残された余命を楽しんでいただけなのに

残された余命を楽しんでいただけなのに【58話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【残された余命を楽しんでいただけなのに】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。 ネタバレ満...

 




 

58話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 皇女の誕生日③

うわ、私ほんとにやらかした。

幸せに酔って、自分でも気づかないうちに心の中を全部さらけ出してしまった。

本当に正直な気持ちではあったけれど、それでも前世の記憶をすべて持っているせいで、気恥ずかしくて照れくさい気持ちになるのもまた事実だった。

だから、生クリームケーキが一番好きだと慌てて口にしたのだが、ユリ姉さんの顔が赤くなっていた。

「うれしいです。」

「ん?」

「美味しそうに食べてくれて本当に幸せです。」

「一緒に食べよ、すっごく美味しいよ、お姉ちゃん。」

私はユリ姉さんと一緒にケーキを食べた。

深夜1時を過ぎていたが、この桃生クリームケーキの前ではそんなことはまったく関係なかった。

ケーキの一片を口に運んで、うるっとしていたとき、ふと視線を感じた。

「どうしたの?」

もしかして、口に詰めすぎて食べたのがばれたのだろうか。

少し気まずくなりそうなタイミングで、お姉ちゃんが口を開いた。

「皇女様に出会って、本当にたくさんのことが変わりました。皇女様は私に、本当にたくさんのものをプレゼントしてくださったんです。」

私はちょっと戸惑った。

でも、ユリ姉の表情があまりに真剣だったので、言葉を遮るのも気が引けた。

「実は、ロスチャイルド公爵家から後援を受けていたとき、私は自分が立派な人間だなんて思ったことは一度もなかったんです。ただ後援を受けているから、成果を出さなきゃいけない子どもだったんです。」

「………」

最後に残った一切れが目に入る。

ふわふわした桃と白いミルクホイップがたっぷり盛られた生クリームケーキ。

ユリ姉の話に集中していないわけじゃなかったけど、7歳の身体はその生クリームケーキに視線をそらし続けてしまった。

『お姉ちゃんが真剣な話をしてるのに、しっかりしなさい、イサベル!』

こんな時ばかりは、7歳の肉体であることがもどかしかった。

お姉ちゃんの話に集中しようと一生懸命努力しているけれど、私の精神力はそこまで強くなかった。

「陛下にお会いしてから、私、自分がちゃんとした人間になれた気がするんです。誰かにとって大切な存在になれた気がして。だから、本当にありがとうございます。生まれてきてくれて、本当に本当にありがとうございます。心から、お誕生日おめでとうございます。」

