こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

105話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- デビナ・サーファス
ベクスリー伯爵家の星であり、完璧な王妃になるために生まれた女性。
デビナ・サーファス。
ベクスリー伯爵の長女だった彼女は、誕生と同時に家門の宿命を背負わされた。
将来王妃となるべき子だと。
伯爵夫妻は、彼女を王妃にするためにあらゆる犠牲を払ってきた。
そしてそれは、デビナ自身も同じだった。
彼女は幼少期から、王妃として求められる教養と知識を徹底的に身につける必要があった。
勉強が嫌だと泣き叫んでしまった日でも、デビナは結局叱られて尻を叩かれた後に、冷静さを取り戻して取り組むことを余儀なくされた。
同時に、王妃という地位にふさわしい品位と立ち居振る舞いを身につける努力も必要だった。
時には、伯爵夫人がデビナの背中に棒を立てて「正しい姿勢」を強要しながら練習させることもあった。
背筋を真っ直ぐにするためだ。
さらに、背中に板を縛りつけたまま長時間立つ訓練を課されたことさえあった。
こうした壮絶な努力の結果だろうか?
天さえも彼女に味方しているかのように、デビナは特別な存在となった。
それにもかかわらず、デビナがいくら尽力しても、王室の跡継ぎの婚約者という地位は、先王の死後、侯爵家の子息に奪われ、結局その地位を得ることは叶わなかった。
さらに皮肉なことに、その子息も消息を絶ってしまうのだった。
その結果、デビナはすぐにセシリア王国の王妃の地位を確保することができた。
しかしその後も彼女は気を緩めることなく、いつ失われるかわからない権力の座にしがみつき、警戒を怠らなかった。
そして、先王が亡くなり帰還された後の王宮で、今や大王妃となったアメルダに向けて微笑みを見せるしかなかった。
どう見ても、マキシミリアンに王としての未来を期待することはできないように思えたからだ。
彼女自身、これが道徳的に堕落した行いだとわかっていた。
それでも、彼女は王妃にならなければならなかった。
それは家門の栄光を取り戻すために。
いや、幼少期から苦しんできた辛酸の代償を得るためにも。
彼女が破談となった婚約者の弟と結婚したことが、どれほど恥ずかしいことであるかは理解していた。
しかし、それがどんなに気まずいことであっても、そんな噂話は時間が経てばすぐに忘れ去られるものだった。
そして時間は流れ、ついにその瞬間がやってきた。
状況は彼女の計算通りに進んでいた。
彼女は王妃となり、もはや噂話も過去のものとなっていた。
だからこそ、今の彼女には、常にそうであったはずの王妃の姿が備わっていなければならなかったのだ。
誰にも干渉されない自由を享受する高貴な女性。
しかし、実情は少し異なっていた。
権力を手放そうとしない大王妃と、彼女を監視する夫の間で、彼女は名前だけの王妃の地位をどうにか保っているにすぎなかった。
彼女が持つ「決定権」といえば、せいぜい数件の奨学事業や地域の慈善事業に関する業務程度のもの。
今日の午前中は、彼女が担当している首都園で、使用人たちと試験生の代表が訪問する予定の日だった。
奨学生を選抜し、奨学金の支給を約束する書類を作成するという簡単な作業だった。
その関連の会話をしている間、彼女は試験生代表であるエビントンが通り過ぎざまに急ぎ足で口にした名前を耳にした。
クラリス。
その名前を彼女が忘れたことは一度もない。
誰も知るはずのない、亡国の王女の名前だったからだ。
「グレジェカイアの羊のことを言っているの?」
慎重な態度で投げかけられた質問に、エビントンはそうだと答えながら、少し戸惑っている様子だった。
罪に関わる話題にはあまり深入りしないほうがいいと思ったのだろうか。
それとも、ノアがその羊を気に入っていて、軽率に免責を求める可能性があると思ったのか。
あるいは、王室の恩恵を知らないなら、こういう形で手を差し伸べるべきではないと考えたのか。
その子供が気に入らないと返答する彼に、デビナはなぜか強い共感を覚えて、つい咳払いでごまかした。
近づきながら微笑みを浮かべつつ我慢していたが、結局、その子供は9歳で死ぬ運命だった。
それは、マクシミリアンのためでもあるのだ。
彼女は数ヶ月前に、第三城壁で偶然マクシミリアンに出会った時の彼の表情を忘れることができなかった。
クラリスに目を向けるあの視線がどれほど優しかったことか……。
もしデビナがクラリスだったなら、マクシミリアンはどうなっていただろう。
その優しい視線を知る瞬間、申し訳なさから自ら命を絶ってしまおうとすら思った。
だが恩恵を与えてくれたその人に対して、処刑という結末を告げるしかない運命と、学ぶべきことが山ほどある未来までをも背負って生きる以外に道はない!
