乙女ゲームの最強キャラたちが私に執着する【１４３話】ネタバレ

同じ時刻、すぐにセドリックを攻撃した男はブルーポート公爵の後園に安着する。

どうせセドリックに顔をばれた今、こんなことが無駄だということを知ってはいたが、座標設定をここにしておいたので仕方なかった。

（一応1バーセントは突破したんだね）

そのスクロールは書くたびに1パーセントの確率でいらいらさせられた。

それで最後まで使うことがないことを願ったが。

もちろん99％の確率で生き残った今も、もう彼に残された道はきらびやかな死刑囚の道だけだ。

死にたくなければ、できるだけ早く聖国に逃げなければならなかった。

そこに行けば聖王が自分を救ってくれるだろう。

こんなとんでもない間違いを犯したことがばれなかったら。

彼は自分がしたことを思い出し、舌打ちをする。

「ちっ、もともとはダリア・ペステローズに書くべきだったのに・・・」

焦っているうちにセドリックに書いてしまった。

遅ればせながらの後悔が起こったが、仕方がない。

バレなければそれでいい。

彼はすでに成功したという連絡を入れた。

他の人たちが確認する方法はなく、彼は早く邸宅を抜け出す考えに身を向ける。

しかし、体を回すと同時に、ある巨大な人影に出くわした。

確かに誰も来ない人里離れた場所を移動座標で捉えたのに。

予期せぬ状況だったが、彼はそ知らぬ顔で微笑んだ。

彼はやけどをした腕を握りしめ、痛い音を立てた。

「私が間違ってここで遊んでいて火傷をしましたね。お医者さんを呼んでいただけますか？」

「それは困ります」

硬い答えが返ってきた。

青年はやっと目の前の男が、ルウェイン・ブルーポート公爵だということに気づく。

「・・・理由は何ですか？」

「私がダリア・ペステローズ令嬢に彼女を守ると約束したからです」

青年がその言葉に隠された意味を読む前に、彼の視野があっという間に低くなった。

同時に火傷をしていない方の手の甲に激しい激痛が感じられた。

「あああっ！」

彼は座り込んで悲鳴を上げる。

そして苦痛に震えながら自分の手の甲を眺めた。

手の甲から突き出た剣の取っ手が見えた。

下の剣刃は床に打ち込まれている。

「あなたには何の遺憬もありません。多少退屈ではありますがね」

人の手の甲をこわしたまま、ルウェインは何の表情もなく彼を見下ろしていた。

それは憎たらしく、一方では恐ろしかった。

到底目の前の人間が同じ人間に感じられなかったためだ。

まるで巨大な自然災害、または山や岩に接している気分。

「ど、どうして私がここにいることが分かった？」

彼は歯をガチガチと打ち鳴らしながら言った。

ルウェインは返事の代わりに選択肢を提示する。

「あなたには二つの選択肢があります。第ーは、この帝国の警備隊に行って罪を告白することです。二つ目はずっと私と一緒にここにいること。どちらがあなたに有利なのかは明白です」

「・・・」

青年は沈黙で答え、ルウェインはその答えをを読んだ。

彼はうなずいた。

そして大声で言った。

「警備隊！」

「くそ・・・」

もうすべてが終わりだ。

青年は諦め、残った手で頭をかきむしる。

ルウェインは厳しい輪送手続きを経て青年を警備隊に送り、一人でじっと考え込んでいた。

ダリアが彼の前に現れ、彼が経験した回があまりにもズレてしまった。

まだ大まかなパターンまでは同じようについていっている。

アセラスが最後に準備している計画までも。

しかし、これからはどうなるか分からなかった。

その時、草むらをかき分けて誰かが現れる。

何度も繰り返される回によって、ルウェインはこういう時に自分が草むらで出くわすことができる人はただ一人だけだという事実を知っていた。

彼は振り返った。

そしてこちらに歩いてくるアドリーシャを見る。

彼女はやや不審そうな目で彼を見ていた。

「セドリック皇子殿下から今連絡を受けました。多分こちらの座標だと。遅れて当然見逃すと思ったのに、ブルーポート公爵閣下はどうやって・・・？」

彼女は片方の眉をしかめた。

彼女がこの出会いで自分をあんな目つきで見たのは今回が初めてだった。

ルウェインは少し新鮮さを感じる。

これもダリアが彼にくれたプレゼントだ。

「公爵閣下？」

アドリーシャは少し当惑した声で彼を呼んだ。

ルウェインはうなずいた。

「はい、どうぞ」

「私たちが前に・・・こちらで・・・こんな風に会ったことがありますか？」

「・・・」

ルウェインはしばらく息を止める。

しかし、しばらくして、彼は首を横に振った。

「そんなはずがないです」

「やっばりですよね？私が誤解をしたようです」

「そういうこともあります。もうお戻りください」

「・・・はい」

彼女は立ち去ろうとしたが、木を手でつきながら振り返った。

「彼を逃がしていたら、ダリアが危険になっていたでしょう。あの方を守ってくださってありがとうございます」

「大丈夫です。あなたのためにしたのではないから」

知らない人だったら喧嘩腰に聞こえるような言葉だ。

しかし、アドリーシャは再び振り返らなかった。

アドリーシャが完全に見えなくなると、ルウェインは自分の手を見下ろした。

「この程度の介入でも」

たかがこの程度でも、アドリーシャは繰り返される記憶を一部思い出してしまった。

彼はこぶしを握り締める。

自分は何をこんなにも恐れているのだろう？

アセラスとの最後の戦いでダリアを守るためには、さらに多くの介入が必要なのに・・・。

（皇居を吹き飛ばす神聖カテロ）

あの青年が登場したのだから、今回もアセラスは同じことをするようだ。

ルウェインは疲れた目をゆっくりと瞬きする。

「ダリアさんに会いたい」

彼がこの世界に連れてきた、今唯一残った大切なもの。

ちょうど遠くで馬車の音が聞こえた。

セドリックとダリアはダンスホールに戻ってきたようだ。

ルウェインは初めてかすかな笑みを浮かべる。