夫の言うとおりに愛人を作った【９５話】ネタバレ

こんにちは、ちゃむです。

「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【夫の言うとおりに愛人を作った】まとめこんにちは、ちゃむです。「夫の言うとおりに愛人を作った」を紹介させていただきます。ネタバレ満載の紹介...

９５話　ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

村の異変④

エドワードはグスルを制御することに失敗し、二つの問題に直面した。

「その黒魔法にマナをすべて吸い取られた、ということでしょうか？」

「……そうだ。もともとあった分を取り戻すには、一週間ほどかかるだろう。」

エドワードは空になった手をぎゅっと握りしめ、ゆっくりと開いた。

彼の手の中で黒い火花がスパークのように弾け、すぐに消えてしまった。

しかし、グスルにマナを極限まで吸い取られたせいで、彼のマナは完全に枯渇していた。

それは少なくとも一週間、彼が以前のように自分自身を守るのが難しくなることを意味している。

「祝福を受けた後、ほかに何か異常な現象はありましたか？」

「気味が悪い。まるでそれと一体化したかのように、俺の頭の中に入り込もうとする。魔法耐性が低い普通の人なら、正気を失ってもおかしくないほどの干渉だ。」

「それには意志や思考があるということですか？」

「それよりも、それが『悪い記憶』を吸い取るものだと考えたほうがいい。この村の人々がなぜあんなに異常なほど笑っていたのか、やっと理解できたよ。」

つまり、グスルと精神が繋がり、彼の精神を少しずつ蝕みながら悪い記憶を食べていたのだ。

「単に悪い記憶だけを吸い取る理由があるはずだ。」

「よく分からないな。黒魔法について詳しく知らないのは不便だ。未来の国なら何か知っているかもしれないが。」

傍らで静かにエドワードとマクシオンの会話を聞いていたエイヴンが口を開いた。

「……おそらく、長く持ちこたえるためでしょう。」

エドワードが疑わしげな表情で尋ねた。

「そう考える理由は？」

「この村が黒魔法に囚われてから4か月ほど経過したと聞きました。しかし、まだ村の人々が生きているということは、普段はその影響が微弱だからだと思います。」

「なるほど、それなら納得がいくな。エイヴン、お前たちの調査によれば、通常ならこの魔法が完全に消滅するのに約1か月かかるとされていたが、それは正しいか？」

「その通りです。」

「肉体的に傷つけたり、精神的に苦しめる魔法ではないのに、人を死に至らしめるとは……。通常の攻撃系魔法とは違うな。記憶を奪い取ることで、人は死んでしまうのか……。」

エドワードの表情は深刻に曇った。

「記憶は人の本質そのものです。その人の魂や存在と切り離せるものではありません。一部だけ徐々に奪われていくのは、黒魔法が宿主を肥やすための手段だと思われます。そして、宿主が耐えられる限界を超えたら、ゆっくりと奪われる記憶の範囲が拡大していくでしょう。」

エイヴンはしばらく考え込み、続けて言った。

「最終的に、食事や睡眠の方法さえ忘れてしまうと、黒魔法に完全に食われてしまい、命を失うことになります。」

「魔法というより、何か生き物みたいだな。」

エドワードは気味悪がるように言った。

「……それが呪術と黒魔法の違いだと思います。呪術は術者が唱えた内容が発動するだけですが、黒魔法は存在し続けることで生命を燃料として自らを肥やしていく性質があります。」

「魔法で呪詛を解除しようとして失敗した途端、今度は物理的な手段で破壊しようとした。しかし、剣の柄で触れたら身体が縮こまった。そしてその後、黒魔法そのものが身を潜めた……。生き延びるために逃げるのも、その性質の一部なのか？」

エイヴンの顔は暗くなった。

「はい。そのように、まるで意志を持っているかのように見えますが、実際は生存と繁殖する本能しかありません。考えを持った生命のような存在に惑わされてはいけません。」

「厄介だな。」

エドワードの言葉に、エイヴンは小さく頷いた。

「記憶が完全に奪われたわけではないが、身体が操られるのを見ると、記憶も共有されていると考えられる。この呪詛がそのまま皇帝の手に渡れば、かなり厄介なことになるな。」

