こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

57話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 皇女の誕生日②
「わあーっ!」
イサベルは思わず感動してしまった。
すっと消える魔法の火花が本当にきれいだった。
「どんな願いごとをしたの?」
「今日の幸せにひたれますようにってお願いしました。」
病気にならず、誕生日を祝ってくれる人たちと——ロウソクが灯され、見ただけで整然としたケーキもあった。
このすべてがありがたくて幸せだった。
だが、イサベルも人間だから、感謝の気持ちを忘れてしまう時もたまにあった。
最近は、痛くないことがあまりにも当然のように感じられてきていた。
「鈍くならないでいてほしいってこと?」
「小さなことにも感謝する気持ちを忘れたくないんです。」
「小さなことって、具体的には何のことだ?」
セレナがにこやかに笑いながらイサベルに近づいていった。
全部わかっているくせに、ロンの言葉を通訳してくれた。
「“お父さんって言いなさい”。その“小さなこと”っていうのは、お父さんのことなんだよって言ってるの。」
「陛下、私はそんなこと言った覚えは……」
イサベルは近づいてきたセレナをぎゅっと抱きしめた。
「えへへ、ありがとう。」
王合同会議がこれで全て終わるとは思えなかった。
一部では終わったことは確かだが。
小さなことには慣れてきたとはいえ、イサベルはまだすべてに感謝していた。
ケーキを一口食べただけで、さらに感謝の気持ちが込み上げてきた。
「なんて美味しいの……」
涙が出そうなほど美味しかった。
うぅぅぅぅん!
ハイトーンの感嘆の声が思わず口からこぼれた。
まるで世界を全部手に入れたような幸せが口いっぱいに広がった。
「口の中に桃の花が咲いたみたいです!」
ロンとセレナはケーキを口に入れて、涙ぐみながら明るく笑うイサベルをただ見つめていた。
見ているだけでお腹がいっぱいになる気がした。
特に、ロンはこの感情を初めて感じた。
自分が何も食べていなくても満ち足りたこの豊かさは、ロンの心を満たしてくれた。
小さな誕生日パーティーが終わり、セレナとロンが席を立った。
ママとパパが帰ることに気づいた七歳のイサベルは、少し寂しそうな顔をした。
自分の気持ちを察したイサベルは、少し戸惑った。
『やっぱり子供は恋人より鋭いな。』
前世の記憶があるとはいえ、この体はやっぱり七歳そのものだった。
一歳の体が見るもの、感じるもの、望むものは、前世の体とは大きく違っていた。
イサベルは「ママとパパがもっとそばにいてくれたらいいのに」と願う気持ちを感じた。
『この気持ちを無理に隠す必要はない』
一歳の彼女にとって、それはとても自然な感情だった。
少し誇張して言えば、ママとパパが世界のすべてのように感じられるほどだった。
『この瞬間だけに感じられる感情なんだ』
この体も歳を重ねれば、少しは大人になるだろう。
いつか、今日のような感情をもう感じられない時が来るかもしれない。
だからこそ、イサベルはママとパパが大好きだという、この素直な気持ちを隠さないことに決めた。
「ママ、パパ、行かないでくれたら嬉しいな。本当に本当に幸せなんです。」
その気持ちに正直になろうと、イサベルはママとパパに無理をさせすぎないようにした。
二人とも、体がいくつあっても足りないくらい忙しい人たちだ。
王合会議を終えて誕生日を祝うために集まったというだけでも、皇帝と皇后にとっては多くの時間を割いたことになる。
「でも、特別に過ごしたいんです。私は欲張りな子ですから。」
イサベルはとことこと歩み寄り、両腕をぱっと広げる。
「代わりに、抱っこしてください。」
ロンの体がぴくっと動いた。
無意識に反応してイサベルを抱きかかえようとしたが、皇帝の威厳があり動くことはできなかった。
セレナがにこりと笑って言った。
「私は腰が痛くてイサベルを抱っこできないので——イサベルってあんなに見えても、意外としっかりしてるでしょ?」
「……」
「大人なんだ。」
ロンは腰をかがめて、イサベルをそっと抱きしめた。
まるで日差しを抱きしめるような気持ちになって、嬉しいのに、なぜか少し切なさも感じた。
『本当に大きくなったんだな』
彼は、イサベルがこれ以上大きくなるのが少し寂しかった。
ここで時間が止まればいいのにと、ふと思った。
小さなイサベルのままでいてほしい。
大きくなったイサベルは、いつかきっと自分の元を離れていくのだろう。
一方、イサベルは自分を抱きしめてくれるパパの腕の中がとても心地よかった。
前世ではどれだけ願っても得られなかったこのぬくもりが、今は彼女の人生をいっぱいに満たしていた。
「パパ、秘密ですよ。」
イサベルがロンの耳元でささやいた。
「だーいすき。」
「……」
ロンは思わず背筋を伸ばした。
まだ背が小さいイサベルが、ロンを見上げていた。
ロンはそれを見て、ようやく少し安心した。
まだまだ小さいのだ。
まだ時間はたくさん残っているのだから。
後ろに立っていたビアトンが、少し不満そうに言った。
「皇女様。皇女様が皇后様のことを好きなのは分かります。皇后様は帝国民すべてから愛されるにふさわしい方です。でも、どうして皇帝陛下のことまでそんなにお好きなんですか?」
「え?」
「特に優しくもないし、正直でもないのに。ユーモアもセンスもないし、怖がりだし、歌も私より下手、魔法も私よりできない。どう考えても、私の方が陛下よりずっと魅力的じゃないですか?」
イサベルはしばらく考え込んだ。
そういえば、その理由について深く考えたことがなかった。
ロンも普段とは違い、ビアトンを黙って見守っていた。
イサベルの答えが気になる様子だった。
少し時間が経った後、イサベルが口を開いた。
「好きって、理由があると尊敬なんですって。でも、理由がないと愛なんですって。私はパパとママのこと、きっと愛してるんですよ。」
ロンは振り返った。
彼の唇には小さな微笑みが浮かんでいた。
娘に感情を見せたくなくて、ゆっくりと歩みを進めた。
その後ろから、愛おしい娘の声が聞こえてきた。
「お母さまのことも大好き。」
そこまではとても良かった。
「ビアトン先生のことも好きです。」
これはちょっと気に入らなかったが、今日は気分が良かったので見逃すことにした。
「生クリームケーキが一番一番好きみたい!」
一度も敗北を経験したことのない皇帝ロンは、今日、生クリームケーキに敗北した。








