こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は199話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
199話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 開戦②
3軍団が近づいてきた。
(あれが帝国の3軍団)
マリはその陣形を見て、凍り付いたような表情を浮かべた。
3軍団は同盟帝国軍の中でも最精鋭の軍団だった。
軍旗が空を突くようにそびえ立ち、その威容は息を呑むほどだ。
(果たして勝てるのだろうか。)
鎧と鉄甲で覆われた無数の兵馬を目にし、マリの胸は強く締め付けられた。
自分が無謀な挑戦をしているのではないかという思いが心をよぎる。
しかし、彼女は恐怖を振り払うようにして考え直した。
(違う。勝てる。絶対に勝たなければ。)
この戦いで敗北すればすべてが終わる。
クローヤンは再び滅び、自分自身も帝国の手にかかってどのような結末を迎えるか分からない。
そしてそれだけではない。
ラエルも同様に破滅の道を歩むことになる。
彼女が愛するラエルのためにも、この戦いで勝利しなければならない。
マリはバラハンを見つめながら命じた。
「バラハン伯爵、始めてください。」
「はい、陛下。」
バラハンは拳を握りしめ、前に進み出た。
そして、魂の力を振り絞るように声を上げた。
「帝国の犬、アルベロンは前に出ろ!」
「・・・!」
その叫びに、3軍団の兵士たちは一斉に動揺する。
帝国の犬――それは3軍団を痛烈に侮辱する言葉だった。
指揮官アルベロンはモリナを捕らえる命令で3軍団を率いていた。
しかし、その行動には不自然な点が多く、兵士たちはアルベロンの命令に疑問を抱いていた。
そんな中で「帝国の犬」という言葉が耳に入り、動揺を隠せなかった。
バラハンは再び叫んだ。
「恥ずかしくないのか! ただの富と名誉のために主人を犬のように変えるなんて!」
「・・・!」
聞いていたアルベロンの顔は赤く染まり、王室騎士団の騎士たちも嘲るような声を上げた。
「いや、犬でさえ主人を裏切らないのに!」
「お前を犬と比べるなんて犬に失礼だ! お前は餌を見れば主人すら分からなくなる豚のようなやつに過ぎない!」
アルベロンは手を震わせながら歯を食いしばった。
「この野郎どもが!」
瞬間、彼の目に周囲の兵士たちの動揺した様子が映った。
東帝国を裏切ったという話に疑問を抱いていた兵士たちが、その言葉に動揺し、ざわついていた。
耐えきれないほどの焦りに駆られたアルベロンは、すぐに叫んだ。
「黙れ! 我々は帝国の敵であるモリナを討伐しに来ただけだ! 無駄な言葉は要らない! 攻撃しろ! 敵を撃退してモリナ女王を捕らえろ!」
騎士たちはランスを構え、一斉に馬を駆り始めた。
ドドドドド!
突撃する騎士たちが一斉に馬蹄を響かせる光景は圧巻であり、まるで山が崩れ落ちるかのような轟音が響いた。
「弓兵、攻撃!」
クローヤン王国軍が火矢を放ち始めた。
滝のように火矢が降り注いだが、騎士たちは全く怯むことがなかった。
やはり大した抵抗ではない。
敵にはまともな長槍兵もいないため、ただ突撃すれば済む話だった。
「突撃!」
騎士たちの先頭が王国軍を襲おうとするその瞬間だった。
マリとバラハン伯爵が互いを見て、意味深長な目つきを交わした。
その時だ。
事が起こった!
「うわぁっ!」
行列の前で地面が突然陥没し、騎士たちが次々と転倒したのだ!
これは罠だった。
そして、それはただの罠ではない。
「側面を狙え!」
騎士たちの突撃経路の両側の茂みから待ち伏せていた者たちが姿を現したのだ。
そして茂みの下に隠されていた槍衆たちが左右から一斉に襲いかかる。
パーン!
