こんにちは、ちゃむです。
「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
81話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 思いがけない再会②
ようやく落ち着いて話せる状況になり、クラリスはまずノアに最も気になっていたことを尋ねる。
「ノア、どうしてここにいるの?」
「勉強しに来ました。」
「魔法使い団では何も言われなかったの?」
「彼らの大半は私が去るのを望んでいたので、今ごろ私の不在を知って喜んでいるでしょうね。」
・・・つまり、何も言わずに城を抜け出してきたということになる。
クラリスはこの一言を飲み込み、ため息をついた後、今回のターゲットをバレンタインに切り替えて鋭く見つめた。
「王子様はどうして私の許可もなく、そんな奇妙な真似をするんですか? 私はここでずっと勉強したかったのに!」
「おう。それで最初は俺一人で辞めようと思ったけど、お前が一緒にやるって言ったじゃないか。」
「言ってません!」
「そうか?それなら悪かったな。」
彼はまったく謝る気のない表情を浮かべていた。
「どうせ一生懸命勉強するつもりだったんだろ?そんなに真剣にやらず、楽しくやればいいじゃないか。」
その傲慢な態度に、クラリスは何も言い返せなかった。
「楽しくですって。」
クラリスは呆然としたまま視線を宙に浮かべ、ここに来る途中で貴族夫人と交わした会話を思い出していた。
「もしかしたら・・・同じ目標を持つ友達を作れるかもしれませんよ。」
そんな風に話していたとき、クラリスの胸は大きな期待で高鳴っていた。
ほとんど大人の中で育ったクラリスにとって、他の同年代の人たちと関わる経験はほとんどなかったのだ。
ところが・・・。
「これから毎日一緒に勉強することになるんだな。楽しみだ。」
「勉強中に分からないことがあればいつでも聞いてください。」
クラリスは新しい友達を作る機会が訪れるとは思えなかった。
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首都学院は大学とは異なっていた。
ここでは教師や授業といったものはなく、ただ受験生自身の自主性で勉強を進める必要がある。
それでも、多くの受験生が努力を重ねてここに集まってくるのだ。
勉強のためにここへ来る理由は大きく3つある。
ひとつは、勉強だけに集中できる環境。
もうひとつは、定期的に行われる模擬試験。
そして、わからない問題について知識豊富な首都学院の生徒たちに答えを求められるという点だった。
それは家庭教師を雇っている貴族たちにとっては、それほど珍しいことではない。
しかし、一般家庭ではこういった知識人たちと交流する機会そのものがなく、いつでも質問できる窓口があるというだけでも、首都学院は夢のような場所だった。
首都学院のスケジュールを簡単に言うと以下の通りだった。
朝の運動と朝食。
自習。
昼食。
また自習。
夕食。
さらに自習。
休憩。
自習時間には勉強するか休むかは受験生個人の自由であり、首都学院の管理者たちは大きな問題が発生しない限り、彼らの生活に干渉することはない。
一日が過ぎた朝。
鐘の音を聞いて起きたクラリスは、朝の決まりごとの運動に参加するために動きやすい運動服を手に取り着替えた。
「自主性が高い分、雰囲気を維持することが重要になるだろう。何よりも・・・」
クラリスは昨日エイビントンが話していた内容を思い出し、自分の殻を破る方法はこれしかないと考えた。
その覚悟が深い人々が集まる首都学院で、クラリスの存在は確かに異質だった。
「コォ!」
まだ解けていない寝癖でぼさぼさになった髪の羊のように、彼女は頭を振りながら大きく伸びをした。
「おお、探してくれてありがとう。朝の運動、一緒に行こうか?」
クラリスの問いかけに、モチは軽く頭を下げただけだった。
「コォ」
「嫌なの? どうして? 首都学院の周りを見て回れるチャンスなのに。」
「コォ。」
「今から首都学院で話せる友達を探してみるって? 友達を作りたいってこと?」
「コォ!」
モチはぷいっと顔を背けながらドリブルのように足を動かした。
「コォ。」
「毎回付きまとって迷惑をかけるなって事前に警告しておこう・・・。」
クラリスは自分がモチの話を聞かなくても済むならそれでいいと思っていたが、どうやらモチは納得していないようだ。
「ここには勉強しに来たんだから、他の友達のお願いを聞いている暇はないわよ。」
「コォ。」
しかし、モチは信じてくれなかった。
「わかった。」
考えてみれば、もしもの事態に備えて特別な友達がいるかどうか確認するくらいは構わないと思えた。
「ただし、他の人たちに見られないよう気をつけてね? 歩き回る友達を見て、貴族たちが驚いて騒ぎ出すかもしれないから。」
「コォ。」
「でも、見なかったことにしてほしいけどね。」
「コォ。」
「おいで。」
クラリスはモチを手で抱え、頭の上にそっと乗せる。
首都学院にいる間、魔力が弱まらないように。
「コォ。」
歪んでいた窓を少し開けてやると、モチはその隙間からひらりと外へ飛び出していった。
一人残ったクラリスは、長い髪を左右に垂らして整えながら、静かにドアを開ける。
少し早く起きた他の学生たちが二人、三人と集まって階段を降りているところだった。
よく見ると、すでに近くを通り過ぎようとしている友達が親しく話をしているようだった。
『私が先に挨拶したら・・・受け入れてくれるかな?』
普段なら『悩む時間がもったいない』と前向きに行動するクラリスだったが、こうして見知らぬ人たちの間にいるとどうしても躊躇してしまった。
「えっと・・・」
少し勇気を出した彼女は、ちょうど目の前を通り過ぎる受験生にそっと近づいてみた。
「・・・!」
しかし、その受験生は驚いたように後ずさりし、クラリスの前から逃げるように走り去ってしまった。
『私が不快だったのかな?』
まあ、受験生代表としてそんな出来事があったから仕方ないのかもしれない。
クラリスは「友達を作ろう」という目標を一旦脇に置き、ひとりで階段へと向かった。
ちょうど階段の下に見える中央庭園の方に見覚えのある背中が見えた。
バレンタインだ。
実際には木に隠れている後ろ姿でしかなかったが、それが彼だと確信できた。
彼の金髪は本当に特別で、わずかな光にさえ当たれば非常に美しく輝くのだから。
バレンタインは昨日出会った受験生代表、エイビントンと会話を交わしていた。
『まさか、また朝から喧嘩しているの?』
そう思いながら、クラリスは気になって1階に降りて庭園へと向かった。
人気を感じたのか、エイビントンは彼女を見つめた。
「何ですか?」
「通りかかったらお二人が見えたので、ちょっと寄っただけです。今日から受験生たちと会話をするにも、許可くらい取らないといけないんですか?」
そう言いながら、クラリスに苛立ちを見せつつも、エイビントンは彼女の背後をちらりと見た。
まるで誰かが後ろについてきていないか警戒しているかのように。
「そうじゃないけど、また喧嘩でも・・・」
堂々と答えたクラリスだったが、目の前にいた「バレンタイン」と思っていた人の姿を見て、言葉を失った。
いや、正確にはそれはバレンタインではなかった。
2階から見た金髪だけで勘違いしてしまったが、近づいてみると確実に別人だと分かる。
何よりも相手は長い髪を涼しげに束ねた女性だった。