こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

45話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 緊急事態②
まず私たちは、パキラ令嬢が使った化粧品の状態を確認することにした。
「ユネットの製品です。」
ユネットの職員たちは問題の令嬢に接触を試みた。
「パキラ令嬢、目の病気を引き起こした限定版の化粧品を見せていただけますか?」
「それは…なぜですか?」
そして私が見落としていた事実があった。
そうでなくともユネットは皇室相談団と提携している企業だったのだ。
むやみに皇室の威厳を借りて、口を塞ごうとしていると誤解されたら困る。
「万が一、化粧品の成分が流通過程で変質したり、スタッフが誤って別の製品を渡してしまい、お客様にご迷惑をおかけしたのなら、その点を正確に調査するためです。」
「もし我々に非があるなら、治療費はもちろん、適切な補償もいたします。」
ユネットの対応は見事だった。
彼らは極めて慎重に、すべての行動をパキラ嬢の許可を得てから実行した。
「もしかして改ざんされたのではと疑われるかもしれませんよね。」
「もちろんです。」
「こちらです。お客様の目の前で少量取り出して、化粧品の状態を確認し、すぐにご報告いたします。」
この内容は事前にパキラ令嬢に伝えておいた。
パキラ令嬢は職員の言葉に素直に容器を取り出した。
そして彼女から問題の容器と中身を受け取り確認してみると……
化粧品が劣化していた。
もう検査するまでもなく、一目でわかった。
蓋を開けた瞬間、正常な製品とは異なる匂いがしたからだ。
『どうしてこんなことが?』
そう、一つだけ化粧品が劣化することもあり得る。
しかし、あのような形でひどく劣化することがあるだろうか?
いくら今が夏だといっても、それは当然考慮していたのに。
「化粧品が傷まないように製品容器や流通に気を使っているのに、どうして?」
ユネットの店舗で直接購入していれば起こらなかったはずの出来事だった。
スタッフは親切に化粧品の保管方法も教えてくれるから。
「パキラ嬢が保管をうまくできなかったのか?」
だからこういうことが起こったのか…。
「でも、顧客が保管を少しミスしたくらいで、傷むようには作ってないのに。」
ここで、すべてをパキラ嬢の過失としてしまえば、事態が簡単に収束するかもしれない。
化粧品が変質するほど熱い場所に保管していたという話になる。
彼女自身は、そういった前提でユネットが化粧品をうまく作れなかったと噂を広めた、ということになる。
そうなると、明らかに世論は黙っていない。
だが、そう思っただけで、実際に焦っていたかどうかは分からなかった。
まずはパキラ令嬢の話を聞いてみたかった。
何でもかんでも客のミスだと簡単には言いたくなかった。
もし企業に過失があるなら、当然それを正すべきだ。
『限定版だから少し違う仕様で作っていたせいで、ミスが起こったのか?』
仮にユネット側の落ち度だったとしても、自分が責任を取るべきだと思った。
逃げたくはなかった。
そんな覚悟で頭を下げながら、私はふと顧客から受け取った化粧品の容器に目をやった。
工芸家が手をかけて磨き上げたガラス瓶。
「容器が違うね。」
私は工芸家と今回の限定版コラボを主導した人物だった。
魔法使い出身の工芸家なので、一般の工芸家よりもガラスを少し幅広い方向性で制作することができた。
そうして誕生したガラス瓶は、簡単には真似できないもののようだった。
有名な工芸家とコラボしたということでこの香水を作ったわけで……だから大量生産はしておらず、今回の限定版というわけだ。
つまり――
「限定版のガラス容器は、こんなに粗雑に扱われていないはずですよ。」
同行はしたが、表には出なかった私は、後ろでスタッフに低い声で指示した。
「本当にユネットで買ったものか、確認してみてください。」
そして社員たちの推測を聞いたパキラ令嬢は、目を伏せた。
だが最終的には真実を口にした。
「実はユネットに行ったのは…私じゃありません。」
「……」
聞きたいことは山ほどあったが、その推測の流れには割って入れなかった。
ここに一緒に来たものの、きちんと出る幕はなかった。
もしも部長が聞いていたら困ると思って。
社員たちにどんな質問をするかだけを指示していたから。
まるで本当にパキラ令嬢に質問するのが社員たちのほうが楽だとでも?
全然違った。
『気まずい。』
すぐに質問することはできず、対応もまた中途半端だった。
正体を隠しているから、こうした点が不便だった。
最初は大丈夫だった。
ほとんどの話を予告皇太子とだけしていたからだ。
フードをかぶっているのは不便だったが……皇太子が上手に話してくれたおかげか、何とか我慢できた。
しかし、ユネットの店舗で働いているスタッフを教育しているとか、そういうときには疑わしく思われるかもしれないので、フードをかぶることができなかった。
今日も実は関係を確認するという名目で来たので、フードをかぶっているとおかしく見えるかと思って、変装して来た。
メガネやスリッパを履いたり、化粧を全く違うふうにしたり……。
王族の令嬢に会うことなどないスタッフたちならともかく、やはり貴族と関係のある人々は私を知る可能性が高いから、不安だった。
「……」
一瞬思考が途切れたとき、貴族の令嬢の高い声が私を正気に戻らせた。
「でも、信じるしかなかったんです。この限定版はリリカ・プリムローズ公爵令嬢がくれたんですよ!」
…リリカがここでなぜ出てくるの?
