こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は182話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
182話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 王室騎士団②
月さえ雲の中に隠れた夜遅く。
マリはベッドでそっと目を開けた。
服を着た彼女は静かに気配を感じさせずに総督府を離れる。
彼女は今、王室騎士団のバルハン伯爵に会いに行くところだった。
彼らの要求通りに一人で。
ポンティル男爵には話さなかった。
どんなに最大限彼女の意見を尊重する彼でも許すはずがなかったから。
しかし、彼女は直感した。
バルハン伯爵の提案を断れば、二度と平和な対話を試みることはできないということを。
つまり、これはバルハン伯爵の試験。
自分の本当の意味を確認しようとする。
(もちろん罠かもしれない。目の敵の私をなくそうとするために)
彼女は腰に着飾ったショートソードを撫でる。
もし彼らが彼女に危害を加えようとしているのなら、彼らはそのような武器については何の意味もないだろう。
しかし、彼女は固い表情で首を横に振った。
(大丈夫だよ。バルハン伯爵は私を害することができないから)
マリがこのように一人で行くのは無謀な勇気ではなかった。
彼女はバルハンが自分に触れることはないと確信していた。
その理由は明確だ。
(私は単純に『マリ』として彼に会おうとしているのではないから)
前王室騎士団はモリナ王女を探す集団。
すなわち、まさに彼女を探す集団だ。
(だから彼らは私を害することができない)
マリは固い表情で考えた。
そう。
彼女は今日王室騎士団の代表であるバルハン伯爵に自分の正体を明らかにするつもりだった。
だから彼らは彼女の指先一つも触れることができないだろう。
(もちろん、私は彼らが望むモリナ王女ではない)
彼らが望むモリナ王女は、まさに王国を再建する存在だ。
一方、マリは王国再建に意志がない。
ラエルとの件のためにもそうだが、必ずしも王国を再建することが民のための道だとは思わなかった。
(この問題を彼らと談判しなければならない。モリナ王女として。そうしてこそ彼らの心を取り戻すことができる)
マリは覚悟を決めて待ち合わせ場所に向かった。
数刻後、約束の場所に到着したマリは唾をごくりと飲み込んだ。
バルハン伯爵が指定した場所は首都近くに位置した邸宅。
邸宅は長い間放置され、陰鬱なものばかりだった。
真っ黒に開いているドアがまるで怪物の口のように感じられる。
「・・・よし」
マリは一人で虎を捕まえに行く気持ちで邸宅の中に足を踏み入れた。
彼女がそのように足を踏み入れた瞬間だった。
突然灯りがともり、室内が明るくなる。
「・・・」
彼女がぎょっとして身を固めた瞬間、重い声が聞こえてきた。
「本当に一人で来たんだね」
ほこりとクモの巣で覆われた階段の上に若い男が立っている。
もう30歳ぐらいに見える剛直な印象の美男子だ。
眉間に一条の剣傷が残っている。
(バルハン伯爵!)
マリはすぐに男の正体に気づく。
まさに彼が王室騎士団の団長であるバルハン伯爵だった。
「マリ・フォン・ヒルデルンと申します」
マリは震える心を落ち着かせようと努力しながら言った。
バルハン伯爵は答えずにじっと彼女を見下ろしている。
冷たい瞳には冷ややかな敵意が流れていた。
それは彼の周りに立っている他の騎士たちも同じだ。
肌がひりひりするような殺意が感じられる。
しばらく息が詰まるような沈黙が流れた。
すぐにでも命を落とす危機だったが、マリは毅然としていた。
勢いに押される瞬間、すべてが終わりだ。
「あなたは、俺があなたの命を取らないと思って来たのか?」
やがて、バルハン伯爵が口を開く。
「申し訳ないが、それなら誤算だ。忠誠を捧げていた王家が君たちの帝国の手によって滅亡した瞬間、私は名誉を捨てることを誓った。もう私の人生に残ったのは、王家の最後の末裔であるモリナ王女殿下しかいない。彼女のためならあなたの命なんかいくらでも奪うことができる」
その声には濃い殺意が宿っている。
マリは本当に自分の命を奪うかもしれないと感じた。
「当然そんな純真な考えはしませんでした」
「それでは、どうして一人で現れたの?」
バルハン伯爵は理解できない様子だ。
一人でここに来るように手紙を送ったが、彼女が従うとは全く思わなかった。
自殺行為に他ならなかったからだ。
しかし、彼女は来た。
帝国の予備皇后という至高な身分にもかかわらず、死を覚悟して。
一体どうして?
