こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は52話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
52話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- セバスチャンからの招待③
ハルバートが出て行くや否や、ローズはため息をつきながら椅子に倒れ込むように座った。
「ご主人様・・・今からでも神殿に人を送るのはどうでしょうか?」
執事がもじもじしながら意見を出す。
「神殿にはなぜ?」
「お医者さんたちは原因が分からないようで・・・もしかしたら、聖力で原因を突き止めるかもしれないじゃないですか。だから・・・」
事実、ビスエル公爵家はテルシア大公家と同様に、神殿よりは皇室側だ。
神殿と距離を置いてからかなり経ったので、助けを求めることに消極的になっている。
しかし、冷静に考えると執事の言葉が正しかった。
ローズは決心してうなずく。
「いいよ。今すぐ人を送って」
「分かりました」
命令を受けた執事が隣にいた侍女たちを連れて、部屋を抜け出した。
前に立っているジュディとエスターを見てびっくりしたが、どうせ招待された客なのでぺこりと通り過ぎていく。
すべての状況を見守っていたジュディが声を低くして囁いた。
「お気の毒だ。すごく辛そうだね」
「そうですね。そのまま行ったほうがいいと思います」
エスターもうなずいて退いた。
ところがこの時、頭を上げたセバスチャンが2人を発見する。
「え?」
セバスチャンは大きな体をよたよたさせながらドアの前に走ってきた。
「ここはどうやって知ったの?」
「赤ちゃんの泣き声が聞こえて」
「ごめん。お母さんと私が急にいなくなってびっくりしたよね」
「いいえ、ところで弟は病気なのか?」
「うん。一昨日から急に熱がぐらぐら沸いて。医者は何の病気かわからないとだけ言って、薬も効かない」
セバスチャンの声は全く元気がなかった。
弟のことを心配して涙までぽろぽろと滲んでいる。
ジュディはまだ腹を抱えて泣くジェニーをちらりと見て、セバスチャンの肩に手を置いた。
「知っていたら、日付を延ばしたのに」
「急に具合が悪くなって・・・すぐに良くなると思っていたんだ」
いくら毎日喧嘩しているとしても、セバスチャンはジュディが唯一友人の範疇に入れる人だ。
そんなセバスチャンの弟が病気だなんて、他人事とは思わなかった。
自分も妹ができた後だったので、特にそうだ。
エスターは2人の会話を聞いて、ジェニーがいる方に歩いて行く。
ゆりかごの中に横たわっているジェニーはとても小柄だった。
顔まで熱の花が広がり、全身が赤くなっている。
ところがジェニーの瞳が少し変に見えた。
瞳孔の真ん中にこぶのように黒い斑点が見えたのだ。
びっくりしたエスターは素早く走り、ゆりかごを掴む。
そして近くでジェニーを持ち上げるとこまで見た。
「・・・エカトゥ病?」
生まれて1年にならない子供にごくまれに現れる病気。
発病理由は明らかになっておらず、高熱に苦しんで瞳孔に黒い斑点ができる特徴がある。
治療法は、純度の高い祈りを通じて、聖力で救われることだけだった。
それも発病して3日以内でなければならない。
そのため、この病気にかかったことも知らずに死ぬ場合がほとんどだった。
一般人にエカトゥ病があまり知られていない理由だった。
エスターは聖女の授業を受けたときに学んだ記憶があった。
しかし、医師たちは聖力だけで治療できる病気に接することがないため、エカトゥ病についても知らないはず。
「どうしたの?」
口ーズは疲れた声で尋ねる。
「いいえ、何でもありません」
エスターは首を横に振りながらゆりかごから一歩離れた。
すでに顔まで熱の花が広がったジェニーの状態から見ると、もう時間が多くないように見える。
すでに限界点なので、もう少し遅れると治療する時期を逃して死ぬかも知れない。
(どうしよう)
自分ならすぐにでも簡単にジェニーを癒すことができる。
しかし、このように見る目が多いところで聖力を使うことはできないことだった。
「・・・え!うわぁ!!」
エスターが悩んでいる間、ジェニーが苦しいのか再びもがきながら泣き始めた。
するとローズがジェニーを手でなだめながらエスターに謝る。
「君たちを招待しておいて、こんな姿を見せて本当にすまないね」
「いいえ。私たちは大丈夫だから気にしないでください。ジェニーが心配です」
セバスチャンとわずか1歳差なのに、はるかに大人っぽく見えるエスターを見て、ローズが涙を拭う。
「理解してくれてありがとう。ああ、私の精神を見て。食事の準備が終わったか見て来なければならないようだが・・・」
ジェニーのせいで時間が経つのも忘れていた口ーズは、ばっと立ち上がる。
「すぐ戻ってくるから、ちょっとだけジェニーのそばにいてくれる?何かあったらすぐに侍女たちに知らせに来るよ」
「はい、奥様」
ローズは足をよろめきながら部屋を出た。
侍女たちもちょうど席を外して、今はエスターとジュディ、セバスチャンだけだ。
二人はまだ部屋の真ん中に立って会話をしている。
エスターは彼らをちらっと見た後、再びジェニーの方に顔を向けた。
こっそりと揺りかごの間に指を一本入れ、ジェニーの腕に触れる。
