こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は200話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
200話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 開戦③
前線を退いたアルベロン伯爵は被害状況の報告を受ける。
「・・・異常なしです。」
アルベロンは拳を握りしめた。
幸いにも早めに撤退したおかげで、犠牲者の数はそれほど多くはなかった。
しかし、騎士部隊が損害を受けたのは事実だった。
(大丈夫だ。まだ我が軍団の戦力は圧倒的だ。)
今回ばかりは敵を過小評価したために損害を被ったが、今後はそんなことはないだろう。
(正攻法で進めば、どんな策略も意味をなさない。)
アルベロンは今後は絶対にマリの策略に振り回されないと誓った。
しかし、彼は知らなかった。
すでに彼女の2番目の策略が実行されていたことを。
「大変だ!大変だ!大問題です!」
慌てた兵士の声が大声で響き渡った。
「何事だ?!」
「ナリアン城が襲撃されました!」
「・・・!」
その報告を聞いたアルベロンと周囲の側近たちは驚愕する。
ナリアン城はまさに3軍団の軍糧が保管されている場所だったからだ。
「一体誰が?!」
「王室騎士団です! 彼らがこっそり後方に回り込み、城を襲撃して軍糧をすべて奪い去りました!」
アルベロンの顔は蒼白になった。
(そういえばさっきの会戦の際、王室騎士団の主力は見当たらなかった。そうすると、最初から会戦は目くらましで、本当の目的は軍糧庫だったというのか?)
「軍営に残っている食糧はどのくらいだ?」
「せいぜい1週間分しかありません。」
アルベロンは拳を固く握りしめた。
唇を噛むほどの悔しさだ。
いかに強力な軍隊でも、腹を空かせたままではまともに戦うことができない。
さらにマリの計画がこれで終わるわけがないのは明らかだった。
「警戒を強めろ!」
「今度は何だ?!」
「王室騎士団だ!」
驚いて外に出てみると、王室騎士団の騎士たちが馬に乗って近づいていた。
しかし理解できないのは、彼らが襲撃しに来た様子ではなかったことだ。
前列に立つバルハン伯爵が、矢が届くほどの距離まで堂々と歩み寄ってきた。
(何のつもりだ?)
アルベロンは顎を引き締めた。
しかし彼は彼らの意図を理解することができた。
バルハン伯爵がこのように叫んだからだ。
「帝国の兵士たちに問う! 今、貴様らはここで何をしているのだ! あの貪欲なアルベロンは、自らの欲のために邪悪な西帝国に魂を売った下劣な者だ! そのような者に、なぜ従っているのだ?」
「・・・!」
「貴様らが本当に同盟国の兵士ならば、この汚れたアルベロンの首を切り落とすのが正しいことではないのか!」
アルベロンの顔は怒りに震えた。
それでもアルベロンが西帝国と裏取引をしているという噂が3軍団内で密かに広がっていることは知っていた。
そのような状況下で、その話を聞いた兵士たちが動揺しないわけがない。
「本当に軍団長が西帝国と結託したのか?」
「それなら、以前聞いた噂は本当に事実だったのか?」
アルベロンは兵士たちがさらに動揺する前に叫んだ。
「我々はモリナを討つために出陣しただけだ! 無意味な話に耳を貸すな!」
すぐに騎士たちが出撃した。
しかし、バルハンを率いる王室騎士団は大笑いしながらその場を去っていった。
そして、そのような出来事が何度か繰り返された。
昼夜を問わず、王室騎士団はしつこく現れてアルベロンが西帝国と結託したと嘲った。
3軍団の士気はがくんと落ち、地に落ちるような状況に陥り、物資不足まで加わり最悪の状況となった。
脱走者が続出し、それも一人二人ではなかった。
「大変です! 兵士たちが次々と脱走しています!」
側近の報告にアルベロンは机を叩き、怒りを爆発させた。
「これ以上時間を引き延ばすことはできない!このままでは戦いもせず、惨めな敗北を迎えるだけだ!」
アルベロンは、彼女が罠を仕掛けているのかどうかは分からなかった。
しかし、他に選択肢がない今、その考えを振り払った。
彼は冷静な表情で心の中でつぶやいた。
(他に必要なものはない。モリナ女王さえ捕らえれば、それが我々の勝利だ。)
運命の決戦の日。
マリナはルカム峡谷で、3軍団が近づいてくる様子を見守っていた。
初めて見たときの威容と比べると、3軍団はどこか弱々しく見える。
無数の戦闘を経て、疲労と消耗が刻み込まれた様子が明らかだ。
(どうか、全てがうまくいきますように。)
彼女は心の中で祈りながら、これまで計画通り進んできた流れを思い返した。
しかし、最後の瞬間、ほんの小さなミスでも致命的な結果を招きかねない緊張が漂っていた。
「突撃だ!王国の奴らに我々の本気を見せてやれ!」
「やれ!」
アルベロンは強引に突撃命令を下した。
わあああ!
