こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

223話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 一つになるために④
カタカタカタ。
マリは唇を固く結び、言葉を発することができなかった。
聞こえるのは足音だけ。
「陛下……。」
マリは彼を思い浮かべた。
約束の場所へ近づくにつれ、心臓の鼓動が激しくなった。
彼に会いたい。
その想いは彼女の胸をさらに高鳴らせた。
彼女が抱いていたのは単なる期待ではなかった。
怖かった。
彼が自分についてどう思っているのか。
会えなかった時間の中で、彼はどんな気持ちだったのだろう?
私はまだ彼を心から愛しているけれど、彼もそうなのだろうか?
結果的に、彼女は彼の期待を裏切ることになったのかもしれない。
彼は怒っているだろうか、それとも失望しているのだろうか?
「陛下……。」
マリは唇をぎゅっと結んだ。
そして悩みながらも、次第に約束の場所へと近づいていった。
人影のない森は静寂そのもので、遅い午後の時間が少しずつ闇に包まれていく。
マリの胸は高鳴り、震えが止まらなかった。
ここが最後だ。
もう少し進めば、約束の場所が見えてくる。
期待と不安が複雑に交錯した。
どれくらいの時間が過ぎただろうか。
ついに彼女は約束の場所にたどり着いた。
「あ……。」
マリは手で口元を覆った。
遠くに見えるその姿に、彼女の時間が止まった。
それは、仮面もつけず、美しい顔立ちをそのままさらし、遠い空を見上げる彼だった。
「……陛下。」
彼の顔を見た瞬間、マリは立ち尽くし、何も考えられなくなった。
体は震え、心臓はまるで爆発しそうなほど早鐘を打った。
その鼓動が壊れるのではないかとさえ思うほどだった。
そのとき、ラエルが彼女の戸惑いを察したように視線を向け、二人の目が合った。
「……!」
その瞬間、時間が止まった。
二人は一言も発せず、ただ見つめ合っていた。
ラエルは唇をぎゅっと結び、マリの顔を見つめると、その手が微かに震えた。
彼が一歩、また一歩と足を踏み出し、近づいてくる。
ドキドキ。
距離が縮まるほどに、マリの心臓の鼓動は激しくなった。
彼女は茫然と彼の顔を見つめ続けた。
なぜだろう?
涙がこみ上げ、視界がぼやけてきた。
マリは涙を拭こうと考えたが、体は動かなかった。
「……。」
ラエルは彼女の前で立ち止まり、しばらくの間、じっと見つめた。
やがて彼は手を伸ばし、彼女の涙をそっと拭った。
「……会いたかった。」
その声を聞いた瞬間、辛うじて保っていた彼女の心の壁が崩れ去った。
ついに、込み上げる感情を抑えきれず、涙があふれ出した。
「……ふっ……陛下。」
ラエルは何も言わず彼女を抱き寄せる。
数多の出来事があり、多くが変わったが、彼の抱擁は相変わらず柔らかく、暖かかった。
マリはその胸に顔を埋め、しばらくの間、涙を流し続けた。
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マリは一頻り泣いた後、ようやく気持ちを落ち着けることができた。
「もう、大丈夫?」
「み、みっともない姿を見せてしまって、すみません。」
マリは気まずそうな表情を浮かべた。
「どれだけでも大丈夫だよ。」
ラエルは静かに微笑みながら彼女を見つめた。
その言葉と仕草が、以前と何一つ変わらないことに気づき、マリは胸がいっぱいになった。
『本当に、私は彼に会いたかったんだ……。』
彼を見ているだけで胸が高鳴った。
来る途中で感じていた不安と心配は消え去らず、逆に再び浮かび上がってきた。
ただそれだけで感情が溢れてくる。
しばらくの間、二人の間に静寂が漂った。
『伝えたいことが本当にたくさんあったのに。』
彼女は心の中で思いを巡らせた。
もし再び彼に会うことができたら、何を話そうかと。
会いたかった、大変だった、ごめんなさい、愛している、など。
伝えたいことが山ほどあったのに、今は何一つ言葉にできなかった。
『こんなにも愛しているのに。』
マリは胸が締め付けられるように痛み、彼の胸に抱かれたままでいたいと願った。
そのとき、ラエルが口を開いた。
「マリ……いや、これからはモリナ、と呼ぶべきだな。」
モリナ。
その言葉がマリの胸を刺した。
なぜだか彼が自分から遠ざかっていくように感じ、彼女は自分でもよくわからないまま言った。
「ま、マリ、と呼んでください。」
その瞬間、ラエルの顔に何とも言えない感情が浮かんだ。
「お願いします。モリナではなく、マリと呼んでください。」
ラエルはしばらく黙ってから言った。
「そうか、マリ。その間、元気にしていたか?」
「……はい。」
実際には、元気にしていたと言えるわけもなかった。
一日一日が地獄ではなかった日は一度もなかったからだ。
「陛下はどうでしたか?」
「俺は……元気ではなかった。」
ラエルは一言を絞り出した。
「本当に辛かった。」
マリは唇を噛んだ。
彼が元気ではなかった理由を聞く勇気は出なかったが、言葉にしなくても伝わる痛みに心が締め付けられた。
「……ごめんなさい。」
「何を謝るんだ?」
「全部です。全部、本当にごめんなさい。」
マリは肩を震わせた。
彼に何をどう説明すればいいのかわからなかった。
意図したことではなかったにせよ、彼に与えた傷はあまりにも深かった。
「いや、その話を聞くために君を呼んだんじゃない。どうせ起きてしまったことだ。」
ラエルは静かに彼女を見下ろした。
