あなたの主治医はもう辞めます！【９０話】ネタバレ

お客さんをしばらく受け取った後、しばらく休んでいると、フェレルマン子爵が立ち寄った。

「リチェ、忙しいでしょ？食べてからやりなさい」

彼はロコミで広がった南側のブースのチェリータルトを買って誇らしげに話した。

「これが有名だそうだが」

「ああ、それは美味しいですよね」

フェレルマン子爵の顔に失望感が満ちていた。

「食べたことあるの？」

その言葉に答えたのはディエルだ。

「公爵様があれこれ有名なものはもう買って運んでいらっしゃいます」

私はブースの後ろを指差す。

エルアンが熱心に買って積み上げたあらゆる食べ物と特異な薬草、装身具などが山を成している。

おそらく今も直接このブースあのブースを漁っているのだろう。

フェレルマン子爵は呆れたかのようにため息をついた。

「とにかく正常ではない」

ディエルが後ろから激しくうなずいた。

「リチェ、公爵城で楽に暮らしていたのに、急にこんなに忙しくなって大変じゃない？」

フェレルマン子爵は、エルアンについてこれ以上話したくないかのように話題を変える。

「お客さんがますます増えるだろう。みんなリチェ・エステルのブースが立派だとひそひそ話していたが」

私は肩をすくめて答えた。

「みんな私のが優れていることを知ることになるんですよね」

前世でもやったことだとは限らない。

その上、私の名前をかけてブースを作った理由があった。

「多くの人に認められて実力で有名になればいいですしね」

「うん」

フェレルマン子爵は「ごほん」と声を整えながら答えた。

「名声が高まるのは剌激的なことだ」

やはりかなり個人主義的な人が若い日に皇室医療研究陣に入った理由があった。

研究陣に入ること自体が能力の認定を意味し、すごい研究結果を発表でもすれは全国民が知ることになるからだ。

彼もやはりあちこちで天才と呼ばれるのが嫌いではなかったようだった。

私ももう成人だし、立派な実力で名を馳せたかった。

セルイヤーズ公爵領の主治医ではなく、リチェ・エステルの実力を堂々と披露したかったのだ。

しかも久しぶりに不特定多数のお客様をもらってみたら昔のことが思い出してそれなりに楽しかった。

しかし、私には今待っている人がいる。

「まだか？」

フェレルマン子爵は短く尋ねたが、私は彼が誰を念頭に置いているのか知っていた。

「ええ、でももうすぐ来るでしょう」

私はブースの前に立てておいた立て看板をちらりと見て答える。

「来るしかないでしょう」

過去の生涯で、セルイヤーズ公爵領を廃墟にした人々の終わりが本当に近づいていた。

数日前から探し続けてみたが、アモリの花は市場で種が枯れてしまった。

薬草の商団を独占して運営しているフェレルマン商団のためだ。

ロマンは難なく、そのアモリの花が全部どこに行ったのか知る。

使用人たちの話によると、リチェ・エステルが建国祭ブースのためにフェレルマン商団を通じてアモリの花を全て購入してしまったという。

「あの平民の女はことあるごとに障害になるね」

ロマンは歯ぎしりをした。

「あの時確かに消してしまわなければならなかったのに・・・」

ハンスを利用した時、もう少し慎重になるべきだった。

思ったよりずっと賢くて、もっと邪魔になる存在だ。

しかし、今後悔しても仕方のないことだった。

「男爵様」

彼が頭をかきむしってため息をついていると、使用人が彼の執務室のドアを叩く。

「お入りなさい」

ロマンはおずおずと入ってきた使用人に急いで尋ねる。

「わかった？」

「はい、ちょうどそのブースに行ってきたところです」

下男は頭を下げて答えた。

彼はロマンの命令に従って、リチェがブースでアモリの花をどのように使うかを調べてきたところだ。

「そのブースでは濃縮試薬を売っていましたが・・・」

あのような簡易ブースでお客さんをたくさん受けるためには、最も効果的な方法ではあった。

ロマンは眉をひそめてうなずいた。

「アモリの花の濃縮液1本を30万ゴールドで売っていました」

「え？ 30万？」

普段のアモリの花の値段を考えると、とんでもない値段だ。

「それを誰が買うの？」

その上、アモリの花は需要があまりないだけに、それほど効能の良い薬草でもなかった。

ただ一つ、彼が知っている皮膚病を除けば・・・。

「美容目的だというのに、一つも売れていないようです。見てみると、非良心的に処方するようでもないので、押し売りするつもりもなさそうでした」

アモリの花が美肌に良いのは事実だが、その程度の効能に代わる薬草は多かった。

ロマンはいらいらして机を指で叩く。

先日、ウェデリックの行方を知っているというある情報ギルドから手紙を送った。

