公爵邸の囚われ王女様

公爵邸の囚われ王女様【104話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【公爵邸の囚われ王女様】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「公爵邸の囚われ王女様」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載の紹介となって...

 




 

104話 ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • 本当の身分④

突然雪が降り始め、ノア・シネットは飲みかけの月のキャンドルを置き、傘を手に取って王宮の入口に向かった。

真冬の雪だ。

ノアは今頃クラリスがどんな表情をしているのか想像してみた。

目を大きく見開きながら窓ガラスに顔を寄せ、まるで子供のように口を少し開けているのだろう、と。

そして、雪だるまを作れると期待しているに違いない。

子供でもないのに、なぜ雪だるまを作るのかと尋ねると、クラリスは「これは秘密なんだけど」と言いながら、彼の耳元で非常に興味深い話を囁いたものだった。

「建物たちが喜ぶのよ。」と。

他の誰かがその話をしていたら、何のことだか分からない戯言だと思ったかもしれないが、彼女はゴーレムマスターであり、実際にある邸宅の魔法の主人だ。

それでも建物たちは本当に、目の前に雪だるまが立てられたら勲章のように誇らしげに感じるに違いなかった。

「ここでも雪だるまを作るなんて言わないだろうな。」

彼は靴先にほんの少し積もり始めた雪を見下ろしながら小さく微笑んだ。

「彼女らしいな。」

彼はうっすらとしか見えない道の向こうを見やった。

クラリスが到着する時間はもうすぐなのに、何か面倒なことがあったのか少し遅れている様子だった。

「何も……起きていないといいけど。」

彼女が乗るのは、一国の王族が使うことを前提に設計された、頑丈で安全な馬車だった。

だから特に心配する必要はなかったはず。

それなのに、彼はなぜかじっと遠くを不安げに見つめる自分に気付いた。

どうしてだろう……早くクラリスに会いたかったからだろうか。

雪が降ると喜んでいるクラリスを。

ノアは手のひらをぎゅっと握りしめた。

その上に小さな球状の光が生まれる。

ノアはそれをそっと押し出し、暗い道の向こうに送り出した。

その光はクラリスよりも一歩前に進み、彼女を探しに行く。

そして彼女が進む道を照らし、安全に守ってくれるだろう。

その後、彼は何度か傘を直し、入り口周辺を行き来しながら少し不安そうな時間を過ごしていた。

その時、不意に。

遠くから馬車の音が聞こえ始めた。

彼はコートの襟を正し、それを眺めた。

「ああ……!」

ついに馬車が彼の視界に入ってきた。

先ほど送り出した光がその道を安全に導いてくれたようだ。

深い安堵のため息が漏れた。

激しい雪の中で、クラリスが困ったことになっているのではないかと本当に心配していたのだ。

ついに馬車がその前で止まった。

少し慌てたノアは、光を消し去り、待ちきれない様子で馬車の扉を開けて手を差し伸べた。

「お嬢さん!」

待ちわびた分だけ熱い気持ちを込めて呼びかけた。

「ノア……?」

クラリスは驚いたように答えた。

まるで彼が外で待っているとは思っていなかったかのようだ。

「こんな雪の中、外にいたらどうするの?万が一、風邪でもひいたらどうするつもり?」

「僕が風邪をひかないって知ってるだろう?」

「それでも心配なのよ。」

「部屋の中でじっとしてなんていられなかったんだ。」

ノアは再び手を差し出した。

やがて、その上にクラリスの手が重ねられた……。

彼の手と比べてみると、とても小さくて細くて、不思議な気持ちになった。

こんな小さな手で勉強をしたり、編み物をしたりするなんて、とても信じられなかった。

いや、それよりも何よりも愛おしく感じた。

「ノア。」

彼女は手を取ったまま、馬車から降り、同じ傘の下でノアをちらりと見上げた。

風が吹き、長い髪が揺れた。

いつか彼の手でクラリスの腰を抱きしめた時と、どこか似た感覚が蘇り、彼の心臓がどきんと大きく波打った。

たっぷり舐めた蜜のように甘く濃厚なその感覚が、胸の奥に染み込んでいった。

「馬車の横に光を送ってくれたのは、ノアだったんでしょ?」

彼は言葉がすぐに出てこなかったが、ようやくうなずいた。

「ありがとう。壊れたランプのおかげで、少し暗くなっちゃったから。それでね、突然周囲が明るくなったからみんな驚いたの。みんな理由が分からないみたいだったから、私が説明してあげたの。」

