こんにちは、ちゃむです。
「残された余命を楽しんでいただけなのに」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
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2話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- プロローグ②
母は私を見ながら申し訳なさそうに涙を流していた。
それは今日も変わらなかった。
「ママ!」
私は手を伸ばした。
「ママ。」
私は心配しないでほしいという意味で、にこっと微笑んでみせた。
しかし、母は私がそうするほど、さらに涙を流してしまった。
トントン。
私は短くてぷっくりした腕を持ち上げて、母の腕を軽く叩いてあげた。
ああ、ソーセージみたいな腕、重たいな。
「イサベル、母を慰めてくれるの?」
こくり。
言葉は話せないけれど、うなずいて全力で同意を示した。
すると母が驚いた。
「母の言葉がわかるの?」
こくり。
この合図を送るのは初めてではない。
「なう!まう、あうう、いおよ(私は言葉を理解できますよ)!」
母は驚きながらも私の乳母であるルルカに尋ねた。
「この子、本当に私の言葉を理解しているのかしら?」
「私はそう信じています。」
ルルカが声を低めて話した。
「実は誰にも話せませんでした。言葉にならない話をして、叱られたり変に思われるのが怖かったので。」
「でも……イサベルは本当に私たちの言葉を理解しているように見えるわ。」
「私は皇女様が天才だと思います。」
赤ちゃんの体はストレートな褒め言葉に敏感に反応した。
私も思わず拍手をした。
「ぎゃは!」
「ほら、見てください。褒められると喜ぶんですよ。」
母は私をしっかり抱きしめた。
「特別天才じゃなくてもいい。健康に育ってくれるだけで十分だわ。」
母はさらに涙を流す。
一度言葉を覚えると、発音が少しずつ正確になり始めた。
・
・
・
ビロティアン皇族には伝統が一つあった。
「選択式」と呼ばれるものだ
そして、それが今日行われる日
ルルカは、私が言葉を理解しているという事実を知っており、私にそっと囁いた。
「皇女様が一番欲しいものを選べばいいんですよ。」
「うん。」
「人々がどれほど驚くのか、今からとても楽しみですね。」
ルルカの目には、わずかな期待感が浮かんでいた。
その様子は、まるで熱心な保護者が優秀な子どもを誇らしく見せるようにも見える。
「宴会場の扉を開けます。」
従者たちが扉を開け、ルルカと私は宴会場に入った。
うわっ、まぶしい。
一歳の私はまだ目が弱く、眩しい光を放つシャンデリアの輝きには慣れていなかった。
少し遠くの上座には、父と母が並んで座っていた。
その後ろには父の側近であり親友でもあるビアトン卿が立っており、母の横には4人の兄たちがずらりと座っていた。
おお、神様……。
ビアトン卿や兄たちを直接目にするのは初めてだった。
ここはまさに天国のように思えた。
『この栄誉に深く感謝します。』
父から始まり、副官を経て兄たちまで。
この顔ぶれを無料で眺められるなんていいのだろうか。
そのくらい、KTXに乗って通り過ぎながら見ても美男子であることは確実だった。
世の中にこれほど絵のような人々が存在するとは……。
侍女が私を下ろしてくれた。
床の感触がふわふわしていた。
『おお、レッドカーペット!』
私の目の前に広がる赤いカーペットが敷かれていた。
赤いカーペットの両脇にはビルロティアン皇帝の騎士たちが一列にずらりと並んでいる。
彼らは剣を抜いて互いに交差させており、まるで剣でできた森のような感じだった。
おお。
素晴らしい。
厳かな雰囲気が漂っているのは、さすがビルロティアン皇帝の騎士たちだ。
『モデルなの?それとも騎士?』
この世界はとても特別な世界だった。
騎士たちがかっこいいだけでなく、付き従う侍女たちも、私が知る平均をはるかに凌駕していた。
美男美女がひしめき合う場所だった。
美の平均値が想像を超えるこの世界なら、21年間見とれていても飽きることはないだろう。
『赤いカーペットの端には剣が飾られているんだろう?』
ビルロティアンを象徴する偉大な剣『ヘイル』。
そしてその外に並ぶ十本の副剣。
『概ねビルロティアンの皇帝たちはヘイルを選んできたと言われている。』
それがビルロティアンの血統を証明するだとか、何だとか。
『まあいいわ。全部いいんだけど……』
問題は、私が今日、最初の死の危機を乗り越えなければならないということだ。
ビルロティアンには「剣林院」という機関が存在する。
ビルロティアン王国に莫大な貢献をした功臣家門の出身者たちで構成され、強大な権力を行使する機関だ。
その中にはビルロティアンの皇女を認めない強硬派も存在している。
彼らはビルロティアンの剣術を扱えない女性が「ヘイル」を手にすることを容赦しなかった。
『私がヘイルに手を触れた瞬間、暗殺者が襲ってくるシナリオよね?』
小説の中の表現によれば、『運が良くて』生き延びたと書かれていた。
紙一枚の差で剣に刺されるだなんて、何よそれ。
でも、私は小説の中のイサベルじゃない。
運が良くて生き延びたというのは、運が悪ければ死ぬという意味だ。
『絶対に死なない。』
私は絶対に死なない。
拳をギュッと握り締めてみた。
あの顔ぶれを前にして、私が無念に死ぬなんて、どうしてあり得るの?
