こんにちは、ちゃむです。
「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

118話ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- レイハスIF③
レイハスは目を覚まし、まぶたを開いた。
窓の外から差し込む暖かな陽光が寝室を照らしていた。
上体を起こした彼は、しばしぼんやりと座り込んでいた。
どれほど眠っていたのか記憶が曖昧だ。
建国祭からの帰途、刺客の襲撃を受け、その後、身を焼くような凶暴な熱に包まれた記憶がある。
その後は意識を失い、時折、夢を見ていた気もする。
「……身体は異常ないようだな。」
目覚まし代わりのズボンの裾をちらりと見下ろし、レイハスは切なく身を強張らせた。
さっきまで見ていた夢はあまりに鮮烈だった。
「主よ、どうか私を■■が■■して■■に■■してください……」
現実では到底口にできないような言葉を、彼女に懇願していたのだ。
そしてその夢の中での「主」は、彼の望むあらゆる懲罰を与えてくれた。
あまりにも幸せで、決して目覚めたくないと思うほどに。
だが現実は――。
下卑た欲望など到底近づけぬほど神聖な彼女の姿を思い浮かべ、レイハスはベッドから起き上がると、虚しいほどの空虚さを覚えた。
「……なんだ、これは?」
レイハスはいつもの癖で首元に手をやった。
その瞬間、彼のまつげが小さく震える。
慌ててベッドの周囲を探した。
……ない。
彼女から贈られた大切な首飾り――いや、チョーカーがない。
枕元や髪の間を何度も確認したが、どこにもなかった。
「だめだ……。」
顔色を失ったレイハスは、部屋の隅々まで探し回った。
しかし、どれだけ探しても、大事なチョーカーの姿はなかった。
襲撃のときに失ったのだろうか?
あのローブ姿の彼女の店に行って、同じものを買おうとも思った。
だが違う。
あのチョーカーは、彼女が与えてくれた「自分は彼女のものだ」と示す証。
代わりなど存在しない。
絶対に……なくしてはならない。
彼が慌ただしくローブを掴んで部屋を出ようとしたとき、不意に壁に掛けられた鏡が目に入った。
そして、そこに映る自分の白い首筋を見てしまったのだ。
「……」
その瞬間、レイハスは立ち止まった。
鏡に映る自分の姿を凝視する。ゆっくりと手を伸ばし、その首筋に触れる。
――噛み痕……?
かつて夢の中で、自分の首筋を噛んでいた彼女。
だがそれは夢の中だけのはずだった。
『なのに、なぜ首に噛み痕が……』
レイハスは信じられない思いで、何度もその痕を撫でた。
ほんの少し赤く腫れたその痕跡が、彼に戦慄と同時に妙な高揚感を抱かせたのだった。
レイハスは呟いた。
「まさか……」
鏡を覗き込んだその金色の瞳に、再び光が宿る。
蒼白だった頬に血色が戻り、その面差しに生気が満ちていった。
「ああ……」
彼は無意識に、首元を何度もなぞった。
そこにあるのはチョーカーではない。
だが、チョーカーよりも神聖で、チョーカーよりも美しいもの。
「聖女……主よ……」
掠れる唇から、震えるような歓喜の声が漏れ出した。
――夢ではない。
気づけば彼女の両手が私の頬を包み込んでいた。
その耳の先は真っ赤に染まっていた。
天気の良い昼下がり、久しぶりにカッシュや伯爵夫人と食事を共にした。
私は目の前で繰り広げられる会話劇を、黙ってやり過ごしていた。
[慈愛の神オーマンが、愛の神オディセイと共に抗議のプラカードを掲げています。]
[「アリエルには神々の視聴権を保証せよ」]
キャスは新しく入ってきた交易品だと言って、オパールのブレスレットを私に贈ってきた。
