こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

222話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 一つになるために③
その頃、ラエルは重苦しい顔で黙って座り込んでいた。
「………」
この衝撃的な状況に対して、彼は一体何を考えているのだろうか?
ラエルはしばらくの間、一言も発せず微動だにしなかった。
その時、外から大きな音と共に扉が開いた。
オルンだった。
彼の手には意外なものが握られていた。
酒だった。
「一杯どうかと思いまして。」
ラエルはただ彼を見つめ、ため息をついた。
そして彼は席に着き、二人で杯を交わした。
胸が燃え上がるような強い酒だったが、つまみもなく、会話もなかった。
二人はただ黙々と酒杯を空にするだけだった。
どれだけ酒を飲んだのだろうか?
顔が赤くなったオルンが不意に言葉を発した。
「お好きなようになさってください。」
「……!」
ラエルは驚いたようにオルンを見つめた。
オルンは重い表情で再び言葉を続けた。
「陛下のお好きなように。どのような選択をなさるにしても、従います。」
ラエルは答えず、代わりにガラスの杯に酒を満たし、それを一気に飲み干した。
「オルン、一つだけ聞きたい。私はこれまで、指導者としてうまくやってきたのか?」
ラエルの問いに、オルンの顔に迷いが浮かんだ。
オルンはしばらく黙った後、頷いた。
「はい、陛下はこれまで誰よりも帝国のために尽力されてきました。」
「そうか、ありがとう。」
ラエルはしばらく黙り込み、無言で酒を飲み続けた。
やがて、酒瓶が空になり始めた。
そのとき、ラエルが口を開いた。
「出陣の準備をしろ。」
オルンの目が大きく見開かれた。
「陛下? 今おっしゃったのは?」
「もう分かっているだろう? この状況では戦争を避けることはできない。帝国の誰もが、この状況でクローアンとの和解を望むわけがない。」
オルンは口を開きかけて閉じた。
最初から独立を許すわけにはいかない状況で、このような事件が起きてしまったのだ。
戦争は避けられなかった。
しかしラエルは?
彼女に剣を向けるとして、それでも平気だというのか?
オルンはしばらくの間、皇帝の目の動きを見つめた。
ラエルのしっかりとした目の動きからは、その心の内を読み取ることができなかった。
結局、オルンは頭を下げた。
「命に従います。」
オルンが後ろに下がり、ラエルは残りの酒を杯に注ぎ、窓の外を見つめた。
西の方。
彼の視線は、彼女がいるであろうクローアン王国を向いていた。
彼は小さく口を開き、静かに言った。
「マリ、私は絶対に君を諦めない。たとえこのような状況になったとしても、関係ない。」
彼の瞳は重く揺るぎない決意に満ちていた。
「これまでの人生はすべて帝国のために生きてきたが、今回ばかりは自分の思うままに行動させてもらう。」
そう言って震える瞳で最後の決意を込め、彼は残った酒を飲み干した。
そして机に向かい、手紙を書き始めた。
その後、密かにアルモンドを呼び寄せ、その手紙を渡した。
「誰かを使い、これを秘密裏に届けさせろ。至急だ。」
「陛下、これはまさか?」
手紙を見たアルモンドの瞳が大きく見開かれた。
ラエルは鋭い目つきで彼を見据えた。
「ああ、彼女に届ける手紙だ。戦争が始まる前に彼女と会うためのものだ。」
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勢8万に達する大軍がクローアン王国との国境へ移動を開始し、その知らせはすぐにマリに伝えられた。
「結局、東帝国軍が……。」
「総勢8万の大軍だなんて……。」
王国の貴族たちは嘆息を漏らした。
以前に侵攻してきた西帝国の20万には及ばないが、それでも圧倒的な規模の軍勢だった。
未だ国家の形態が整っていないクローアン王国にとって、この大軍は対抗不可能な脅威だった。
「我が軍の五倍以上の規模ですね。」
「兵士の訓練度や装備を考慮すると、10倍、いやそれ以上の戦力差でしょう。」
貴族たちは不安そうな表情を浮かべながら意見を交わした。
そして、さらに彼らを不安にさせる事実が存在した。
「皇帝が親征すると聞いています。」
