こんにちは、ちゃむです。
「できるメイド様」を紹介させていただきます。
今回は197話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
197話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ラエルの後悔
交渉決裂後、ストーン伯爵は王城を後にする。
同行していた随行員が慎重に尋ねた。
「ヨハネフ3世陛下はクローヤン王国との最大限平和的な同盟を求めておられるのではありませんか?」
西諸国がクローヤン王国を独立させた理由。
それは彼らが自分たちの勢力圏に引き込んで、東諸国侵略の橋頭堡としようとしていることだった。
「私は陛下の意図に同意しません。」
「そうなのですか?」
「クローヤン地方を西諸国の影響圏に入れるために必ずしも同盟を結ぶ必要はありません。」
鋭い視線を投げかける彼に目を大きく見開いた。
「最も確実な方法は、クローヤン王国を再び我が手で滅ぼすことです。」
「・・・!」
ストーン伯爵は真剣な口調で語った。
「我が西諸国軍が東諸国へ進軍する際には、必ずクローヤン地方を通過しなければならない。それがクローヤン地方が戦略的に重要である理由だ。しかしクローヤン王国と中途半端な協定を結んで、東諸国へ進軍するのは、背後に火種を残すのと同じ。むしろ徹底的に蹂躙し、後患を残さない方が良いと私は考えます。」
戦略的には筋の通った言葉だ。
もし大軍が東諸国へ進軍した際、クローヤン王国が裏切りでもすれば、その場から動くことすらできないのだ。
慎重にならざるを得ない。
「ですが、陛下の意図とは・・・」
従者は何かを言おうとしたが、口を閉ざした。
現在、ヨハネフ3世がクローヤン地方の件に直接関与できない理由がある。
そのため、ストーン伯爵が全権を委任されたのだ。
「閣下、もしかして・・・他の理由があるのでは?」
「どういう意味だ?」
「ただ・・・その理由だけではない気がして。」
ストーン伯爵は美しい顔立ちで穏やかに言った。
「どういう意図か分からないが、私はただ我々西諸国にとって最も有益だと判断したことを行うだけだ。」
「・・・はい、分かりました。」
従者は頭を下げる。
「もう行っていいぞ。」
「はい!」
ストーン伯爵は言葉を終え、穏やかな微笑みを浮かべた。
(他の理由がないとは限らない。)
彼の頭の中に、小さな少女の顔が浮かんだ。
自分とは異なる輝きを放ち、だからこそ胸の奥に刺さるような感情を呼び起こす少女。
(マリ、いや、モリナ。)
彼女が苦しむ姿をもう少し見たいと思った。
涙を流す彼女の姿をもっと見たいと望んだ。
そんな彼女を奈落の底に突き落として絶望に追いやり、徹底的に打ちのめしたい。
そうして一筋の光さえない暗闇の中で彼女の全てを粉々に破壊した後、自分は彼女を慰めるだろう。
それが彼女に対する彼の欲望だった。
一方、その時、東帝国の首都では。帝国の民衆たちは大きな混乱に陥っていた。
「南部のイーストヴァン伯爵家が反乱を起こしたって?」
「それだけじゃない。東方からは東方教国の15万の軍勢が押し寄せているそうだ。」
「噂によれば西諸国からも大軍が派遣されているらしい。」
「・・・そうなるかもしれない。」
人々は混乱し、途方に暮れていた。
特に衝撃を与えたニュースは、クローヤン王国の新しい国王がモリナ女王であるということだった。
「ヒルデルン伯爵家のモリナがクローヤン王国の女王になっただなんて。どうしてそんなことが起こり得るの?」
「信じられない。」
マリナは帝国全体で愛される英雄だった。
そんな彼女がモリナ女王であり、クローヤン王国の独立を主導しただなんて、民衆には到底受け入れられなかった。
「まだ信じられない。あの優しい方がモリナ女王だったなんて。」
「私も信じられない。まったく・・・。」
人々は途方に暮れたように立ち尽くしていた。
「もしかしてモリナ女王がしたことは、すべて計画されたものだったんじゃないの?」
誰かがそんな疑念を抱いた。
しかし、皆はそれ以上言葉を発することができなかった。
