こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
今回は68話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

68話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 主君との出会い
マクシオンはそのままリンデマン領地の傭兵ギルドへ向かった。
傭兵ギルドに傭兵登録をすれば、最も簡単に身分証明書が手に入る。
特定の傭兵団に所属していなくても、傭兵ギルドで仕事を受けることは可能だった。
伯爵はすでに彼が生存しているという知らせを知ってる。
もし今マクシオンが戻れば、ルイーゼとレンシアが困難な状況に陥るだろう。
伯爵が彼を諦めさせるために追い払ったのは正しかった。
薄暗い森で過ごした温かく幸せだったあの時間に戻るべきだった。
彼は絶えずその森のことを思い出した。
そこで過ごした時間が蘇るたびに。
それでも、鼻先から消えない最初の殺人への罪悪感と血の匂いが付きまとってしまう。
「酒の匂いと血の匂いが混ざり合っているな。」
薄暗い路地で丸まった紙のように動かず横たわっていたマクシオンは、首を上げて声の出所を確認する。
そこには、乾ききったひび割れた地のような死んだ目をした男が立っていた。
白玉のような肌に対して漆黒の髪と目を持ち、典型的な南部人の外見をしていた。
北部の痕跡がそのまま見えるのは、北部でも見たことがないほど広い肩幅のせいだろうか。
「森の死体はお前が作ったものか?」
「・・・」
「久しぶりに聞いたな、若い放浪傭兵よ。到着してたった一週間で殺人事件を引き起こすとは。お前を地下監獄に連行しなければならないな。」
礼服を着ていることから、相手が警備隊の騎士であることは明らかだった。
言葉遣いから察するに、南部の貴族の出身のようだ。
マクシオンは暗く沈んだ目つきで彼を見つめる。
「どうぞ。」
「弁明や反抗するつもりはないのか?」
「そのつもりはありません。私が殺したのは事実です。」
「そうか。」
男が彼のそばにひざまずいた。
マクシオンは不審な顔つきで彼を見た。
「バグ子爵の懐から見つかったカリオド伯爵の命令書を読んだ。その内容からすると、お前が『マクシオン・デ・カリオド』のようだな。」
「・・・」
「コルトゥジャンの腹から生まれた伯爵の私生児、そうだろう?」
「すでに噂になっているのですか」
「国の中の仕事にどっぷり浸かった役人だな。」
男はマクシオンが握っている酒瓶を見た。
瓶は半分どころかほとんど中身が減っていなかった。
「酒の匂いがきついが、どれだけ飲んでまたそれを持っているのか?」
「これで最後です。」
「・・・ああ、酒が飲めないのか。」
「はい。」
「それは少し困ったな。」
人を十人も殺した殺人者と軽口をたたこうと彼の隣に座るつもりなのか。
マクシオンが疑わしげな顔で隣の男を見ると、瞬間的に冷たく光った赤い瞳と目が合った。
その顔は言葉遣いとは全く異なる雰囲気を持っていた。
「私はエリオットという。そっちは?」
「・・・マクシオンです。」
「マクシオン。もし私が君の過ちを見逃すとしたら、どうするつもりだ?」
「警備隊の騎士様ではないですか。」
「似たようなものだ。しかし、優れた人材を見抜くのも良い上司の役割だ。」
「・・・」
「では、元気で。また会おう。」
男はその場を離れて立ち上がり、去っていく。
それがエドワードとマクシオンの最初の出会いだった。
その後、マクシオンは与えられた仕事を淡々とこなし、忙しく動き回った。
仕事をしていない間は、飲むこともできない酒を飲みながら路地をさまよい、宿屋で体を洗っても、彼はいつもごみごみした場所で眠りにつく。
快適な場所で眠ろうとするたびに、彼を苦しめる悪夢のせいで眠ることができなかった。
そうして1か月という時間が過ぎたとき、エリオットという怪しい男が、ついに彼の前に現れた。
男は、自分も死んだような目をした様子で、無表情ながらも軽く冗談を飛ばしていた。
「今日も捕まえに来ないんですか?」
「観察中なんだ。」
男はマクシオンが寝ていた宿屋の窓枠に座り、飄々とした顔で彼を揺さぶりながら、鎮静剤のような物を置いて去っていく。
マクシオンは、なぜ初めて会った殺人者に彼がこんなに関心を持ち、干渉してくるのか不思議に思った。
どうすることもできなかった。
もちろんマクシオンは、放っておけばいいと軽々しく考えるような人間ではなかった。
今日も彼は薬瓶をゴミ箱に投げ捨てて外へ向かう。
「路上で寝るつもりか?」
「・・・」
「それよりいい場所がある。眠れない夜なら、一緒に夜の街を回るのもいい。デートスポットとしてぴったりの場所を教えるのも悪くないだろう。」
「私は同性愛者です。」
「私もそうだ。」
「女性だったんですか?」
「・・・無遠慮で、かなり失礼だな。どう見ても男性だろう?」
「外見だけで性別を決めつけるべきではないと思います。」
「うん、確かにそうだね。」
「それで、どこですか? おすすめの場所は。」
どうせ明日は予定がなく、昼間にすることもなかった。
路地で体を丸めて寝たところで、しっかり休めるわけでもなかった。
男はほほえみながら彼を東側の城壁へ連れて行った。