莫大な金額を要求したその手紙には、ウェデリックのものであることが明らかな薄茶色の髪の毛が一握り入っていたのだ。

陰で活動するというその情報ギルドは共に行方不明になったアーロン・クリルソに対する正確な情報も叙述して同封した。

セルイヤーズ公爵家に投入するための偽の身の上ではなく、正確なつながりまで指摘していた。

その情報ギルドと連絡するためには非常識な金額が必要だったが、ロマンには選択の余地がなかった。

しかし、男爵領はそれだけの金額を持っていない。

すでに反乱のためにあれこれ準備をするために男爵はいつも資金難に苦しんでいたが、西側の情報ギルドにほとんど非常資金まで全て払い落とした状態だった。

「濃縮試薬なら、市中のアモリの花を全部盗んだのも理解できる」

ロマンはゆっくりと立ち上がる。

お金が必要なのは事実だった。

そして計画が途中で中断されたが、今は大金を稼げる機会はたった一度だけ。

それでもウェデリックが消える前に『あの方』の話を聞いてメールレス公国に下作業をしておいてよかった。

「それを買ってこよう」

ロマンは低い声でつぶやいた。

「え？」

資金事情を知っている使用人が当惑しているようにロマンを眺める。

とんでもない価格をつけたアモリ花濃縮試薬を買えるはずがなかったためだ。

「そのためには直接行かなければならない」

ロマンは使用人の不安な表情を無視して話を続けた。

資金問題で「金を払って買って来い」と部下にやらせる状況ではない。

その上、彼は貴族であり、直接行けばそのような平民一人を相手にできない理由がなかった。

今出発すれば、建国祭の後半部には到着できそうだ。

ロマンは急いで外出の準備をする。

「男爵様、ですが・・・」

使用人は唇を甘やかしてそのまま口をつぐんでしまった。

「念のためだ。建国祭に行って、ティシリアの代わりに聖女が私を指名して神託を下してくれるだろう」

ロマンは独り言をつぶやいた。

「そうすれば、ウェデリックの行方が分かるかも・・・」

エルアンのお金と権力で、私はそのごたごたした首都でも最も快適な高級旅館に泊まっていた。

一日中話していたので、私は喉にいいハーブティーを飲みながらのんびりしていた。

「リチェ、入ってもいい？」

「はい」

医学書を読んでいるが、毎晩そうだったようにエルアンが入ってきた。

建国祭の期間中、私は彼の様子を見て、軽い会話をした後、帰したりした。

もちろん彼が私をじっと見つめる時には胸が少しむかむかしたが、顔に出さずに普段のように過ごそうと努めている。

「どこか不便なところでもありますか？」

私が立ち上がって尋ねると、エルアンはにっこりと笑って答えた。

「目」

「はい？症状はどうですか？」

「ここ数日、君をあまり見ないから残像がちらちらする」

体が散漫な成人男性であるにもかかわらず、口元をしょぼしょぼに垂らした姿が不思議に可愛く見えた。

彼がぐずぐずする声を人為的に出す度に、完全に消えたようだった幼い頃の顔がふと見える。

「どうも精神錯乱のようですが、大変ですね」

私が真剣な顔で打ち返すと、エルアンは大げさにため息をついた。

「ちゃんと受け取ってくれ。一ヶ月までは受け入れてくれることにしたじゃないか」

「うーん・・・そうですね。受け入れます」

約束は約束だったので、私は快くうなずいた。

「じゃあ、出かける？」

「え？」

「首都で仕事ばかりしているじゃないか。風にでも当たったらどう？天気もいいのに」

会話を受けてくれることから突然デートを受けてくれることに巧妙に目的語が変わった。

最初から計算されたような要望にもかかわらず、私は彼の折れた目をとりつかれたように見つめる。

見たところ、体によく合う服、さわやかな体香、自然に手入れした髪の毛まで決心してきたに違いない。

「夜食にココナッツクッキーとペストリーまで用意した」

「ふむ・・・」

「涼しい夜風に吹かれながら、きれいな風景を見ながら一口食べると本当においしいと思うよ」

「きれいな風景ですか？」

「首都で一番美しいところに行こうと思って。人々はほとんどよく知らない。見たくない？」

エルアンはあまりにも完璧なデートを提案していたので、私は断る理由が見つからなかった。

貴族と平民という身分を取ってみれば、彼が男として悪い理由もない。

皮だけで見ると満点じゃないか！

『君の友逹もその男のことをもう好きなんだと思うよ』

このような度に、ディエルが言った言葉を思い出したりもした。

今までは理性的な私の性格上、最初から考えもしなかったが、身分問題は自分でやるというのにあえて押し出す必要はなかった。

「はい、行きましょう」

私がはっきり言うと、彼はにっこり笑って私に手を差し出した。