「危険を冒さなければならないほど切迫しているからです」
「何が?」
「あなたたちの心を説得することが。それでクローヤン地方が真の安定を取り戻し、王国民が幸せを見つけるようにすることがそれだけ切迫しているために命をかけた賭博をしたのです」
「・・・」
まったく思いもよらなかった彼女の答えに、バルハン伯爵は眉をひそめる。
作り話かと思ったが、そうではなかった。
緊張にかすかに震える少女の瞳には、本当に真心が込められていた。
そのため、バルハン伯爵は混乱する。
「理解できないな」
「・・・」
「そうだね、一度話を聞いてみよう。あらかじめ言っておくが、帝国に頭を下げるようにと言えば、すぐにあなたの首を切る。私たちが忠誠を捧げる対象はモリナ王女殿下しかない」
モリナ王女を探すという頑固な言葉に、マリは心の中で苦笑いした。
「当然、帝国に忠誠を捧げるようにという話をしようとしているのではありません」
「それでは?」
「ただ一つお話があるだけです」
「話すことだって?」
マリはうなずいた。
「はい、その話をする前に一つだけ聞いてもいいですか?」
「言ってみろ」
「あなたたちはなぜ今もモリナ王女に忠誠を捧げるのですか?ただの元王家への忠誠ですか?それともクローヤン王国民のためですか?」
その問いに王室の騎士たちの勢いは一気に衰える。
バルハン伯爵はすぐにでも駆けつける勢いの騎士たちを手を上げて引き止めた後、不快な口調で答えた。
「愚かな質問だね。当然、両方ともだ。私たちが忠誠を捧げる対象は王家だけで、モリナ王女を再び推戴することだけがこの王国を本当に大事にすることだからだ」
その答えにマリはバルハンの目を直視しながら尋ねる。
「では、もしモリナ王女が王家の再建を望まなければ?」
「・・・」
全く思いもよらない質問にバルハンをはじめとする騎士たちがぎくりとした表情をした。
モリナ王女を通じて王室を再建しようとしたが、彼女の意思は全く考えたことがない。
私は王家の再建なんて望んだこと一度もない。
マリは心の中でつぶやいた。
知らない。
王家の再建を望む国民が彼女に無責任だと後ろ指を差すか。
しかし、マリはクローヤン王家の一員として幸せだったことは一度もなかった。
通園の宮に幽閉されて苦痛を受けただけで、王家の家族と情を交わしたことも一度もなく、彼女に温情の手を差し伸べた人も誰もいなかった。
幼かった彼女は王宮でひたすら孤独と戦わなければならなかった。
そんな自分にむやみに王家再建の責任を負えと言うのはあまりにも不当な話ではないか。
その時、バルハン伯爵が冷ややかな口調で口を開いた。
「無礼な話をするね。王家の高貴な血を引く王女殿下がそんなはずがない。彼女が我々のクローヤン王国を真の復興に導くだろう!」
マリはため息をついて、再び単刀直入に尋ねる。
「では、王家を再建することは、本当に王国の民のためなのですか?」
「え?それは当然・・・」
「本当にそうなんですか?本当に王国民が望むことですか?」
マリは歯を食いしばって鋭く聞いた。
「それとも主流の既得権から押し出された貴族たちが望むことではないのですか?」
彼らの顔は赤くなったり青くなったりした。
ある騎士が怒りで手を震わせながら言った。
「おい!今すぐ喉を・・・!」
しかし、その時、バルハン伯爵が騎士を止める。
「やめろ」
「しかし、団長!あんな侮辱を聞いてばかりいるのは!」
「厳密に言えば、まったく間違った言葉ではない」
低い声に騎士たちがびんと止まった。
バルハンは燃えるような目つきでマリを睨みつける。
「帝国の予備皇后だと言っていたのに。やはり普通ではないね。そう、君の言うことが正しいかもしれない。民衆は腹一杯食べればいいだけで、誰が自分を治めるかは重要ではないからだ」
まだ近代的な国家観が形成される前だ。
貴族でない一般の民は、思ったよりも国家に対する概念が薄かった。
「で、それで?」
バルハンはゆっくりとマリに近づく。
彼女の意見に同調したのとは違って、冷たい顔だったので、マリがたじろいだ瞬間。
チャアン!
