こんにちは、ちゃむです。
「悪役なのに愛されすぎています」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

87話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 母親②
メロディは一日をほとんど部屋で一人で過ごした。
もしかしてロレッタが遊びに来て、一緒に遊ぼうと言ってきたら何て断ろうかと悩んでいたが、それも杞憂だった。
ロレッタは近くにも寄ってこなかった。
後で侍女から聞いた話では、最近のロレッタは毎朝早くに出かけて夜になってから帰ってくるとのこと。
「毎日外出してるんですか?一人でですか?」
「マブ様とやや親しくなったようです。もちろんお嬢様が一方的に連れ回しているだけでしょうけど。」
「一体どこへ行ってるんですか?」
「図書館と聞いた気がしますが……私もよく分かりません。」
メロディは一瞬、喉がつまるような感覚にとらわれた。
どこかで見たことのあるロレッタの行動だった。
『原作で男主人公と友達になったばかりの時だった。』
ロゼッタはほぼ毎日外出していた。
彼女の話によれば、泣きながらメスの子猫にエサを与えるために、柔らかいマフをかぶって外に出ていたという。
そしてどこへ行くのかと尋ねるクロードには、図書館に行くのだと嘘までついていた。
『……なんだかすごく似ていて不安だけど。』
だが、それはただの思い過ごしに違いない。
そのようなことをオーガストがするはずはない。
オーガストは今もクリステンソンにいて、ロゼッタとは一度も会っていないのだから。
「それより、お母様は一体いつお戻りになるんですか?」
「え?少し前にお帰りになったじゃないですか。」
その返答に、メロディは驚いて立ち上がった。
「戻られたんですか?」
「はい。」
「そ、それじゃあ、私のことは……お尋ねにはならなかったんですか?」
「さあ……特にそういう話は聞いていませんが……」
いったい何が起きているのだろう。
メロディは不安な気持ちで部屋の中へゆっくりと入りながら、思索にふけった。
もしかしてメロディが訪ねてきて謝罪するのを待っているのだろうか?
それともまだ処罰が決まっていないため、呼び出すのを先延ばしにしているのか。
「お嬢様、どうしてそんなに不安そうなのですか?」
そう、メロディがクロードに従ってひょいと家を出てしまったのだ。
それがどんな誤解を招いたのかを考えることすらできなかったまま。
もしかすると今ごろ邸宅では、妙な噂が立っているかもしれない。
メロディはすっと目の前が暗くなった。
彼らは教養のある使用人たちだから、話を広めたりはしないだろうが……。
「正直におっしゃってくださって構いませんよ。」
そのとき、侍女が意味深な目つきで見つめてきたため、メロディは思わず肩をビクッと震わせた。
もしかしてクロードと何かあったのではないかと推測しているのだろうか?
もちろん彼は何もしていなかった。
当たり前だ。
あの妹バカがメロディと二人きりになったからといって、よからぬことをするわけがないし、そんな理由もない。
『うーん、あの時ちょっと変だったんだけど。』
メロディはなんとなく袖の上から指先をなぞった。
彼の肩に手を添えたときの感触が今でもはっきり残っていた。
『あれは安心させるための抱擁だったのよ。』
決して変なことではなかったし、恥ずかしいことでもなかった。
メロディはしばらく箸を空中に浮かせたまま彼女を見つめた。
どんな疑問に対しても堂々と答えてくれるだろう、という様子だった。
「私たちも実は全部知ってました。ヒギンス夫人の親戚の家に一人で行かれたのが申し訳なくて、そうされたんですよね?」
でも、どうして……。
彼女が口にした話はまったく違っていた。
夫人の親戚ですって?
