こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

107話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 疑惑③
「それで、なぜここにいるんですか? 父と会うためにいらっしゃったのではないのですか?」
「すでに会ってきたところだ。ただ少し歩きたくてね。」
「では、ゆっくりお散歩なさってください。私たちはあちらへ行きますので。」
ジュディは皮肉を込めた態度でエスターを連れてその場を離れた。
エスターを連れて行こうとしたところ、公爵が急に後ろから追いかけてきてエスターの腕をつかんだ。
「ちょっと待って!」
「……?」
エスターは突然の行動に驚き、腕を引き離すこともできず、公爵を見つめた。
「もしかしてお母さんについて何か覚えていることはないのか?」
一瞬だったが、ブラウンスとエスターの目が正面で交わった。
距離が近すぎて、二人の間に言葉を挟むこともできない微妙な空気が漂った。
「ありません。」
ようやく冷静さを取り戻したエスターは、きっぱりと彼の腕を振り払った。
ジュディもじっとしてはいられず、隣で警戒するように睨みつけた。
子供のようなまっすぐな目の輝きは、黙ってはいられないという意思を表していた。
「エスターに触らないでください。」
「すまない、これは私のミスだ。」
ブラウンスは急いで釈明し、さらにいくつかの言葉を付け加えた。
こうしてジュディはエスターを連れてすぐにその場を離れた。
「あの父親にあの息子か。」
そのとき、眉を寄せながら深く考え込んでいた公爵のもとに、エビアンがゆっくりと近づいてきた。
「おや?もしかしてブラウンス公爵様ではありませんか?どうしてここに……!」
後ろに控えていた公爵の部下たちが彼を止めようとしたが、エビアンは気にせず知っているふうに話しかけた。
その様子に興味を持ったブラウンスはエビアンをじっくり見た後、無表情で言葉を発した。
「私を知っているのか?」
「もちろんです。帝国で公爵様を知らない者はいないでしょう。」
「……お前は誰だ?」
「私はテレシア領の管理者として雇われているエビアンと申します。」
偶然にも庭で休んでいたエビアンは、先ほどの出来事を木陰から全て見届けていた。
鋭敏で頭の回転が速い彼は、その場の状況が自分にとって一生に一度のチャンスだと感じていた。
ブラウンス公爵がエスターに特別な興味を示していることに気づき、自分だけが知る秘密が蘇ってきたからである。
「もしかして、私たちのお嬢様に何か感じたことはありませんか?」
何か知っているようなエビアンの言葉を聞いて、ブラウンスの目が驚きに見開かれた。
「その言葉……どういう意味だ?」
「ただ、私が少しお嬢様について知っているというだけです。」
エビアンはブラウンスの前でも怯まずに状況をコントロールしようとしていた。
「何でもいいから、すぐに話せ。」
「それはできません。私はテレシアの管理者の身です……主の情報を勝手に話すわけにはいきません。」
主導権が自分に移ったことを確信したエビアンは、内心ほくそ笑んだ。
エビアンは無表情で安心しない様子を見せながら、ただ立ち尽くしていた。
ブラウンス公爵は、エビアンが本当に率直に振る舞っているのではなく、何か別の意図を持っていると察して質問した。
「何が欲しいのだ?」
「私はただ、もっと長く旅をしていたいだけです。もし神殿に立ち寄れるなら、それが一番です。」
「……分かった。私を訪ねてこい。」
詳細な話をするにはここは不適切な場所。
エビアンに必ず訪ねるよう約束を取り付け、ブラウンス公爵の顔にも微笑みが浮かんだ。
空を覆っていた曇りがようやく少し晴れ、気分もわずかに軽くなったようだった。
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ラビエンヌの聖女任命式が神殿内部で盛大に行われた。
全員から祝福を受けたラビエンヌは、ついに十五代目聖女の座に名前を刻むこととなる。
華やかな姿で祭壇に立ったラビエンヌは、ひざまずいて女神に聖女となったことを報告した。
「おめでとうございます。これからが本当の始まりです。」
大神官クリストファーがラビエンヌの頭に聖女だけが身に着けることを許されたティアラを載せ、優しく微笑んだ。
「精一杯務めます。大神官様方も、これからどうぞご指導ください。」
ついに聖女となる全ての過程を終えたラビエンヌは、喜びを抑えきれず涙を流した。
自分の力で手にした座ではないが、一生夢見ていたその座に就けたことに感謝し、胸がいっぱいになった。
「さて、これから聖女様に最も近く仕える聖騎士たちをお選びいただきます。」
大神官クリストファーが整列して座っている聖騎士たちを指して語りかけた。
聖女のそばで仕えることは、神殿にいる聖騎士たちにとって最大の栄誉であり目標だった。
そのため、ラビエンヌが名前を呼ぶ瞬間を待つ聖騎士たちの厳格な表情には緊張の色が浮かんでいた。
「アレク、カル、デイビッド。」
ラビエンヌは、事前に司祭たちと相談して決めた三人の名前を順に呼んだ。
彼らは実力はもちろん家柄も備えており、政治的にも安定した選抜の候補だった。
名前を呼ばれた彼らは予想していたかのように微笑みながら前に進み出た。
「そして……。」
四人目の選択は未定のまま、場は一瞬静寂に包まれた。
聖女は自身が望む人をその場で選ぶことができた。
ラビエンヌは、自分の勢力を拡大するために父親と親しい家門の人間の中から選ぼうと考えていた。
しかし、聖騎士たちの顔を眺めるうちに心変わりがした。目に留まる人物がいたのだ。
「カルリッド。」
ラビエンヌの澄んだ声が響き渡ると、小さな騒然とした声が上がった。
それは予想外の人選だったからだ。
「……私ですか?」
カルリッド自身も自分が選ばれたという事実を信じられない様子で、戸惑っていた。
「大丈夫でしょうか?カルリッドはまだ経験が不足しています。」
「ええ。ただ、もう一人加わると良いと思いまして。」
やや衝動的に決めたものの、カルリッドはは神殿の中でも将来有望な存在として期待されていた。
まだ成人ではなかったため、他の成人の聖騎士たちに比べると経験が不足していたものの、潜在能力は非常に優れていた。
『正直、驚くべき選択だ。』
これまでの彼の行動を見れば、彼が一度仕えた主人に背くような人物ではないと確信できた。
毅然とした表情を浮かべたカルリッドは祭壇に進み、既に選ばれた他の三人の聖騎士たちの隣に膝をついた。
「今日、私カルリッドは女神の御前に誓います。これからの私の人生は女神様と、その代理人である聖女様にすべてを捧げます。」
女神の御前での誓い。それは神殿に仕える者たちにとって、誠実で崇高な儀式であり、その神聖さは誰もが認めるものだった。
クリスファー大司祭はあらかじめ用意されていた聖騎士の剣を、四人の選ばれた聖騎士たちに一人ずつ丁寧に渡した。
カルリッドは宝石があしらわれた剣を下ろしながら、目に涙を浮かべていた。
感情が込み上げてくる様子だった。





