こんにちは、ちゃむです。
「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

85話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 別人
エドワードがルイーゼの腰を掴み、自分の体に引き寄せた。
彼は喉をわずかに傾けて口を開いた。
「俺が狂って、夜中に女性まで寝室に忍び込ませたのか? それとも暗殺者か?」
エドワードの指先がルイーゼのあごを掴み、彼女の喉を持ち上げた。
「君、俺を殺しに来たのか?」
「いいえ。ただ助けに来ただけですよ。」
「今になって支援が来たって? 誰が送ったんだ?」
「自分で来たんですよ。急に何を言ってるんですか。さっきまで私がマクシオンも連れて、自分の屋敷に向かったってはっきり話していたのに……。」
「マクシオンを連れて行った……?」
二人の視線が近い距離で交わった。
彼は鋭い目つきで周囲を確認した。
「……ここは北部ではないな。」
「完全に南部です。フェリスの近くですから。」
「フェリス?」
エドワードは理解できないという表情を浮かべ、眉を斜めにひそめた。
「あの、陛下?」
彼らの近くでオロオロしていたヘンドリックが口を開いた。
それを見たエドワードは眉間にしわを寄せた。
「ヘンドリック、一晩のうちに随分年を取ったな。三十代前半くらいに見える。」
「え? 三十代前半で合っていますよ。陛下、私の年を勘違いされましたか?目の輝きがまるで数年前のままですね。あはは……。」
ヘンドリックはぎこちなく笑った。
エドワードが周囲を見回すと、いつの間にか彼らの近くまでやってきたマクシオンを見て言った。
「俺が君の年を勘違いするはずがない。一晩のうちに年を取ったのは、まるでマクシオンも同じようだし、騎士団にも初めて見る団員が何人かいるな。」
「……。」
「総合的に考えて結論を出すなら、未来の俺が記憶を失って現在に戻ってきた状況のようだな。ヘンドリック、今年は帝国歴で何年目になる?」
「1666年です。」
「目を開けたら7年が経っていたのか。」
彼の視線は、自分の腕の中にいるルイーゼへと向かった。
「女性が騎士団の制服も着ていないのに、なぜここにいるのですか?それに、その首飾りは私が贈ったもののようですが。」
「その方は陛下の恋人です。」
「恋人?」
エドワードはルイーゼを見つめながら、口元をわずかに歪めた。
そしてすぐにくすっと笑った。
「……7年後の俺は手が早いな。恋人まで作るとは。なら、無礼な態度はとらないだろうな。俺たちには日常茶飯事のことだったんだろうし。俺があなたに敬語を使っていましたか?」
「はい。」
「そうか。」
彼は無表情のまま腕を解いた。
ルイーゼは震える顔で彼から離れた。
エドワードはヘンドリックを見ながら口を開いた。
「そう考えると奇妙だな。確かに以前、記憶を封じる魔法をかけたはずなのに、すべてがそのままだというのは。まさか、この時点以降の記憶だけがすっかり消えているということもあるし。俺の魔法が失敗するはずはないが……皇城へ戻る準備は整ったのか?」
「あ、まだです。それよりも、陛下。その……ルイーゼ嬢は……。」
ヘンドリックは困惑した表情で、ルイーゼとエドワードを交互に見た。
状況の把握が遅れているルイーゼもつられて、ヘンドリックとエドワード、そして気まずい雰囲気を察したのか、すぐ近くまで来ていたマクシオンを見た。
「エドワード様、お帰りなさいませ。」
「……帰ってきたと言えば帰ってきたな。少し遠い場所からだが。」
「遠い場所?」
マクシオンの疑問を含んだ声に、ヘンドリックが彼へ説明した。
「副団長。どうやら陛下は記憶を失われたようです。しかし、その状況が少し複雑で……。」
ヘンドリックがマクシオンに状況を説明している間、エドワードは再び視線をルイーゼに向け、じっと見つめた。
ゆっくりと手を伸ばし、優しく指先でルイーゼの髪を撫でた。
「美しい銀髪ですね。」
再び、二人の視線が静かに交わった。
「どこかで見覚えのある目だな。我々はかなり親しい関係だったようだ。こんなに馴染み深い感じがするとは。」
