こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

28話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 温室
「建設の部分を手伝ってほしいとお願いはしましたが、無理しなくても大丈夫です。」
ユリアは再建施設の建設のためにあらかじめ皇太子とともに外出し、以前研究していた話を切り出した。
『吸壁温室』の建設期間が長引けば、その間に製品の研究をしていればよい。
「最初から一人で一瞬で建てようとするのは無理な話です。」
建設期間には余裕をもたせたので心配はいらないと、ユリアは予め購入しておいた土地へ皇太子を連れて行った。
「こちらです。」
「まずは…結界を張ってから始めましょう。」
皇太子の手から、きらめく粉が流れ出る。
ユリアが事業で最も重視した部分だと主張して用意したのは、結界の魔法だった。
ピアスト帝国の首都から遠く離れた郊外の穀倉地帯なので他人に奪われるリスクは少なかったが、準備は徹底するほど良かった。
なぜなら、皇太子もユリアの意見に賛同していたからだ。
『吸壁温室』は革新的だ。
-プリムローズ嬢。化粧品の原材料はピアスト帝国で安定して手に入れるのが難しいものが多いです。できるだけ減らすか、他の材料で代替する方法はありませんか?
-私は妥協したくありません。
-もちろん、最高の材料で化粧品を作りたいお気持ちはわかりますが、国外からの供給が途絶える可能性もありますよ。
これまでユリアは化粧品の材料については常に「心配無用」と言う姿勢を見せてきた。
オープン時に披露する化粧品のラインナップを増やす際も、事前に作り置きする量も可能な限り確保していた。
そしてユリアがあれほど動揺せずにいられたのには理由があった。
「大丈夫です。私がその問題を解決できると思うんです。」
『解決方法があるって?』
化粧品販売のターゲットを貴族層に絞れば、材料の供給は大きな問題ではなかった。
価格を上げれば済む話だ。
しかしユリアは単に金儲けを目的とするのではなく、「人々が残り物のような分を塗りたくらなくてもよくなれば」、「肌の悩みで苦しむ人がいなくなれば」という思いが強く見えた。
だから深く関わっていきたいと思った。
『一見冷静に聞こえるけど、化粧品の供給率って材料の価格と密接に関係している。理論上は、もちろん彼女の言う通りならいいが…現実的にはとても無理そうだけど。』
エノックは皇室の相談役を務めているが、同時に一国の皇太子でもあった。
彼はそうした立場から、裕福な人々にだけ高価に売るのではなく、普及用と高級用にラインを二極化する方法を提案しようとした。
『ユリア嬢は事業の経験がない。トラブルが発生しても、隣で私がフォローすれば済む話だ。』
エノック皇太子は、ユリアが「方法がある」と言ったことに大きな期待はしていなかった。
最初から答えのない問題。
それを解決できなかったからといって失望するのは酷というものだ。
大勢の人々のために尽力しようという気持ちが立派だと思っただけだった。
しかしユリアは、全てを諦めることはできないという現実離れした主張をするタイプではなかった。
かといって、エノック皇太子が先に述べた提案を受け入れることはしなかった。
「私が考えた化粧品原料の供給方法があるんです。」
ユリアが、それに応じた対策をすでに立てていたからだ。
「皇太子殿下が数キロメートル分の『温室』を作ってくださればいいんです。」
「“温室”ですか?」
「私の考えた『気候変動に左右されず化粧品の原材料を栽培できる施設』です。」
予想外の提案に、エノック皇太子はユリアの話を聞きながら…彼女の卓越さに感服せざるを得なかった。
作物を育てるというのは、すなわち「待つこと」である。
暖かくなる春を待ち、涼しくなる秋を見越して計画を立てる。
自然の流れを学び、農を営む。
彼自身を含むすべての人間のやり方だった。
神が定めた摂理だと思い、逆らおうとすらしなかった領域。
-『温室』なら気候に関係なく化粧品の原料を安定的に供給できますよ。
エノック皇太子は、ユリアと到着した広大な土地を見渡した。
