こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

103話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇帝の願い③
目の前のチャットウィンドウを無視して、私は皇帝に口を開いた。
「もし私が陛下のご命令をお断りしたら、それは陛下に背くことになりますか?」
すると皇帝は笑みもなくこう答えた。
「どうして私が聖女を敵に回すだろうか? ただ、神殿について余計な噂が立たないよう、よい方向で考えてほしいということだ。」
もし私がカイルと結婚すれば、私への評価が皇室にとっても利益となり、“家族”になることで皇帝とも強固な縁を結ぶことになる。
だが結婚しなければ、神殿と皇室の関係がぎくしゃくする可能性があることを暗に示されたようなものだ。
[知識の神ヘセドは、オーマンの言葉に全面的に同意し、皇位についたカッシュとともに帝国の富を受け取れとあなたをそそのかします。]
私は心の中で小さく息をのみ、彼のもとへ一歩、また一歩と近づいた。
皇宮に入る前、念のため持ってきたポケットの中の物がひんやりと感じられた。
「陛下。」
皇帝の目を見つめながら、私は頭を下げる。
そしてその前にひざまずき、丁寧に言った。
「陛下のお考えが理解できないわけではありません。しかし、それでも私はこの政略結婚をお受けすることはできません。」
謁見の間には重い静寂が漂っていた。
私は彼の目を見て口を開いた。
「それは、私が神殿の道具や聖女ではなく、“アリエル”として生きたいからです。」
[正義の神ヘトゥスが、あなたの主体性を賞賛します。]
私の言葉に、皇帝はまぶたを伏せた。
「それはどういう意味だ?」
「たとえそう言っても、私の家が神殿であり、私が聖女であることには変わりありません。でも私は、自分の人生をとても大切にしています。だからこそ、私の意思ではない、誰か他人の意思によって望まない人生を歩むことはできません。いつかは結婚を——たとえそうなったとしても……私は、自分が望む人と結婚したいのです。」
[芸術の神モンドは、「望む人」にレイハスを推薦します。]
[破壊の神シエルはカイルのしっぽを掴んで振り回します。]
[知識の神ヘセドは優雅に脚を組んで座り、コーヒーをすする仕草をします。]
私の言葉に、皇帝は顔をしかめた。
「つまり、そなたはこの私の提案を拒否するということか。」
「はい。そして、こちらを……」
私は持っていたある物を両手で取り出し、皇帝に差し出した。
皇帝は私の手の中の品を見て、驚いた表情を浮かべた。
それは、かつて競売場で購入した木彫りのネックレスだ。
先代皇后が30年前、皇太子に渡したものだと言われていた。
装飾が施されたもので、伯爵家の祖母の遺品として集められたものだと思っていたが、結論としてそれは、伯爵の父が盗んだ皇室の品だったのだ。
「これは……皇后が最も大切にしていたネックレスではないか。幼い頃、私と婚約した際に、母が彼女に贈ったものとして有名で、失われたと聞いていた。いったいどうやって手に入れたのだ?」
たまたま気に入って持ってきたのだが、まさにこの状況で使うべき時が来たようだった。
「芸術の神モンド様が、皇室の宝を見つけ出させたのです。」
「神よ……」
[芸術の神モンドが仮のペンダントに親近感を示しています。]
モンドがペンダントを見つけたのは確かだった。
競売場でのことだったが。
「私は陛下を癒すとき、愛の神オディセイの権能を借りました。そして不敬ながら、その過程で陛下の過去の記憶の断片を少しだけ見ることになりました。」
皇帝は私の手の上にある仮のペンダントを手に取り、持ち上げた。
「先皇妃殿下への思慕が深かったのですね。…彼女を見送ったときに感じた苦しみが、
陛下の胸の中に深く刻まれていたのですね。」
「……記憶を……見たのか……」
私は静かにうなずいた。
「陛下の心に残っていた感情は、まさしく“後悔”でした。一日中忙しく政務に追われていた陛下にはどうしようもなかったとしても、彼女を独りにしてしまったことへの自責の念でした。」
皇帝の視線は、木彫りのネックレスに注がれていた。
「時間は戻ってこないのです。過ぎ去った時はいつも後悔を残しますが、一番大きな後悔を残すのは――」
私は過去を振り返りながら、口を開いた。
「望むように生きられなかったことだと思います。」
必死だった過去の人生、私が耐え抜こうとして守ろうとしたものは、今思えば何の意味もなかった。
その時間にもっと喜びを感じることをしていればと後悔した。
もし人生がこんなに短いと知っていたならば。
「だから、私の意志で生きてみようと思います。」
しばらくの静けさの後、皇帝はかすかに哀しみを帯びた目で私を見つめた。
「私の運命は、自分自身で決めたいんです。」
私は静かなまなざしで彼を見ながら口を開いた。
皇帝の唇にわずかに寂しげな笑みが浮かんだ。
「そうだ、聖女の言うとおりだ。彼女(=先皇妃)もまた、聖女のようにきらきらと美しく自由な人だった。今でも馬に乗って野原を駆け回っていそうだな。」
彼の視線は過去を回想していた。
「だが皇宮では、そうすることはできなかった。法を守り、礼儀を重んじねばならなかった。光を失う星のように、彼女は日ごとに弱っていったのに、私は彼女が病んでいたことさえ気づかなかった。」
「………」
「きっと彼女は私を恨んだことだろう……。死後になって彼女の名を冠した庭園を造り、石碑を立て、皇妃よりも高い皇后の位を贈って弔ったが……そんなことに何の意味があるのだろうか。」
彼の手に握られた木彫りのネックレスは、カイルの瞳のような紅い光を帯びていた。
私はしばらくしてから、皇帝に口を開いた。
「私が見た陛下の記憶の中の先皇妃さまは、いつも愛に満ちた目で陛下を見つめていらっしゃいました。憐れみの眼差しではありません。」
私の言葉に、皇帝の瞳がわずかに揺れた。
「宮廷での暮らしは大変だったでしょうが、それでも価値があるとお思いになったのでしょう。愛する人と一緒にいられるというだけで。」
仮のペンダントを持った彼が、それをこめかみに当ててじっと見つめる。
そのこめかみには深いしわが刻まれていた。
「ですが、私は先皇妃さまが陛下を愛したのと同じようには、皇太子殿下を愛する自信がありません。」
皇帝の口元に笑みが浮かんだ。
私はその笑みに応じて、一緒に微笑んだ。
「だから、政略結婚はできません。私たちの結婚にはそうすれば、互いに後悔を残すことはないと思います。」
ついに皇帝は寂しげな笑みを浮かべて口を開いた。
「聖女の言うことは理解できた。」
先ほどまで自分の考えに囚われていた彼の顔は、今は安らかに見えた。
しばらくして彼は真剣な口調で言った。
「過剰な欲に囚われていた私を許してほしい。皇宮は……神殿と聖女にこれからも友好的であることを約束しよう。今日の私の言葉はすべて忘れてくれ。」
「ありがとうございます、陛下。」
私は、自分が皇室にとって脅威とならないことを明確にしつつ、同時に自分の立場を彼に伝えていたのだ。
「そして……」
彼の手には、仮のペンダントがしっかりと握られていた。
「この品を探して届けてくれてありがとう。孤独な宮廷生活の中で、彼女が宝物のように大切にしていたものだ。遅くはなったが、彼女の霊にとっても慰めとなるだろう。」
私は軽く頭を下げた。
[慈愛の神オーマンは皇権簒奪の失敗に失望しています。]
[破壊の神シエルはカイルを絶対にあきらめないと決意します。]