私は思わずその名前に呆然としてしまった。
「ユ、ユネートで買ったわけじゃないって、私が言い逃れしようとしてるんじゃないです。ただ、当然、化粧品はユネートでだけ売ってほしくて!」
「…リリカ・プリムローズ令嬢ですか?どのように受け取ったのか、正確にわかりますか?」
聞いてみると、パキラ令嬢はリリカが通う社交サークルの集まりに参加していた令嬢の一人だった。
もちろん、パキラ令嬢には相当な友情があったというわけではなかったため、彼女はリリカがくれたという事実を隠さなかった。
偽物の化粧品を使ったことについてユネットを非難したのは、自分の過失ではなく、リリカの過失だと押しつけるために必死だったからだ。
けれど…少しおかしい。
最近、社交の集まりに出席するのに成功したと聞いた。
「リリカはお母様にも会っておらず、お父様やジキセンお兄様にも頼んでいないと聞いていた。だから化粧品は手に入らなかったと思っていたのに。」
なのにリリカがユネットの化粧品の限定版をくれたって?
おかしい。
リリカは確かに化粧品の限定版を手に入れられなかったと確認されていた。
手に入れたのは、きっと一般版だろう。
限定版を頼むこともできず、リリカの母に会うこともできないように、彼女に指示もしていた。
『これは……』
偽物だ。
私ははっきりと言った。
「偽物の容器です。」
「えっ?」
「工芸家の容器はこんなに粗雑ではありません。偽物の容器なのは確実ですね。化粧品の内容物を移し替える過程で、ガラス容器の消毒がされていなかったため、化粧品が劣化したのです。」
ついに原因が見つかった。
私が、間違っていたわけではなかった。
ユネートの社員教育や化粧品製造工程……それ以外に私が気を配れなかった点だった。
場所で問題が起きたのではなかった。
偽物の化粧品であり、私の手を経た化粧品ではなかったことが問題だったのだ。
安堵のため息がもれた。
エノク皇太子の言うとおり……まずは問題を把握し、責任を取るのが正しいようだ。
「すべては、パキラ嬢に偽物の化粧品を渡した人のせいだったのね。」
同時に、頭の中にたくさんの情報がよぎった。
侍女たちや騎士たちから得た報告。
付きまとっていたリリカは社交の集まりでパキラ嬢をはじめとする人々と親しくなり、彼らに頼んでも化粧品の限定版を手に入れることができなかった、そして……
ああ、リリカが最近ある件で理解できない行動をとったことがあった。
「突然、普段通っていた化粧室を変えたのよね。」
理由だと言っても納得できるものではなかった。
でももし、リリカが倒れた理由がすべてピンときていて、自分の作品の中の人々が動けないことに気づいて、診療室を通じて何かをしようとしていたのだとしたら?
『私の推測が、ただの的外れなものではないかもしれない。』
月光を見ながら、リリカが診療室に行った日のことを思い出した。
もしかして……。
私の化粧品が原因で、すべての苦しみが彼女の過失だったとしたら。
「その時、診療室のスタッフが何をしていたか、ちゃんと調べなければならないな。」
独り言のようにつぶやいたが、不意にそんな考えがよぎった。
『私の正体……』
これまで悪女のイメージが事業に悪影響を与えるのではないかと気になって隠していたのだ。
『リリカの評価が一気に下がればいいのよ。』
私の評価が下がり、対抗馬のリリカが上昇すれば、その逆転もありえるのでは?
そうすれば、いつか私は堂々と代表として人々の前に立てるかもしれない。
パキラ嬢の証言を聞いた私たちはすぐに、貴族令嬢が口にした言葉を手がかりに宮廷へと向かった。
リリカは当然のように否定した。
「私、ユネトで買ったんですよ!」
とは言ったものの…。
「腐敗ですか?え…わかりません。」
「容器が違います。限定版特有の曲線が弱くて耐久性が落ちます。これは魔法を使う工芸家でない限り、真似るのが難しいです。」
「…私には特に違いがあるようには見えませんが?」
「何より今回被害を受けたパキラ嬢本人だけでなく、他の令嬢たちもリリカ嬢からもらったと証言しています。」
「…化粧品を買った日をどうやって正確に覚えてるんですか?」
「正確な日付でなくても大丈夫です。だいたいの日付だけでも教えてくだされば構いません。」
「……」
「販売記録と照合できますから。」
「限定版の販売数が少ないから、より希少に感じるのでは?」
社員の何気ない一言に対しても、リリカは顧客をかばうように声を荒らげた。
「どうしてユネトが粗悪品を作って、それを私のせいにしようとするのよ!」
その顔を見ると、確かに悔しそうにも見えた。
工房までやってきたユネトの社員たちを応接室の隅から静かに見守っていた私は、パキラ嬢のひと言を思い出した。
「嬢は、リリカから化粧品をもらったその日に、香りが変だと言ってたの。」
リリカがくれた化粧品に感謝していた答えと共に――
「ユネトに行って、私たちが言ったことを話してみましょう。」
「公爵夫人についてユネトの代表に会いに行きましょう。」
いくつか提案をしたが、リリカは返答を曖昧にして回避したという。
まあ、それに加えて。
『令嬢は公爵夫人がリリカを気に入らず、適当に与えたんじゃないかという推測もあったけど…。』
そんなわけがない。
母はリリカと会っていなかった。
『リリカが勝手に偽物の化粧品を作ったんだ。それで化粧品が傷んだんだ。』
リリカの過失は明らかだったが、もう少し具体的な証拠が必要だった。
執務室で一生懸命考え込んでいた私は、ある事実を思い出した。
リリカが診療室を訪れた日付はいつだったっけ?
「その控室のスタッフたちが、その日何をしてどこへ行ったのか、少し調べてみないといけないわ。」
やはり違ったのだ。
リリカがあの日ドレス以外にも何か別の物を受け取っていたという事実が明らかになった。
これで、リリカを告発する確実な証拠がそろった。
「リリカをプリムローズ嬢に告訴しなければなりません。」


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