「こんな高価なもの、気が引けますわ、公爵様。」
私は、彼がくれたブレスレットケースを再びキャスに差し出した。
[知識の神ヘセドは、ここでも甘やかすようにキャスを称賛します。]
[芸術の神モンドは、ブレスレットだけ受け取ってキャスは捨てろと助言します。]
だからキャスは……友人として過ごしていた元恋人であり、同時に取引相手のような存在だった。
一時は彼と少し甘いやり取りもあったが、告白の後で彼は姿を消し、かなり後になって戻ってきた。
なぜ消えていたのかは教えてくれなかった。
信頼を失った関係は、酒に水を混ぜたように薄まっていた。
それでも彼は依然として神殿の主要な顧客であり、私の店の急きょの商談相手でもあり……友人としても悪くない人物だったので、なんとなく付き合っていた。
「サンプルだと思ってお受け取りください。」
キャスがもう一度ケースを差し出すので、私は断りきれずにそれを受け取った。
「サンプル……ですか?」
「いずれ聖女様の店で扱うこともあるかもしれませんから。」
「いわば販促用というわけですね。しかし、あまりにも高級すぎます。我が店で扱うには……」
[芸術の神モンドが『高級品に違いない』と早とちりして首を突っ込んできます。]
はい、日本語に翻訳しました。
「深く考えないでください。聖女様が受け取られないなら、神殿に寄付するつもりです。」
「そういうことなら、いただきます。ありがとうございます。」
結局、私は彼に感謝を伝え、ケースを鞄に入れるために体をひねった。
[芸術の神モンドが、あなたの高級品収集に満足しています。]
その時、足に鋭い痛みを感じて眉をひそめた。
「どこか具合が悪いのですか?」
不意を突かれた瞬間だったが、キャスが気づいたのか私に尋ねてきた。
「いえ、大したことはありません。少し前に足をひねってしまって……」
「主の処刑人」と呼ばれるキルヒールを履いたまま、レイハスと一緒にいたあの夜、右足を少し捻ってしまったのだ。
その時は大したことはなかったので治療しなかったが、今になってじわじわと痛みが出てきていた。
「少しだけ……」
そう言いかけた瞬間、キャスは席を立ち、私の方へ歩み寄ってきた。
彼は膝を曲げ、私の右足を両手でそっと支えた。
少し腫れている足首を見つめ、眉をひそめる表情が伺えた。
[慈愛の神オーマンがハンカチを差し出します。]
[愛の神オディセイはこの姿勢を気に入ります。]
[知識の神ヘセドは片方の胸を押さえます。]
[芸術の神モンドは騒ぎ立てず、沈黙を守ります。]
「侯爵様、人々が見ていますよ。それに軍を今すぐ癒すほどの傷でもありません。」
普段着のドレスにボンネットをかぶっていたので、食堂で私を気づく人はいなかった。
だが、こうして視線を逸らさずに話すとなると話は別だ。
「治癒します。」
しかし彼は気負うことなく、まるで癒やすかのように私の痛む箇所へ手を添えたとき。
「聖女様に永遠の賛美を。」
ふいに、心の奥底から湧き上がってきたのは、キャスの姿に重なって見えたレイハスの面影だった。
切実に私を求める黄金の瞳――そのことが頭をよぎった瞬間、私は反射的にキャスの肩を押しのけて立ち上がってしまった。
[知識の神ヘセドが悲しんでいます。]
「わ、私は……」
キャスが私を見上げていた。
私は彼の群青色の瞳を見て、慌てて言った。
「そろそろ失礼します。楽しかったです。」
そして鞄を手に取り、その場をすぐに立ち去った。
[芸術の神モンドは、自分の助言を実行したあなたを満足げに見つめます。]
心臓がドキドキと高鳴っていた。
さっき感じたあの感情は、一体何だったのだろうか……。
レイハスに対する罪悪感?
