こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

43話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- パティシエ
ユリはイサベルの公式な侍女となり、アレナ宮に入城した。
数日が経ち、ユリが言った。
「私にも仕事をください、皇女様。」
「お姉さんは数学の勉強を頑張ればいいんじゃない?」
「でも……それは侍女の仕事とは言えませんよね?」
イサベルとユリの関係は完全な友人関係とは言えなかった。
皇女と侍女の関係だから、どうしようもなかった。
そのため、皇女であるイサベルはタメ口を使い、侍女であるユリは敬語を使った。
「私も皇女様のお役に立てる人になりたいです。」
「うーん……。」
その言葉があまりに真剣だったので、イサベルは少し考え込んだ。
「それなら、一つ頼みがあるわ。」
「何でもおっしゃってください!」
頼みがあるという言葉に、ユリはぱっと笑顔になった。
自分に与えられる仕事があるという事実が嬉しかった。
「しばらくしたら、アレナ宮にナトモラという人物が訪ねてくるはず。」
「はい!はい!」
「その人は甘いデザートが好きだと聞いてるの。だから、甘いデザートを用意しておいて。」
「わかりました!ありがとうございます!期待を裏切りません!」
そして、また数日が過ぎた。
ルルカは、ユリが何か奇妙なこと(?)をしているのを見つけた。
「ユリ、一体何をしているの?」
「砂糖を溶かしています。」
「どうして?」
「糖類は約200度くらいで加熱すると溶けて、ねばねばした性質を持つ褐色の液体に変わるんですよ。」
「そんなこと誰でも知ってるでしょ?」
「ここに炭酸水素ナトリウムを混ぜるんです。」
「えっ、何だって?」
「うーん、ベーキングソーダですよ。」
「そ、それをなんでやるの?」
「加熱した砂糖に炭酸水素ナトリウムを入れると、砂糖が分解されて果糖に変わって…… こうやって…… ここで発生した二酸化炭素が……だから、こういうお菓子はどうかって考えてみたんです。」
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しばらくして。
ユリが手作りしたお菓子を披露した。
イサベルは両膝を拳でポンと叩き、勢いよく立ち上がった。
「ま、まさか、これ、あ、あ、あ、甘いの?!」
イサベルの瞳は、世界で最も煌めく星よりも輝いていた。
最近で一番幸せな日だった。
「うん、うんうん、うーん、おいしい!甘い!甘い!!」
冗談ではなく、本当に幸せそうだった。
前世では一度も食べたことがなかったものを、ここで食べられるなんて。
両頬に手を当て、目を閉じたまま、そっと微笑んだ。
幸せな人生に間違いはなかった。
「これがこんな味なのか!」
幸福感に満たされたイサベルは、感動のあまり自分のこめかみをつねった。
「真実の味が私に降りてきたってこと? ユリ姉さん最高! 本当に大好き!」
イサベルのあまりに激しい反応に、ユリの顔が赤くなった。
まるで心臓がドキドキして、気分が良くなった。
「ま、また作ってあげますね。」
「一緒に食べよう。乳母もこっちに来て。一緒に食べよう!」
イサベルは、初めて味わうダルゴナの魅力に幸福な感嘆詞を連発した。
「超スイート、超スペシャル、めちゃくちゃベリーでスーパーデリシャス!」
これなら爆速ロケットの心も掴めるはず!
そう思った。
しかし、世の中のすべてが思い通りに進むわけではなかった。
ナルモルを見つけられないまま、6か月が過ぎてしまった。
気づけば、イサベルは7歳になっていた。
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ユリは新たな才能を開花させた。
それは彼女自身も知らなかった才能だった。
もし彼女が数学の天才ならば、デザート作りでも彼女は天才だった。
生半可な天才たちが劣等感を抱くほどの、とんでもない才能を持っていた。
過去6か月間、毎日イサベルが気に入るようなデザートは何かを考え続けていた彼女は、いつの間にか立派なパティシエになっていた。
それも、宮廷最年少のパティシエだった。
「皇女様が気に入ってくださればいいのですが……」
――カリッ
甘いフィリングが口の中で広がると、ほのかな湯気が立ち昇った。
彼女は黒曜石のような指先をそっと拭いながら、イサベルが食べるのを待つ。
続いて、黄金色に香ばしく焼き上げられたワッフルが美しい姿を見せた。
イサベルは目を大きく見開いた。
「ま、まさか、これは……!」
イサベルは今日も幸せになってしまった。
ユリはドキドキしながら、今日のデザートについて簡単に説明した。
「ワッフルパンにクルアサンの生地を入れて焼いてみました。」
イサベルの目がキラキラと輝いた。
SNSで見たことはあっても、実際に食べたことは一度もないデザートだった。
「ワッフルの形ではあるけれど、層が何層にも重なっていて、皇女様がとても気に入る食感になるように工夫してみました。」
ユリは嬉しくなった。
イサベルはデザートに対して真剣なタイプだった。
ユリが作ったパンを世界で一番おいしく、楽しそうに食べる人はイサベルだった。
そんなイサベルに新作デザートを提供できるという事実が、ユリを幸せにした。
「外はサクサクで、中はしっとり仕上げてみました。」
「ユリお姉さん、お願いがあるの。」
「何でもおっしゃってください。」
「ここに生クリームを追加してほしい。」
それを見守っていたルルカが一言口を挟んだ。
「皇女様、すでに砂糖のシロップがたっぷりかかっていますよ。」
ルルカはイサベルが甘いものをあまりにも好みすぎることが問題だと考えていた。