風に少し乱れた髪を手で整えながら、クラリスは話を続けた。

「ノアが私たちを守ってくれてるんだって。」

「……。」

「私、間違ってないよね?」

まだ彼の手を握ったまま、優しく微笑むクラリスを前にして、ノアはただ俯くだけだった。

考えてみると、光を送りながら守りたいと思った相手は、クラリス以外に思い浮かばなかった。

本当に彼女以外の誰も思い浮かばないのだ。

「ありがとう、ノア。」

「いや、僕は……。」

ノアはなぜかその可愛らしい感謝の言葉を受け取ることが申し訳なく感じた。

だって、あの光を送った理由は……。

『クラリスと少しでも早く会いたい、それだけだったから。』

それは、彼自身の欲望のせいだ。

クラリスをひたむきに……ただ願う気持ち。

『……。』

ノアは心の中で「願う」という言葉に驚かざるを得なかった。

長い間、隠していた恥ずかしい執着を耳にされたようで、どうにも逃げたくなる気持ちだった。

なぜなら、その「願い」には、単なる友情の間柄では許されない低俗な欲望まで含まれていることを、彼自身が知っていたからだ。

彼は急いで、このような身勝手な「願い」を忘れようとした。

初めて無条件で受け入れてくれた友人を、このような形で裏切りたくはなかったからだ。

何よりも、このような醜い欲望の対象になりたいと思う人間など、この世にいるはずがないと思ったからだ。

「ノア。」

しかし、澄んだ声で自分の名前を呼ぶその瞬間には――

「……少女。」

ついに抑えきれなかった気持ちが、思わず口から溢れ出た。

もうどこにも隠れることができず、大きな声で。

だからこそ、もう認めざるを得なかった。

自分が深い罪を抱えていることを。

ノアが憂鬱そうにコートを軽く振った時、馬車から勢いよく飛び出してきたバレンタインが、ノアの傘の下に滑り込んできた。

「ああ、本当に、なんでこんなに雪が多いんだ?うんざりする、ほんとに。」

瞬く間に傘の下が狭くなった。

「……迷惑ですよ、バレンタイン。」

ノアが困ったように言うと、彼女の言葉を受けたバレンタインは、傘を高く持ち上げながら、そっけなく答えた。

「傘をもっと余裕を持って持ってこいよ。俺だって居心地悪いんだよ、まったく。」

そう言いながらも、彼は新しい傘を持たせた従者の行動を気にも留めず、再びノアに寄り添うように立ち、続けて命じた。

ひそかに笑みを浮かべながら、三人が寄り集まっているその様子が、なんとなく面白いと感じられたようだ。

馬車が去った後、ノアは深い息をついて言葉を紡いだ。

「傘の不満を言う前に、外に出て傘を渡してくれた人に感謝する気持ちを持ったらどうですか?」

「寒いから出てきたわけじゃないでしょ?」

冗談めいた口調とは対照的に、ノアを見つめるバレンタインの目は深い感情を宿していた。

そこに込められた意味を……。

ノアは心がしびれるようなその感情を理解することができず、簡単に返答することができなかった。

その沈黙が物語る感情を、バレンタインもまた理解していたようだ。見つめるその目はさらに深くなった。

やはりノアとバレンタインが出会わなければ、この感情は生まれなかったのだろう。

二人がこうした感情を抱くようになったのは、おそらく互いの存在があったからなのだろうと思われた。

「ハクション。」

彼らの間から突然くしゃみの音が聞こえた。

驚いた彼ら全員が下を見た。

真ん中で、口を手で覆ったまま振り返ったクラリスがくしゃみをしていた。

「おい、入れ、早く!」

ノアは凍えたクラリスの肩をそっと押し、彼女を宮殿の入口へと導いた。

「いい考えだ、急いで。」

彼らはひと塊になり、クラリスを宮殿の中へと連れ込み、震えた体を傘の中にすっぽり収めた。

互いに体を密着させたせいで、歩くのが窮屈だったクラリスが困った顔をして言った。

「……私、このまま傘を使わない方が楽かもしれません。」

「くしゃみをしている子がそんなことを言うか?」

「それでも歩くのが不便だって話よ。」

「群れを作るのは寒さを避ける動物たちの知恵ですからね。」

「ほら、こうしてみんな一緒にいると暖かいじゃない。」

クラリスはそれでも不便そうに小声でぼやきながら、後ろを振り返り彼らを見つめた。

「まあ、不便でも少しだけ我慢すればいいわけだし、大したことじゃないんじゃない?」

「それくらいなら? 小さな体一つを守るために、私たちの友情に感謝するべきじゃないの!」

しかしその瞬間、まるでバレンタインの言葉を聞き取ったかのように、風が荒々しく吹きつけ、ノアの傘を激しくひっくり返してしまった。

