乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【１３６話】ネタバレ

「私が失敗し続けた原因は何だったと思いますか？」

「・・・アセラスが発見した、超越者を暴走させる薬のためですか？」

ダリアは慎重に仮説を提示する。

しかし、ルウェインは動揺しなかった。

「彼がこのすべての事の元凶であることは事実です。あなたの予想通り、すべてのルートで他の超越者たちが暴れるのは、すべて彼の企みのためだったのだから」

「・・・」

「私の母を何十回も死なせた彼の力、それも一つの原因です。しかし、本質的な原因ではありません」

ダリアは唇をかんだ。

ルウェインはしばらく待ってから言った。

「事態がこうなった本質的な原因は私にあります」

「・・・ルウェイン様にあるんですって？」

常識的に理解できない言葉。

しかし、彼はうなずいた。

「私の能力には限界があります。私が生を繰り返せば・繰り返すほど、繰り返されることには慣性が生じます」

「・・・それはどういう意味ですか？」

「例を一つ挙げます。初めて回帰した時、7歳の誕生日に私は書体教本を誕生日プレゼントとしてもらいました。次の回帰の時には歴史書をいただきました。私がその日の誕生日プレゼントに何をもらうかは、その時その時私の母の気持ちによって変わりました。でも5回目の回帰から、私の七歳の誕生日プレゼントは、引き続き書体教本に固定されました」

「・・・」

「以前は何の理由もなく、単なる偶然のために変わった出来事も、いつからかきっかけがなければ変わりません。人も同じです。きっかけも単純なきっかけではいけません。内面の本質を変えるような巨大な事件。そうでなければ、みんな行動していた通りに行動し、考えていた通りに考えます。彼らは自分たちが前の行動を繰り返しているという自覚さえありません。感じるとしてもすぐに忘れます」

ダリアは、この世界がゲームの中だということを感じさせたいくつかの瞬間を思い出した。

無条件に同じ方式で行動する人々。

メルデンとアドリーシャは必ず再会しなければならない。

アセラスはいつも同じ時期に同じようなことを言い、いつも神聖帝国に行って法王になる。

ルウェインはいつも4年後に首都で現れる。

セドリックはいつも死んでいる。

「なぜアセラスはずっと計略を巡らすのでしょうか？なぜ彼は何の理由も残っていない今もフレドリック王国を滅ぼそうとしますか？その理由を考えてみたことはありませんか？」

「・・・」

「繰り返しのためです。彼を動かす動力は憎悪ではなく慣性です。本人も認知できない慣性」

ルウェインは目を閉じる。

すると、まるで祈るように神聖な雰囲気が造成された。

今の彼はまるで果てしない道を歩く巡礼者のように見えた。

「これが私の罪。すべての人を繰り返し破局に追い込んだのは、私の能力そのものです」

ダリアは唇をかんだ。

なぜしきりにアセラスが気になったのか理由が分かった。

彼の行動で到底根拠が見つからない部分があったためだ。

不自然すぎるほどに。

「ある瞬間から、未来を知っているのに、私は彼らをコントロールすることができませんでした。アセラスが他の超越者を暴走させることを防いでも、彼らは決められた順番でアドリーシャに執着し、戦争を起こします。結局のところ、私は気づきます。この固定された世界に変革を起こすような存在が必要だって。それがまさにあなたです」

「・・・」

「私は魔法を研究しました。世界間の魂の移動魔法を。今世で失敗したら来世で、来世で失敗したらまた来世で。数えきれないほど繰り返す人生に魂は磨耗しました。ユースティアヘの愛も全て燃え、もう彼女を見ても残った感情は哀れなだけ。しかし、結論的に私は成功しました。私はあなたの世界に接近してあなたの世界を理解し、あなたの世界にくウロボロスの迷宮＞という形でこの世界を提示しました。あなたが『迷宮』で見たそのルートは、私が経験した無数の回を厳選して選んだものです。面白かったかどうか分かりませんね」

ルウェインは空虚な笑みを浮かべる。

ダリアはとても面と向かって笑うことができなかった。

「あなたはあなたの世界にいた中で、最もこの世界と波長が似ている人でした。そのため、『ウロボロスの迷宮』に一番深く共感し、この世界を一番愛したのです。それで私はあなたを選びました。あなたの魂が死を迎えてその世界の束縛から解放された時、私はあなたの魂を強制的にこの世界に連れてきました。おかげで、あなたはこれまでに存在しなかったこの世界の変数になりました」

「・・・」

「その存在がよりによって、最終悪党の妹だとは知らなかったですが」

ルウェインはぼんやりと笑う。

ダリアは日記に書いてあった言葉を思い出した。

しばらく悩み彼女は口を開いた。

「・・・私が持っているこの「力」。それもあなたがくれたのですか？」

超越者の堕落した魂を浄化するダリア固有の力。

しかし、ルウェインはゆっくりと首を横に振った。

「いいえ、ダリアちゃん。私にはそんな力がありません。私としてはあなたをこの世界に呼ぶのが限界でした」

「それじゃあ・・・？」

「この帝国の初代伝説を知っていますか？龍が皇室と公爵家に力を分けてくれたと。それが『超越者』の誕生だと」

ダリアはうなずく。

「『龍』は多くの古代神話に登場する想像上の動物です。彼らは時にこの世界の常識では理解できない、奇妙な存在を指すこともあります」

ダリアはルウェインの言葉を理解できず、首をかしげた。

「もしかすると、伝説として伝わる『龍』もやはりあなたと同じ世界の存在だったのでしょう。波長が違う体にその力が入るから驚いて暴れるのです。だから、そのような波長を持つあなたに触れると落ち着くのかもしれません。仮説に過ぎないですが」

