こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

166話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 赤ちゃんになったナビア
その時、ナビアは9歳だった。
季節は真夏。
青々とした新緑の上に降り注ぐ太陽の光が、白く眩しい暑い夏の日。
その眩しい日差しの中、エセルレッド公爵邸は依然として重厚で黒い外壁に包まれ、圧倒的な威圧感を放っていた。
しかし、確実に以前とは何かが変わっていた。
以前は感じることのできなかった暖かさが、その場所から溢れ出していたのだ。
その変化の中心にいたのは、他ならぬナビアだった。
ナビアは古い木に寄りかかって、長い時間を過ごしていた。
荘厳な眼差しで正面を見つめた。
向かいには、マーガレットが真剣な表情で立っていた。
サクッ。
鋭い刃物がナビアの頭上を一気に切り落とした。
「できましたよ。」
ナビアは「ふう」と一息つき、深い息を吐きながら木から身体を離した。
すると、彼女の背後にまとわりついていた木がぎしぎしと音を立てて落ちた。
それはすべて、ナビアの成長を記録した跡。
彼女がエセルレッドに来てすぐにいろいろな事件や事故があった冬を過ごし、新しい年を迎えたとき、マーガレットがナビアの成長を記録してみようと提案したのだ。
そして今日、ナビアは二か月ぶりに新しい成長の跡を刻むことになった。
「なんてこと、こんなに大きくなったなんて!」
ナビアも木を確認してみると、なんと手のひら二枚分も成長していることに気づき、目を見開いた。
「わあ、たった二ヶ月なのにこんなに伸びたんですね!」
「ふふ、おめでとうございます、お嬢様。」
ナビアは星明かりが降り注ぐかのような澄んだ目で木をじっと見つめ、触れてみた。
「自分の身長が記録されてるなんて。」
以前は、服を仕立てる際に採寸される以外、自分の身長に興味を持ったことなど一度もなかった。
しかし、エセルレッドでは事情が違った。
ここではナビアの成長を記録するために木が特別に選ばれ、月に一度のペースで慎重に刻まれていた。
ナビアはその木を見つめながら、自分の成長を実感していた。
目の前の出来事に圧倒され、ナビアは感無量になる。
自分が本当に成長し、大人になりつつあることを実感したのだ。
それは他人から見れば何でもないことに思えるかもしれないが、彼女にとっては非常に感慨深い出来事だった。
「お父様に自慢したいです。」
「そうするべきですよ!お嬢様がどれほど成長されたか、お父様もきっと喜ばれるでしょう。」
その言葉に、ナビアは顔を明るくし、軽やかに笑った。
彼女は早くラルクに自慢したくてたまらず、心がウキウキと高鳴るのを感じながら足早に本館へ向かった。
ラルクは研究と実験にほとんどの時間を費やしていた。
彼はこの10年間、ナビアを見守りながら、エセルレッドの技術をさらに強化し、この場所を発展させるための技術開発に専念していた。
彼はいつも3階の研究室か執務室にいる。
ナビアはノックをしようとしたが、いたずらっぽい笑みを浮かべ、そのまま人気良く研究室のドアを開けて中に入った。
「お父さん!」
予期せぬ登場に驚いた表情で彼女を見た後、すぐに幸せそうに笑みを浮かべる父の顔を見るのが楽しみだった。
だが、タイミングは最悪だった。
バン!