彼は剣を取り出して彼女の首にかけた。
「・・・」
マリは首に届いた金属の感触に唾をごくりと飲み込んだ。
冷たい鋭気が剣刃を伝って流れる。
「それで話したいことは何だろう?すでに滅亡した王家を再建することは意味がないから、あなたたちの帝国に従えと言いたいのか?」
「・・・」
「そう、知ってはいる。君たちの帝国が国民に思ったより良い政策を展開しているのは・・・。もしかしたら、以前の王家より、君たちの帝国が王国民をお腹いっぱいにさせるかもしれない」
その瞬間、バルハンの声が鋭くなった。
「しかし、私たちは君たちを信じることができない。今は融和策を施しているというが、時間が経てばお前たちの帝国がどのように変わるか分かるというのか」
バルハンは強い声で話し続けた。
「我々は侵略者である君たちを信じることができない」
マリはしばらくじっと目を閉じた。
当然の反応だ。
「もし信頼できるとしたら?」
マリは突然尋ねた。
「え?」
「もし帝国を信頼できるなら、いや、帝国と王国が本当に一つになる方法があるなら。その時もむやみに帝国に反対するんですか?」
バルハンは首を横に振る。
「帝国と王国が本当に一つになるって?それは不可能なことだ」
しかし、マリは依然として揺るぎない声で話し続けた。
「いいえ、できますよ」
「え?」
「私がいれば可能なことです」
理解できない話に彼は眉をひそめる。
「いったい何の戯言を言っているのか分からないな。君がいれば可能だって?」
「はい」
「は!
バルハンは彼女の首を切ろうとした。
手に力さえいれれば終わりだ。
そのように決心して少女の顔をもう一度眺めた時だった。
決然とした少女の顔を見た彼は、分からない冷たさを感じた。
(何だろう?)
その瞬間、マリが言った。
「バルハン伯爵、密に言いたいことがあるので周りを退いてください」
周りの騎士たちが話にならないように声を高める。
「なんでそんなことを!団長!そのまますぐに首を切ってください!」
しかし、バルハンの反応が意外だった。
「退け」
「え?」
「退け!」
理解できない反応に、騎士たちはお互いを見つめ合い、たじろぎながら邸宅から退いた。
(何を言おうとしているんだ?)
バルハンはマリを睨みつける。
やがてマリが口を開いた。
「バルハン伯爵、私を見てください」
「何?」
マリはもう一度言った。
「伯爵。私の顔を見てください。この顔を見て、思い浮かぶ人物がいませんか?」
バルハン伯爵は怪認な表情で再びマリの顔を見る。
薄茶色の髪、茶色の目、小さな顔にやさしい印象のかわいいルックス。
そのようにしばらく彼女を眺めていた彼の目が火のように大きくなった。
思いもよらない女性の顔が思い浮かんだのだ。
彼が心の底から望んでいるまさにその人物が。
彼の手がぶるぶる震えた。
「そ、そんなはずが・・・そんなはずがない」
バルハンは強く否定する。
しかし、いくら否定しようとしても、彼の頭の中にあの少女とそっくりな人物が引き続き浮び上がった。
マリは言った。
「他の人は知らなくても伯爵は分かるでしょう。すれ違いましたが、私たちは過去にきっと会ったことがありますから。まさにこのクローヤン王城で」
「・・・」
バルハン伯爵の目が波に会ったように揺れる。
彼女の話を聞くと水面下に深く沈んだ記憶が思い出された。
そういえば、どうして見てすぐに気づかなかったんだろう?
こんなにも似てるのに。
「ま、まさか・・・本当にあなたが?」
「その通りです」
マリはそっとうなずく。
「私の名前はマリ・フォン・ヒルデルン・・・同時にモリナ・ド・ブランデラ・クローヤンです」
クローヤン王国の高貴な血筋、モリナ。
「私がまさにあなたがあれほど探していたモリナ王女です」
そうしてマリ、いや、モリナはバルハンに自分の正体を明かした。
ついに自分の正体を打ち明けたマリ。
バハルン伯爵の反応が気になりますね。