だから今日だけは、絶対に自制させなければと判断した。
「こんなに食べても、私はビロティアンの肉体を持っているから平気だよ。」
「……。」
「少なくとも二十歳までは、めちゃくちゃ丈夫だから心配しないで。お父様たちは猛毒を食べてもケロッとしてるんだから。」
「まあ、そうですね。」
ルルカは言葉を失ってしまった。
とはいえ、剣術を習得できなかっただけで、イサベルがビルロティアン皇族の血を引いていることは否定できない事実だった。
イサベルは真剣な表情で言った。
「動物性の生クリームじゃなきゃダメ!」
「はい。」
ユリは嬉しい気持ちで生クリームを準備した。
彼女だけのレシピで甘く仕上げた牛乳の生クリームだった。
「うーん、うーん、本当にすごくおいしい!」
「生まれて初めて、こんなにおいしいワッフルを食べたわ。」
イサベルは純粋に感動しながら、新作ワッフルを食べた。
ユリはその様子を見て、にっこりと微笑んだ。
「私はこのために生まれたのかもしれない。」
ユリが言った。
「このデザートの名前は何にしましょうか?」
「私が名前をつけてもいいの?パティシエが決めるべきじゃないの?」
「私はたった一人のためのパティシエですから。」
「へへ。」
イサベルは長く悩むことなく答えた。
「クロッフル!」
ビロティアン帝国に新しいお菓子、クロッフルが誕生した瞬間だった。
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ユリは生計のために数学に没頭していた。
彼女は数学の天才と呼ばれた。
しかし、今の彼女は生計のためではなく、本当に楽しめることを見つけた。
これは単なる天才の領域ではなかった。
天才を超えた天才。
貧しくてデザートを経験したこともなく、パティシエという職業を知ることもなかった少女は、今やパティシエの道を歩み始めた。
これはイサベルが生み出した小さな変化だ。
しかし、イサベルが引き起こした変化はユリだけにとどまらなかった。
もう一つの変化が、ナルモルにも起こっていた。
ナルモル、十九歳。
彼はビロティアンの首都のスラム街にある荒れ果てた家で寝そべり、怠惰に時を過ごしていた。
「愚かな貴族どもめ。」
しかし、3年前まで彼は夢と情熱に満ちた少年だった。
それが今では、世界で二番目に怠惰な男といっても過言ではないほどの怠け者になっていた。
「はぁ、もういいや。怠けることにしよう。」
彼は成功した事業家になりたいという夢を持っていた。
だが、その夢はロスイルド家によって無惨にも打ち砕かれた。
これこそが、イサベルが放った小さな矢。
数ヶ月前、依然として消えることのなかった情熱の炎を持つナルモルは、毎日のようにロスイルド家を訪ねた。
それはイサベルのおかげだった。
厳しい状況にもかかわらず、最善を尽くして生き抜いたイサベルの知らせに、ナルモルは深い感銘を受けた。
「諦めないで!」
だからロスイルドを何度も訪ねた。
事業に必要な資金を借りるために。
諦めずにいられる時まで。
「イサベル皇女のように、諦めずに美しい過程を作り上げるんだ。」
『冷酷な悪女が死んだら』の原作にはなかった内容だった。
イサベルに刺激を受けたナルモルは、より大きな夢と情熱を燃やした。
「探し続けなきゃ。怖がらずに進めば道が見える。私の情熱を見せてやるんだ。」
しかし、その瞬間、ロスイルドの表情が妙に不快そうだった。
ロスイルド家の金枝玉葉であるレイナの機嫌が悪かった。
それだけでなく、ビロティアン皇室がロスイルド公爵家を軽視する事件——盗賊のユリを皇女の侍女に迎えた件が発生したためだ。
この怒りの火種はあちこちに飛び火したが、その中でも最大の炎はナルモルに降りかかった。
『死ぬな、だが叩きのめして追い出せ! ここがどこだと思っている、詐欺師めが!』
ナルモルはあらゆる暴行と拷問を受けた末に、ロスイルド家から追放された。
その過程で、彼の夢と情熱は粉々に打ち砕かれた。
大きな夢を抱いていたからこそ、より高いところから突き落とされたのだ。
元々のものよりもはるかに大きな絶望となり、それはナルモルの自尊心と夢を徹底的に踏みにじった。
それでも彼を支えてくれるのは、ここで新しくできた友人だった。
彼はまだ幼く無鉄砲だったが、その友人と一緒にいると心が落ち着いた。
幼い頃に戻ったような気分も悪くなかった。
「ロケットに乗ろう。」
「またそれをぶっ飛ばすつもり?」
「へへ、今回は力を調整するよ。」
貧民街でできた新しい友人の名前はミハエル。
怪物のような体を持つ少年だ。
この少年も親がいないのか、行動が粗暴で乱暴だった。
どこかに消えたり、退屈になると突然現れたりする不思議な奴だった。
「前回も力を調整するって言ってたじゃん。でも、お前のせいで食料が足りなくなってチャールズおじさんにめちゃくちゃ怒られたでしょ。」
「次の日見たら直ってたんだよ?」
「じゃあ、チャールズおじさんがどれだけ苦労したか分かる?」
「チャールズおじさんが直したんじゃないけど?」
「じゃあ、誰が直したんだ?」
「俺が!」
「ふざけんな。」
ナルモルは床に転がってクスクスと笑った。
「名前が皇太子と同じだから、やることも天才的で当然…… え?」
彼はすでに空を飛んでいた。
ミハエルが彼を抱えて走っていたからだ。
速度があまりにも速く、まるで空を飛んでいるように感じた。
「おい、おい、おい、ちょ、ちょっと待て!」
ミハエルはぱっと笑いながら叫んだ。
「爆走ロケット! 発射!」
ミハエルは真剣な顔になった。
「行こう、空へ!」
彼らは空へと向かった。
不思議なことに、その機体はとても頑丈だった。
とても良い素材で新しく作られたようだった。








