こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

219話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 交渉②
ヨハネフ3世は驚きの表情を浮かべた。
西帝国で最も余っているものが木材だった。
現在のエルフェロン城外も鬱蒼とした森で覆われている。
つまり、食糧の代価として木材を提供するだけで済む。
それはあまりにも西帝国に有利な提案だった。
「私たちが損をする取引ではありません。今後、クローアン王国には多くの木材が必要になるでしょう。」
マリはクローアン王国の青写真を思い描いた。
彼女は単なる農業だけでなく、さまざまな産業分野でクローアン王国を発展させる考えを持っていた。
未開拓の鉱山開発、小規模な製造業、さらには近年需要が急増している紙の生産に至るまで。
彼女の計画するすべての産業分野で大量の木材が必要だった。
しかしクローアンは、西帝国に比べ木材資源が大幅に不足していた。
『それなら、余剰の食糧で大量の木材を手に入れることができれば、絶対に損はない。』
さらに、この取引の最大の利点は、西帝国との相互信頼だった。
お互いに利益となる取引を行うことで、西帝国もクローアン王国を軽んじることはできなくなるだろう。
「今後5年、その期間中は不可侵条約を結びましょう。」
「不可侵条約が維持される限り、食糧と木材の取引は継続されるということですか?」
「はい。」
マリは相手を見つめた。
ヨハネフ3世は疑念を込めた声で尋ねた。
「それで、なぜ5年なのです?」
「私たちクローアン王国は、5年以内に西帝国の侵攻を恐れる必要がないほど強くなるつもりですから。」
「……!」
マリの力強い声にヨハネフ3世の目が大きく見開かれた。
そして彼は、やがて笑みを浮かべた。
「ククク、なるほど。5年以内に我々西帝国に匹敵するほど強くなるつもりとは。見事です。」
「笑っているのですか?」
「いえ、そんなことはありませんよ。」
ヨハネフ3世は微笑みを浮かべました。
「他の人が言ったのなら笑っていたでしょうが、王女、いえ、今は女王であるあなたがそう言うと笑えませんね。私も緊張しているのです。」
彼は穏やかな表情を浮かべる少女を見つめました。
彼女ならば不可能を可能にするだろうと確信しているようでした。
それどころか、十分に可能性があると感じているのです。
「ですが、もしこのような協定を結んだ後に、予期せぬ事態が発生した場合はどうされるのでしょうか?たとえば、思いもよらぬ不測の事態が再び戦争を引き起こしたりすることを考えると……。」
「不可侵協定を守らないということですか?」
「まさか。ただ気になっているだけです。」
マリはため息をつき、冷静に答えました。
「その時、陛下には覚悟を決めていただく必要があります。」
「覚悟、とは?」
「今回治療した心臓の腫瘍。後々に再発する可能性がありますよ。もし我々クローアンが陛下を攻撃すれば、いつの日か陛下は自分の病を治療する医師を失うことになります。」
心臓腫瘍――正確には心臓粘液腫 (Cardiac myxoma)。
かなりの頻度で再発する病だ。
ヨハネフ3世はマリが慎重に診断した安全装置が自分の病であることを理解し、堂々とした表情を見せた。
確実に病が再発する時期がわからない状況で、クローアン王国を攻撃することは、自ら命を賭ける行為に他ならない。
「これは抜け道がないですね。完全に負けました。あなたの要求をすべて受け入れます。」
ヨハネフ3世は深々とお辞儀をした。
マリは胸がドキドキと高鳴った。
ついに数多くの苦難を乗り越え、帝国とクローアン王国の戦争が終わりを迎えたのだ。
「では、文書に正確に協定内容を記して……。」
彼女がそう話した瞬間、突然今回もまた異変が起きた。
ヨハネフ3世が胸を押さえて苦痛に呻いたのだ!