今は何も生えていないが、もしユリアの計画が本当に実現すれば、冬でも満開の春の花であふれ、夏でもたわわに実った作物の風景を見ることができるだろう。
『エノック皇太子殿下が私の計画を理解してくださって本当に幸運だわ。』
ユリアはエノック皇太子に温室の設計図を手渡しながら、心の中で安堵した。
実は、自信があるように見せていたが、一方では不安な気持ちもあった。
この世界の技術力ではユリアの温室は無理だった。
単なる無理ではなく、ほぼ不可能だった。
ユリアの温室を作ること自体が困難な上に、それを維持する暖房技術も非常に未熟だった。
それでは持続可能な薬草の栽培など夢のまた夢だった。
『だから考えたのが、“土塀”の温室か……』
粘土とわらを混ぜて壁を築き、油紙を貼ってふさぐ、朝鮮時代の“韓紙温室”。
石灰を塗った固い壁が、太陽熱を吸収して作物を育てる中世の“果樹壁”。
その二つを適切に組み合わせて作ったのが、外部の衝撃を防ぐことができるユリアの“土塀温室”だった。
『何もない平地に、精霊師の力だけで温度と湿度を調節するのは無理だから。』
代わりに、吸熱構造で温室の壁を作った後、不足している部分は精霊の力でカバーする施設を設計した。
『つまり、ガラスと暖房設備が担当する部分を精霊が補うってことだね。』
もちろんこれも十分すごい話だったが、ユリアは自分よりもエノック皇太子の卓越さに先に感心した。
『私はすでに問題は理解しているけど、これをただ話だけ聞いて、どうやって資材の供給が可能なのかを納得させるのは簡単じゃない。』
もちろんエノック皇太子が理解しなかったとしても、ユリア一人でも温室くらいは作ることができるだろう。
しかしその間、何度も試行錯誤を繰り返すはずだ。
協力者がいないから。
さまざまに優れた条件を備えたエノック皇太子と協力できるのは幸運だった。
「フリムローズ嬢、この土地を少しだけ目に見える範囲の場所へ移してもよろしいですか?」
「もちろんです。」
少し標高の高い場所へ歩いていく間、エノック皇太子が感心したように口を開いた。
「最初は施設の建設に協力してほしいとだけ言われていたので、ここまで具体的な設計だとは思いませんでした。」
エノック皇太子は心から率直に称賛した。
ユリアはその言葉が本音であるとすぐに分かった。
「実のところ、魔法は戦いに使うものだと思っていましたが…こんな風に活用するとは考えてもみませんでした。」
いつも血を流す戦場でしか魔法を使わなかったが…初めて平和的に魔法を準備しているのだった。
皇帝が明確に命じたことではない以上、このように大規模な魔法を使ったことは今までなかった。
それは現在の完璧無欠な皇太子を作るのには役立ったが、エノック皇太子個人にとって大きな幸せだったかと問われると、答えるのは難しい問題だった。
「皇太子殿下、このまま進めていただければありがたいですが、大地の魔法は簡単ではないと聞いておりまして……。」
「やってみます。」
力強い声だった。
すぐに心地よい振動音が、いつもより大きくユリアの耳に響いた。
「プリムローズ嬢が設計した通りに。」
エノック皇太子は魔力を引き上げ、ユリアの前に手を差し出した。
そして目を閉じる。
ウウウウーン──瞬間、地面が揺れるようだった。
「音が少し大きくなるかもしれませんが…驚かないでください。」
すぐにエノック皇太子は目を開いた。
ゴゴゴゴ!
彼の視線の先には高い柱がそびえていた。
成人男性の背丈をはるかに超える高さだった。
それだけでは終わらなかった。
その柱はエノック皇太子が手を伸ばした先と繋がって──
ズドン!
広くてがらんとした、何もなかった大地に。
一瞬のうちに、何キロメートルにも及ぶ壁が突き出て現れた。
「わぁ……」
ユリアはその光景を見て、思わず感嘆の声を上げた。
『たった一人が、魔力を引き上げてこれができるの?』
土地の東側から、西側まで。
ユリアの視界を埋め尽くすように、吸収壁が立ち上がった。
それだけでは終わらなかった。


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