『ミルクィス? マカロン? 肉は! トッポッキは!』
あまりにも悔しい。
私は21年を最大限楽しく過ごすつもりだ。
『変数を作らないと。』
だから、小説とは少し違う展開にしないと。
変数が多いほど、状況は変わるのだから。
まだ歩くことは無理なので、一生懸命に這って進んだ。
『変数!』
途中途中に「摩擦石」という小さな石が見えた。
踏むと小さな爆発を起こすトラップだ。
選択式に参加する赤ん坊たちは、このトラップをうまく避けて目標地点まで行かなければならなかった。
「えべべ。じじ。」
そんなものには目もくれず、ただ通り過ぎることにした。
そして私は、10本を超える剣が立てられた目標地点に到達する。
選択式では、この場所を「剣の殿堂」と呼んでいた。
父の声が聞こえてきた。
「剣を選択せよ。」
私はしばらくその場に座り、考えてみた。
『剣を掴んだ瞬間、暗殺者が飛び出してくるんだろうな。』
うん、掴まない。
「ヘイル」を掴めば暗殺者が現れる。
「ヘイル」以外の剣を掴めば、皇女としての資格を失う。
『こういう時はクリシェだよね。』
ここで「初代皇帝の剣」を掴むと、それはロマンに違いない。
もしロマンなら、当然あの冷酷で威厳のある父親を選ぶべきだ。
皇室を象徴する剣が何だかよくわからないけど!
愛らしい娘だけど恐ろしい父親を選ぶ――というクリシェを成し遂げることにした。
名分も悪くない。
父が言うには帝国一の剣だから。
「うんあ!」
しかし、体は思うように動かなかった。
いつ飛び出してくるかわからない暗殺者への恐怖が原因だった。
『暗殺者のことは一旦忘れなきゃ。』
赤ん坊の肉体は一度にひとつのことしか考えられない。
暗殺者のことを考えると怖くて動くことができなかった。
だから私は仕方なく歌を歌うしかなかった。
「こめ、すぷる、じなそよう。おう、おう、ぎおそよう。」
剣の、森を、越えて、行こう。うんぐ、うんぐ、よじ登ろう。
赤ん坊の肉体はひとつのことに集中すると、他のことをすっかり忘れてしまうのだった。
歌を歌うと恐怖を忘れることができ、ついに動くことができた。
『わぁ、階段めっちゃ高い。』
大人用に設計されたこの階段はとても高かった。
幸いなことに暗殺者は現れなかった。
「うぶ!うぶぶ!」
『私は登る、頂上に!』
幼いながらも勇気を振り絞った。
後ろ足に力を入れた。
「はっ!」
階段を一段上がった。
バタンバタン!
右足が宙に浮いた。
左手と右手に力を入れた。
グングン。
一段を登るのに成功した。
『やった!』
どうにか一段の階段を一人で登った。
『ああ、きつい。』
さて、あと21段ほど残っている。
『ちょっと休まなきゃ。』
力を使い果たしたせいか、眠気が襲ってきた。
『これちょっと……すごく……眠い……かも?』
視界がぼやけてくる。
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