こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
206話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 残酷な交渉
急いで接見室に向かうと、バルハン伯爵とキエルハン侯爵がすでにそこにいた。
「使者は?」
「こちらです。」
マリは使者を見て疑わしい表情を浮かべた。
『あの者が使者だと?』
使者として現れたのは、汗まみれの痩せた男だった。
通常、使者として派遣されるのは洗練された貴族や勇敢な戦士が一般的であり、この男が使者だと言われても疑念を抱かざるを得なかった。
「くっ、クローヤン・・・王国のモリナ女王陛下にお目通り願いたい。」
使者として現れた男は息も絶え絶えで、言葉も途切れがちだ。
マリは怪訝な表情を浮かべた。
ストーン伯爵が何を意図してこのような者を使者として送ったのか、妙な勘が働いた。
そしてその痩せた男の言葉を耳にした。
「ス、ストーン伯爵様の伝言をお伝えするため参りました。」
「何でしょう?」
「伯爵様が女王陛下を、ウィセン城で開催される宴会にご招待すると申し上げております。」
マリは眉をひそめた。これはどういう話なのだ?
ウィセン城は西帝国軍に占領されている堅牢な城である。
そんな場所へ自分を招待するなど、一笑に付すべき話だ。
占領されたウィセン城へ行けば彼女がどうなるか、考えるまでもなかった。
「まさか私がその話を聞いて伺うとでもお思いですか?それとも、ストーン伯爵は私たちの王国を操る目的であなたを送り込んだのですか?」
しかし使者は困惑した表情で返答した。
「いえ、伯爵様は・・・女王陛下がこの状況を見て受け入れられないとおっしゃっています。」
その言葉に、マリは疑念の表情を浮かべた。
「聞くに値しない話です。陛下をわざわざ直接来させようとするとは。我々を操ろうという意図が明らかなので、あの者たちを即座に追い返すようにします。」
バルハンが怒りをあらわにして言った。
キエルハンも険しい表情で使者をにらみつける。
「ええと、まずこれを見ていただきたいのです。」
使者は震える声で言いながら、大きな箱を前に差し出した。
「これは何ですか?」
「ストーン伯爵から女王陛下への贈り物です。」
贈り物?
その場の全員が不審な顔をした。
「私が確認します、陛下。」
バルハンは警戒心を隠さない表情で箱を開けた。
そして、箱を開けた瞬間、彼は驚愕し悲鳴を上げる。
「ひっ!」
中には人の首が入っていた!
目を見開いたまま息絶えた者たちの首が箱の中に詰められていたのだ。
「・・・!」
そのおぞましい光景を目の当たりにしたマリは、心臓が止まりそうなほど動揺していた。
キエルハンが急いでマリの目を覆ったが、漂う腐臭が周囲を覆い尽くしていた。
チャキン!
「これは一体どういうつもりだ!」
バルハンが怒り狂い、剣を抜いて使者の喉元に突きつけた。
「わ、私には分かりません。ただ・・・ただの贈り物を届けるように言われただけです・・・!」
使者は怯えた様子でしどろもどろに答える。
「ストーン伯爵は私にこう伝えるよう言いました。『女王陛下が宴に出席しない場合、クローアン王国の民の首を毎日100個ずつ切り落とす』と。」
「・・・!」
「王国の民が殺されるのを防ぐ方法は、女王陛下がウィセン城に来てくださる以外にない、と言われました。」
マリの顔は死人のように青ざめた。
使者はそんな彼女の瞳を見つめながら、不気味に笑みを浮かべている。
「伯爵様は、女王様がお越しになることを心よりお待ちしております。」
・
・
・
死体の首を目にしたマリは、衝撃で立ち尽くしていた。
『なんて酷い手段を・・・!』
彼女が到着するまで、毎日100人の民の首を落とし、自分をおびき寄せようとする計画だなんて。
恐ろしさを超えて、不条理極まりない策だ。
『ストーン伯爵は、期限が過ぎれば民の首を切り始めるつもりだ。』
マリの手は震えていた。