ドアを開けると同時に大きな爆発音が響き、彼女の体は後ろへと吹き飛ばされた。
痛みを覚悟して目をぎゅっと閉じたとき、いつも自分を守ってくれる冷たい冬の香りが鼻をかすめた。
ラルクがナビアを抱きしめ、爆発から彼女を守ってくれたのだ。
彼は驚いた表情を浮かべながら急いでナビアの様子を確認した。
「ナビア!大丈夫か?まったく、俺が馬鹿だった……!」
彼はもう少しで自分の娘を傷つけてしまうところだったという事実に、顔色を失っていた。
ナビアは爆発に少し驚いたものの、全く痛みを感じていなかった。
それで彼を安心させるため、優しい笑みを浮かべながら彼の肩をポンポンと叩いた。
「私は大丈夫だよ、お父さん。」
「お前が大丈夫だなんて言うけど、信じられないよ。」
ラルクは険しい表情を浮かべながら、強く手を打った。
その時、何もなかった空中にミネルバが召喚される。
彼女は空中でふらつきながら短い悲鳴を上げた。
しばらく服を作っていたのか、手には布切れを握っていた。
ラルクは彼女を安全に地面に降ろし、穏やかに言った。
「ナビアが爆発に巻き込まれたので、すぐに様子を見てくれ。」
「えっ?爆発ですって?」
ミネルバは手に持っていた布切れを放り投げると、すぐにナビアのもとへ駆け寄り、体のあちこちを調べ始めた。
あまりにも大げさな反応にナビアは困惑していた。
「まあ、幸いにも無事だったようですね。」
「ほら見てください。それに、私が傷ついたら百倍の報復が返ってきますよ。」
ラルクはあまり納得していない表情を浮かべた。
「もし百錬が役立たずだったらどうする?」
神から授かった力なのに役立たずとは、なんとも言えない話だった。
「お父さんは本当に大丈夫なの?」
「全然平気だ。」
そう言いながらも、ラルクの腕には軽くかすり傷が見えた。
ナビアは眉間にしわを寄せて指摘した。
「ほら、ここ切れてるじゃない。」
ラルクは無表情で答えた。
「ただのかすり傷だ。」
百錬を無能だと疑うよりも、もっと話にならないような状況だった。
とても言葉にできない話だ。
ナビアは何も言わず、無表情でラルクの顔を見つめながら、そっと手を伸ばして彼の頬に触れた。
すぐに百錬はラルクの傷を癒やしてくれた。
ミネルバは、もう自分の役目が終わったとでもいうように、持っていた衣料品を手にしてそっと後ずさりした。
「じゃ、じゃあ、私はこれで失礼します。」
「うん。」
ラルクの返事にミネルバは少し驚いた。
『確かに柔らかくなったわね。』
以前なら「さっさと出ていけ」とか言いそうな場面だ。
あるいは、面倒くさいという表情で無愛想に手を振りそうなものだった。
この変化は、彼を心配してそっと見守る、小さな炎のような少女、ナビアのおかげに違いない。
ミネルバは、自分でも知らずに微笑みながら部屋を出て行った。
「本当に痛いところはもうないの?」
「百錬が治してくれただろう。」
「それでもです。」
ナビアはなおも心配そうな表情を浮かべ、ラルクをじっと見つめていた。
彼は、彼女の様子をさらに細かく観察しながら慎重に目を向けた。
『顔色が少し悪いように見える。』
ナビアの肌はもともと透き通るような白さを持っていたが、今はそれがより一層際立っているようだった。
『驚いたから?緊張したのかな?』
エセルレッドでの数ヶ月間で、ナビアは以前よりもかなり健康的になっていた。
その数ヶ月で最も体重が増えた時期を思い出したが、彼女の表情に何か違和感を感じた。
見たところ細身の体型ではあったが、それが問題の爆発とはまったく無関係であった。
『この小さな身長を見てみろ。やっぱり何か問題があるに違いない。』
ナビアは、ほんの少し伸びた自分の身長を確認して嬉しそうに、そして誇らしげにやって来たところだった。
しかし、190cmを超える屈強なラルクからすれば、それは微々たるもの。
ラルクの眉間に浮かんだ微かな皺は、消えそうにも見えなかった。
『今までは研究中に爆発が起こっても気にもしなかったけれど、今はナビアがいるから気をつけなければいけないな。』
そうだ、家の中全体に安全装置を設置しなければいけない。
徹底的に設置して、絶対に誰も傷つかないようにするために。
『まったく、なぜもっと早くこの考えを実行しなかったんだ?』
彼は自分が不完全な父親であることに対する情けない気持ちを抑えられなかった。
あまりに不甲斐なかった。
だが、今後はそんな無力な状況が再び起こることはないだろう。
もちろん彼がいる限り、どんな危険が襲ってきてもナビアが傷つくことは絶対にない。
しかし、万が一ということがあったらと考えると、彼は二度とナビアが痛みを感じる姿を見たくなかった。