ヒルデン伯爵家のモリナが女王であるという事実は大きな衝撃だったが、それでもこれまで彼女が築いてきた信頼の深さには変わりがなかった。
「いや、あの方がそんなことをしたとは思えない。」
「そうだ。ヒルデン伯爵様がこれまで私たちのためにしてきたことがすべて嘘だなんてことはない。」
人々は困惑した表情で宮殿を見上げ、疑問の声を上げた。
「陛下はこれをどうお考えですか?」
オルンは唇を噛み締めながら皇帝を見つめた。
ラエルは冷たい表情でただ出発の準備をしていた。
(ああ、どうしてこんな事態にまで・・・)
オルンは苦々しい顔をした。
予想していた以上に状況は最悪だ。
(イーストバン伯爵家の反乱は予想していたが、東方教国にクローヤン王国まで巻き込まれるとは・・・)
最も心を痛めていたのは、モリナ女王の行いだった。
(もし西帝国がクローヤン王国を通過すれば、東帝国の首都に到達するのに障害はなくなるのに。)
クローヤン地方は東帝国の防御要塞であった。
西帝国軍がクローヤン地方を無理やり通過すれば、途中でそれを阻む障害物は何もない。
(南部のイーストバン伯爵に、東方教国まで攻め込む状況で西帝国軍がクローヤン地方を通過すれば、手の施しようがない。)
もしそうなれば、東帝国は滅亡するしかなかった。
ラエルでさえ手の打ちようがないだろう。
(やはりあの時にヒルデルン伯爵を捕まえるべきだった。0
オルンは後悔の念に駆られた。
実際、この件はラエルの判断ミスだ。
彼が彼女を信じて送り出したことで、このような事態が引き起こされたのだ。
しかし、オルンは彼を責めることができなかった。
彼が今どれほど苦悩しているのかを知っていたため、一言も口にすることができなかったのだ。
「オルン。」
その時、ラエルが口を開いた。
重々しい声で。
「・・・はい、陛下。」
「申し訳ない。」
「・・・!」
突然の謝罪に、オルンの瞳が揺れた。
オルンはどう返事をすればいいのか見つからなかった。
「・・・陛下。」
「今回の件は私の責任だ。すべて私が引き受けよう。」
オルンはただ静かに頭を下げ、ラエルは彼に命じた。
「大殿で待機していろ。すぐに出発する。」
「承知しました。」
オルンが退場すると、ラエルは歯を噛みしめた。
「もしあの時、君を見逃さなければ・・・」
最後の瞬間、彼はマリを信じ、彼女をクローヤン王国に送り出した。
あの時、オルンが言う通り彼女を送らなければ、クローヤン地方の状況がここまで最悪の状態にはならなかっただろう。
三軍団の反乱とマリが国王となったことで、クローヤン地方は完全に東帝国の影響力から抜け出してしまった。
しかしその瞬間、ラエルは歪んだ笑みを浮かべた。
「クク、クッ。ハハ、食い尽くされる。」
いまだに彼の思考を支配するのは、苦々しい現実だった。
帝国の危機を心配することではなかった。
ただ頭をいっぱいにしたのは彼女への思いだけ。
「あの時・・・君を見逃さなければ、こんなに酷い事態にはならなかっただろうに。」
ラエルの表情が険しくなった。
そうだ、いっそ彼女を誰にも知られない場所に隠してしまうべきだった。
そうすればこのようなことにはならず、彼女と自分が対立することもなかった。
彼女は今やクローヤンの王となった。
ラエルの帝国としては決して容認できない。
それはただ一つの意味を持つ。
これからは彼女と共にいることはできない。
その事実が彼を奈落へ突き落とした。
何もかもが崩壊していくような絶望と痛みだった。
「食い尽くされる。食い尽くされる!」
今この瞬間、彼を最も狂わせるのは彼女の存在が絶えず思い起こされることだった。
どこを見ても、共に過ごした短い瞬間が脳裏をよぎって消えない。
一緒に食事をしたこと、一緒に書類を読んだこと、散歩したこと、彼女が喜んだこと、悲しんだこと。
彼女の顔、声、笑顔、仕草。
そのすべてが目の前でまるで鮮明に蘇り、彼を圧倒的な苦悩に陥れた。
「・・・はあ。」
ラエルは心を落ち着けるため、拳を強く握りしめる。
血が通わなくなるほどに。
(マリ、今は大丈夫なのか?)