恐ろしい馬蹄の轟音と共に、騎士たちの突撃が始まる。
初戦時ほどの勢いはなかったものの、それでも山を切り裂くような迫力があった。
しかし、この突撃をそのまま受けるほど無防備ではない。
すぐにマリナが仕掛けた罠が作動した。
馬たちが地面に設置されたキャルトル(マルムスイ)に引っかかり、次々と転倒していく。
馬たちが倒れると突撃陣形は瞬時に崩壊した。
「側面部隊で攻撃せよ!」
バルハン将軍が命じると、両側面の拠点で待機していた兵士たちが一斉に起き上がり、矢の雨を放ち始めた。
完全に挟撃の形となった騎士たちは混乱し、絶叫が響き渡った。
「そ、そんな・・・!」
3軍団の指揮官たちは、不安げな表情を浮かべた。
このままでは、初戦で味わった悪夢が再び訪れることになるだろう。
(なんてことだ!)
アルベロンは拳を強く握りしめる。
「閣下、どうすればいいのでしょうか?撤退を命じますか?このままでは被害が大きくなるだけです。」
しかし、アルベロンは毅然と顎を引き締めて言った。
「撤退はない。」
「ですが?」
「このまま退けば、我々の終わりだ。この愚か者め!」
「・・・!」
歯を食いしばったアルベロンは、顔全体を覆う兜を被り、戦闘用の槍を手に取った。
「私が直接出る。」
彼は槍を握り直し、すぐにモリナがいるという陣形に向かって歩みを進めた。
「左右で身動きの取れない敵に気を取られるな!モリナ女王さえ捕らえれば我々の勝利だ!全員、私に続け!」
そう言うと、後方で足止めされていた3軍団のすべての兵士が彼に続き、峡谷の中へと雪崩れ込んでいった。
王国軍のバルハン伯爵はため息をついた。
「やはり愚かな選択をするものですね。」
彼は続けて言った。
「しかし、この状況で退けば次の機会はもうありません。お見事です、陛下。」
この状況を作り出したのはすべて彼女の策略のおかげだった。
バルハンは感嘆の表情で彼女を見つめる。
しかしマリナは答えず、険しい表情で戦場を見つめていた。
(苦しいな。)
勝ってはいるものの、素直に喜べる気持ちにはなれなかった。
敵軍とはいえ、自分の策略によって多くの命が失われるのを見るのは胸が痛んだ。
(こんな戦争、二度としたくないのに。)
彼女は苦々しい思いに駆られた。
しかし、今は感傷に浸っている場合ではない。
敵を押し返せなければ自分たちが死ぬことになる。
彼女には王国民を守る責任があった。
マリナは目を鋭く光らせながら命じた。
「最後の作戦を実行してください。」
「はい、陛下!」
バルハンは冷静に答えた後、命令する。
「火矢を放て!」
一方で、マリナを追って突進していたアルベロンは、火矢という言葉に驚愕し、目を見開いた。
(火攻めだと?)
驚いて周囲を見ると、草木が生い茂り、十分に火が燃え広がる地形だった。
多くの兵が集まる状況下で火をつければどうなるか、結果は明白だ。
(これは・・・!)
ヒュッ!ヒュッ!ヒュッ!