私の人生で、最高の約束が贈り物となって届いた。

「次は、無花果とケーキを作って差し上げますね。」

でも、そのプレゼントのような約束が、また別の事件を引き起こすなんて思ってもみなかった。

事件の発端は、私の背中のロケット・ナロモルだった。

観覧車遊びがじわじわと痛くなってくるのを、必死にこらえながら、私は目の前の二人を見つめていた。

あの二人はすでに30分も熱い議論を続けていた。

「だから、私のデザートはただ皇女様のためだけに存在すべきで、それでこそ価値があるんです!」

「皇女様がどれほど美しい視点で世界を見ているのか、あなたは理解していないの? そんなに美味しいものなら、たくさん作ってたくさんの人に味わってもらうべきよ。」

「そんなの偏見じゃないですか!」

「何が偏見よ!」

「皇女様への私の純粋な気持ちを、お兄ちゃんのお金稼ぎの手段だと思ってるくせに!」

「それが悪いっていうの!?」

「それは悪いことだよ!」

長い間続いた工房の奥でも、ユリとナルトモルの意見の対立は収まらなかった。

ふたりとも何を言いたいのかはわかる。

『ユリお姉ちゃんは、私のためだけに特別なデザートを作りたいと思っていて、ナルトモルお兄ちゃんは大量生産体制を整えてデザート事業をしたいんだ。』

言いたいことは全部わかるけど……どうして私の部屋でそんなケンカしてるの。

「ふたりとも、やめて!」

「……」

「……」

ユリとナルトモルは口を閉じた。

ふたり同時に私を見つめてきたが、その双子の瞳には『私の味方になって!』という欲望がはっきりと込められていた。

「わざわざ私の目の前で喧嘩するのは、判定をしてほしいってこと?どういうこと?」

ユリお姉ちゃんが気まずそうな顔で私を見た。

『わかってるでしょ?皇女様への私の本気の気持ちです。』

言葉にしていないのに、声が聞こえてくるようだ。

そのまなざしがあまりにも真剣すぎて、私は悲しくて視線を外した。

『ナロモルはなんであんな目で私を見てるの?』

将来、大陸で最も裕福な富豪になるナロモルは、お金の亡者のような表情で私を見つめていた。

『「僕はとんでもない金額を稼いでみせます!」って叫んでるみたいだった。』

二人の意見はまったく違っていたが、共通していることが一つあった。

どちらか一方の肩を持てば、もう一方が拗ねるのだ。

『私はソロモンじゃないのに。』

ああ、頭が痛い。

いっそ線形代数と微積分を勉強していた方がマシだった。

こんなにひどく人文学的(?)な状況はやっぱり私の趣味じゃなかった。

理系人間である私は、ただこの状況をやり過ごしたかった。

「私は二人とも好きだよ。二人の意見がどんなものかも分かってる。」

二人は黙り込んだ。

申し訳ないけど、私は誰の味方もしないことにした。

「でも、二人とも私が誰なのかを忘れてるんじゃない?」

「……」

「……」

誰の味方をするにも困るときは、誰の味方もしない!

私の苦しい立場をわかってほしい!

相手をさらに気まずくさせる!

これが私がひねり出した最善の方法だった。

「私はもちろんユリお姉ちゃんもナロモルお兄ちゃんも好きだけど、私の前で声を荒げて喧嘩するのは、礼儀に反するよね。」

ユリとナロモルはすぐに姿勢を正した。

私の反応は予想外だったようだった。

「私のことを気にかけてくれるのは嬉しい。でも、私をあまり困らせないでほしいな。」

外で会話を全部聞いていた侍従長デイルサは、にっこり微笑んだ。

実は彼女は侍従長としてユリを見守っていた。

『皇女様は本当に面白い方ですね。』

とことん友達のようで、とことん優しくて、とことん弱そうに見えるけど、よく見るとそうでもなかった。

優しいけど、弱くはない。

本当に大変なことだったのに、イサベルはそれを何事もないかのようにやってのけた。

テイルサがコツコツとノックした。

「テイルサ侍女長です。入ってもよろしいですか?」

「はい、どうぞ。」

大陸一の感情詩人マルコが残した有名な言葉がある。

侍女長は侍女長だった。

今日も侍女長は明快な答えをくれた。

「ユリ、あなたが皇女様のためだけにデザートを作ろうとしているのは、最高のクオリティを追求しているからですよね?」

「……はい、そうです。」

一人のためのデザート。

そして多くの人のために作られるデザート。

その質が違うのは当然だというのがユリの持論だった。

「ナロモル、君はユリのこの素晴らしいビジネスアイテムをただ放っておくのがもったいないと思ってるんだろう?」

「……はい。」

「だったら、絶妙な提案が必要だね。」

デイルサが提案したのは、「限定版プレミアムデザート店」だった。

毎日ごく少人数のみ予約を受け、デザートを作るという形だった。

その代わりに価格はとても高く設定して差別化戦略をとることにした。

「わかりました。」

「了解です。」

ユリもナロモルも共に賛成した。

「じゃあ、二人とも仲直りして。」

ナロモルは落ち着いた表情で手を差し出した。

「ユリお姉ちゃんも早く握手して。」

「……」

ユリは涙ぐみながらもナロモルの手を握った。

誰も知らなかった。

この瞬間がまさに、大陸最高の製菓企業「ユリモル・コーポレーション」が誕生する瞬間だということを。

 



 

 

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