こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

191話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- あの時、私たちが家族だったら⑤
ドンッ!
そのとき出入口の外から大きな音が聞こえた。ラトゥクの視線が自然とドアの方へ向かった。
「クスクス。」
卑劣な笑い声が鼓膜をつんざいた。
少年の声だった。
ナビアの表情が青ざめた。
「ああ……!また授業に遅れたら大変だ。」
もたつきながらドアに向かって走り、悲痛に叫んだ。
「開けてください、お兄ちゃん!私、中にいるんです!」
ああ。
「お腹すいた。もう飢えるのは嫌です、お願い……。」
こいつらめ、まったく。
ドカン!
突然ドアが破れて、隅からギシギシと笑っていた木材が爆発に巻き込まれて吹き飛んだ。
「きゃああっ!」
ラトゥクは無傷のナビアを後ろからさっと抱き上げた。
「わっ!」
驚いたナビアは慌ててラトゥクの首にしがみついた。
不思議と不安ではなかった。
ぎゅっと抱きついた腕が全く揺れずしっかりしていたからだろうか?
ラトゥクの周囲がぽろぽろ崩れ、火が上がり始めた。
突然の爆発と火災で人々は悲鳴を上げながら、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
ラトゥクはナビアが恐ろしい光景を見ないようにしっかりと視界を覆い、悲鳴も、燃える匂いもすべて遮った。
「ナビア。」
ナビアの目が再び驚きで揺れた。
「私の名前をご存知ですか?」
「パパが遅れてごめんね。」
パパ……?
ナビアは予想もしなかった言葉にぽかんとした。
頭の中が空っぽになり、一瞬何も考えられなかった。
それほど衝撃だった。
パパだなんて。それはどういう意味?
『私のパパはニカン・アグニスじゃなかったの?』
ナビアは記憶の混乱を感じた。
保育園で育った記憶と、ある日現れた「ニカン」という人。
そして自分に繰り返し言っていた言葉。
「お前はアグニス家門の分家の貴族の娘だ。お前の両親は事故で亡くなった。」
そんな話だった。
でもおかしいと思った。
『私、両親なんていないのに。』
スペンサー先生はなぜ私にそんなことを言ったのだろう?
「うっ……」
頭が痛くて額を少し押さえると、ラトゥクが大きな手で額を包んでくれた。
すると頭痛が消え、熱気が感じられるほどドクドクしていた頭が落ち着いた。
まだ混乱が完全に消えたわけではなかった。
「パパと家に帰ろう。」
でも、この人が自分に言っていることは嘘ではない気がした。
自分は赤毛のアグニス一族の中で唯一の銀髪だった。
緑色の瞳の中で唯一の赤い瞳だった。
自分の父だというこの人は、髪の色は光と影の間のような暗い色で違っていたが、瞳の色だけは本当にそっくりだった。
だから信じたくなった。
「それでもいいんですか……?」
もう一人ぼっちは嫌で、怖くなりたくなかった。
いじめられるのも、差別されるのも嫌だった。
勉強が辛すぎて、少しは休みたかった。
甘くて美味しいものが食べたかった。
ウッドのように。
ビビアンのように。
震える手で彼の服の裾をぎゅっと握った。
「一緒に行きたいです。」
ラトゥクはまだ泣きやまぬ赤くなった目をしばたたいた。
毛が生えた子犬のようにあたたかくて優しい笑顔に、ナビアは胸がドキドキするのを感じた。
「そうだ、うちの娘。」
ラトゥクはナビアを胸に抱かせ、背中を優しくとんとん叩いた。
地獄絵図が広がる周囲を見回す視線は冷ややかで鋭かった。
これが無意味なことだというのは分かっている。
自分は突然過去に飛ばされ、この物質に縛られて、ここはすでに終わった世界だと分かっているが、それでもこれらをただ放っておくことはできなかった。
『何度でも切り裂き、殺し、焼き尽くしても気が晴れないやつらめ。』
ラルクは衝撃を込めて、この邸宅にいるすべての人間を最も苦痛な方法で殺した。
ラルクは娘に初めて会った日のことを思い出した。
その時もナビアは澄んだ眼差しで彼と交渉していたが、お腹がすいてグーグー鳴る音を立てた。
その裏で、こんな虐待があったとは思わなかった。
『こんな時はとにかく何か食べさせないと。』
ラルクは急いで指を鳴らし、エセルレッドの厨房へと場所を移した。
「ちょっと待ってろ。」
ラルクは厨房をかき回し、食材をサンドミキサーのように取り出してすぐに手際よく料理を作り出した。
「食べろ。」
ナビアはおどおどした表情で目の前に置かれた料理を見回した。
「……私が食べてもいいんですか?」
「全部お前のだ。」
世界に、こんなにたくさんの食べ物が全部自分のものだなんて?