あの悪魔のような男であれば、何の罪悪感も感じることなく、平然と王国民を殺戮するだろう。
『でも、私がウィセン城に行くわけにはいかない。城に足を踏み入れた瞬間、私もクローアン王国も終わりだわ。』
マリは自分を見つめるストーン伯爵の視線から目を逸らした。
彼の狂気を考えると、ウィセン城に足を踏み入れた瞬間にどんな拷問を受けるのか、想像するのも恐ろしかった。
『私一人が苦しむのは構わない。でも、王国民を救うことが最優先だ。でも、私を人質として捕らえることでストーン伯爵が満足するだろうか?』
マリは顎を引き、深く考え込んだ。
むしろ彼は彼女を囮にして、何もできない王国軍を徹底的に侮辱するつもりなのは明らかだった。
『一体どうすればいいの?』
王国の貴族たちは、絶対に受け入れられないと強硬な反応を示した。
「絶対に駄目です!王国民を人質にして陛下を脅すなんて!」
「これほど陛下が中心となり、西帝国に立ち向かうべきです!」
マリは静かに彼らの意見に耳を傾ける。
その言葉は一理あった。
このような残虐な策に屈するわけにはいかない。
しかし、そんな状況でも適切な解決策が見つからなかった。
マリの心は葛藤に包まれていた。
『しかし、罪もない人々の命が犠牲になるのをどうすればいい?』
貴族たちの意見が正しいのはわかっていたが、何も悪いことをしていないのに死んでいく人々をただ見過ごすことはできなかった。
どうしても彼らを無視するわけにはいかなかったのだ。
『もし私が行けば、彼らの命は・・・。』
その時、バルハンが彼女の心情を見抜いたかのように言葉を発した。
「駄目です、殿下。」
「・・・」
「今回は絶対に駄目です。行かれるのであれば、私の首を刎ねてから行ってください。」
その断固たる口調に、マリはキエルハンを見つめた。
キエルハンもまた、同じようにきっぱりと言い放った。
「駄目です。」
鋭くも断固たる言葉。
マリはその意志の強さに圧倒された。
しかし、キエルハンはさらに続けて言った。
「もしストーン伯爵の残虐な策略を阻止できる方法があるなら、私は命を賭けてもそれを実行します。」
マリは自分の拳を握りしめる。
「罪のない王国の民が命を失うのを見過ごすことはできません。」
キエルハンはじっと彼女を見つめていた。
マリは固く唇を噛みしめた。
ストーン伯爵の悪辣な方法に怒りがこみ上げ、彼女の目には涙が浮かんだ。
「どんな手段を使ってでも、王国の民を救う方法を考え出します。必ず。そして、ストーン伯爵にはその罪の代償を支払わせます。」
キエルハンは頭を下げ、誓うように言った。
「殿下の意思は、私が全力で支えます。」
罪のない王国の民が死ぬのを見過ごすことなどできない。
どんなことをしても、彼らが犠牲になるのを防がなければならない。
『でも、それが本当に可能だろうか?』
強い言葉でキエルハンに語ったものの、マリの胸には不安が渦巻いていた。
『西帝国軍を退けなければ、ストーン伯爵の悪辣な策略を阻止する方法はない。だけど、それをどうやって?私たちの力ではそれを成し遂げるのは不可能だ。』
彼女はストーン伯爵が考え出した方法を思い浮かべ、その極端さに恐怖を感じた。
それはあまりにも絶望的で、どんなに足掻いても抜け出せない罠のようだった。
『結局・・・私がストーン伯爵の元へ行くしかないのだろうか。』
彼女の指先が震える。
「誰かが王国を守り、滅亡を阻止したいと言うのなら、どうされますか?」
今も生々しく蘇る彼の声。
あの手に捕らえられるなら、彼女はどれほどの苦痛を味わうのだろう。
ただ想像するだけで全身が凍りつき、恐怖に震えた。
『それでも、王国の人々を守るためなら、私は犠牲になろう。それが私一人の犠牲で終わるのなら、どれだけ苦しくても耐えられる。』
マリは唇を噛み締めた。
だが、問題は彼女が犠牲になったところで事態が収まるとは限らないことだ。
自分が囮になることでクローアン王国自体が終焉を迎える可能性があるという現実を彼女は理解していた。