こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
145話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 譲らない想い
ウッドは茫然とした目で地面に座り込んだ。
心臓はまるで胸から飛び出しそうなほど激しく脈打っていた。
彼は心臓を押さえながら深く息を吸い込み、下を向く。
ナビアは冷たい視線で彼を見つめていた。
足首を掴んでいた手が微かに震えていた。
彼は、かつての出来事が何かの夢のように現実感を持って迫ってきたのを感じた。
ナビアに向けてわずかに降り注いだ小さな陽射しのかけらが、まるで網膜に焼き付いたように、彼の目の前で煌めき続けていた。
冷酷でありながら美しい女性。
確固たる証拠を提示しながら、自らの怒りと憤怒を露わにする女性。
彼はその手で目を覆った。震える息が唇の間から漏れ出た。
「ちくしょう・・・。」
重症だ。
どうやら、彼の目はその輝きに囚われてしまったようだ。
幼い頃、自分を恐れさせたあの激しい存在感、水面で輝き、風に揺れる銀色の髪、無関心を装っているが深い怒りを秘めた紅い瞳。
全てが彼を強烈に揺さぶっていた。
彼は考えれば考えるほど、理性を失いそうになる。
彼らの関係は明らかに最悪と言わざるを得なかった。
どれほど彼がナビアに対してしたことが酷かったとしても、彼女の復讐は冷酷だった。
死ぬほど憎み、身震いするほど嫌悪すべきなのに、ナビアは既にそうしているというのに、なぜ自分にはできないのだろう?
「ナビア・・・。」
お前は本当にたまらなく魅力的だ。何かをしてでも手に入れたいと思わせるほどに。
彼の暗い瞳が静かに揺れ、鈍い光を帯びていた。
(クリード・アイルズ。あの野郎がナビアと一緒にいたんだ。)
クリードはアカデミーで初めて会ったときから、他を寄せ付けない天才だった。
既に完成形の天才であり、最短期間での卒業、最年少卒業という偉業を成し遂げた。
そして卒業後すぐに、伝説とされていた前例を覆し、逆転劇を成し遂げた。
彼はアグニスの次の家長として、さらに皇太子であり大公であり、戦争の英雄だった。
それでナビアも彼を特別視していたのだろうか?
ウッドは湧き上がる嫉妬心に駆られ、隣の座席を拳で叩いた。
そのとき、突然馬車が止まった。
「何だ?なぜ止まった!」
彼は苛立った表情で御者に叫んだ。
バタン!
隣で無造作にドアが開く。
ウッドは表情を歪ませながら振り向き、横を見ると何かにつまずき、床に体が叩きつけられた。
「くっ・・・!誰だ!」
そう叫びながら頭を上げると、殺気を帯びた冷たい視線と真正面から向き合った。
クリードが彼を冷ややかに見下ろしていた。
・
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「まだ正気に戻っていないのか?」
「・・・大公、これは一体どういうことですか?」
ウッドは歯を食いしばりながらその場で立ち上がろうとしたが、クリードの一蹴りによって再び床に押し戻される。
「大公!」
ウッドは痛みに苦しみながらも、まるで叫ぶようにクリードの名を呼び続けた。
クリードは冷然とした表情で、もがくウッドをただ黙って彼の腹部を足で蹴りつけた。
「ぐはっ!クッ、ゴホッゴホッ・・・!お、お前、狂ったやつが・・・!」
ウッドはすぐさまクリードに向かって魔法を放ったが、冷静な彼には全く通じない攻撃だった。
クリードはただ手を一振りするだけで、ウッドが放った鋭い魔力の矢の軌道を変えてみせた。
その鋭い矢はウッド自身に向かって飛んでいった。
「一体どういうことなんだ!」
ウッドが激しく叫びながら、地面に伏して痛みに苦しみつつも声を荒らげた。
「俺の目に留まったからだよ。」
「・・・何だと?」
「そして勝手に俺の婚約者に近づいたこともだ。」
「・・・」
婚約者だって?