そして、恐ろしい事態が次々と発生した。
突撃していた騎士たちの一部が深い落とし穴に落ち、混乱が広がった。
突撃を試みている最中に地面に隠されていた槍が突然姿を現し、馬が次々と転倒し始めた。
突撃の陣形が一気に崩壊し、帝国軍は大混乱に陥った。
「弓兵!全員、矢を放て!」
倒れた騎士たちに向けて再び矢の雨が降り注いだ。
地面に倒れた騎士たちは特に抵抗することもできず、悲鳴を上げるだけだった。
「なんだと!全員、馬を降りろ!散開して進軍しろ!」
アルベロン伯爵が命令を下す。
「どんな罠を仕掛けようとも、あの寄せ集めの集団は我々の敵ではない!すぐに敵を打ち倒せ!」
アルベロンの言葉通り、中甲冑を装備した騎士たちは馬を降りてもなお恐るべき破壊力を誇った。
しかし、ぬかるんだ地面がその動きを著しく妨げていた。
最近降り続いた雨の影響で、地面はまるで泥沼のように変わり、まるで罠のように騎士たちの足元を捕らえた。
鋼鉄の鎧を身にまとった騎士たちは、その重量のせいで動きが鈍り、泥に足を取られたまま大混乱に陥っていた。
すでに地面に倒れていた仲間たちもまた、その動きをさらに妨げる結果となる。
「撃て!続けて撃て!」
王国の指揮官たちが喉を張り裂けんばかりに叫んだ。
絶え間なく放たれる矢の雨に帝国の騎士たちは進む術を失った。
突進や強行突破も叶わず、王国の弓兵たちが放つ矢は鋼鉄の鎧を貫通するほど危険だった。
「急げ、追加の兵力を投入するんだ。」
アルベロン伯爵が慌てて部下に命じる。
このままでは騎士たちが全滅しかねない状況だった。
アルベロンは拳を強く握りしめ、歯を食いしばった。
「いや、これ以上兵力を投入しても被害が増えるだけだ。」
「では?」
「今回の戦いは我々の敗北だ。これ以上の被害が広がる前に撤退する。」
欲望に目がくらみ同盟国を裏切ったアルベロンであったが、彼は卓越した将軍でもあった。
自身の過ちを認め、戦況を冷静に見極めた。
「しかし、あの寄せ集めの集団が相手だなんて・・・。一気に押し切りさえすれば、彼らの陣形は崩壊するはずです。」
部下の言葉が続いた。
現在は一時的に押し返されているが、白兵戦が始まれば彼らは圧倒されるだろう。
それほどまでに戦力の差は大きい。だが、アルベロンは顎を触れ、何かを考え込むような表情を見せた。
(違う。何かが気になる。)
彼は遠くの丘の向こうにいる少女を見据えた。
(モリナ女王か・・・)
きっぱりとした態度でこちらを見つめる少女の表情に、奇妙な違和感を覚えた。
(もし、あの少女がまた別の計略を準備しているとしたら、大きな被害を被るだろう。)
アルベロンはそのリスクを軽視しないことを決めた。
そもそも戦争の敗北は一度の戦いで確定するわけではない。
今回の戦いでは撤退したとしても、あの少女を捕らえる機会は何度も訪れるだろう。
「撤退するぞ!」
こうして3軍団は退却を開始した。
敵が退却する様子を見た王国軍は歓喜の声を上げた。
「やった!勝ったぞ!」
「アルベロン伯爵王国万歳!」
帝国軍に勝利を収めたというのは、いったいどれほどのことだろうか。
しかも、一人の犠牲者も出さない圧勝で。
王国の民たちは自分たちに勝利をもたらした彼女の名を讃えた。
「女王陛下万歳!」
「モリナ女王万歳!」
バラハンも近づき、彼女に感嘆の言葉をかけた。
「圧勝です。我が軍に被害は一人もありませんでした。」
マリナは緊張で青ざめていた顔にようやく安堵の息をついた。
「それでも危険でした。もしアルベロン伯爵が損害を無視して突撃していたら、我が軍は壊滅していたでしょう。」
バラハンは頷きながら顎をさすった。
「ともあれ幸運でした。これで勝利は私たちのものですね。」
理解しがたい言葉だった。
一度戦いに敗れたとはいえ、まだ3軍団は強力な戦力を保持していた。
それでも、どうして勝利が自分たちのものだと言えるのだろう?
バラハンはその理由を続けた。
「陛下の策略が続くでしょう。」
驚くべき話だった。
この戦いがマリの計画の終わりではないということだったのだ。
彼女は3軍団に向けて連続する連環計を準備していたのだ!
バラハンは確信を込めて語った。
「奴らは今日、勝利する唯一の機会を逃しました。」
「うまくいかなければなりませんね。」
「うまくいきます。」
バラハンは今や完全に彼女を信じていた。
しかし、マリの表情は晴れやかにはならなかった。
(策略を練っても、実際にどんな結果になるのかは誰にも分からない。)
マリは冷静な目で視線を巡らせた。
3軍団が退却していく方向。そこはまさに彼女が2つ目の策略を準備していた場所だった。