本当に騎士だというのは本当なのかと、彼の顔を見ながら考えたが、男の指示で座らされた。
東側の城壁から見える景色には、広大な森と輝く海が広がっていた。
「気に入った?」
「デートスポットとしては、あまりふさわしくないように見えますが。」
「最初は私もそう思ったが、徐々にそうでもないと感じるようになった。騎士たちはこっそり恋人を連れてきたりしたものだ。今は禁止されているけど。」
「本当に恋人になるというお話ですか。先ほどおっしゃったように、私の性的嗜好はそちらではありません。」
マクシオンの表情がわずかに険しくなったが、男は軽く笑う。
「まあ、似たようなものだな。」
城壁の上で風が吹いた。
南から吹き込む風は暖かく、柔らかだった。
リンデマン城をそのまま引き継いだこの領地は、南部と最も近い北部に位置し、唯一南部の風を楽しめる場所だった。
城壁の上をさらりと吹き抜けていく風に、男の整った黒髪が揺れた。
「マクシオン・デ・カリオード。私の騎士になれ。」
「領地の騎士を任命するには、大公の承認が必要です。私のような殺人者を推薦して、承認が下りるとでも・・・」
言葉を濁しながらマクシオンは周囲を見回した。
どれほど高位の警備隊長であっても、補佐もなくこの広い城壁で人を連れ歩けるわけがなかった。
そんな平凡な服装で城壁を歩き回るのも不自然だった。
さらに「私の」騎士だなんて。
マクシオンは男の顔に日差しが差し込むのを見る。
その透明感のある瞳は、地平線に昇る太陽のようだった。
「エドワード・エリオット・フォン・リンデマン大公。それが今の私の名前だ。」
「・・・閣下がなぜ私のような者に関心をお持ちなのかわかりません。」
「カリオード伯爵家はお前を諦めないだろう。私はお前とカリオードを自分の手に収めたいだけだ。」
「・・・」
「お前が伯爵家の庇護を受けずに比較的穏やかに生きていくためには、私の手を取るのが最善だろう。私はお前が伯爵家に戻っても、それで終わりだし、戻らなくてもそれで終わりだ。ただ、カリオード伯爵家は最終的にお前を手中に収めるだろう。しかし少なくとも伯爵が死ぬまで私のそばにいれば、奴らがお前を完全に取り込むことはできない。お前が望むものがあるなら、私が手助けできることもあるだろう。」
徹底的にマクシオンに必要な条件。
彼はカリオード伯爵の下には戻りたくなかった。
同時に、母の死に関する具体的な状況を知りたかった。
最近、若き皇太子が死んだ皇后と関係する不名誉な事件により、リンデマン大公が左遷されたという噂を耳にした。
それなら、明らかに真実を知る力があるはずだ。
「私がやるべきことを教えてください。」
「お前が私の味方になるなら、それで十分だ。そうすれば、いずれカリオードも私の味方になるだろう。もちろん、カリオードを手に入れたとしても、お前は優れた人材だから私にとって損はない。」
「私の罪を許していただけるというのは、そのためですか?」
「お前は10人以上も殺した殺人者だが、それほど悪くはないようだな。金さえ払えば、老人や子ども、障害者や病人相手にも手を貸す者が多いのだから。彼らのためになる仕事なら、ためらいなく引き受けてきた。人を殺した罪悪感に苦しんでいると言っても、それを少しも感じずに生きている人々が圧倒的に多い世界だから。」
「バグ子爵は貴族でした。どんな貴族でも、貴族を殺害することは極刑に処されると聞いています。」
「バグ子爵は人身売買や虐待、殺人を楽しんでいた人間以下の無知な存在だった。彼が苦しめた人々も罪のない者たちであり、彼は無残にもそれを殺した伯爵の部下だったのだ。当然ながら、彼は受けるべき罰を受けただけだ。」
「・・・」
「もちろん無条件に罪を許すつもりはない。殺人は罪である。だが、お前の罪は1,100人を救う価値がある。その中には私の命も含まれる。」
マクシオンの目が大きく見開かれた。
昇る太陽の光が、ついに世界を明るく照らす。
薄暗い森の中から鳥が飛び立った。
「もう一度言おう、マクシオン。私の剣となれ。」
その場に立って静かに彼を見つめていたマクシオンは、静かに膝をついた。
「閣下の命をお受けいたします。」
マクシオンはその日、まばゆいほど美しい若き大公であり、皇族に対して自身の忠誠を誓うことを決意した。
その日から彼は、エドワードと残された1,099人の命を守るために尽力する。
エドワードは危険な場所ばかりを回っていたため、人々の命を救うことは容易ではなかった。
その間に、自然と彼の悪夢も消えていった。
3年が経過した。
マクシオンがエドワードの騎士になったという知らせを聞いたカリオード伯爵は、彼らが過ごしている場所へ使者を送り続ける。
エドワードを通じて母の死の真相を知ったマクシオンは、一度「会わない」という返事を送った後、応じることはなかった。
健康を極端に気にする伯爵は領地を出ることができず、手紙や代理人を送る以外には何もできなかった。
「このままでは、私のカリオードが渡ってしまうかもしれません。」
「そうなっても構わないが、カリオード伯爵の性格上、執拗に自分の家門に縛り付けようとするだろう。特に私のそばにいるとさらに。」
エドワードの言葉により、それ以上使者を送ることはなかった。
諦めなかったが、カリオード伯爵はマクシオンを手放さなかった。
彼のしつこい執着心は、やがて帝国の教会にまで噂が広がることに。