マクシオンとエイヴンの表情が険しくなった。

マクシオンは低い声で言った。

「呪詛は一ヶ月後、月の昇らない夜に暴走するはずです。その日に全戦力を投入して処理します。」

エドワードはわずかに口元を歪めた。

「マクシオン、お前より四歳年上の奴で、やけに頑固なやつがいるんだ。」

険しい表情でエドワードを見つめていたマクシオンは、驚いたように目を少し見開いたが、すぐに元の冷静な声で答えた。

「はい。」

それを見守っていたエイヴンの唇がわずかに揺れた。

・

不眠に悩まされているのは、どうやらエドワードではなくルイーゼだった。

寝床の上でしばらく寝返りを打っていた彼女は、結局眠ることを諦め、ベッドから静かに起き上がｒ。

「暗殺者は主に夜に動く。こんな状況で、私が平然と眠れるわけがないじゃない。」

エドワードの力が完全に戻れば問題はないが、今の彼はほぼマナを使い果たした状態だ。

マクシオンは彼女に状況を説明した後、毎晩騎士団が彼を守るのだから心配せずに眠るようにと言ったが、そんな言葉を聞いて眠れるのはおかしいとルイーゼは思った。

それもそのはず。

ルイーゼはエドワードの護衛を任された身なのだから。

「私は護衛です。これは当然のこと。決して私情なんかじゃない。」

最後の言葉はやや力が抜けていたが、それでもルイーゼはこうした緊迫した状況で自制心を保とうとする、感情に流されにくい人間であることを何度も示してきた。

しかし、彼女の両親はそんなふうにルイーゼを育てたわけではなかった。

「でも、正直に言うと少しは私情が入ってるかもしれない。」

過去一週間、起きている時間の大半をエドワードと一緒に過ごしていたせいかもしれない。

もともとのエドワードとは異なるようでいて、どこか似ている。

彼はもうすっかり慣れた様子だ。

「体が近づけば、心も近づく」と言われるように、二人は自然に寄り添い合っていた。

彼がいない場所に一人で残ると、妙に落ち着かない気持ちになった。

ルイーゼは服を羽織り、剣を持って隣の部屋へと向かった。

彼の部屋の前に立っている二人の護衛と挨拶を交わした後、彼女は静かに扉をノックした。

トントン

「エリオット、起きてる？」

扉が静かに開いた。

エドワードは穏やかな微笑みを浮かべながら、ルイーゼを迎え入れた。

「ルイーゼ嬢、ちょうどよかったです。一人足りなくて困っていたところでした。」

「……え？」

ルイーゼは戸惑い、目を見開いた。

「カードゲームを始めようとしていたんですよ。エイヴンが抜けたいと言うので、団長権限で無理に引き止めるところでした。」

「……暗殺者が襲ってくるかもしれない時間に、こんなことしていていいんですか？」

「どうせ来るのなら、遊びながら待つほうが気が楽でしょう？さあ、どうぞお入りください。」

エドワードが横へと身を引くと、床に座りカードを広げているマキシオンとヘンドリックの姿が目に入った。

壁際の隅には、眠っているのか、それともただ目を閉じているだけなのか分からないエイヴンが、壁にもたれて座っていた。

ルイーゼは少し戸惑いながら、部屋の中へと足を踏み入れた。

「……なるほど、一理あるかも。」

「こうして夜を一人きりで過ごさなくていいのは、なかなか楽しいものですね。」

カードをシャッフルしていたマキシオンが、視線を上げてルイーゼを見た。

「こっちに来て座りなよ。ほら、毛布もあるし。」

「あ、うん。」

マキシオンは無表情のまま、近くにあった毛布をルイーゼの隣の席に広げた。

ルイーゼは自然とマキシオンの隣へ座った。

「ははは、なんだか賑やかですね。楽しいかも。」

ヘンドリックは向かい側に座るルイーゼを見て言った。

「みんなここに集まっていたなんて知らなかったよ。気配すら感じなかった。」

「エイヴンが結界を張りました。」