火矢が空を切って飛び交い、次々と炎が上がる。
峡谷の内部を埋め尽くしていた3軍団は一瞬にして大混乱に陥った。
「冷静になれ!大火事ではない!無視して突撃し、モリナ女王を捕まえろ!」
アルベロンが剣を振り乱しながら混乱を抑えようとしたが、無駄だった。
3軍団は隣で燃え広がる炎と空から降り注ぐ火矢に耐えられず、次々と崩れ去っていった。
(これで終わりか。)
アルベロンは絶望に満ちた表情で考える。
屈辱と怒りが渦巻いていた。
裏切りまでして手に入れたものの、結局こうして虚しく終焉を迎えることになった。
(いや、まだ終わっていない!)
アルベロンは歯ぎしりしながら、目をぎらつかせた。
(モリナ女王!すべてを失っても彼女さえ捕らえればいい!それで俺の勝利だ!)
彼は側近に命じた。
「アビス騎士団を集めろ。」
「閣下?撤退すべきです。」
側近が慌てて諌めるように言ったが、アルベロンは怒鳴り声で叫んだ。
「黙れ!アビス騎士団を集めろ!」
アビス騎士団とは、3軍団の中でも精鋭で、かつてからアルベロンに忠誠を尽くしてきた騎士たちの集団だった。
その長である寡黙な騎士団長が前に進み出た。
「閣下。」
アルベロンは剣を握りしめ、遥か遠くにいるマリナを指差しながら命じる。
「他のことはどうでもいい。我々はモリナ女王を捕らえに行く。それができるか?」
騎士団長は無言で正面を見据えた。
「中央の意図的に脆弱化された防御、兵力がありません。この場所を突破するだけで可能になると思われます。」
「行くぞ!」
こうしてアルベロンとアビス騎士団が突進を開始した。
鉄壁の騎士たちの突進に、王国軍は驚き、立ちはだかる。
「止めろ!」
「なんとしても防げ!」
しかし、両軍が押し合う中、予期しなかった事態が発生した!
アビス騎士団が圧倒的な武力で王国軍の陣列を一気に打ち崩したのだ。
(これでは・・・!)
その光景を見て、マリの顔が青ざめた。
もともと王国軍の兵力は限られていた。
さらに、現在は陽動作戦のために王室騎士団のような強力な戦力が左右に分散しており、彼女がいる中央部は非常に防衛が薄い状態だった。
「止めろ!突破させてはならない!」
「くぁぁっ!」
王国軍は必死に前方を防ごうとしたが、力及ばず崩れ落ちた。
「あそこだ!あそこにモリナ女王がいるぞ!」
アルベロン伯爵は鋭い目で叫んだ。
殺気立った彼の視線がモリナに向けられた瞬間、彼女の体は本能的に硬直した。
(どうすればいいの?)
この瞬間だけは、彼女の策も全く役に立たなかった。
「陛下、後ろに下がってください!私が食い止めます!」
バルハン伯爵が彼女の前に立ちはだかった。
「で、でも・・・!」
「早く!陛下が捕まれば、それですべて終わりです!」
バルハンに続いた騎士たちが、彼女を守るため剣を抜き、立ちはだかった。
しかし、その数は決定的に少なかった。
(王室騎士団を左右に送るべきではなかった・・・)
バルハンは敗北を覚悟した表情を浮かべる。
王室騎士団の大部分が実質的な戦力を分散させていたため、正面を守る力が極端に薄くなっていた。
このような状況で、事態はさらに悪化した。
(まさかあの修羅場を切り抜けてここまで来るとは・・・)
既に遅すぎる後悔だった。
何としてでも彼女を守らなければならなかった。
「早くお逃げください、陛下!」
しかし、彼女は簡単にはその場を動けなかった。
(駄目だ。私が逃げたら王国軍は一瞬で崩れる。予備戦力がない私たちでは、敗北は避けられない)
現在、王国軍は慎重ながらも劣勢を徐々に露わにしていた。
あらゆる策を尽くしても、基本的な戦力差は覆せず、依然として明確な勝機を掴むことができていない。
この状況で彼女が逃げれば、それが終わりを意味していた。
一度で勝敗が決まるだろう。
「陛下!急いで!」