熱を計るためだったが、全身が火の玉だった。
思ったよりもっと熱い温度にびっくりして手を引く。
ところが、わあわあと泣いていたジェニーが突然ワラビのような手を動かし、エスターの指を握りしめる。
エスターはジェニーの小さな身振りに息を切らした。
ジェニーが涙ぐんだ目で自分を見つめている。
幼いことが何を知って見ているのか、ただ眺めているのかは分からないが、到底無視することができなかった。
(やってみよう。そのままにしておけば、死ぬじゃん)
幸いにも部屋の中にジュディとセバスチャン以外には他の人がいなくてバレずに治癒できるような気がした。
エスターはジェニーが彼から目を離さないように向き合いながら小さくつぶやいた。
「もう大丈夫だよ」
そして右手を伸ばすと、エスターの手の甲に自覚が現れ始めた。
その手でジェニーの頬を撫でる。
「ウエエン!ウエ・・・」
止まることを知らなかったジェニーの泣き声がその瞬間、びたりと止まった。
「あれ?ジェニー?」
ジェニーの変化に気づいたセバスチャンがゆりかごに向かって走ろうとあうえう。
ジュディはエスターが何かをしていることを直感し、セバスチャンが行かないように首をつかんだ。
「どこ行くんだ!話を終わらせてから行かないと」
「ちょっと待って。ジェニーが泣き止んだって」
その間に、エスターはゆっくりと手を上げ、ジェニーの額に手のひらを優しく当てた。
「罪のない子供を救いなさい」
エスターの祈りに従い、手のひらの下に薄く銀の光が染み込んだ。
「い、今の何?」
目を丸くしたセバスチャンが、慌ててジュディを見る。
「何が?」
「エスターの手から光が・・・!」
「何言ってるの。お前が見間違えたんだよ」
ジュディはさりげなくあたりを見回し、セバスチャンの口を塞いだ。
もう一方の手では目の前をぐるぐる回して。
「あ、ちょっと!どいて!」
弟のことだからか、セバスチャンが怖がっていたジュディまで振り切ってゆりかごの近くに来た。
すでにエスターの祈りは終わった後であり、ジェニーの血色も戻っている。
ジェニーは少し前まで激しく泣いていた子供だとは信じられないほど楽な表情だ。
「ジェニー?」
セバスチャンは当惑した表情でジェニーを見た。
顔の熱の花が完全に消え、熱も下がっている。
「・・・君がやったの?」
セバスチャンがエスターの腕をつかむと、祈るために目を閉じていたエスターがゆっくりと目を開けた。
まだ消えていない聖力の気運で、エスターの目が薄い黄金色に輝いていた。
(あり得ない)
セバスチャンは一瞬息を止めた。
悦惚と感じるほど美しい瞳だ。
しかし、目をこすってもう一度見た時は、すでにエスターの目は元の色に戻っていた。
「私は何もしていません」
「でも、急にこんなに治るなんて・・・」
「私が見た時、すでに熱が下がっていました。薬効が遅く効いたようです。治ってよかったです」
「うん。そうだよ。よかったね」
ジュディは相づちを打つ。
エスターはにっこり笑ってゆりかごから遠く離れる。
その間に騒ぎが起こった。
外で待機していた侍女たちがジェニーの泣き声が静かになったことに気づいて部屋に入ってきて、ジェニーが治ったのを見て驚いて大騒ぎしたためだ。
しばらくするとローズ夫人が部屋に急いで入ってくるのが聞こえた。
「ジェニー!」
ローズ夫人は手を震わせながらジェニーの体の隅々を観察する。
熱が下がったことを確認し、胸をなで下ろした。
「本当だ。泣き止んだ・・・熱も下がったし・・・」
エスターはローズ夫人が泣くのを見て手の甲をいじった。
「良かった」
病気ではあったが、あそこまで心配してくれる家族がいるジェニーが羨ましかった。
しかし、ジュディが横から肩をくっつけてきたため、このような感情は長続きしなかった。
首をかしげるとジュディはにやりと笑っている。
エスターのそばにも心強い兄がいた。
「よかったね」
ジュディは何か知っているかのようにいたずらっぽく微笑み,目をしかめた。
「はい、本当によかったです」
訳もなくドキッとしたエスターは知らんぷりをする。
しばらくして、一層落ち着いたローズ夫人が明るく笑ってエスターの手を握った。
「ありがとう」
「はい?私は何もしていません」
エスターは戸惑いのあまりさらに強く否定する。
「あなたがそばにいる時、ジェニーが治ったじゃないか。それだけでも本当にありがとう」
心から感謝するローズを見ながら、エスターの心が複雑になった。
感謝を受ける仕事ができるという事実にやりがいを感じた、初めて聖女候補生になった時の自分が思い浮かんだからだ。
「もうジェニーも良くなったから、食事に行ってみようか?」
「今日はそのまま帰っても大丈夫です」
「ダメよ。君たちのためにおいしいものをたくさん準備しておいたから、食べて行きなさい」
エスターは「分かった」とうなずき、ジェニーをもう一度振り返り、ローズ夫人の後を追った。
「私たちも行こう」
「・・・」
ジュディはセバスチャンに肩を組んで言ったが返事はなかった。
「おい、なんでこんなに魂が抜けたんだ?」
「そ、そんなことないよ」
しっかりしろと額を強く叩いても、セバスチャンは何かに取りつかれたようにぼうっとしていた。
ジュディが無事に回復されて良かったですね。
セバスチャンはエスターの秘密に気づいた?