「……そのような関係でした。」
「寝室を共にする仲だったのですか?」
ルイーゼは驚いて顔を赤らめ、両手を素早く下ろした。
「あ、いえ!そんな関係ではなかったんですが、最近……つまり……同じベッドで寝たことはあります。」
エドワードは淡々とした表情で喉を鳴らした。
「名前はルイーゼ、ですね。」
「はい。」
「俺はルイーゼと呼んでいましたか?」
「ルイーゼさんと呼んでいました。」
「では、あなたは俺を何と呼んでいましたか?」
「エドワードと呼んでいました。」
「そうか、ルイーゼ嬢か。」
彼は不思議そうな顔で彼女を見つめた後、視線をそらした。
彼の目は、ルイーゼの腰にある銀色の剣に留まった。
そして、何かに気付いたかのように目を大きく見開いた。
「……剣士?」
「はい?」
「ラベンダー色の瞳、月光のしずくのような髪、そして女性剣士。君は、俺が知っている人物の特徴とすべて一致しているな。」
エドワードはしばらく黙り込んだ後、ルイーゼに尋ねた。
「もしかして、カバンの者か?それとも幼い頃にそこへ行ったことがあるのか?」
「その近くに住んでいました。カバンには住んでいませんでしたが、一度だけ行ったことがあります。幼い頃、そこで開かれる祭りに参加したことがありました。」
彼は驚いた表情で、両手でルイーゼの肩を掴み、ぐっと引き寄せた。
「そこで誰かを助けたことはありませんか? 黒い髪の少年です。当時は7年前……いや、今が1666年なら14年前ですね。」
記憶を探っていたルイーゼは、目を丸くして言った。
「まさか……それをどうして知っているんですか?」
「つまり、俺はついに君を見つけることに成功したということですね?」
「え? 見つけたって……私を探していたことがあるんですか?」
「はい、探していました。当時手に入れたクーフスタンの手がかりを頼りに、ルイーゼ嬢を探しにカバンとその周辺の村へ掲示を出しましたが、結局何の連絡もありませんでした。秘密裏の案件だったので慎重に動いたことを考慮しても、不思議だと思っていましたが……こうして再びお会いすることになるとは。」
エドワードは困惑した表情のルイーゼを静かに見つめ、笑った。
「なるほど、そういうことだったのですね。騎士嬢と魔法使い……なかなか相性が良さそうですね。」
「さっきから気になっていたんですが、魔法使いとはどういうことですか?」
ルイーゼが目を瞬かせると、状況を説明しようとマクシオンが素早く彼らのもとへやってきた。
「ルイーゼ嬢はご存じなかったのですね。」
「なぜ?恋人なのに。未来の俺は、恋人にすら事実を打ち明けられないほど臆病者なのか?」
「エドワード様、そういうことではありません。他に事情があって……。」
マクシオンが何か言おうとすると、エドワードは満足げな表情で彼の肩を叩いた。
「一日で適応したとはいえ、いつの間にか自然に俺の名前を呼ぶようになったんだな。
俺より年上になったお前に会うのも新鮮な気分だ。つまり、記憶封印の魔法は成功したが、何らかの原因で解除されて副作用が出た、ということか?」
「今重要なのはそれではありません。ルイーゼ嬢は、エドワード様が魔法士であることすら知らず、まだ多くのことを理解していません。これ以上極秘事項を話されるのは控えたほうがよろしいかと存じます。」
「他のこと? 何の話だ?」
エドワードは疑問を感じたようにわずかに眉をひそめ、口元を歪めながら言葉を切った。
「ああ、皇位放棄?」
「……はは。」
赤い瞳がゆっくりとルイーゼに向けられた。
視線が合うと、彼女の目が大きく見開かれた。
ヘンドリックは口をぽかんと開けたまま固まり、マクシオンは気まずそうな顔で乾いた咳をした。
「ごくり。」
全員の視線が同時に、ごくりと喉を鳴らした音が聞こえた方向へ向かった。
「ごくり。え? つまり、ごくり。今、エドワードが……。」
「皇城へ戻るつもりだ。君との約束を守るために。」
エドワードは穏やかに微笑んだ。
ルイーゼは信じられないという表情でマクシオンを見つめた。
マクシオンはすべてを諦めたような表情で、深く息を吐いた。
どうやらエドワードの言葉は真実のようだった。