「えっ、なんですって?!」
「そんなに驚かなくても。実は奥様がそうおっしゃってたんですよ。」
「えっ、お母様が?」
「はい。お嬢様が試験が終わった記念に、奥様の親戚の家に行かれたって。」
どうやらヒギンス夫人は、メロディが妙な噂に巻き込まれないように配慮してくれたようだ。
「どうでした?本当に素敵な方々が多かったですか?」
ヒギンス夫人の親戚、アイネズ家門は、昔から優れた人物を多く輩出することで有名な、武道の家系だ。
そこには修練のために滞在している者が結構いて、自分の体を鍛える人たちの中には、かっこよくてがっしりした人が多く、使用人たちはこっそりと奥様の親戚に従って行くことを夢見ている者も多かった。
「・・・はい。」
「やっぱり!そうだと思ってましたよ。お嬢様ったら一人で行かれたと聞いて、私たちどれほど羨ましかったことか。詳しくお話聞かせてください!」
少女が目を輝かせて尋ね、メロディは思わず困ってしまった。
生まれて初めて見るアイネズ家について何か語るなんて、とんでもないことだった。
「本当に美しくてハンサムな方がそんなに多いんですか?!上品な方々は肩もすごく素敵だと聞きました!」
「え、肩……!」
少女が「肩」について語り始めたとたん、メロディの顔はリンゴよりも真っ赤になってしまった。
その反応を見た少女は、勝手に納得し満足げにボタンを留め続けた。
「お嬢様の反応を見てると、やっぱりすごい肩だったみたいですね……あっ、私ったら落ち着かなきゃ。」
彼女は洗濯物をかごいっぱいに詰め込んで、せわしなく動き始めた。
その部屋に一人残されたメロディは、深いため息をついた。
「よかった……」
もし彼女が何かをもっと突っ込んで聞いてきていたら、少し厄介なことになっていただろう。
嘘をつくのはなかなか難しいことだから。
「何が?」
そのとき、後ろからその問いかけの声が聞こえた。
驚いて振り返ると、窓の向こうにイサヤが立っていた。
片手をひらひらと振りながら。
「イサヤ!」
数週間ぶりに会ったせいか、メロディは嬉しい気持ちで凍った窓へと駆け寄る。
「やあ、メル。」
彼は一瞬あたりを見回すと、少し気まずそうな表情で両手を合わせた。
「ねえ、ちょっと中に入ってもいい?」
「私の部屋に?」
「うん、少しだけ。」
彼の様子がどこか不安げに見えたため、メロディはひとまず鍵を回した。
友達ならばお互い助け合わないといけないから。
「ありがとう。」
彼は高い窓をひょいと飛び越えて窓枠の上に上がった。
窓が小さいわけではないが、イサヤの体が大きいせいか、少し窮屈に見えた。
「訓練中だったの?」
「いや、ただ運動。」
彼は窓の下へ降りて、そのまま壁にもたれて座った。
かすかに呼吸を整えている様子から、ここまでかなり慌てて走ってきたことが見て取れた。
「訓練じゃないなら、何をしてたの?」
「うん、ただ。」
彼は少し言葉を濁して話をそらしたが、それはイサヤが何か体を使うことをした時の特徴だった。
そのことを知っているメロディは、彼の前へすっと近づいて向かい合って座った。
「イサヤ、何かあったんでしょ?」
メロディがそっと覗き込むように尋ねると、イサヤは白い歯を見せて笑いながら答えた。
「バレた?」
「うん、完璧に。」
「たいしたことないよ。」
彼が手の甲で額の汗を拭ったので、メロディは凍えたハンカチを差し出した。
「え、私にくれるの?ありがとう、大事に使うね。」
しかし彼は、まるで当然のように差し出されたハンカチをポケットにしまうと、引き続き自分の袖口で汗をぬぐった。
「大事に使うって言ったくせに、使わないじゃん。」
「汚れたものを拭くのに使ったら、もったいないでしょ。」
「もったいないなんてないし、それに汚くなんかないよ。全然そんなことない!」
イサヤは少しも汚がっていなかった。
もちろん彼は騎士だから、外で過ごす時間が多くて体にほこりがついていることもあったが……それはイサヤが一生懸命働いているという証拠なので、とても誇らしいことだ。