「キャッ!」

「うわっ!」

「ひゃっ!」

全身で風を受けた3人は悲鳴を上げながら、それぞれ宮殿の入口へと駆け出し始めた。

こうなった以上、残された方法は各自で生き延びるしかない。

必死で走り現館の前にたどり着いたノアは、荒い息を整えながら降りしきる雪景色を見渡した。

白く覆われた道には三人の足跡が同じ方向に伸びていた。

誰も他の場所へ行こうとはせず、一人で進むこともない。

ここまで皆一緒に来た。

「綺麗でしょ?」

彼と同じ景色を見つめていたのだろうか。

そっと近寄ってきたクラリスがそう尋ねると、ノアは軽く頷いた。

誰一人孤独を感じることのないこの景色は、とても美しく思える。

「やばい、凍え死ぬ。ドアを閉めて!」

いつの間にか現館の中へ先に入っていたバレンタインが再び叫んだ。

「入ろう、ノア。」

その瞬間、手首をしっかりと握ったクラリスが現館の中へと促す。

ノアは自分の手を掴む小さな手を驚いた目で見つめながら、やがて微笑み、彼女の後ろについて行った。

なぜだか、心がざわついた。

突然降り出した雪で首都園の侍女たちは、ようやく雪かきを始めた。

ノアとバレンタインは自ら進んで彼女たちを手伝うと言い出したため、クラリスは一人で自室に向かうこととなった。(本当はクラリスも侍女たちを手伝いたかったが、何度かのくしゃみによりやむを得ず部屋に戻ることになった。)

週末の外出や外泊から戻る際は必ず、出入り記録簿に時間と名前を記入する必要があった。

出入り記録簿は通常、土曜日の早朝から自習室入り口付近に置かれており、誰でも自由に記録できる仕組みになっていた。

「寒いな。」とつぶやきながら、クラリスは少し震えた足取りで自習室のドアを開ける。

日曜の夜でも変わらず席に座って勉強している受験生たちがいた。

その中にはユジェニもいて、クラリスは顔を緩めて片手を振った。

ユジェニも軽く会釈を返してくれて、クラリスは嬉しく感じた。

彼女に感謝の気持ちを伝えたいくらいだ。

この調子なら、本当に同性の友達ができるのではないかと思う。

クラリスは少し胸を高鳴らせながら、出入り記録簿が置かれたテーブルの前に立った。

「おや、今になって来たのですか?」

すると、記録簿の隣に座っていたエイビントンが、やや皮肉っぽく声をかけてきた。

「あ……はい。雪のせいで少し時間がかかってしまって。」

クラリスは一瞬戸惑ったものの、できるだけ穏やかに返答した。

エイビントンと争う理由は全くなかったからだ。

「まあ……無事に着いて良かったですね。グレジェカイアの名前は……ああ、こちらに記入してください。時間はこちらです。」

彼は親切にもクラリスの名前を探してくれ、掛け時計を持ち出して現在時刻を示してくれた。

クラリスはその気配りがとてもありがたかった。

けれども……

『またもや何かを我慢しているような顔つきだわ。』

しかも今度は、頭の上に新しい羽が生えそうなほど気まずそうに見えた。

彼が教えてくれた場所に名前を記入したクラリスは、ペンを置いてエイビントンに小さな声で尋ねた。

「ベルビルさん、もし脅迫を受けているなら、そっと右手を挙げてみてくださいませんか?」

「な、なんですって……!私が、まさか誰かの命令を受けて、あなたと友達になるという不可解な状況だと言いたいんですか?」

そんな感じだった。

けれども、顔を青ざめさせながら必死に否定するエイビントンを見ると、クラリスはそれ以上突っ込む気持ちが起きなかった。

「わかりました。わかりました。では、明日お会いしますか?」

「お……」

クラリスが投げかけた平凡な挨拶に、彼は少し嬉しそうに微笑みながら軽く頭を下げた。

彼の努力が通じたと感じたようだ。

「では、明日またお会いしましょう。」

クラリスは軽く微笑み返しながら、その場を去った。

クラリスの背中を見送りながら、エイビントンは安堵のため息をつき、机の上に突っ伏した。

「ああ、本当に助かった……。」

しばらくそのまま突っ伏していた彼は、はっとして体を起こした。

「こんな時じゃないぞ。」

彼は鞄から白い紙を一枚取り出し、冷えたペンを手に取り書き始めた。

[尊敬する王妃殿下、ついに私、グレジェカイア家と真摯な友情を築き始めることができました。]

早くこの嬉しい知らせを伝えなければならなかった。

 



 

 

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