こんにちは、ちゃむです。
「あなたの主治医はもう辞めます!」を紹介させていただきます。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

148話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- エピローグ⑥
「ちくしょう!痛い!痛いってば!」
私は暴れるカンシアを腕に抱えたが、ずっしりと重くて、結局エルアンの助けを借りてようやくベッドに横たえることができた。
一体なぜここにカンシアがいるのか不思議で震えが止まらなかったが、とりあえずベッドから転がり落ちて腰に大きな怪我をしてしまったカンシアの負傷の状態をまず確認しなければならなかった。
「まあ、そこまでひどい怪我じゃないよ。ただの打撲だ。」
「私の年齢を考えろ、大将。ほんの少しでも無理すれば骨が折れそうだぞ。それに!」
カンシアはエルアンを見上げながら言った。
「カンシア・シルロニスだ。物乞いの犬みたいに暮らしているわけじゃない。」
これでカンシアの姓が昔と変わっていないことが確信できた。
「ちょっと待ってください。今は応急処置の材料もないから治療はできませんが、魔力の流れを慎重に観察して、精密に調整すれば……」
「ちょっと、リチェ。」
エルアンは私の手首を優しく握りながらつぶやいた。
「それ、すぐにやらなくても命には関わらないってことだよね?」
「はい、それはそうですが。」
「僕が見る限り、この家に入ってきた時の気持ちと、出て行く時の気持ちは全く違うタイプだよ。」
「それもそうですね。」
私とエルアンの会話に、カンシアがいきなり怒り出した。
「こいつら、病気の老人の前で何やってるのよ!」
「それより、まず聞いてみよう。」
エルアンは壁を軽く叩きながら言った。
「一体あなたはここで何をしているの?無断で侵入したんじゃない?」
「じゃあ、お前たちは何なんだよ!私と何が違うっていうんだ?」
カンシアが鋭く声を上げた。
「まず、ここは俺の母方の家だった。そしてその持ち主は俺の城に拘束されている。」
エルアンは冷静に答えた。
「それに、リチェはこの土地を競売で落札した正当な所有者だ。で、お前は?」
「……じゃあ、金を払え。」
カンシアは堂々と腕を組んで言った。
「ここ、水道も俺の魔力で維持されてるんだぞ。ピカピカの浴場で風呂に入ったんだろ?そりゃあ、利用料は払うべきじゃないか?」
「いや、みんな出て行ったのに、どうしてここにいるんですか?」
堂々と手を差し出すカンシアに、私はまるで予想外のことを聞かれたかのように問いかけた。
彼女は腰が痛くて顔をしかめながらも、一生懸命答えた。
「寒くなってきたでしょ。もう歳を取って動きが遅いの。空いている家が一つあるって聞いて、ちょっとだけ休んでいただけよ。それが悪いこと?」
「……ここ、私と完全に関係が深い場所なんです。あの時、カンシアさんも全部見ましたよね。」
「あなた、自分を中心に世界が回っていると思ってるのね。それが私と何の関係があるの? あなたの過去なんて興味ないわよ。それくらい無関心な人間がいるものよ。ただ、居心地がいい場所だから来ただけよ。」
まあ、カンシアくらいなら、これまで相当いろんな厄介ごとに巻き込まれてきたはずだし、いちいち細かいことを気にするタイプでもないだろう。
「それはそうと、お前は何でここを買ったんだ?私はここにしばらくいたことがあるからわかるが、正直大したことないぞ。あれを見てみろ。神がため息をついてぶっ飛ばしたみたいになってるだろ?お前、もしかしてこの土地を恐れて買ったのか?騙されたんじゃないか?」
カンシアの口ぶりは、心配しているというより、むしろ馬鹿にするような響きがあったので、私は冷静に答えた。
「いいえ。私の力だけで、欲しいものはすべて手に入りますから、別に土地なんて必要ないんです。」
「じゃあ、なんでここを買ったんだ?」
「ラベリ島へ行くための港があるからです。ラベリに行くのに便利なので。」
私は肩をすくめながら言葉を続けた。
「ラベリングという名目で叔父さんに土地を譲るそうです。」
「気が狂ったの?なんで土地をただであげるの?それに、本当に叔父さんだと信じちゃダメよ。」
カンシアはエルアンを指差し、ためらいもなく言った。
「見て、義理の叔父が甥を殺そうとして、甥はその義理の叔父をかばってるなんて! まるで袋小路じゃない?」
「……袋小路の家についての親切な説明、どうもありがとう。軍人でもう一度言わなくても、みんな知っていることだけどね。」
エルアンは淡々と応じた。私は深いため息をついた。
「もしラベリ島から本土へ行きたい人たちがいたとして、母のことが悪い前例になってしまうのは避けたいんです。」
「ふむ。」
「他人の土地を通らないと本土とつながれないというのは、ラベリ島の立場からすると決していいことではありませんよね。ただ、これは私の親族のための小さな贈り物のようなものです。」
「気をつけろよ。そんなふうに貧乏人に施しをしていると、たかられることになるぞ。とにかく、私の腰を治してくれ。」
「リチェが?どうして?」
エルアンは、私とカンシアの間に立ち、眉をぴくりと動かした。
「あなたの痛みを治してあげる理由はない。それに、私は個人的に、私たち二人の甘い時間を邪魔した人間なら、ほんとうに我慢できないって思っている。」
「君たちが床と私の甘い時間を邪魔したとは思わないの?」
全く甘くは見えなかったのに、自尊心を守りたいカンシアは、無理に笑った。
しかし、エルアンはひとつため息をついた。
「じゃあ、もう一度床と一緒にいてもらおう。どうせ長くは留まらないだろうし、ここで楽しい会話を終わらせよう。」
彼は本当にカンシアを再び床に押し付け、冷たくも軽やかな足取りでベッドへ向かった。
カンシアは苛立ちを露わにしながら手を下げた。
「なんなのよ!いったい私に何をしてるの?この程度で!壊れたものを直すのはお前にとって何でもないことだろ!」
「そうね、エルアン。ただの小さなことよ……」
「治療するなって言ってるんじゃない。代価を払わせるべきだと言ってるんだ。」
私は慌てて口を閉じた。
エルアンが何か意図を持っているのは明らかだった。
考えてみれば、腰を痛めたからといって、それを盾にごねたり脅したりするような若者はそういない。
ましてや、痛みがあるはずなのに平然としているカンシアもまた、普通ではない。
それにしても、エルアンがカンシアに求めているものとは、一体何なのだろうか?
