こんにちは、ちゃむです。
「継母だけど娘が可愛すぎる」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

377話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 記憶の色③
「……イベール王子の誕生日パーティーが開かれるんですか?」
「はい、そうです。ケイン陛下。」
どこか重々しい声が、テントの中に響いていた。
その声はテントというより、巨大な洞窟の中に響いているかのようだった。
それはまさに塔のようだった。
階段がある塔。
その塔は美しい装飾や精巧な彫刻が施されているわけではなく、ただまっすぐ空へ向かって伸びているだけ。
塔の唯一の特徴があるとすれば、それは光だった。
上部が開いているわけでもないのに、なぜか光が差し込んでいた。
塔には手のひらほどの小さな穴が一つあるだけだった。
その穴から差し込む光は、一日にわずか一、二時間しか入ってこない。
その感覚的な光は、詩人の心を捕らえていた。
アビゲイルの兄であるケインは、その詩を手に取った。
甥の誕生パーティーについて書かれたその文面には、感情が込められていた。
ケインは皮肉っぽく口を開いた。
「自分の兄を牢獄に閉じ込めておきながら、自分たちは祝賀会を開くつもりなのか。」
ケインの両目には怒りの炎が燃え盛っていた。
この風さえ届かない場所に、嵐が渦巻いているかのようだった。
「息子よ、あまり感情的になるな。」
その時、落ち着いた声が聞こえてきて、ケインは振り返った。
入口には、父でありクロネンバーグの王が立っていた。
ケインの顔は一瞬明るくなったものの、すぐにまた曇り、子どものように反抗的な態度を取った。
「どうして怒らずにいられるんですか?アビゲイルのせいで、我が国がこんな状況になったのに。」
王はその言葉に対して反論せず、むしろ沈黙を通して賛同しているかのような表情を浮かべていた。
かつて王子だったケインは、一瞬で犯罪者扱いされる立場に陥り、敗戦国のクロネンバーグは巨額の賠償金を支払うこととなった。
それでも誰かが「アビゲイルが今や帝国の皇后となったことは、悪い話ではない」と言う中で、ケインは忌々しげに足元を蹴った。
「もし戦争に勝っていれば、クロネンバーグがこうなることはなかったのに……。我々の国が帝国の属国になり、細々と生き延びる羽目になるなんて……!」
「それを考えると眠れなくなるな、息子よ。だがアビゲイルは、その立場を利用して我が国を奪おうとする気はなさそうだ。表情まで穏やかになったそうだな。幸せそうで何よりだ。」
その一言は、ケインにとって唯一の慰めであったが、それも薄っぺらなものだった。
アビゲイルが外見は変わっても、幸せに過ごしていると聞いて、宮廷で冷遇されるかと思いきや、むしろ子供を授かったという知らせが届いていた。
「なぜ我々だけがこんな目に……。」
「心配するな、ケイン。道はある。」
「道とは?」
期待を込めた声でケインが尋ねると、王は無表情で次の言葉を続けた。
「国外では、ネレゲンが勢力を拡大していることに気づいているか。我々と同盟を結べる国は多い。もし同盟が成立すれば、希望が見えるかもしれない。」
「しかし誰がネレゲンに対抗するんです? 妖精や人魚と手を組んでいるのに。」
ケインの言葉どおり、ネレゲンの軍は圧倒的な強さを持っていた。
それにもかかわらず、王はわずかに微笑みを浮かべた。
「そうだ、その通りだ。だからこそ、まずは種族間の連携を深めるつもりだ。妖精やインオがネレゲンに反旗を翻すようになれば、隙が生まれるだろう。」
ケインは依然として疑念を抱いているような目つきだ。
どうやって連携を実現するのか問いたそうな様子だった。
「先日、ある魔法使いを連れてきたことを覚えているか?」
「魔法使い……? ああ、黒い魔力を持つあの人物ですね。」
「そうだ。王子の誕生日の宴で、その魔法使いを招くつもりだ。」
クロネンバーグの王はニヤリと笑った。
ケインは依然として不安そうな目つきだった。
「気づかれるのではないでしょうか?」
「気づかれない。そして、たとえ気づかれたとしても問題ない。捨てるつもりだから。」
王の声は氷の刃のように冷たく、鋭かった。
彼はアビゲイルと似た紫色の瞳で話した。
「アビゲイルに忘れられない贈り物を届けようではないか。」
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荘厳な音楽が鳴り響く皇宮。祝福の言葉や挨拶を交わす声が重なり合っていた。
多くの馬車が宮殿に次々と入り、召使いたちは慌ただしく来賓を迎え入れていた。
いよいよ今日がやってきた!