「ぐっ!」
「……陛下!?」
マリは驚いて急いで彼に駆け寄った。
その瞬間、ヨハネフ3世は彼女の手をしっかりと握りしめた。
彼の顔には、つい先ほどまでの苦痛が嘘のように、微笑が浮かんでいた。
「……陛下?」
彼女は彼が何か策略を巡らせているのではないかと疑念を抱いた。
「胸がとても痛むのです。」
「……本当ですか?なんだか信じられませんが……。」
「本当です。あまりにも痛くて、立っているのがやっとです。」
「嘘のように聞こえますけど……。」
ヨハネフ3世は彼女の手をさらに強く握りながら言った。
「これからもこんな痛みが続くようなら、この協定にこうした内容を加えるのはどうでしょうか?」
「……え?」
「あなたが主治医として、私の治療を続けてくれるということです。それがあれば、両国の信頼もさらに強まり、私の胸の痛みも解消されるのではないでしょうか。……あなたが私の個人的な主治医にならない限り、私はこの協定に同意しません。」
彼は満足げな笑みを浮かべた。
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こうしてモリナとヨハネフ3世との間で協定が成立した。
内容は、即時の西帝国軍の撤退、5年間の不可侵条約、そして両国間の今後の協力に関する規定を含むものだった。
「戦争が終わったって?」
「西帝国軍が退却するって?」
終戦の知らせは瞬く間にクローアン王国全土に広まった。
長く続いた激しい戦いに耐え抜いた王国民たちは、信じられないという表情を浮かべた。
戦争が終わったという事実も驚きだったが、それ以上に王国民たちを胸を躍らせたのは、彼らの女王モリナの生存という知らせだった。
「女王陛下がまだご存命だと?」
「本当に?」
人々は互いに顔を見合わせ、信じられないという表情を浮かべた。
彼女が亡くなったと思い、どれだけ悲しんだことか。
だが、彼女が生きていただけでなく、部隊を率いて西帝国軍の首都を攻略し、終戦に導いたとは。
王国の民たちはあまりの喜びに胸がいっぱいになり、歓声を上げ始めた。
「本当に良かった。本当に良かった……。女王陛下が本当にご無事で戻られたなんて……」
「だから言っただろう!女王陛下がそう簡単にお亡くなりになるわけがないって! 天が守ってくださったんだ!」
人々は歓喜の声を上げた。
「万歳、女王陛下!」
「神々があなたを祝福しますように!」
人々は、西帝国との戦争が終結したことよりも、女王が生きているという事実に、より大きな喜びを感じているようだった。
感極まって涙を流す者も多かった。
こうしてクローアン王国には一時の平和と幸福が訪れた。
王国は西帝国に勝利して戻ってきたモリナ女王を中心に、戦争の被害を復旧し、各機関を整備していった。
すべてが順調な状況だった。
しかし、一つだけ気になる事実があった。
「まだストーン伯爵の遺体が発見されていないというのですか?」
「はい、陛下。」
マリナは眉をひそめた。
当然ながら、今頃遺体が見つかっていると思っていたのに、まさか?
『まさか、まだ生きているのでは……?』
マリナは恐る恐るその可能性を考えた。
到底生き延びられる状況ではないはずだ。
『仮に生きていたとしても、西帝国との戦争はすでに終わった。』
しかし、あの蛇のような男を思うと、心のどこかで不安が拭えなかった。
マリナはその確信を得るために指示を出した。
「それでも引き続き、遺体の捜索を続けてください。」
「はい、分かりました、陛下。」
こうしてストロン伯爵の件は多少の気がかりを残しつつも、それ以外には平和な時期が訪れた。
王国民たちは喜びの表情で王国を再建していった。
しかし、その平和の時間は極めて短かった。
程なくして緊急の知らせが王国に舞い込んだ。
それはラエルの東帝国が東方の教国を陥落させたという知らせだった。
東方教国を追い出した東帝国の刃がどこに向かうのか、誰もが不安に思っていたのだ。
『彼は戦争を望んでいないだろう。しかし、このような国家間の問題は皇帝一人の意向で決まるものではない。』
マリナは険しい表情で考え込んだ。
もしラエルが東帝国の貴族たちを説得することに失敗した場合、東帝国は王国に対して侵略軍を派遣する可能性がある。
「事態が悪化する可能性に備えなければならないですね。」
マリナは引き締まった表情でそう言った。
こうしてまた新たな緊張が王国に押し寄せ、マリナとラエルの運命は再び危機の渦中に立たされることとなった。