理由はわからないけれど、まるで他の男と会って浮気でもしたような気分だった。
「はぁ……」
なぜか神殿に入る気になれず、私は店に少し顔を出したあと、また変化街へ戻った。
太陽が中天に昇ってから、そう時間が経っていないように思えたのに、すでに空には夕焼けが広がっていた。
そして翌朝、レイハスが目を覚ましたという知らせを聞いたのだった。
「記憶……ないでしょうね。」
ディエゴの薬には、一時的に意識を覚醒させる効果があるという。
だが、その間に起こったことを覚えていない可能性が高いとも聞いていた。
「不公平だ。私だけ覚えているなんて。」
私は両手で顔を覆った。
『もちろん、レイハスが覚えていたらもっと気まずいだろうけど。』
その夜のことを思い出すと、手足の先がジンと痺れるような気持ちだった。
ダンスと呼べるような運動すらまともにできない人間が、舞台に上がってポップダンスショーをやり遂げてきたような気分というべきか。
『オーマンが見ていたら、本当に楽しんで大笑いしただろうな。』
私はその夜を思い出しかけては首を振り、その記憶を振り払った。
『デイジーにあげるケーキでも買って行かなきゃ。』
馴染みの大通りを通り抜け、私はケーキ屋へと向かった。
どうせ外で夜を過ごすわけにもいかないのだから、戻らなければならない。
ケーキ屋の前に差しかかった時、不意に違和感のある音が聞こえてきた。
「虫に食われたリンゴを売るとは、恥知らずなやつめ!」
「旦那様、何か誤解なさっているようですが、私は売る前にちゃんと形をよく確かめてから並べています。」
「ならば私が嘘をついているとでも言うのか?なんと厚かましい!」
隣を見ると、リンゴを売っている少女に、ある貴族が声を荒げていた。
だがその貴族の顔も、少女の顔も、どこか見覚えがあった。
「お前を官庁に連れて行かねばならんな。お前のような身分の者にはしっかり懲らしめが必要だ。」
「やめてください!」
貴族の子息が少女の腕を掴んで引っ張ろうとしていた。
その横で人々の舌打ちが聞こえてきた。
「ちっ、放蕩者のハンス・レイジフィルドに捕まるとはな。どうしようもない奴め。」
「貴族じゃなければ、一言言ってやるのに。まったく……。」
『ああ、あの人間……。』
私は彼に気づいて顔をしかめた。
[神々は席に着き、ぶつぶつ言いながら話を聞き始めます。]
神殿の図書館でデイジーに言い寄っていた男がいた。
それがデイジーとの最初の出会いだった。
結局、その貴族の家門はレイハスによって証拠ごとエリオムから追放された。
そしてリンゴを売っていた少女は、以前私が子犬を助けてあげたあの少年の姉だった。
「はぁ……」
私は目を細めながら、その場へ歩み寄った。
[破壊の神シエルがあなたを祝福します。]
人というのは矯正されて直るものではないというが、こうして路上でなおも愚かな行いを繰り返しているとは。
私はその無礼を断固として正すつもりであった。
苛立つ心を抑えつつ、私はハンスと少女に近づいた。
その瞬間、ハンスと目が合った。
[芸術の神モンドはオーマン像をしかめます。]
鼻が赤いハンスは私を見ると目を大きく見開いた。
近づいてくる私の姿に気づいた少女も、私の顔を見てわかったのか、両手で口を覆い驚いた表情を浮かべた。
「あなた……」
「おおっ!」
その時、ハンスが私を見て妙な声を上げた。
そして目をぎょろつかせながら私の目の前に近づいてきた。
「首都にこんな美女がいたのか?この子とどういう関係だ?」
酒臭さがぷんぷんと漂っており、完全に酔っ払っている様子だった。
私のことすら認識できていなかった。
「そうだ、この痩せ細った身分低い者よりは、お前の方がまだましだな。今日はこのハンス様と夜の散歩の相手をしてもらおうか。」
最初から、虫食いリンゴを売るような手合いではなかった。
神殿の図書館で見かけた、あの下品に女性へ言い寄っていた輩のように、何かと難癖をつけては女性と遊ぼうとする下心だったのだ。
「クズめ。」
[慈愛の神オーマニが、あなたの言葉に満足を示します。]
二度と現れないように足首を折ってしまうか、さもなくば食べ物に二度と手を伸ばせないように腕を折るか――。
冷や水を浴びせるのがよいか少し悩んでいた。
「おや、口が達者だな。私が口が達者な女とどういう関係か知っているのか?」
「せ、聖女様。」
ハンスが手を伸ばして私の腕をつかむと、リンゴを売っていた少女の顔色が青ざめた。
[知識の神ヘセドが雷を準備します。]
[慈愛の神オマンが目を鋭く見開き、罵声を吐きます。]
[死の神カイロスがハンスに対する惨烈な特製刑罰を準備します。]
その時だった。
彼の腕を何かが貫いたかと思うと、少女が悲鳴を上げた。
「きゃああっ!」
私の腕を掴んでいたその手から視線を上げると、剣先がハンスの手首を貫いていた。
「うぎゃっ!ぎゃあああああっ!!!」
[知識の神ヘセドがモンドと手を合わせ、ナイスと叫びます。]
[愛の神オディセイがレイハスの剛力を称賛し、愛を送ります。]
ハンスは狂ったように絶叫し、血を撒き散らした。
同時に剣は素早く引き抜かれた。
私は驚きに満ちた顔でその光景を見つめていた。
路地の脇を振り返った。
暗くなった路地の灯を背に、非現実的なほど真っ白な彼の制服が見えた。









