残された余命を楽しんでいただけなのに【４９話】ネタバレ

皇帝との会話を終えたキムボルコルは庭園へと駆けていった。

茂みの間に身を潜めたまま、考えにふけっていた。

実のところ、キムボルコルが以前よりもはるかに高次な思考と考察ができるようになってから、すでにしばらく経っていた。

「龍？」

キムボルコルの頭上に「[?]」の表示が浮かんだ。

「龍って何？」

皇帝はキムボルコルに、もしかして皇室を補佐する「龍」なのかと尋ねた。

黒龍の後継者なのかとも尋ねたが、キムボルコルはその言葉を理解できなかった。

[何か分からない。]

[でもちょっと馴染みがある。]

何だろう。

頭の中から何かがずっともやもやと浮かんでくる気がした。

[あなたはドラゴン？]

違うよ。

「私がドラゴン？」

体から五色に輝くマナが滲み出たが、それを見た人はいなかった。

だけど突然、頭の中に何かがかすめていった。

とても恥ずかしくて、逃げ出したくなるような何か。

その強烈な感情の残滓が、無意識に残っていた。

『最終形式と破壊と透明の何とか？黒炎龍？』

聞いたこともない名前が頭の中に浮かんだ。

『アーロン？アーロンって何？食べ物？』

しかし、ハチミツの妖精キムボルコルは長く悩まなかった。

【キムボルコルはハチミツの妖精。】

【ハチミツの妖精は悩まない。】

深刻な悩みなど、ハチミツの妖精には似合わない。

ハチミツの妖精は堂々と歩きながら、イサベルの部屋へ戻っていき、尻尾を振った。

イサベルの前でだけ出す声を出して、子犬のように座った。

イサベルはそんなキムボルクルの前にしゃがみ込んで、キムボルクルのあごの下をやさしく撫でた。

ブンブンー

ボルクルはイサベルの手つきが気に入ったのか、イサベルのふとももに体をこすりつけた。

反応を見てみると、特に怒っているようには見えなかった。

「特に怒ってなかったみたい？よかった。」

ブンブンー

キムボルクルはイサベルの前でお腹を見せて横たわった。

お腹を見せて横になった後、前足でイサベルの太ももをとんとんと軽く叩いた。

「うん？なに？」

何かを要求しているようだった。

キムボルコルは露骨なハチミツの妖精だった。

［手を差し出す要求。］

［お腹をさわって。］

イサベルはくすっと笑いながら、キムボルコルのお腹を優しくこちょこちょした。

気分がいいのか、くすぐったいのか、キムボルコルは四本の足を攻撃的にばたつかせながら喜びを爆発させた。

［喜び］

ぶんぶんー

［とても喜び ♪♪］

ああ、本当にめちゃくちゃかわいい。

イサベルは片手でボルクルのお腹を撫で、もう片手で口を塞いだ。

まるで賞を受賞したかのように、イサベルは口を開いた。

「ゴホン。」

咳払いをして気持ちを整えた。

「キム・ボルクル。ちゃんと座りなさい。」

ブンブン？

[？]

その表情に、またしても口を塞ぎそうになったが、イサベルは耐えた。

かわいいのはかわいいとして、叱るべき時は叱らねばならない。

単純なときは、単純だと思わなきゃいけないから。

「これからは盗みなんか絶対にダメ。あれは間違いだよ。わかった？」

［守銭奴に喜びを。］

イサベルに喜びをあげたかったという意味だった。

「でもね、間違ったやり方で喜びを与えるのはダメ。それは嬉しくない。君がそんなやり方で私に喜びを与えようとするなら、私はまったく嬉しくないよ。わかった？」

キムボルコルの肩がしょんぼりと落ちた。

しょんぼりして、今にもしおれてしまいそうだった。

「……悪かった？」

［………］

五頭のライオンとも戦えた勇敢なキムボルクルだったが、イサベルの叱責には涙が浮かんだ。

「認めないの？キムボルクル。賢いでしょ。悪かったってわかってるよね？どうしてそんなに意地を張るの？保護者である私をそんなに恥ずかしい思いをさせたいの？」

キムボルクルの目元から涙がぽろぽろと落ちた。

かなり堪えていたのか、涙の跡がくっきり残っていた。

その姿にイサベルは心が弱くなりそうになるのをぐっとこらえた。

キムボルクルに「キムボルクル」という名前をつけたのは自分なのだから、きちんと責任をもたねばならない。

「今のボルクルには反省の色が全く見えないよ。悪いと思ってるのに、悪かったって認めない。あそこに行って、壁を見ながら手を上げて反省してきなさい。」

キムボルコルは、まるでこの世のすべてを失ったような表情を浮かべ、しおれた姿勢で力なく壁を見つめて座っていた。

クッションを抱えて席に座り、腕を上げた。

その様子を見て、イサベルは胸が痛んだ。

『私、ちょっと厳しすぎた？』

しかしイサベルは気づいていなかった。

世界で最も悲しそうに見える後ろ姿とは裏腹に、キムボルコルが薄く笑っていることを。

キムボルコルの心の中には、非常に強烈な命題が残っていた。

『かわいいのが一番怖いんだよ。』

誰に言われた言葉かは分からなかった。

でもそれは、いつの間にかキムボルコルの行動指針となっていた。

キムボルクルは、今自分の後ろ姿がイサベルにどう映っているか、すでに分かっていた。

誰にも見えない透明な怨霊を頭の上に浮かべた。

少し時間が経ってから、キムボルクルは戻ってきた。

【悪かった。】

【盗み食いはダメ。】

キムボルクルは手を差し出した。

人間並みに大きな手のひらではなかったが、どうにかして小さな手を差し出した。

[もうしないよ。]

[約束。]

「わかった。約束。」

イサベルとキムボルコルは小指を絡めた。

「正直に認めてくれてありがとう。勇気あるわね。」

イサベルがキムボルコルの頭をなでなですると、キムボルコルは「ブンブン」という音を立てながら肩を揺らした。

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同じころ、ビロティア帝国で最も有名な感情師、マルコ・ユルミエルは今日も『青魂石を研究中だった。

「ん？光が漏れてる？」

特別に発光物質を入れたわけでもなく、外部から魔力を注入したわけでもなかった。

青魂石（チョンホンソク）自らが光を放っていたのだ。

「何だ、あれはまた？」

彼の作業室の壁面に花が咲いていた。

「伝説って本当なのか？」

青魂石に献身し、愛が満ちると花が咲くという伝説があるにはあった。

ビロク・マルコは『青魂石』を作ったセバスチャンの直系の子孫だったが、それでもその伝説を完全に信じていたわけではなかった。

だが、あまりにも荒唐無稽だとして否定することもできなかった。

目の前に証拠が広がっていたのだから。

「満開まではいかないけど……」

花が数輪咲いていた。

伝説とは少し違っていた。

「でも、こんなふうにしてたら、本当にダイヤモンドが咲き乱れるんじゃない？」

お互いのために犠牲を払う絶体絶命の瞬間、ダイヤモンドが泉のように湧き上がると言われていた。

「まさか。違うよね、私ったら一体どんな突拍子もない想像をしてるの？」