「皇帝が親征……。」
「血の雨が再びこのクローアン王国に降り注ぐのか……。」
それは過去にクローアン王国を壊滅させた、敗北知らずの天才軍略家であり、ラエルの親族であるという知らせだ。
当時、クローアンは現在とは比較にならないほど強大な戦力を有していた。
しかし、ラエルが率いた軍隊は、クローアン王国軍の半分にも満たない2万人の兵力だった。
それにもかかわらず、ラエルは天才的な軍略で王国軍を壊滅させた。
ラエルの卓越した軍事的才能は、クローアン王国との戦争だけでなく、皇族間の内戦や、今回の東方教国との戦争においても遺憾なく発揮されていた。
どんな苦境においても一度も敗北を許さなかった戦略家、それが皇帝ラエル。
この恐るべき存在が親征するという知らせが広がると、戦いを前にした空気はますます重苦しいものとなった。
皆の脳裏に、かつて王国を壊滅させたラエルの姿がよぎる。
そしてそのとき、誰かが場の雰囲気を和らげるようにこう言った。
「皆さん、弱気な発言はやめましょう。敵が何人いようと、誰が来ようと関係ありません。我々は負けません!」
「そうです。国王陛下のためにも、私たちは決して屈服しないでしょう。」
彼らは重苦しい空気を振り払い、士気を高めた。
皆の視線が、朝の席に座るマリに集まった。
「陛下、指示をお願いします。」
マリは口を開き、はっきりと命じた。
「兵力を集め、出撃の準備を整えてください。」
「承知しました!」
こうして再び王国に出撃の知らせが広がった。
しかし、以前のような暗い空気ではなかった。
絶望的な状況であることに変わりはなかったが、王国の民たちは力強く意志を燃やしていた。
「東帝国の奴らを叩き潰せ!」
「クローアン王国万歳!」
「国王陛下万歳!」
王国の民たちは士気高く叫んだ。
客観的に見れば、絶対に勝利することは不可能な戦力差であったが、それでも構わなかった。
モリナ女王が自身と共に戦うという事実だけで、王国の民たちは勇気を奮い立たせた。
「私も戦いに出る!」
「そうだ、東帝国の奴らを叩き潰せ!」
自発的に軍に志願する者も増えていった。
そして、あっという間に集まった兵力は3万人に達した。
もちろん装備も整っておらず、訓練も全く受けていない烏合の衆のような兵たちだったが、士気だけは天を突くほど高かった。
一方その頃、マリは口を閉ざしつつも、考えにふけっていた。
(本当に方法はないの?私は彼と戦うことなんてできない……)
どうやって彼に剣を向けるというのか。
それはすなわち、自ら命を捨てるのと同義だった。
(何か方法があるはず。お願い、考え出して!)
だが、良い案は浮かばなかった。
まるで立ちはだかる巨大な絶壁を前にしたように、ただ途方に暮れるばかりだった。
息苦しい思いを抱え、マリは部屋を出て王宮の庭園を歩き始めた。
庭園の誰もいない場所を歩いている時、不意に予期せぬ出来事が起こった。
「書信?」
「はい、陛下。」
それは初めて見る顔の使者だった。
「誰からの書信なの?」
「それが……秘密となっております……」
マリは少し疑わしげに書信を手に取り、中を確認した。
そしてその内容を目にした途端、驚きで顔を固まらせた。
手紙を見た瞬間、彼女の心臓がどきりと止まった。
マリへ
ここに来て以来、誰も彼女を「マリ」と呼ぶ者はいなかった。
彼女を「マリ」と呼ぶことができる人物は、今や一人しか思い当たらない。
「まさか……?」
彼女は震える視線で手紙の下部に目を移した。
そして、送り主の名前を見た瞬間、彼女の世界が止まった。
「ラン」
それは、皇帝ラエルのもう一つの名。
時計が壊れたように、マリの思考が停止した。
彼が私に手紙を?
震えなのか、期待なのか、恐怖なのか、悲しみなのか、分からない感情が胸の中で渦巻いていた。
手紙には短い文が記されていた。
僕と会ってくれるか?
「……!」
マリの瞳が揺れ動いた。
自分に会おうと言っているのか?
彼女がずっと願っていたことだ。
手紙は長い内容ではなく、簡潔に終わっていた。
会いたい、マリ。
手紙には会う場所と時間が書かれていた。
王国軍が待機する国境地帯から離れた人目のつかない森だ。
マリは言い訳を考え、密かに部隊を抜け出した。
周囲の目を欺くため、「作戦を考案するために周囲を見てくる」と言い残して。








