こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

360話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 人魚の国
海風が爽やかに吹き込んできていた。
少し湿気を帯びた風に、夏の日差しが差し込む感じだった。
私はテラスに立ち、東の海を眺めていた。
久しぶりに訪れる東の海は、あの時も今も変わらず青い海を誇っていた。
「イベル、海だよ! 海!」
「ババ!」
ブランシュがイベルを腕に抱いたまま、海の方角を指差していた。
イベルは一生懸命に龍語を真似しながらブランシュの言葉を繰り返していた。
二人の子供が仲良く海を見つめているのを見ていると、不意に母親としての笑みがこぼれてしまった。
ああ、まるで絵のよう。
絵だよね。
子供を授かった友人たちがあれほどまでに子どもを自慢した気持ちが、ようやくわかった気がした。
青い海を背景に立っている子どもたちの姿を目に焼き付けようと、じっと見つめた。
ふむ、可愛いけれど、イベルもさすがにどっしり育ってきたから、ブランシュにはちょっと重たいかもしれない。
「ブランシュ、イベルが重たくない? さあ、イベル。ママのところにおいで。」
「ママ!」
私はそっとイベルを抱き上げた。
イベルは少し戸惑った様子で、私とブランシュを見比べていた。
お姉ちゃんのところにも行きたいし、ママのところにも行きたいけど、どうしよう、という表情だ。
結局、私に抱かれたまま、ブランシュの手をしっかり握っていた。
ほんと、姉にピッタリくっつくなんて。
イベルはふんわりと鼻を鳴らしながら、風の香りを楽しんでいるようだった。
嬉しそうだ。
ブランシュがイベルの手を握りながら、ささやくように話しかけていた。
「イベル、もうすぐ海に行くよ。楽しみだね?」
「うん。」
私たちの興奮がイベルにも伝わったのだろうか?
イベルはその言葉を理解したかのように微笑んだ。
ブランシュも私も思わず顔をほころばせた。
今回、東部を訪れたのは単なる休暇が目的ではなかった。
正確に言えば「東部」ではなく、「海」を見に来たのだ。
「海の中にある王国だなんて、すごく楽しみ!」
ブランシュの瞳は海を映し込んでいるようだった。
その期待感は水面に反射する光のようにキラキラと輝いていた。
そう!私たちは人魚たちの王国、アトランティスに招待されたのだ。
海の底にある人魚の王国は、歴史の中で伝説としてしか語られない場所だった。
それにしても、実際にあの場所に行けるなんて。
人間の訪問者を何百年も受け入れていなかったその場所から招待状が届いたとき、宮殿中がざわついていた。
「リリー、こちらにいらっしゃいましたか。」
そんな会話を交わしていると、後ろからセイブルの声が聞こえてきた。
いつの間にか応接室に入ってきた彼は、素早くイベルを受け取った。
「無理をされないでください。私を呼んでくださればよかったのに。」
「そんなに重くもないのよ。」
「それでもダメです。」
子どもを産んで半年以上経つのに、彼はまだ私の体調を心配しているようだった。
実際、イベルは少し重くなってきていたけれど、セイブルはまるで羽のように軽々と抱き上げていた。
イベルは彼の胸に顔をうずめ、彼の香りを嗅ぐと嬉しそうに笑った。
「パパが来てくれて嬉しいみたいですね!」
「うん、そうだといいけれど。」
ブランシュの言葉に、セイブルは少し照れくさそうな表情を見せた。
頬がわずかに赤く染まっているのが見えた。
本当に、ブランシュとイベルがいるときは絵のように素敵な光景だ。
それにしても、こうして3人が集まっていると、本当に目が眩むような美しさだ。
誰かの娘、誰かの夫、そして誰かの子どもが、こんなにも可愛くて愛おしいなんて!
しばらくセイブルの姿を眺めていたところ、ベリテと従者が後ろから入ってきた。
人魚は私たちに向けて軽くお辞儀をした。
「お待たせしてしまい申し訳ありません。移動する人数が多いため、準備に少し時間がかかりました。オベロン様のお力添えのおかげで、間もなく移動が可能となりそうです。」
「これも全部、私の腕の良さのおかげよ。」
ベリテは両手を腰に当て、得意げな様子を見せた。
本当に、誰の従者がこんなに愛らしいんだろう? 百点満点じゃないか!
「ベリ、ありがとう。」
「いやいや、私たちの女王のための仕事ですから当然ですわ。」
ブランシュからの称賛を受けて、ベリテの口元に笑みが浮かんだ。
その間、召使の一人が小さなトレーを持ってきた。
そこにはガラス瓶がいくつか置かれていた。
召使は丁寧な口調で説明を始めた。
「魔法薬です。これを飲めば水中でも快適に呼吸ができ、自由に動けるようになります。」
瓶の中には透明な液体が入っていた。
ブランシュは一瞬悩むような表情を浮かべて尋ねた。
「小さなイベルが飲んでも全く問題ありませんか?」
「私が全て確認しましたので、心配しなくても大丈夫ですよ。」
ベリテは優しく微笑むと、魔法薬を口に含んだ。
そして、それが安全であることを示すように両腕を広げて見せた。
外見的に目立った変化はなかった。
「私たち家族が飲む薬ですから、徹底的にチェックしましたよ。」
本当に、誰の言葉よりも信頼できる安心感がある。
心の中では、イベルを連れて行くことが本当に安全なのか悩んでいたが、ベリテの保証を信じて安心することにした。
ナディアやカリンにもイベルを紹介したかったし、出産後に会うのはこれが初めてだったからだ。
私たちは魔法薬を分け合って飲み終わると、ベリテが設置したゲートの中へゆっくりと足を踏み入れた。
その瞬間、清涼な風のようなものが顔に触れた。
いや、それは風ではなく、水の流れ。
柔らかな水が私の髪や服を優しく揺らしながら通り過ぎていく感覚があった。
目を開けると、目の前には青い世界が広がっていた。
水中から眺める世界は神秘的で透き通っていて、とても美しかった。
その水の光の中に浮かぶ新しい建物が目に飛び込んできた。
それはまるで古代の神殿のような壮大な宮殿。
足元には柔らかな光を放つ海藻が絨毯のように広がり、その景色と同じくらい驚きに満ちた素晴らしい光景だった。
自分の体の変化に驚きながらも、こう感じた。
「呼吸がとても楽ですね。」
セイブルは興味深そうに私の声に耳を傾けていた。
声は水中でもはっきりと伝わり、水圧も全く感じられなかった。
泳ぐのが苦手な私でも、こんなに楽に動けるとは思わなかった。
まるで空を飛ぶのがこんな気分なのではと思うほどだ。
自分の体に起きた変化に感動していると、宮殿の中から誰かが現れるのが見えた。
短い金色の髪が日の光のように輝いていた。







