こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

235話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 和平への道③
すべての運命がかかったその決定的な瞬間!
幕舎の中で文書を調べていたマリは、突然冷たい感覚を覚えた。
神が助けてくれたのだろうか?
それとも彼を愛する心が奇跡を起こしたのだろうか?
冷たい空気が彼女の全身を包み込み、まるで首筋に刃が突きつけられたかのような不吉な感覚だった。
「モリナ女王?」
怯えた彼女を見て、ラエルが疑問の表情を浮かべた。
マリも彼を見つめた。
その瞬間、なぜかマリは自分でも理解できない行動を取った。
突然彼を抱きしめたのだ!
衝動的な行動だった。
「マリ!?」
ラエルは驚いて彼女を見つめた。
そしてその瞬間――
ヒューッ!ブスッ!
空気を切り裂く音とともに、マリの体から血が飛び散った。
「……!」
交渉の場にいた人々は、状況を理解できずに呆然と立ち尽くした。
しばらくの間、誰も何もできずにただ動揺するばかりだった。
時間が止まったように感じられた。
しかし、それも束の間、悲鳴が上がった。
「陛下!これは一体どういうことですか?!」 「陛下、大丈夫ですか?!」
王国の騎士と帝国の騎士たちが彼らのもとに駆け寄った。
「マリ!マリ!なんということだ……!」
ラエルは慌ててマリの状態を確認した。
矢は彼女の腕をかすめただけだった。
幸い致命傷ではなかったが、問題は別にあった。
それは――毒だった!
「ラ、ラ……。」
マリは弱々しい表情でラエルを見上げた。
彼女の顔が急速に青白くなっていくのを見て、ラエルは矢に毒が塗られていることを察した。
「毒だ!早く包帯と応急処置の道具を持ってこい!急げ!」
騎士たちは急いで薬品と処置道具を持ってきた。
「お願いだ、マリ。少しだけ耐えてくれ!頼む……!」
ラエルは焦りと絶望の入り混じった感情で、彼女の傷を治療する。
毒が広がらないように腕を縛り、迅速に処置を進めた。
ラエルは慎重に矢を抜き取り、直接口で毒を吸い出した。
通常、傷口に口をつけて毒を吸い出す行為は、いくつかの理由で推奨されない処置法だが、今はそのようなことを気にしている場合ではなかった。
「ラ、ラ……。」
マリは毒の影響で朦朧とした目でラエルを見つめた。
「大丈夫……ですか?」
「俺は大丈夫だ。君は今……!」
「……よかった。」
彼の「大丈夫」という言葉に安心したのか、マリはわずかに笑みを浮かべた。
その表情を見たラエルは胸が締め付けられるような痛みを感じた。
心臓が引き裂かれるように苦しかった。
「少しだけ耐えてくれ。すぐに処置したから、きっと良くなるはずだ。だから!」
その時だった。
突然、幕舎の外から騒がしい声が聞こえてきた。
「わあ!」
「東帝国の奴らを叩きのめせ!」
幕舎の中にいた帝国の騎士たちは、剣を抜いて状況を確認する準備を始めた。
「これは何だ?王国軍の攻撃なのか?」
王国の騎士たちも困惑したように騒ぎ始めた。
「うっ、我々の攻撃ではありません!これは明らかに誤解です……!」
しかしその言葉が終わらないうちに、矢が交渉の場に向かって飛んできた。
「陛下!身を隠してください!」
ラエルはマリを抱きかかえて立ち上がった。
マリは急いでラエルの腕を振り払おうとした。
「私は、大丈夫ですから。置いて行ってください。」
状況を把握しようとするマリの言葉にもかかわらず、ラエルは彼女を抱きかかえたまま周囲を見渡した。
混乱の中、マリを守るべきだという気持ちがラエルの胸を強く突き動かした。
「君をどうして置いていけるんだ!」
ラエルは声を荒げることしかできなかった。
「道を開けろ!」
「はい、陛下!」
帝国の騎士たちはすぐに幕舎の外へ飛び出し、王国の騎士たちも力を合わせて状況を収拾しようと動き始めた。
外に出てみると、王国軍の服装をした兵士たちが旗を掲げていた。
ざっと見ても100人を超えているようだった。
「これ、どういうこと?」
マリはラエルの腕に抱えられながら目を見開いた。
信じられない光景だ。
『和平協定に反対する人々がこんなにも多いなんて?』
彼女も帝国との和解に否定的な意見を持つ人々がいることは知っていた。