マリの瞳に宿る疑念がふっと消え去る瞬間、彼の指先が彼女の頬を優しくすくい上げた。
そして、彼の顔がゆっくりと彼女の下へ降りてきて、唇がそっと重なった。
「……あ……。」
マリは小さく息を漏らした。
彼の吐息が彼女の唇をかすめた。
ためらいながら唇の内側へと差し込まれる彼の息遣いが、慎重に彼女の感覚を埋めていった。
それは力強いというよりも、あまりに慎ましやかな口づけだった。
しかし、それでも深く彼女の心に触れる愛情を感じ、マリは心の中でそっとつぶやいた。
『私も愛しています。』
短いキスを終えた後、ラエルは彼女の髪を優しく撫でながら言葉を紡いだ。
「会いたかった。」
「……。」
「君に、どうしても会いたくて。」
マリは目を閉じた。
「はい、私も会いたかったです、陛下。」
・
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ラエルはマリをあらかじめ準備していた別荘へと案内した。
「ここは?」
「この近くに住んでいた貴族がたまに滞在していた別荘だ。今は空き家になっている。」
マリは森の奥深くにひっそりと佇む別荘を見上げ、興味深げな表情を浮かべた。
それは一般的な庶民の家ほどの小さな建物だったが、整然と手入れされ、すぐにでも使える状態に保たれていた。
「入って。」
ラエルに手を引かれるまま、マリは別荘の中へ入った。
そこは寝室が二部屋と台所、そしてリビングルームから成るシンプルな構造だった。
「僕が使う部屋はこっちだ。あっちに君の部屋を用意しておいたけど……。」
ラエルは少し言い淀みながら続けた。
「離れていたくない。」
マリの顔が赤く染まった。
しかし、彼女も否定しようとはしなかった。
「……はい。」
二人は同じ部屋に入った。
誰もいない部屋に二人だけになると、一瞬、ぎこちない空気が漂った。
マリはなぜか気まずい気持ちが湧き上がり、彼の視線を避けながら外套を脱いだ。
「その……ご飯は召し上がりましたか?」
「大丈夫だ。君は?」
「私も特には……。」
そんな意味のない会話をいくつか交わすうちに、雰囲気はさらにぎこちなくなっていった。
いや、正確にはお互いの頭の中に相手への思いが溢れかえり、言葉にならない緊張感で満たされていた。
マリは何とかして別の方向を見るように努めたが、彼の微かな気配すらも敏感に感じ取ってしまう。
そして、ふとした瞬間、二人の目が合った。
「……。」
マリは息を飲んだ。
吸い込まれそうな彼の瞳に視線を外すことができなかった。
それはラエルも同じ。
彼はじっと彼女を見つめながら、ゆっくりと近づいてきた。
「マリ。」
「……はい、陛下。」
「マリ。」
互いの呼吸が感じられるほど近づき、彼の手が彼女の顔にそっと触れた。
頬、顎、そして首筋にかけて。
その動きはまるで大切な宝物を扱うように慎重で、彼の目には切なさが滲んでいた。
その優しい手の感触に、マリの胸は締めつけられた。
「マリ……。」
彼の唇が再び彼女の唇に重なった。
先ほどの慎重さとは違い、柔らかく始まったキスは徐々に情熱を帯びていった。
彼は優しく、しかし深く彼女を求め、マリはその感覚に身を委ねながら小さく声を漏らした。
「あ……陛下……。」
マリは彼の胸にしがみついた。
彼の手が彼女の髪を優しく撫でた後、肩を滑らせ彼女の背中に触れる。
彼はその手で彼女の緊張を解くように、そっと引き寄せた。
マリは一瞬身じろぎしたものの、拒むことなく自然と彼の腕の中に包まれた。
「マリ。」
ラエルは彼女の上に身を乗せ、静かに彼女の瞳を見つめた。
マリの胸は高鳴り、その震えは彼にも伝わった。
『陛下、愛しています。本当に。』
マリは目を閉じた。
ラエルが彼女を抱き寄せ、その瞼にキスを落とした。
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その夜、ラエルはマリを限りなく求め、貪った。
夜が更け、やがて夜明けを迎える頃、彼女はようやく深い眠りについた。
翌朝、薄明かりが差し込む頃になって、マリは目を覚ました。
『……あれ?』
マリはまぶたをこすった。
なぜか体全体が心地よくも鈍い痛みに包まれている。
ちらりと自分の肌を見てみると、白い肌にはいくつかの赤い痕が残っていた。
『陛下は?』
隣を見渡すと、そこには彼の姿がなかった。
一瞬、マリの胸がぎゅっと締めつけられた。
彼が何も言わずに去ったのではないか、という不安が頭をよぎったのだ。
しかし、その時、ラエルの声がどこからか聞こえてきた。
「起きたのか?」
「あ……」
彼は落ち着いた口調で、優しい光を湛えた表情を浮かべながら、彼女の方を見ていた。
「どうかしたかい?」
「あ、いえ……。」
ラエルは彼女に近づくと、軽く唇を重ねた。
それは甘い朝のキス。
「簡単な料理を準備しておいたから、起きておいで。」
マリは少し赤くなった顔で彼を見つめた。
一夜を共に過ごし、朝のキスを交わして、ゆっくりと朝を楽しむ恋人のようだった。
部屋の一角にある小さなテーブルには、パンとオムレツ、そして温かいお茶が用意されていた。
「これ、誰が?」
「俺が作った。」
その答えにマリは驚いた表情を浮かべた。
これまで料理をする姿を見たことがなかったラエルが、自ら調理したのだ。
「す、すみません。私が遅く起きてしまって……。」
「いや、大したことはない。適当にレシピ通りに作っただけだが、口に合うかはわからない。」
マリは彼のその行動を微笑ましく感じた。
朝、目を覚ましたら彼が作ってくれた料理を食べる、そんな日がやって来るなんて思いもしなかった。