「エイヴンも魔法使いだったの？黒魔法専門家だとは思ってなかったけど。」

「……黒魔法使いです。」

「ああ、そうなんだ。黒魔法使い……え？黒魔法？」

ルイーゼの瞳孔が震えた。

ヘンドリックは豪快に笑った。

「はは！俺の最初の反応とそっくりだな！」

「現在の帝国法では違法ですが、それに準じて違法な事案に対応する場合にのみ使用しています。」

エドワードは淡々とした表情で尋ねた。

「でも、黒魔法には生贄が必要だったんじゃないですか？」

エイヴンは低い声で答えた。

「……黒魔法だからといって、すべての生命を犠牲にするわけではありません。魔法石といくつかの材料があれば、生命が込められた生贄なしでも発動できる魔法もあります。」

「ええっ、そうなんですか。私は黒魔法って全部悪いものだと思っていました。」

エドワードはマクシオンの向かいに座り、ルイーゼの左側の席に落ち着いた。

「むしろ、ある部分では一般的な魔法よりも公平な力とも言えます。生まれつきの才能に左右されるのではなく、努力と知識で力を得られるものです。ただし、悪用される危険性が高いため、現在の法律では禁止されています。」

「なるほど、複雑ですね。」

「ハハハ！まあ、魔法が悪いわけではないでしょう。それを悪く使う人が悪いのです。では、ゲームを始めましょうか！」

「それで、どんなゲームですか？」

「『ドラゴンの遺恨』です。やったことはありますか？」

「あ、はい。当然です。国民的ゲームじゃないですか。子供の頃、両親とマクシオンと一緒にやりました。でも、もう長い間やっていないので、ルールが曖昧ですが……。」

「では、簡単に説明しましょう。」

マクシオンが無言でカードをシャッフルしている間、ヘンドリックはカードゲームについて説明した。

「『ドラゴンの遺恨』は、剣士、魔法使い、治療師、そして気まぐれなドラゴン、この四人で構成されたゲームです。帝国建国に必要な七種類の異なるカードを集め、最も早く帝国を築いた人が勝者となります。そして、他にどんな条件がありましたっけ？」

「はい。気まぐれなドラゴンを指摘するまでは、それぞれの職業を明かすことはできません。ただし、気まぐれなドラゴンに選ばれた人が帝国を築くことに成功すれば、通常の勝利の三倍の報酬を得ます。しかし、指摘によって自分がドラゴンであることが明るみに出た場合、その場で脱落し、カードを返却しなければなりません。」

「ドラゴンを指摘する機会はゲーム中に一度だけです。」

「ええ。そして、指摘の時間が終わった後は、それぞれの職業を明かし、その職業に応じた能力を使用できます。ゲームが終わるまでドラゴンを指摘しなくても構いません。」

「あ、そうだ。魔法使いは他人のカードと自分のカードを一枚ずつ交換できて、剣士は他人のカードを一枚奪うことができて、治療師は剣士と魔法使いの能力を一度無効化できましたよね？」

「そうです。ドラゴンは勝利の特典として人間よりも体が大きいだけで、特別な能力はありません。」

「それで、賭けるものは決めましたか？」

「強制的なものにはしたくありませんが、みんなの楽しみのために、お金の代わりに食事一回分を賭けることにしました。勝者には私が手料理を振る舞います。そして、もしドラゴンとして勝利した場合、この村に滞在している間の食事代をすべて負担することにしました。」

「じゃあ、エリオットが勝ったら何ももらえないじゃないですか。」

「ゲームが楽しかったら、それで満足なので問題ありませんよ。」

「それでも、ちょっと不公平な感じがするな。あ、それなら、エリオットが勝ったら、私がプレゼントをあげますよ。」

「……ルイーゼ嬢のプレゼントですか？」

エドワードは思いもよらなかったというように目を見開き、それからふっと優しく微笑んだ。

「ありがとうございます。やる気が湧いてきましたね。」