しかし、それは少数の意見に過ぎず、ここまで軍事行動に発展するとは思いもよらなかった。
そんな時、上の方から一人の黒幕が姿を現した。
「意図せず国王陛下のお体に危害を加えることになり、大変申し訳ありません。これは全て王国の忠誠のために行ったことであり、どうかお許しいただければ幸いです。」
マリはその人物を見た瞬間、直感的に気づいた。
『フェルディン男爵じゃない!どれだけフェルディン男爵が和解に反対していたとしても、こんなことをするはずがない。』
何よりもその目つきが全く違った。
本物のフェルディン男爵の目は穏やかなものであるのに対し、今、そこに立っている人物の目は狂気に満ちていた。
その人物の目つきは蛇のように冷たかった。
「まさか?」
マリは信じられない考えに震え、唾を飲み込んだ。
その目つきは誰かを強く連想させた。
すぐに確信に至るほど見慣れた姿だった。
その正体は、死んだと思われていたストーン伯爵だった。
「帝国の皇帝を殺せ!」
「王国民の恨みを晴らせ!」
王国の兵士たちは目に血を宿しながら剣を振り回した。
「やめろ!」
マリは彼らがすべて帝国に深い恨みを抱く者たちだと気づいた。
ストーン伯爵は王国のフェルディン男爵に成りすまし、彼らを煽動して今回の事件を引き起こしたのだった。
マリは彼らを止めようとしたが、毒によって麻痺した舌のせいで声を出すことができなかった。
「陛下をお守りしろ!」
「防げ!」
後方から来た騎士たちが必死に防ごうとしたが、兵力の差があまりにも大きかった。
目の前の敵をようやく抑えても、横から槍が飛んできた。騎士たちは一瞬の隙も許さなかった。
地面に崩れた一人の体から血が流れ出た。
「陛下、避難してください!」
一人の騎士が血を吐きながら叫んだ。
その騎士たちが命をかけて道を開いたおかげで退路が確保された。
ラエルは片手でマリを抱え、もう一方の手で剣を振り回しながら王国軍の間を切り抜けて進んだ。
「うっ……!」
ラエルの剣術は極めて高い技術であり、王国軍の兵士たちは次々と倒れ横に崩れ落ちた。
「陛下、早くお逃げください!急いで!」
ラエルは奥歯を噛み締め、絶望的な瞬間から生じた隙間を抜け出していった。
「敵を止めろ!一人たりとも逃がすな!」
帝国の騎士たちがラエルが抜け出した道を塞ごうと奮闘した。
命を賭けた彼らの戦いにより、王国軍の兵士たちは容易に道を切り開けなかった。
「男爵様、このままだとラエル皇帝が逃げてしまいます。」
一人の騎士が慎重な声で言った。
ペルディン男爵とその仲間たちは、過去の戦争で帝国軍によって家族を失った復讐心から、この計画に参加していた。
ラキは余裕のある表情で微笑みながら言った。
「逃げても構わない。」
「どうして?」
ラキは薄く唇を上げ、冷たく笑った。
「これは一つの罠に過ぎないからさ。」
彼は今回の策略を企て、二重、三重の仕掛けを用意していた。
矢が飛び交う中でも兵士たちを配置し、逃げ出した場合に備えて別の兵士たちを脱出経路に待機させていた。
『どうせあの道は兵士たちが封鎖している場所だ。ゆっくり捕まえればいい。』
ゆっくりと進めば、すでにラエル皇帝は命を落としているだろう。
ラキはラエルの遺体を見て絶望するモリナの表情を想像していた。
その後、最後の帝国騎士が倒れた後、ラキはゆっくりと歩みを進めた。
彼がどこに向かうのかは誰にも分からなかった。
迷う必要もない。
逃げた方向に、マリが流した血が少しずつ滴っていたからだ。
ラキは地面に這いつくばった彼女の血を手で撫でながら悪魔のように微笑んだ。
そして、その血から漂う香りを感じると、冷笑を浮かべた。
「モリナ。」
ラキは彼女の名前を心の中で呼んだ。
それはまるで彼女を貶めるような気持ちを込めて。
「ついにあなたが崩れゆく姿を目にすることができるんだな。」
その前方で息を潜めているのはハメル男爵だった。
彼は帝国に対して最も過激な反感を抱く強硬派であり、過去にラキから支援を受けていたこともある。
それゆえ、今回のラキの提案を歓喜して受け入れた。
ハメル男爵はすでにラエルの命を奪う準備を整え、彼女の首が落ちる瞬間を今か今かと待っていた。
「終わりだ。」
ラキは、ラエルの首が落ちる音を想像しながら不敵な笑みを浮かべた。