ナビアは唾をゴクリと飲み込んで言った。
「いただきます。」
食べ物はどれもいい香りがしていて温かかった。
口の中で柔らかくとろけるようだった。
「おいしいです。」
どうしてこんなに素晴らしい味がするのだろう?
これまで食べてきたものは変な匂いがして硬かった。
当然味もなかった。
でも、アグニスで食べたものは新鮮な材料で作られていて、それもとてもおいしいと思っていたが、今食べているものに比べたら何でもなかった。
「生まれてから食べた中で一番おいしいです。」
ナビアが幸せそうに笑って食事をすると、ラルクの胸もまた温かく満たされた。
「もっと作ってあげるから、ゆっくり食べな。おやつも食べよう。チョコレートクッキーはどう?」
「……好きです!」
ラルクはふっと笑いながらナビアの髪を優しくなでた。
ナビアは一生懸命に食事をして、食べ終わるころにはお腹がいっぱいになってラルクをちらちら見始めた。
『この人が自分のお父さんだと言ったけど、本当にそう呼んでもいいのかな?』
まだ家の中を見てはいなかったが、周りの規模を見るだけでも、ここがアグニス邸宅ではないことはすぐにわかった。
『じゃあこの人も貴族なんだな。』
ナビアが様子を伺っていると、ラトゥクが尋ねた。
「どうした?気になることでもあるのか?」
「あ、えっと、その……お名前をお聞きしてもいいですか?」
「ラトゥク・エセルレード。」
エセルレードなら授業中に聞いたことがあった。
『エセルレードは公爵家だ!じゃあこの人がエセルレード公爵様なんだ。』
ラトゥクはナビアの表情をじっと見つめながら言った。
「それじゃあ、君の名前は何?」
「私はナビア・アグニ……」
「いや、君はナビア・エセルレッドだ。私の娘なんだから。」
「あ……」
ナビアの顔が夕焼けのように赤く染まった。少しだけ唇が音もなく震えた。
『ナビア・エセルレッド。』
それが私の名前なんだ。
ナビアは怖いほど幸せだった。
心臓が今にもパンと破裂しそうだった。
続けてラルクがチョコレートクッキーをおやつに出してくれたときは、本当にめまいがするほどだった。
ナビアが口と手にチョコレートをべっとりつけながら一生懸命おやつを食べているとき、ラトゥクはにやりと笑いながら言った。
「おやつ食べてなさい。パパはお前の夫をちょっと連れてくるから。」
「え?夫ですか?」
ラトゥクはこれ以上詳しい説明もなく指を弾いた。
パッ!