イベールの三歳の誕生日を祝う宴が開かれる日だ。準
備のため、誰もが忙しなく動いていた。
会場全体は早くから準備が整っていた。
忙しく動く中、宮殿は新たに壮麗な装飾を施されていた。
宴会が行われるホールの中には、美しく精巧な彫刻やたくさんの花々が飾られていた。
さらに、装飾だけでなく、美しい衣装たちも目を引いた。
私は自分が作った衣装を満足そうに眺めた。
ブランシュとベリテは王冠とマントまで身につけ、正式な装いをしていた。
白と紫を基調にしたデザインで、優雅さと威厳を引き立たせていた。
マントには少し豪華な刺繍装飾が宝石であしらわれていた。
皇帝と皇后に見合うような装いをデザインしたが、それでもかわいらしさは隠せないようだった。
イベールもブランシュに似た装いをしていたが、少しだけ可愛らしさが増していた。
そして、今日の宴会の主役であるイベールは、光が最も映える席に座っていた。
無力感に満ちた表情で。
「お母さん……人がたくさんいます……。」
イベールは多くの人々に驚き、どうすればいいのか分からない様子だった。
もともと人見知りが激しい方なのに、今日はさらにその傾向が強まったようだ。
「イベール王子様、お誕生日おめでとうございます。」
「おめでとうございます、王子様!」
中年の使節団が次々に挨拶しにやってきて、イベールの顔は真っ青になっていた。
彼らはかわいらしい王子を見て微笑んでいたが、王子は少し違う考えをしているようだった。
私は使節団を半ば押しのけるようにしてイベールと目を合わせた。
イベールの瞳は不安げに揺れていた。
「大丈夫だよ、イベール。みんなイベールの誕生日をお祝いしに来てくれた人たちだよ。」
「でも……怖いよ……。」
うーん、どうしたらいいんだろう。
この震える様子をどうにかしたいけれど。
どうすればよいか悩んでいたところ、背後から人の気配を感じた。
「イベール、父さんも子供の頃は人がたくさんいるのが怖かったんだ。」
セイブル!
彼がいつの間にかやってきて、私の隣で片膝をついて座った。
イベールはセイブルの言葉を聞いて、目を大きく見開いた。
「お父さんみたいに強い人も怖かったんですか?」
「そうだよ。もしイベールがすごく怖いと感じたら、少し別の場所に行って休むのもいい方法だね。」
「うん……大丈夫だよ。ここにはお母さんもお父さんも、それにお姉ちゃんもいるから……。」
イベールは小さく微笑んだ。
少し緊張が解けたようだった。
セイブルは優しく頭をなでてあげた。
その時、子供の軽い足音がホールに響き渡った。
まるで魚が水しぶきを上げながら水面に飛び出すような音だった。
「イベール!イベール!」
人々の間を掻き分けて、ヒルドが走ってきた。
前回見たときよりも少し成長したように見える。
友達が来ると、イベールの顔に明るさが戻った。
イベールも椅子から飛び出して走り寄った。
「イベール、誕生日おめでとう!」
「ヒルド、ようこそ……!」
ヒルドは風のように駆け寄り、イベールをしっかりと抱きしめた。
イベールはいつものように明るく笑っていた。
緊張が解けた様子だ。
ほっと胸をなでおろす。
やはり友達がいると安心感がある。
ぴょんぴょん跳ねる二人の子供の姿を見て、さらに安心した。
「ヒルドが来てくれてよかったですね。」
セイブルが立ち上がりながらそう言った。
私は彼の引き締まった横顔を見上げ、ふと気になった。
さっき、子供の頃に臆病だったと言っていたけれど、あれはイベールを安心させるための嘘だったのだろうか?
「セイブル、本当に幼い頃は臆病だったんですか?」
「はい。イベールの年齢だった頃は特に泣き虫だったようですね。」
彼は微笑みながら、指で私の頬をそっと撫でるように触れながら、泣いていた自分を思い返しているようでした。
なんてこと、こんなに可愛いことがありますか?
幼い頃の泣きじゃくるセイブルを想像しただけで、思わず感嘆の息をついてしまいました!
ああ、幼いセイブルを見ていたら、きっと毎日抱きしめていたことでしょう!
もちろん今のセイブルも十分抱きしめたい気持ちですけど。
ナディアに筋力トレーニングでも習うべきでしょうか?
今でも十分可愛いのに、幼い頃はどれだけ愛らしかったのか想像もつかない。
泣いている赤ちゃんを見るような気持ちになってしまう。
思わず拳を握りしめて壁を殴りたくなるほど、公式な場ではそんな行動を取るわけにはいかないので、自分を抑えるのに必死だった。







