こんにちは、ちゃむです。
「捨てたゴミは二度と拾いません」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

109話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 新年祭⑨
祭りを見るために集まった人波で、そこはまるで人混み地獄のようだった。
自分の足で歩くのではなく、他の人々に押されて進むような状況だ。
こんな状況で馬車に乗って通りに出るのは馬鹿げたことだったため、私は歩いて約束の場所へ向かった。
「お嬢様、ご一緒に行きましょう!」
サラが苦しそうに私の後を追ってきた。
私より小柄なサラは、人ごみをかき分けて進むのが大変そうだった。
「家にいてもいいって言ったのに。」
「だめです!危ないからお嬢様を一人にはできません!」
「自分の身は自分で守れるのに。」
「それでもダメです!」
「わかった、わかった。」
何を言っても通じなさそうなので、とりあえず諦めて引き返した。
心配してついて来たのに、冷たく帰れなんて言えるはずもない。
そんなふうに人混みに押されながら通りを歩いていたら、遠くに見覚えのあるシルエットが見えた。
「ダイアン!」
私は急いでダイアンのところへ駆け寄った。
ダイアンは少し息を弾ませながら私を見て笑った。
「ゆっくり来てもいいのに、なんでそんなに走ってきたの?」
「ダイアンが待ってるかと思って。」
一息つき、少し上がった息を整えた。
「長く待ちましたか?」
「今来たところです。でもその後ろは?」
ダイアンと目が合ったその人が、少し緊張した表情を見せた。
「は、はじめまして!私はアステル様の侍女、サラと申します!」
「顔に負けずかわいらしい名前だね。」
ダイアンの言葉にサラは顔を赤らめ、両手で顔を覆う。
そんなサラを見て、ダイアンは思わず笑ってしまった。
「はは、本当にかわいい侍女ですね。僕もそんな侍女がいたら嬉しいのに。うらやましいな、レイラ。」
「ダイアンがお連れの侍女たちも素敵じゃありませんか?」
「良いんだけど、口うるさいのが多いんだよ。」
ダイアンは腕を組んでぶつぶつと文句を言った。
「会うたびに、女は気をつけないといけないとか、そんなに胸元が開いた服を着るなとか、小言を言うんですよ?」
口ではぶつぶつ言っているのに、目は笑っていた。
心から自分の妹たちを愛しているのだ。
かといって、こういうことには正直になれないようだ。
私は内心で笑いながら、ダイアンの照れ隠しを受け止めた。
「はぁ、ずっと自分の話ばかりしてたね。ごめん。」
「大丈夫ですよ。」
「でも、お嬢様をずっと連れて歩くのって、不便じゃないですか?」
「そうですか?」
「そうですね。通りに人がいなければともかく、」
「こういうふうに人が多いときは、随行が少ないほうがいいんです。だから私は侍女を誰も連れてこなかったんですよ。」
なるほど、ダイアンは一人だったのか。
では、私もサラを戻す方が良さそうだと思い、サラに言った。
「サラ、もう戻っていいよ。」
「でも……」
駄目だときっぱり言った先ほどとは違い、サラはダイアンの様子をうかがいながら躊躇した。
ダイアンはそんなサラをじっと見つめた。
サラはダイアンの視線を避けながら、目に涙をためて唇をかんだ。
「わかりました。でも、人のいない場所には絶対に行かないでください。危ないことにも関わらないでくださいね。」
「わかった。」
「日が沈む前には帰らないといけませんよ。」
サラはしっかりと約束を取りつけたあと、家に帰っていった。
「レイラの妹も小言が多いですね。もともと妹って小言が多いものなんですか?」
「みんな心配して言ってるだけですよ。」
「うーん、そうだけど……。」
ダイアンは言葉尻を濁しながら肩をすくめた。
「まぁ、それはひとまず置いといて、遊びに行きましょう。日が沈む前に戻るなら、そろそろ出発しないといけないかも。」
「どこか行きたいところはありますか?」
「まずはお腹を満たさないと。何か食べなきゃ力が出ませんから。」
ダイアンは笑いながら私の腕を組んだ。
「私が来る途中に、良さそうな場所を見つけたんです。そこに行きましょう!」
良さそうな場所と聞いて、レストランかと思ったが、ダイアンが連れて行ったのは、路地裏に屋台が並ぶ横丁だった。
入り口からして美味しそうな匂いが漂っていた。見た目には悪くなさそうだったが、衛生的にはあまりよくなく、貴族たちはほとんど口にしない屋台料理が並んでいた。
それなのに、これを食べるなんて。
気楽と言えば気楽かもしれないが、ダイアンには似合わなかった。
彼女はまるで高級レストランでステーキとワインを楽しむような人だから。
『好奇心……?』
うん、せっかくだから祭りに来たし、好奇心で一度食べてみようとしたんだろう。
そう思ったけど、違った。
「わあ、ここの食べ物、全部おいしい!」
串焼きから揚げ物まで、ダイアンは屋台の食べ物を躊躇せずに食べていた。
「口に合う?」
不思議で尋ねたら、ダイアンは逆に私が驚いているように見えた。
「レイラはそうでもないの?」
「いえ、とてもおいしいんだけど……貴族たちはこういうの、あまり食べないのでは?」