彼が到着した場所は皇城の冷宮だった。
「まったく、世の中にはゴミが多すぎるな。」
ラトゥクはまず簡単に冷宮の一部をほこりに変えて捨てるところから始めた。
「う、うわあ!な、な、何だこれは!」
中でクリードを監視していた皇后の手下は、突然建物が崩れ落ちると、まるで怪物にでもぶつかったかのように叫び声を上げた。
しかしそれも一瞬だった。
ラルクの手によって即座に排除され、それ以上騒ぐことはできなかった。
ラルクは腰をぐいっと蹴って、修正監獄に閉じ込められていたクリードを引き抜いた。
クリードは眠りから覚めて身をよじったが、ラルクの力には敵わなかった。
「クルル……!」
ラルクは自分を警戒するクリードの頭をなでて言った。
「家に帰ろう、クリード。」
「……」
「今回は前よりもっと早く見つけられるよ。君のご主人様がずっと強くなったから。」
クリードは話の意味が分からないながらも耳をそば立て、ラトゥクの言葉に集中した。
警戒心を解こうとして安心してしまうのは一瞬のことだった。
ラトゥクは記録するように口元を少し上げると、指を弾いた。
クリードが消え、アグニスが静かに崩れたその日、皇帝夫妻は干からびた遺体の姿で発見された。
ラトゥクは外の世界で戦争が起きようと、二人の子どもを連れて穏やかな日々を過ごしていた。
それでも現実世界はどうなっているのか、ナビアは今何をしているのかがずっと気になっていた。
「パパ。」
いつの間にかナビアはラルクが自分の父親であるという事実を受け入れていた。
そして彼と共に美しい思い出を積み重ねながら、愛情いっぱいに育っているところだった。
「どうしてパパって呼ぶの、うちの娘?」
ラルクは微笑んだ顔で娘を見下ろしたが、すぐに表情を引き締めた。
―こんにちは?
ナビアが腕に抱いて持ってきたウサギの人形のせいだった。
それはまさにカオスだった。
「この野郎……!」…まで言いかけたところで、ラルクはナビアに気づき、慌てて喉の奥にその言葉を押し込んだ。
「ナビア、どこでこんな不吉なものを拾ってきたんだ?」
「え?」
「ウサギが私に先に話しかけてきたんです。パパの友達だって。」
「……パパは友達いないよ。これからそういうことがあったら、まずパパに言いなさい。」
―友達が嫌なら、同盟って言うほうがいい?
「ぴた……!」
ラトゥクはまた深く息をつき、怒りを抑えた。
「一体これは何なのか、説明してもらえます?」
カオスは手に持った指輪を楽しそうにくるくる回しながら答えた。
―うちのナビアに結婚のプレゼントをあげたくて。
「良い話をする時は『うちの』じゃなくて『私の』にして。」
ーじゃあ、私のラルク?
本当に死にたいくらい恥ずかしい。
ラルクは内心ムズムズしていたが、まずはもっと急ぐことがあった。
「私の娘はどこにいる?」
話しているのを聞いてみると、この呪いは自分だけにかけられたものではなく、ナビアにも同じようにかけられていたのだった。
ーいつか君に会えるよ。
カオスの言葉にラルクは歯がゆさを覚え、無意識に眉をひそめた。
正直、自分は口下手でも、良い性格だとは思っていたが…過去に比べてますます冷たかった。
そんな自分がナビアを傷つけず、うまく接してあげられただろうか?
これだけ回帰してまた回帰して、何の意味も残らないこの人生でも、何か足りなかったのかナビアを泣かせて苦しめた。
あの子はもうこれ以上傷ついてはいけない子だった。
やきもちを焼くくらい愛されても足りないほどだった。
ラトゥクはすぐにナビアに会いに行こうと口にしかけて止まった。
過去の幻のようなものにすぎないとしても、今目の前で笑いかけてくるこの子は自分の娘なので離れがたかった。
彼が立ち止まっていると、ナビアは別れを予感したのかにっこり笑った。
心配しないで、大丈夫だと言うかのような微笑みで、子供はお別れを告げた。
「また会おうね、パパ。」
今のままで十分幸せだという欲のない態度に、ラトゥクは崩れ落ちるように座り込んでナビアを見送った。
ラルクをぎゅっと抱きしめた。
子どもは別れを理解していた。
