こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

108話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 疑惑④
その後、いくつかの追加の儀式を経て、任命式は終了した。
祝賀会が始まる前に、ラビエンヌは聖騎士たちの中からカリードだけを別室に呼び出した。
カリードは緊張しつつも、自分を選んでくれたラビエンヌに片膝をついて感謝を述べた。
「私を選んでいただき、ありがとうございます。絶対に失望させません。」
ラビエンヌを見つめる彼の目には、純粋で情熱的な信頼が宿っていた。
「そうね。これから私に尽くしてくれればいい。」
ラビエンヌは微笑みながらカリードの肩に軽く触れた。
「それと、君だけに特別に頼みたいことがあるの。」
「おっしゃってください。」
聖騎士となって初めて任務を受けるという考えに、カリードの目は期待で輝いていた。
「君、ダイナを知っている?」
「……え?」
カリードは一瞬、自分の耳を疑った。
この場で出てくる理由がない名前だったので、当然聞き間違いかと思った。
「ダイナのことだよ。以前、二人が一緒にいるのを何度か見たんだ。」
カリードの肩から手を離したラビエンヌは、ゆっくりと彼の周囲を歩きながら明るい声で言った。
「候補生だったダイナのことを言っているのですか?」
「その通りよ。」
カリードが記憶を辿り、その名前を思い出すと、ラビエンヌは満足げに笑みを浮かべながら、歩みを止め彼に近づいた。
驚きで固まっていたカリードとラビエンヌの視線が正面で交わった。
ラビエンヌの挑発的な赤い瞳に映る自分を見たカリードは、戸惑い何を言うべきか分からなかった。
「私以外にダイナに声をかけていた人間は君だけだったから覚えている。なぜそんなことをしたんだ?」
「ただ……」
何度も助けるうちに、次第に彼女に対して気にかける気持ちが芽生えた。
それは単なる感情を超えたものにまで発展していた。
しかし、カリードはそれを言う必要はないと判断し、表向きの理由だけを述べた。
「ほかの候補生たちがダイナをよくいじめていたので、少し助けただけです。」
「やっぱり君を選んで正解だった。」
微笑を浮かべたラビエンヌは、カリードの前で立ち上がり言った。
「ダイナに会ってくるのが君の最初の任務だ。」
「それって……」
何とか立ち上がったものの、カリードは自分に下された命令を理解することができず、戸惑って問い返した。
「理由はわかりませんが……ダイナに会いに行けばいいのですか?」
「いいえ、会うだけではない。」
ラビエンヌが待っていたかのように静かに笑みを浮かべ、棚から小さなガラス瓶を取り出した。
それは指先ほどの小さなガラス瓶だった。
それをカリードの手に直接優しく渡しながら言った。
「ここにダイナの血を採取してきなさい。」
突拍子もないその指示に、ラビエンヌの唇から発せられる冷静な声が、カリードの耳を貫いた。
「血……ですか?」
カリードは「血」という言葉に反応し、渡されたガラス瓶をじっと見つめた。
初めて聞く不可解な命令に、彼の心中は混乱し続けた。
「一体何に使うんですか?」
「それは秘密だから教えられない。でも、必ず成功させなさい。すべては神殿のためのことだ。理解してくれるよね?」
視線をゆっくりと下ろすラビエンヌの表情からは、嘘を見抜くことができないほどの真剣さが漂っていた。
その真心を感じ取ったカリードは、これが本当に神殿のためになる必要な使命だと信じて、目を閉じて深く考え込んだ。
しかし、血を得る過程で友人であったダイナを傷つけることになるかもしれないという事実が、彼の心を複雑にさせた。
「……承知しました。」
「ありがとう。君が受け入れてくれると分かって、安心したよ。」
ラビエンヌは満足そうに微笑みながらカリードの手を握った。
その後、カリードが事前に知っておくべき情報を速やかに伝えた。
「ちなみに、ダイナは今テレスィア大公邸にいるよ。もう『ダイナ』ではなく、『エステル』という名前で暮らしている。」
「そこでは何か仕事をしているようですね。」
カリードは、以前会ったときには見違えるほど成長していたエステルを思い浮かべながら呟いた。
「それどころか、大公家に養子として迎えられたんだ。本当にうまくいったよ。」
「えっ、それは本当ですか?」
想像もできなかった驚きのニュースに、カリードは思わず言葉を失った。
「うん。会ってお祝いを伝えて、そして血も受け取ればいい。気をつけて行ってきてね。」
まだ何がどういうことなのか理解できないまま、カリードは授けられた聖剣とガラス瓶を手にして部屋を出た。
すると、外で待っていた大神官ルーカスが入ってきた。
彼は納得のいかない表情でカリードがいた場所を見渡しながら言った。
「カリード一人で大丈夫なんでしょうか?」
「多分そうでしょう。」
以前からエステルは無口な性格であり、知っているカリードを利用するのが一番簡単な方法だった。
さらに、忠誠心あふれるカリードなら、最初の任務を成功させるために何としても血を手に入れると信じていた。
「それで、どうなりましたか?」
「引き続き観察していますが、二人の候補者には何の反応もありません。」
それでも啓示と結びついた候補者二人を注視していましたが、兆候は見られませんでした。
「……対策を立てなければなりませんね。」
ルーカスは無言で頷きながら、箱に入れて持ってきたガラス瓶二つを取り出し、ラビエンヌに手渡しました。
「はい。そしてこれは候補者たちから採取した血液です。」
「お疲れ様です。私が確認しますので代わりに——今日はもう帰って休んでください。」
聖女命名式を行ったせいで、みんな疲れ果てていた。
どうせ明日からはラビエンヌの役目だと、ルーカスは短く答えながら部屋を出た。
一人になったラビエンヌが両手で瓶を一つ持ち上げ、静かに振り回した。
チャランという音が響き、赤い血を注意深く見つめる目が薄暗く沈んだ。
「バカみたいなセスフィア聖女のおかげだと知っている。」
セスフィアが生前、ラビエンヌを徹底的に信頼していた時期。
能力がこれ以上成長しないと憂鬱になっていたラビエンヌに、セスフィアが自分の血を少し分けてくれたのだ。
聖女の血を飲めば、一時的ではあるが能力を大幅に強化できるという事実をその時初めて知った。
「この中に聖女がいるなら……すぐにわかるはずだ。」
ラビエンヌは赤い瞳を鋭く輝かせながら、二人分の血を一つずつ丁寧に試した。
「うっ、吐きそう。」
そして顔をしかめ、まだ口の中に残っている血をすべて手元の容器に吐き出した。
セスフィアの血を飲んだときは体中に変化が感じられたが、二人の候補者の血はただ酸味を感じるだけで、何も変わらなかった。
予想していたものの、この候補者たちは決して「啓示の担い手」ではなかった。
これでエステルが聖女である可能性がより高くなった。
一応カリードを派遣したので、結果を待つことにした。
「ふふ、どうせ今や私が聖女だ。誰も私の地位を奪うことはできない。」
幸福に満ちたラビエンヌの瞳には、尽きることのない欲望が渦巻いていた。
血で染まった唇は紅く艶めいていた。