「じゃあ、私は普通の貴族じゃないってことですね。」
串焼きを一つ一瞬で平らげたダイアンは、正体不明の果物ジュースをゴクゴク飲み干した。
「それに、レイラも普通の貴族じゃないんですね。すでに串焼きを4本も食べてましたから。」
「もともと串焼きが好きなんです。」
それに、テベサ伯爵家にいた時はこれよりもっとすごい物も食べていた。
屋台の衛生状態なんて、自分にはまったく問題ではない。
「私も同じです。」
ダイアンは空になった串を振りながら言った。
「高級レストランでお上品に食べるより、こうやって屋台の食べ物を食べるほうが好きなんです。」
なるほど。
ダイアンの外見とはあまり合わないが、サバサバした彼女の性格にはぴったりだった。
「お腹もほどよく満たされたし、そろそろ観光に行きましょう。首都では何が有名なんですか?」
「有名なものといえば……」
美術館に図書館、それからオペラハウスなどあれこれ説明すると、ダイアンは眉をひそめた。
「うーん、聞いただけでも堅苦しくてつまらなそうな場所ばっかり。せっかくお祭りなんだから、もっと面白いものはないんですか?」
「面白いって、どんなところ?」
「例えば、サーカスとか、闘技場とか。」
サーカスまでは理解できたが、闘技場とは…。
「闘技場みたいな場所は危ないですよ。」
「危なくないですよ。むしろ、あそこは警備がしっかりしてて安全なんです。」
「ダイアン……」
「はいはい、分かりましたよ。でも、闘技場みたいな場所は、うちのお上品なレイラとは合わないですよね。」
私がお上品だったのか。それでも考えが変わる気にはならなかった。
闘技場のように賭博が行われる場所は、どうしても危険だったから。
ダイアンはしばらく考えた後、手をパチンと叩いた。
「じゃあ広場に行ってみましょう。お祭りのときはだいたい広場に面白いものが集まってますから。」
それも悪くないと思い、おとなしく広場へ向かった。
広場へ行く途中の道も見どころでいっぱいだった。
露店から大道芸、音楽家まで、目と耳が楽しめた。
「レイラ、これ見て!」
すべてが楽しかったが、一番楽しかったのはダイアンと一緒にいられるという事実だった。
もともと友達と一緒に遊ぶのがこんなに楽しいことだったなんて、初めて知った。
たくさん歩いて脚が痛くなり、人に押されたりして疲れたけれど、口元から笑みは消えなかった。
何をしても楽しかった。
「一緒に行こう、ダイアン!」
広場まではそれほど遠くなかったが、あちこち見物しながら歩いていたので時間がかかった。
「ダイアン、これちょっと恥ずかしいんだけど。」
私は気まずく笑いながら、ダイアンが買ってくれた、大きくて赤いリボンがついた髪飾りをそっと触る。
ダイアンは金色に輝くリボンがついた髪飾りをつけていた。
「何が恥ずかしいの?お祭りの時はみんなつけてるよ?」
「それは子どもだからでしょ……」
「うちの子、本当にかわいい。」
「本当に?ありがとう。」
子どもがつけるものだと言おうとしたとき、それに似た赤いリボンのヘアバンドをつけた女性がちょうど横を通り過ぎた。
「子どもって何ですか?」
ダイアンが得意げに笑いながら尋ねた。言葉に詰まった私はため息をついて赤いリボンを見つめた。
「本当に、つけなきゃダメですか?」
「うん。友達としてお願いしてるの。」
「……わかりました。」
友達としてのお願いと言われたら、私は断れずにヘアバンドをつけた。
お店の窓に映った自分の姿が見えたが、とても正視する勇気はなかった。
「じゃあ、行こう!」
ダイアンはとても満足げに笑いながら私の腕を引いた。
「こんにちは。」
そうして広場に到着したとたん、きちんとした身なりの男性たちが近づいて声をかけてきた。
「お二人で来られたんですか?」
なんの状況だろう。
「ええ、そうですけど?」
戸惑う私とは対照的に、ダイアンは落ち着いて応対した。
貴族であることを隠すためにわざとそうしているのかもしれない。
「私たちも二人で来たんです。見たところ外国から来たみたいですね。一緒に遊びましょう。首都を案内してあげますよ。」
ああ、これが噂に聞いていたナンパってやつか。こんなことをされるのは初めてだった。
不思議だったが、それだけだ。
この人たちと遊ぶなんて考えも……。
「そうですね。」
……じゃないのに、「そうですね」って!
「ちょ、ダイアン!」
私は慌ててダイアンを呼んだ。
「どういう意味ですか!」
「どうして?嫌なんですか?」
「もちろん……!」
嫌だと言おうとしたが、男たちが目の前にいることを思い出して口をつぐんだ。
どれだけ嫌いでも、相手が目の前にいるのにそう言うのは礼儀に反していた。
「どうしましょう? 私の友達が嫌がっているんですけど。」
「ちょっと、ダイアン。」
そんなふうに言っちゃダメでしょ!さっきよりもさらに慌てて呼び止めると、ダイアンは扇子で口元を隠して笑った。
「どうしてですか?急に気が変わったんですか?」
「そうじゃなくて……。」
これをどう説明すればいいのか。
素早く頭を巡らせたが、出てきた答えは一つだけだった。
「申し訳ありません。」
無礼を詫びて、急いで逃げた。
ダイアンが耐えていたら大変だったかもしれないが、幸い素直についてきた。









