当に感謝します。私たちエルベ山脈の兵士たちは決して皇女様のご恩を忘れません!」

 



 

 

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