仮説というには、あまりにも飛躍的なものだ。

信じられなかったが、ダリアはそれでも自分の力だけは他人がくれたのではないということから若干の慰めを得た。

その次には、ちょっとした怒りが訪れる。

「・・・それで、セドリック様が何十、何百回も死ぬ運命を繰り返しながら、結局その未来に固定されてしまったのは、結局ブルーポート公爵様のせいだということですね」

ダリアは非難のまなざしでルウェインを睨みつけた。

彼も今度は本当に刺されるのか、彼らしくない覗線を避ける。

「しかし彼も変わりました、あなたのおかげで。もともと彼は何にも執着せず、他の人々のように強烈に死を拒否することもありませんでした」

「・・・」

「だからこそ、一度心が疲れてしまえば、死を避けることができる状況でも、彼は避けませんでした」

ダリアは唇をかんだ。

避けられる死も拒否せずに受け入れたはずの彼を思うと、心が悲しかった。

ルウェインは再び視線を上げる。

「あなたがいて本当に多くの部分が変わりました。ありがとうございます」

「・・・」

「これが私にとっても最後の回帰です。あなたを呼ぶために私のすべての魔力を使い果たしたので」

ルウェインは愛情のこもった目で彼女を見つめる。

そして言った。

「私の最後の回帰を、心から生んだあなたと共に終わりにしたいです」

（・・・こ、心から生んだ？）

なんだかその言葉がすごく気になったが、ダリアはいったん次に進んだ。

もっと重要な問題がまだ残っている。

「公爵様も、セドリック様がこれからとうなるかご存じないでしょう？」

「はい。私もやはり彼の未来がなぜ死によって固定されたのかは分からないのですから」

ダリアの目が暗くなる。

「それでは、お兄様やメルデン様は、私が現れたおかげで、ルートを外れたと考えていいでしょうか？」

「はい。私の推測では、まだルートを抜け出せないのはアセラスだけです。彼の行動様式が崩れれば、皇子殿下の運命も変わるでしょう」

「・・・」

「彼は私が、私なりの方法で解決する方法を見つけます」

荒唐無稽な話だったが、彼女は信じることにした。

これまでの一連の出来事をこれほどうまく要約できる説明はない。

これまで何だか気にかかっていたことが綺麗に解決された気分だった。

この世界の未来は、自分の存在によって変わる可能性がある。

ダリア・ペステローズは蓮命を変えるためにこの世界に入れた人だから。

（すごく仰々しいね）

彼女は手で顔の下を覆い、しばらく考え込んでいた。

最初は自分の存在に関する考えだったが、後には数え切れない回帰を通じてダリアをこの世界に呼び寄せたルウェインに対する考えにまでつながった。

運命に閉ざされた悲しい人。

しばらくして、ダリアが言った。

「公爵様、もうアドリーシャを見ても本当に、本当に何も考えないんですか？」

「残念な気持ちはあります。しかしそれ以上の何かはとっくに忘れていました」

「・・・」

ダリアは悲しくなった。

目的だけが残っていて感情を失ったルウェインのせいでも、終わりのない回帰を通して幸せを見つけられなかったアドリーシャのためにも。

長い沈黙があった。

お互いに考える時間が必要だった。

その時間が終わると、ルウェインは懐中時計を確認して言った。

「もうたくさんの時間が流れましたね」

ひどい生活を送ったはずの彼がそんなことを言うのはおかしい。

しかし、もう日が暮れていた。

ダリアも邸宅に戻る時間だ。

ルウェインは立ち上がって彼女を見送る準備をして言った。

「他に何かお聞きしたいことがあれば、お越しください。次回も好きなものをたくさん用意します」

ダリアは立ち上がったルウェインをしばらくじっと見つめる。

そしてうつむいた。

「ありがとうございます」

ルウェインは無表情な中、それとなく当惑した様子だ。

本当に、今日も何度も感じたけど、心の中がよく見える人だった。

「何が・・・ですか？」

「私をここに呼んだのが、たとえ私のための意図ではなかったとしても、私もここでいい人たちにたくさん出会えて幸せでした。感謝の気持ちを伝えたいです」

「・・・」

ルウェインは無口だった。

青い瞳が玲瑠と輝くのを見ると、感動したように見えたりもする。

「そう言っていただけて嬉しいです」

「・・・」

「実は私もダリアさんに言いたいことがあります。初めて会ったときからチャンスを見ていたのですが、まだ言えなかったことです」

なんだか恥ずかしい言葉が出るタイミングだった。

知っているほど声を整え、心の準備をしたルウェインは話を始める。

「私はあまりにも長い歳月を生きていくために多くの感情を失いました。もう元恋人への愛も忘れた私に残った感情とは、私のすべての歳月を捧げて召喚したあなたへの愛着だけです」

彼はダリアの肩に手を置く。

彼は濃い目でダリアを見下ろしながら、この上なく真剣に話した。

「あなたは私が心から産んだ娘です。よかったらお父さんと呼んでみてください」

「嫌です！」

ルウェインはあっという間にまた落ち込んでしまった。