クローヤン地方で何が起きたのか、彼には正確には知らされていなかった。
しかし、マリが自分を裏切ったとは到底考えられない。
それは疑う余地のない確信だった。
三軍団の進軍と関連して、これは最悪の事態が不可避だったことは明らかだ。
ラエルはそのような状況に置かれたマリを思い、胸が引き裂かれるように痛み、死ぬほど辛かった。
(これから我々はどうすればいいというのだ?)
ラエルは拳をさらに強く握りしめる。
手のひらを食い込むほど握りしめた結果、血が流れ出した。
(私はこうして君から離れるわけにはいかない。絶対に。)
今この瞬間も、頭の中では彼女の存在が絶え間なく浮かんでいた。
彼女の顔が目に浮かんだ。
蘇ったのは、彼女の輝くような笑顔だった。
そして、自分に向けられた冗談めかした声も浮かび上がった。
絶対に彼女から離れることはできない。
ラエルの瞳が燃え上がった。
(目の前を阻むものがあるなら、すべて排除してやる。)
ラエルは、彼女との関係を妨げるものであれば、どんなことでも排除する覚悟を決めた。
「陛下、大臣たちがお待ちです。予定の時間が過ぎております。」
そのとき、執務室の外から声が聞こえてきた。
ラエルは拳を握りしめ、胸を抑える。
そしてマリと近づいた後に置いていた鉄仮面を拾い上げ、顔に装着した。
冷たい金属の感触が顔に張り付く。
以前、迷いに苛まれていた自分の弱さを消し去り、帝国のために決断をする覚悟を促す冷たさだった。
そして、この瞬間、彼女のために鉄仮面を着ける理由がもう一つ加わった。
それは、彼女を守るという自身の決意だった。
「・・・行こう。」
ラエルは歩みを進め、大殿へ向かう。
大殿には帝国の多くの大臣や将軍たちが集まっていた。
「皇帝陛下に拝謁いたします!」
皆がラエルの姿を見て驚愕する。
最近では見られなかった鉄仮面を装着していたからだ。
そして変わったのは鉄仮面だけではなかった。
その全身から漂う重苦しい雰囲気に圧倒された。
まるで血の道を歩んだ過去の姿のように。
「長くは語らない。我々の帝国はこれまで経験したことのない危機に直面している。」
ラエルは感情を抑えた声で続ける。
「だが、状況の有利不利は関係ない。これまで我々が有利な状況で戦ったことなど一度もなかった。」
彼の言葉を聞いた大臣たちは静まり返った。
彼らは皆、内戦の頃からラエルに従ってきた者たちだ。
ラエルは一度も有利な状況で戦ったことがない。
それでも、一度も敗北したことがなかった。
「ヨハネフ3世は、必ず勝利する状況を作り上げてから戦うことで有名だ。しかし私はそうではない。不利な状況で戦い、常にほぼ不可能な戦いばかりしてきたが、すべて勝利してきた。」
ラエルは剣を掲げた。
「もう話すことはない。敵の首を刎ねに行こう。」
「承知しました、陛下!」
大殿には威厳ある歓声が響き渡った。
その歓声とともに、ついに戦闘の喧騒が巻き起こり始めた。
その騒々しい中で、ラエルとマリはお互いを思いやる気持ちで剣を握りしめる。