この世界がラルクにとっては幻想のようなものだという事実さえも、すでに知っているかのような表情だった。
十歳にも満たないのに大人びた態度が胸を締め付けた。
うちのナビアは僕に似て、とびきり賢いから困るよな。
『僕に似たら性格も冷静で勝気になるはずだ。なんでカミーラみたいなバカに似て「大丈夫」なんて言うんだ?』
今もナビアは、そっとラルクの肩を軽くトントンと叩きながら、別れの名残惜しさを慰めていた。
「いってらっしゃい。」
ナビアはパッと明るい笑顔で手を振った。
ラトゥクはどうしようもなく、娘の額に愛を込めてキスし、できる限り最強の防御魔法をかけてあげた。
自分を慰めるための行動だとしても、そうせずにはいられなかった。
「パパは今こうして去るけど、僕たちは必ずまた会って家族になるってことを忘れないで。」
「もう家族になったんだよ。」
ラトゥクとナビアは再びしっかり抱き合って、つらい別れを交わした。
もう本当に行かなくてはならない時だった。
「すぐにナビアがいる場所に送って。」
―わかった。
時空が歪み、やがてラトゥクの姿は消えた。
ナビアは人間界を見渡し、入り込んできたばかりの新しい魔物の気配を鋭い目で見つめた。
つい先日まではこのあたりを拠点にしていた痕跡があった。
ここから、ナビアがかつて戦ったよりも強力な怪物たちが湧き出してきたのだ。
そして今や下級神までが攻撃を仕掛けてくるようになっていた。
「これからどうすればいいの?」
「どうしようもないよ。」
無責任で何の根拠もない答えに、ナビアは深いため息をついた。
「お父さんって本当に……」
ラルクの眉がぴくぴくと動いた。
「言葉では『お父さん』って呼ぶくせに、態度がなんでそんなに不敬なの? 私が君を産んだから?」
「正確には未来のパパですよ。それにそれが今の状況と何の関係があるんですか?」
「お前、口ごたえばっかりするじゃないか。」
ナビアはしばらく黙ってラトゥクをじっと見つめ、それから視線をそらした。
ラトゥクは眉をひそめた。
「今、睨んだだろ?」
「何も言ってません。」
「目で悪態ついたじゃないか。」
「無理やり決めつけないでください。」
「このちびめ。」
背が低いと言われるのが嫌いなナビアは、すぐに鋭い目をしてにらみ返した。
「今は体が小さくなってるだけです。元々はずっと大きいんですよ!」
「面白いな。私より大きいって?」
「……子どもっぽい。」
ナビアは関わるのが嫌そうにそっぽを向いた。
『こんな時に庭いじりでもしてる場合じゃない。』
その体は異界の怪物や神を弱らせる力を持っていた。
だから万神殿はナビアを標的にして殺そうとしていた。
「そんなことをしてたら死ぬかもしれないって言ってたでしょ。」
「じゃあどうするの? お父さんが危険なのに。」
「………」
ラトゥクは言葉に詰まって口を閉じた。
「俺が君にそんなに心配してほしいって言った?勝手に喉を詰まらせてろ。」
そんな憎たらしいことを言い返したいのに、結局声は出なかった。
怪物たちをもう少し荒々しく殲滅しただけだ。
『下級神が出現する頻度が増えたな。そろそろ中級クラスのやつらも出てくる頃だろう。』
ナビアは平気なふりをしていたが、だんだんと格上の外部の神々が直接動き始めていて、不安が募っていった。
ラトゥクはむしろ、この子が元の世界に戻ってくれた方がいいと考えていた。
そう、早く死にたいと思った。
切実に消え去りたいという絶望的な理由ではなかった。
どれほど多くの輪廻を繰り返さなければならないのかは分からないが、この子を産み育てる未来を保障されているなら、すべて乗り越えられる気がした。
未来が待ち遠しいだなんて、こんな気持ちは初めてだった。
その時、ついに格がかなり高い神獣が飛び出してきて、ラルクとナビアを襲った。
ラルクの目が裂けそうに見開かれた。
「ナビア!」
ダメだ!あの子には触れるな!
そして──
ドオオオオン!
とてつもない爆音と共に、外部の神が切り裂かれ、叫び声をあげた。
煙が晴れると、鴉の羽を一つに束ねた男の背中が見えた。
ラルクはひどく驚いた表情で男を見つめた。
黒い髪と真っ白な肌、炎のように赤い瞳の持ち主を。