本当に。絶対に。
「それで、うちの娘、どうしてパパを探してきたんだ?」
彼はナビアを抱き上げ、彼女がここに来た理由を尋ねた。
爆発の影響で散らばっていた研究室のものは、整理が進んで元の位置を取り戻しつつあった。
ナビアはソファに腰を下ろし、自分の隣に座ったラルク向かって言った。
「背を測りに来ました。」
「背?……やっぱり何か問題があるのか?」
ナビアは何のことかわからないといった表情でラルクを見上げた。
「問題ですか?」
『……何か問題があるのか?』と心の中で呟いた。
ナビアは少し困惑した顔で手を広げ、2か月前と現在の身長差を説明した。
「この2か月でこんなに伸びたんです。こんなに成長するなんて初めてです。」
「おお、成長したんだな……」とラルクは納得したように頷いた。
彼はナビアをきちんと立たせ、目の前でくるくると回らせながら冗談を言った。
「ふむ、どれどれ……」
「やめてください!」
ナビアは彼の冗談に笑い声を上げた。
ラルクはさらに慎重にナビアを見つめ、彼女の背丈が自分の脚の長さに少し近づいていることに気付いた。
「本当か?地面に落ちたどんぐりのようだったうちの娘が、いつの間にこんなに大きくなったんだ?」
ラルクの驚きはそれで終わらなかった。
「うちの娘は永遠に成長しないと思っていたのに、背が伸びてるじゃないか!」
「……」
ラルクは一度で終わるどころか、ハハと笑いながらもさらなる言葉を付け加え、ナビアの関心を引きつけた。
「冗談だよ。うちのナビア、このままだと世界で一番大きな子どもになっちゃうぞ。」
ナビアはぶっきらぼうな表情で言った。
「私、仕事に行きます。」
「え、拗ねたのか?」
ラルクはくすくす笑いながらナビアの頭をくしゃくしゃとかき混ぜた。
やはり娘をからかうのがこの世で一番楽しいことだ。
ナビアは何も言う気になれないという顔で眉間にしわを寄せ、彼の手を押しのけた。
「そうじゃないです。仕事に行くんです。」
「おお、拗ねたね。」
「はあ、相手をしていられない。」
ナビアは会話が通じない父親に時間を割く気がないと言わんばかりに、彼をちらりと睨むと研究室をぱたんと閉めて行ってしまった。
『私は拗ねてるんじゃなくて、仕事に行くんだから。』
急いでポリモーフ魔法を使い、大人の姿に変身してファミリーに出向かなくてはならなかった。
実際、工房に行ったところで特にするべきことはないだろうが……。
ナビアは部屋に戻り、新しいドレスを身に着けた。
そのドレスは少女には少し控えめすぎる印象を与えるデザインだった。
仕方がない。
これは元々、大人用に作られた服であり、現在はポリモーフ魔法の影響で小さくなっている。
この服を着てからポリモーフ魔法を使うと、窓枠の回転時計を調整することで姿を変えると同時に服のサイズも変わるようになっている。
ナビアは脱いでおいたドレスを拾い上げ、机の上に置かれた回転時計を手に取った。
ふたを開けたとき、ナビアは動きを止めた。
ガラス板にはいくつものひび割れが入っていた。
「…あぁ、爆発のせいで……。」
ナビアは回転時計を調べながら、他に異常がないか確認する。
ガラスにひびが入った以外には特に問題がなさそうだった。
「あとでパパに直してもらうようにお願いしよう。」
『今はやめとこう。』
今ラルクに時計を持っていって直してほしいと言ったら、また余計な憶測を重ねられるに決まっている。
『めんどくさい。どうせまた“私に会いたくて一部わざと壊したんじゃないか”とか、“パパがいないと生きていけない”みたいなことを言ってからかうんだろう。』
「はぁ。」
考えるだけで既に疲れてしまった。
ナビアはふたを揺らしながら振り回し、回転時計のふたを開けようとした。
ギギギ!
突然、針が逆方向にグルグルと動き始めた。
「えっ、なんでこうなるの?」
ナビアは少し驚いた表情で時計の針を見つめた。
ギギ! ギギ!
『うわっ、熱い!』
時計がまるで火に触れたように熱くなった。
ナビアはびっくりして凍りついた手を離そうとしたが、なぜか時計を握った手に力が入ったまま離せなかった。
動きは止まらなかった。
針は依然として故障したような音を立てながら逆回転を狂ったように繰り返していた。
暑い。
心臓が不安げにドキドキと高鳴る。
その時、白い光が反応しながらほのかに輝き、回転時計を覆った。
確実に何か問題が発生していることを示す証拠以外の何物でもなかった。
ナビアがそれをぐっと掴んで投げ捨てようとしたその瞬間――
パン!
部屋全体が激しく揺れた。