「何だって?」
「あなたが最高の魔法使いだって言うなら。」
「それで?」
「じゃあ、一つだけお願いを聞いてよ。」
「へえ、私がどこかの誰かのお願いを聞いてあげるような人だと思う?」
「そもそも、神が嫌いなんでしょ。」
「それはそうだね。」
「私もすごく嫌いなんだ。リチェに傷をつけないで。」
私は二人の会話を聞きながら、天罰でも受けるんじゃないかと内心で恐怖を感じ、身震いした。
「この嵐が神のため息だって?ラベリング?島の美しさを妬んでいるのか?」
「もともと、内面が少しねじれているんだ。どうしようもない。」
「じゃあ、あの暴風……止めることはできる?神の意思を試してみようじゃないか。」
エルアンは目を細め、少し含みのある声で続けた。
「他人に祈れと言うより、自分で神を試す方がよっぽど手っ取り早いと思わないか? ん?」
「無理だ。魔法は万能じゃない。あの暴風を取り除き、四季を通して晴れ渡らせるような魔法があるなら、それは正しいと言えるのか?」
「少しの間でいい、5分ほど。それもできないのか?それほどまでに神は最強の魔法使いよりも強いとでも?」
「……3分なら可能だ。」
カンシアは体を震わせながら呆然としていた。
「じゃあ、私の腰を治してくれるのね。分かった?ほんとに面倒くさい……。」
「もちろんだよ。リチェは私と違って、必ず約束を守るからね。」
私は見ないようにして、ひとまずお祈りを捧げた。
すると、カンシアは目を閉じて、奇妙な呪文を唱え始めた。
エルアンは私を引っ張って窓の方へ向かった。
まるで嘘のように、光の筋が弱まり、波が静まり、雲が割れて、夕陽に照らされた海がはっきりと見え始めた。
『わあ…… 本当に詐欺だ。カンシアの能力、ほんとにすごい……。』
そして、澄んだ視界の向こうに、ラベリ島が小さく見えた。
私の半分の血が流れる場所であり、母の故郷。
まるで自分の根を確認するような気分だった。
ぼんやりと島を見つめていると、カンシアの魔力が尽きたのか、また雨がしとしとと降り始め、空が曇った。
「エルアン……これを見せたくて……」
「君が望むことなら、何だってしてあげたい。」
エルアンは私の首筋に唇を寄せ、囁いた。
ラベリ島を見たいという私の言葉を、彼は一言も忘れず、何が何でも叶えようとしてくれる。
この男は、どうしてここまで一途なのだろう。
「本当に、何があっても、これからもずっと。」
エルアンは優しく私の肩を抱いた。
「だから……。」
その時、カンシアが皮肉っぽく割り込んできた。
「まったく、才能もお金もある人が偉そうにして、私の前で何してるのよ? まさか、一生独身で過ごした私の前で、美しい愛を見せつけてるわけじゃないでしょうね?」
だから私も反論してみた。
「治療は私がやって、魔法はカンシアさんが使うんですよ。でも、目を奪われるのはエルアンだけなんです。それでもそのわがままが魅力じゃないですか?」
「さあ、私の腰を治して!最強の魔法使いだろうが、痛いところには長者もないんだから!」
「分かりました。」
私はカンシアに近づいて言った。
「私たちも上に戻る前にやることがあるんです。 だから先に治してあげますね。」
その言葉にエルアンの顔がぱっと明るくなった。
私たちが互いに視線を交わすのを見て、カンシアは呆れたようにため息をついた。
「これから幸せになるって言ってたけど、本当にバカみたいね。滅びる神のようだわ。」
私を見つめるカンシアの目には不思議と冷たさではなく、わずかな温もりが感じられたので、私は精一杯の気持ちを込めて彼女の腰を治療してあげた。
強風が吹き荒れ、暗く静かな古びた屋敷にいるのは、ある意味奇妙だったが、それでも妙に気分の良い夜だった。
エルアンと一緒なら、これからの夜もずっとこんな感じになる気がした。







