こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は75話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
75話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 一時のお別れ②
ノアに会ってからしばらく時間が経った。
特に何も起こらず、何の知らせも届かなかった。
それがエスダーを不安にさせる。
焦りと不安で何度も扉を振り返るエスダーが、ようやく胸に手を当てて深呼吸をした。
「セスピア聖女様はお元気なのかな。すごく気になる。」
もう11月中旬なので、セスピアが亡くなるまでの時期は、もう5か月も残されていなかった。
以前神殿に行った際に見た聖女の体調を思い返すと、その時まで持ちこたえられる保証はなかった。
だからこそ、時間が経つにつれてエスダーの心配は増すばかりだ。
セスピアが亡くなる前に何かしたいと思っても、聖女の状態を明らかにすることはできず、幼いエスダーにできることはほとんどない。
大公の娘という身分を利用して皇室に行くことくらいが精一杯だった。
だが、今は復讐をすると決意を固めたものの、何をすればいいのか分からず、混乱するばかりだった。
「はぁ。」
溜息をつくしかないエスダーの目に、ベンベンがそっと動く姿が映った。
(最近ずっと動かなかったのに。)
最近、ベンベンは座布団の上に横たわったままでほとんど動かず、呼んでも反応がなかった。
何も食べず、まるで死んでいるかのように眠るばかりで心配していたが、そんな中、動くのを見てただじっと見守っている。
ベンベンは二度ほど体を振るわせた後、ベッドの下に潜り込んだ。
すぐに出てくると思ったが、待っても出てこなかった。
(何してるの?)
エスダーはベンベンを探すためにベッドの横にしゃがみ込み、ベッドの下を覗き込もうと体をかがめた。
その瞬間、ベンが何かを持ち出してきた。
「えっ、私の剣・・・?」
エスダーは自分が隠していたものを目にして、一瞬呆然となった。
それは、神殿から持ち帰った短剣だった。
自傷をやめた後は必要なくなり、しまい込んでいたはずのもの。
ベッドの下の奥深くに隠していたものを、どうやって見つけたのだろう。
エスダーが動揺しながら剣を手に取ろうとした瞬間、突然ベンベンが大きく口を開け、剣を丸呑みしたのだ。
剣の鞘ごと!
あっという間の出来事だった。
「・・・???」
驚いたエスダーは、呆然として口を開けたまま。
しかし、すぐに正気を取り戻すとベンベンを掴み、慌てて叫んだ。
「どうかしてるの!?今何を飲み込んだの?それ剣だよ!」
どんなに何でも食べるベンベンでも、さすがに剣は無理だ。
もし刃で傷ついたら・・・。
エスダーは焦りながら、無理やり開けたベンベンの口を覗き込んだ。
しかし、すでに飲み込まれた剣は跡形もなく消えている。
「どうしよう・・・ベンベン、大丈夫?」
エスダーは不安でたまらず、聖力を使って何とかしようと試みたが、ベンベンの体に異常な様子は見当たらなかった。
しかし、聖力で隅々まで調べても、異常な構造は発見できなかった。
もしかしてベンベンが具合を悪くするのではないかと心配していたが、傍らでじっと観察を続ける限り、そんな様子も全くなかった。
「本当に大丈夫なの?」
エスダーは申し訳なさそうな表情で苦笑いしながらベンベンを放してやった。
心配している気持ちが伝わっているのかいないのか、ベンベンはしきりにエスダーに体を擦り寄せ、じっと見つめてくるばかりだった。
「次からは変なものを食べちゃダメよ。本当に危ないんだから、ね?」
聖力は本来、人間や動物を問わず作用する力だと教えられてきた。
エスダーはひとまず人を治癒する時のように、ベンベンにも聖力を無造作に注いでみた。
「ふう、これで大丈夫だろう。」
剣が消化されるものではないと分かっていたが、原形のまま体外に出てくることを祈りながら手を離す。
ベンベンは機嫌がいいのか、満足そうに目を細め、ぐっすりと横になった自分の寝床に戻っていった。
「本当に驚いた。」
エスダーは安堵のため息をつきながらベッドに腰を下ろした。
どれだけ驚いたのか、額には汗が浮かんでいた。
緊張が解けたような気分で息を整えながら、ふとベンベンの寝床のそばに置いてあった金の大矢が目に入った。
「大矢・・・?」
それを見た瞬間、妙案が浮かんだ。
ただ見守るだけではなく、何かできるかもしれない。
エスダーは聖水を使って何らかの繋がりを試みようと考える。
エスダーはノアにあげるために作っておいた聖水の瓶を取り出した。
力がたっぷり込められていて、ちょうどよさそうに思えた。
部屋の扉が閉まっているのを確認すると、大矢を机に置き、表面がきちんと覆われるように聖水を注ぎ始めた。
「見えるといいな。」
庭での成功以来、何度か試みたが全て失敗していたため、今回も大きな期待は抱いていなかった。
エスダーは緊張しながら大矢を手に取り眺めた。
数分間じっと集中してみても何も見えてこない。
「聖所の防御がさらに強化されたのかも」とエスダーは考えた。
「どうか何かが見えますように」と願いながら額にしわを寄せていたところ、表面が少しずつ揺れ始めた。
(やった。)
大矢を握る手に力が込められた。
そしてエスダーは、一度だけ見たことのある見覚えのある部屋が目の前に浮かび上がるのを感じた。
セスピアの聖女の部屋だった。
前回に続き、また聖女の部屋に接続されたのを見ると、聖女自身がいるからこそ、接続がより簡単になったように感じられた。
「・・・動いていらっしゃる?」
前回初めて会ったときは一人で動くことすら不可能に見えたが、今は起き上がり花を手にとっていじっていた。
驚いたエスダーが顔を大矢に近づけてさらに観察していると、その瞬間、セスピアが振り返った。
エスダーは再び目が合った気分に大きく息を呑んだ。
セスピアが微笑みながら口を動かしている。
何かを言っているようだが、表面が揺れているせいで聞き取ることができなかった。
その瞬間、接続は途切れる。
エスダーは接続が切れた後も大矢から簡単に手を離せず、茫然と目を見開いていた。
「もっと健康そうに見えた。」
確かに前回会ったときよりも状態がかなり良くなったように見える。
とりあえずその事実を知っただけでも、少し安心した。