『でも死ぬ代わりに、王室の保護を受けながら公務員試験の準備をして首都学院に通うなんて……』
あまりの理不尽さに、怒りがこみ上げてきた。
「不快に思われたなら、申し訳ありません。」
長い沈黙のあと、ようやくエビントンが小さな声でそう謝り、目の前の杖を手でいじりながら照れている様子を見せた。
「ただ、クラリスは王室の支援を受けている学生ですので、その行動についてきちんと報告する責任があると思いまして……」
「いいえ。むしろ感謝しています。」
デビナは微笑んだ。
その笑顔には安心感が込められていた。
「ベルビル君の言う通りね。あの子は特別に大切にされている存在です。試験代表であるベルビル君が見守ってくれれば、それはきっと助けになるでしょう。」
「もちろん、慎重に感謝いたします!」
彼が目を輝かせて述べた言葉に、デビナは微笑みながらも静かに手を振った。
感謝だなんて。
どんな形でも装飾的な言葉が、彼女の応接室で話題になるのは好ましくなかった。
周りに控える侍女たちが、大王妃に対してどのように報告するか分からないからだ。
「ただ、私はただお互いに友達になれればと思っただけ。」
その言葉に、エビントンは一瞬驚き、まるで眼鏡が震えるかのように動揺した。
「と、友達……ですか?それってつまり!グレジェカイア嬢のことですか?」
「そう、誰だって友達が必要でしょう?慣れない環境で苦労しているだろうし、ベルビル君が支えてくれたらきっと助かるだろうね。」
エビントンの表情には、「そんな女性と友達になりたくない」と大文字で書かれているように見えた。
朝の記憶から目覚めたデビナは、ゆっくりと目を開けた。
侍従とエビントンが立ち去った後には、王宮の医師による定期的な検診が予定されていたため、彼女は自分の部屋の寝台に静かに横たわっていた。
彼女の手首をしばらく診察していた医師は、やがてその手を離した。
この状況で、医師は王妃であるデビナよりも周囲に控える侍女たちをまず見渡していた。
まるで彼女たちが結果を最初に耳にしなければならないと考えているかのように。
デビナは結果をあらかじめ知っていたため、彼の態度を問題視することはなかった。
そもそも医師が大王妃の側近であることも理解していた。
「今日も異常はありません。」
当然の結果だ。
デビナがそう思っている間も、侍女たちは明らかに残念そうな表情を隠しきれなかった。
医師はようやくデビナに対して慰めの言葉をかけた。
「殿下におかれましては、もうお若いとは言えない年齢でいらっしゃいますね?これから先どれだけでも可能ですので、あまり心配しないでください。」
毎回同じような慰め。
年齢が増える以外に大きな変化はないというのが現状だった。
「お二人のご関係は良好でしょうか?」
しかし、今日はなんとなく新しい質問が加えられた。
そのことからも推測できるように、デビナは医師が大王妃の監視下にあることを強く意識せざるを得なかった。
「関係……か。」
デビナは彼との夜について考えた。
ライサンダーは毎週一度、必ずデビナを自分の寝室に呼び寄せていた。
だが、それは……単に二人の関係に何の問題もないことを見せるための形式的な演技にすぎない。
結婚してから現在に至るまで、王は一度も彼女と夫婦としての義務を果たしたことがなかった。
ただの一度も。
これまではまるでそのような事実が存在しないかのように、寝室を飾り付けて召使たちを欺いてきただけだった。
もしこの事実を医師に伝えたらどうなるだろうか?
大王妃は間違いなく医師に命じてデビナの言葉を検証させ、最終的には彼らの結婚を無効にしてしまうだろう。
王が迎え入れない王妃。
そのような存在を王宮が容赦するはずがない。
デビナは淡々とした表情で答えた。
「何の問題もございません。」
すぐに医師がにっこりと微笑んだ。
「それならば何よりです。会議の際に役立つ薬を処方しておきます。」
全く効果のない薬。
デビナはその答えがどれほど意味のないものかを噛み締めつつ、ただ分かったと答えるしかなかった。
医師が退出すると、デビナは侍女たちに手伝わせて服を整え、新しい装いを仕上げた。
「殿下に行ってまいります。」
「恐れながら殿下は、ベクスリー伯爵家の継承者の検査結果を含む返答をお待ちしております。」
侍女の答えに、デビナは一瞬忘れていた出来事を思い出した。
子どもを待つというのは、親切心も同じであったが、検査があるたびに必ず継承者宛に使者を送り、デビナが直筆で書いた手紙を届けるのが習わしであった。
「どういたしましょう?」
侍女が再び尋ねた。
「今回もあなたが代わりに書いて渡してくれると助かりますね。内容は前回と全く同じですから。」
「殿下が直筆されたことにしてよろしいでしょうか?」
「いずれにせよ父のご機嫌を取るためにはそれが一番でしょう。」
大王妃が送った侍女たちの中には、他人の手紙を書き写すことを得意とする者も含まれていた。
事務を代筆することに非常に熟練した侍女がいた。
デビナは、自身で返信を書くのを避けたい時は、必ずその侍女に任せた。
特に妊娠に関する内容は、侍女の手を借りることが通例だ。
そのような憂鬱な内容を自分の手で書きたくはなかったからだ。
「かしこまりました。手紙は私が代筆します。それでは、殿下に今すぐ訪ねてご報告しますか?」
「その必要はないわ。」
デビナは手を上げて侍女を制した。
彼女自身、ライサンダーの元に訪問すると前もって伝えたものの、今では忙しいとの返事しか返ってこないと分かっていた。
実際、彼女が事務室に赴くと、そこを守っていた侍従が青ざめた顔で「ただいま取り込んでおります」と言いながら、デビナを必死に引き止めようとした。
その侍従を無視して扉を開けると、そこには王宮の侍女が椅子に座っていた。
デビナはその状況で何が起こったのかを無理に想像しようとはしなかった。
「……出ていきなさい。」
彼女は感情を抑えながら、侍女に冷静に命じた。
「は、失礼しました、王妃様。」
侍女は服装も整えぬまま慌てて部屋を後にした。
そしてふと、侍女が座っていた椅子の隣に目を向けると、華やかな薔薇の花が落ちているのが目に留まった。
「恋人に花を……贈るつもりだったのでしょうか?」
「ふむ、必要に応じて?」
デビナの前に立つ男性は軽い笑みを浮かべながら、茎の折れた薔薇をそっと彼女の前に差し出した。
だが、デビナはその花を受け取らなかった。
「まだ香りが残っているのに、どうしてかしらね。」