ウッドの表情が一瞬で固まる。
クリードは現在、かなり怒りを露わにしている状態だった。
ウッドが勝手に事情も知らずにナビアに近づいたこと、そして彼女を愛おしげに見つめるその目つきまで、全てに対して抑えきれない怒りを抱いていた。
「エセルレッド公女に近づくな。命を落とす前に。」
「・・・嫌だとしたら?」
しかし、ナビアへの執着心が強烈だったのはクリードだけではなかった。
ウッドもまたナビアに対して欲望を抱いていた。
彼女を手に入れずにはいられないほど、抑えきれない所有欲が沸き上がってきていた。
そうして目をぎらつかせながらクリードを睨みつけた。
クリードの目が鋭くウッドを捉え、言葉を続けた。
「ナビアを手に入れたければ、まずは俺を倒してからだ。」
ウッドはその言葉に圧倒されることなく、むしろその挑戦を受け入れるような目で見返した。
「勝者がすべてを手にするというのなら、俺がその勝者になってやる。」
ウッドは力強く立ち上がり、拳を握りしめた。
彼の目の中に光るのは、無謀とも言えるほどの決意と闘志だった。
「お前には俺を止められない。どんな手段を使ってでもナビアを俺のものにする。」
クリードはその言葉を冷たく受け流し、じっとウッドを見つめた。
彼の心の中には確かな自信と、ナビアを守り抜くという決意が燃えていた。
「俺に挑むというなら、後悔させてやる。」
クリードの表情がさらに冷徹さを増した。
「この俺が手を出す前に、お前はどうやってナビアを手に入れるつもりだ?」
「・・・」
ウッドは何も言わず、ただ拳を強く握りしめている。
その瞳に宿る怒りと焦燥は、クリードに対する挑戦の意思を明確に示していた。
「俺は誰にも負けない。どんなことをしてでも、ナビアを手に入れるんだ。」
ウッドの声は震えていたが、その裏には確固たる決意が込められている。
クリードは一歩前に踏み出し、その足音だけが静かな部屋に響いた。
「それなら、どんな手を使ってでも、お前が俺を超えてから言え。」
ウッドはその言葉に顔をしかめながらも、言い返すことなく、ただ黙って立ち尽くした。
彼の心は燃え盛るように熱かったが、その表情には冷徹さがにじんでいた。
「ナビアに近づくな。」
クリードの冷たい声が部屋の中で響く。
ウッドはその言葉に強く反応し、体を硬直させた。
「お前には、ナビアのような存在を手に入れる資格なんてない。」
ウッドは息を飲み込み、必死でクリードを見つめた。
その目には、憤りと悔しさが混じっている。
「俺はナビアを手に入れたい。誰にも邪魔させない。」
クリードは一歩も引かず、さらに冷たい視線でウッドを睨みつけた。
「ナビアは、俺のものだ。」
その言葉に、ウッドは言葉を失った。
しかし、その顔にはまだ諦めの色は見られなかった。
「どうやら、君はナビアがどれほど特別な存在かを理解していないようだな。」
クリードの冷たい言葉がウッドの胸に突き刺さる。
ウッドは一瞬、動きを止めたが、すぐに口を開いた。
「俺は誰にも負けない、ナビアを手に入れる!」
「その言葉が真実なら、まずはその証拠を見せろ。」
クリードは無表情で言った。
彼の言葉には深い意味が込められているようだった。
ウッドは歯を食いしばり、強く拳を握りしめた。
心の中では決して譲れない、何かが燃えていた。
「俺は絶対にナビアを手に入れてみせる。」
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「この力を見ろ。」
ウッドはその時初めて、父親が本を一冊持っていることに気づいた。
「その本は何だ?」と疑念を抱いたのはその時だった。
使用人たちは動きを止めた。
それだけでなく、まるで魂が抜けたように呆然とした表情を浮かべていた。
不気味な雰囲気の中、ウッドは乾いた喉を鳴らしながら、震える唇を開いた。
「まさか、この力はアレス皇子が使った悪魔の力では・・・?」
そうでないことを、勘違いであってほしいと願った。
しかし、ニカンは息子の期待を粉々に打ち砕いた。
「神の力だよ、息子よ。」
もっと正確に言えば、万神殿の気運を一時的に解放したのだ。
ビビアンが家具の配置を変えた理由は、この場所に万神殿の気運を完全に解放し、魔法陣を描くための場所を確保するためだった。
つまり簡単に言うと、アグニスの装置を万神殿に変える作業をしていたということだ。
ニカンが手を引っ込めると、部屋中に満ちていた邪悪な気運が一瞬で消え去った。
「権力とは、結局のところ強大な武力の前に集まるものだ。」
ウッドはこの状況をどう受け止めればいいのか混乱していた。
「でも、ナビアのその力を父上もご覧になったじゃないですか? これが無意味なことだとしたら・・・」
「それは心配する必要はない。この力を完全に解放するには、ナビアがアグニスに入り、犠牲にならなければならないのだ。」
「・・・犠牲、ですか?」
ニカンは柔らかく微笑みながら答えた。
「そうだ、いずれナビアは我が家門のための犠牲となるだろう。」
「いずれ、だって? あの時、ナビアをアグニスに連れて行けと言ったのに。」
(まさか、この状況をもうすでに知っているのか?)
「父上、これは横暴です。今すぐやめてください!」
「お兄様、もうやめて。」
ビビアンはウッドを呆れたように見つめた。
「私たちの家門は皇后とアレス皇子のせいで扉を閉じて暮らすしかなかったのよ。お兄様も私も、死ぬまで家に引きこもって生きなきゃいけない。それって死んでいるのと何が違うの?」
ビビアンは冷たく笑った。
「ねえ、ナビアを手に入れたかったのに、手に入れられなくなったからそうしているの?」
「黙らないのか?」
「やめろと言っている!」
ニカンは目を閉じてからウッドを睨みつけ、再び厳しい目つきで見つめて言った。
「半端な覚悟では、この世をひっくり返すことなどできない。天がその力をお前の足元に置く日が来るだろうに。まさかナビア、あの血筋を望むつもりか?」
「・・・」
「ウッド、何がもっと重要な価値かよく考えてみろ。」
ウッドは血の気が引くほど唇を噛みしめた。
彼はすでにナビアに完全に心を奪われていた。
しかし本当に彼女を自分のものにする方法があるだろうか?
「だから、他人の女に関わるな。」
ナビアは大公と婚約していた。
すでに別の男のものとなった。
それでもなお、ウッドはナビアを手に入れたかった。
それがたとえ死体であっても、必ず。
「・・・ちょうどよかったです。ナビアが直接ここに来ると言ったんですよ。」
ウッドの言葉に、ニカンは冷たく笑みを浮かべる。
「愚かな血筋だな。あの子は屋敷を出た瞬間に死ぬことになるだろう。」
こうして世界はアグニスの支配下に置かれることになるだろう。