こんにちは、ちゃむです。
「悪役に仕立てあげられた令嬢は財力を隠す」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

33話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 化粧品店<ユネット>
そして時間が流れ、ついに化粧品店〈ユネット〉の開店日が近づいてきた。
立地が良いという変化とはいえ、開店もしていない店に関心を寄せる人々はかなり多かった。
すでにうわさが広がっていたからだ。
「最近プリムローズ公爵夫人が社交の集まりにまた顔を出しているじゃない?それって新しい化粧品のせいだって、本当なのかしら?」
「その化粧品、今回新しく登場する〈ユネット〉のものだって……。まだ開店していないから慎重になってるけど。」
そしてこのうわさは真実だと判明した。
プリムローズ公爵夫人が開店当日に直接店を訪れて化粧品を買ったのだ。
その後、貴族たちの集まりはすべてプリムローズ公爵夫人とユネットの話題で持ちきりになった。
「聞きました?公爵夫人がユネットにわざわざ訪問なさったんですって!」
「最近男爵になった方を助けたのがあの方だとか、本当だったんですね?」
人々は公爵夫人が購入した化粧品が何なのか気になった。
ユネットには質問する人があまりにも多くて、「公爵夫人が選んだ化粧品」というリストが店の壁に貼られるほどだ。
「ねえ、公爵夫人がユネットに行ったって噂が広まってるけど……あの店に貼られてるリストって本当なの?」
プリムローズ公爵夫人が社交の集まりでユネットの話を口にした後は、反応がさらに爆発的だった。
「そうなんです。私の肌は〈ユネット〉のおかげなんです。」
肌の秘密なら秘密にしておいてもよさそうなものだが、プリムローズ公爵夫人は、自分が使った品々をあっさりと公開した。
開けっぴろげな態度に、非常に慎重に接していた貴族たちも驚いた。
「お店で公爵夫人が使ったとされた製品って、本当だったんですか?」
「はい、私が許可したんです。私一人だけが〈ユネット〉の助けを得てきれいになりたくはなかったんですよ。」
プリムローズ公爵夫人は胸に手を当て、上品に言葉を続けた。
「偶然、〈ユネット〉の創業者に会う機会があって、その方からたくさんの助けを受けたんです。いろいろなお話も交わしましたし……」
「〈ユネット〉の化粧品を作ったというのは、皇太子殿下と協力しているというあの方のことですか?」
「はい。私だけではとてもこのような幸運を手にできるとは思えませんでした。それがあの方の流儀ですから。」
「もしかしてお会いになったことがあるんですか?世間では正体不明だと……」
「私はご恩人なので、その方の私生活を他人に明かすことはできません。それはご理解いただけると思います。」
「は、はい……」
プリムローズ公爵夫人が自ら「ご恩人」だと明かしたため、それ以上問い詰めることができなくなった。
ここで無理に深入りすれば、公爵夫人を恩人に無礼を働く人物にしてしまうからだ。
適切な範囲で情報を伝え、礼儀をもって一線を守れば、具体的な信頼は高まる。
すべては—プリムローズ公爵夫人が望んでいた通りだった。
『これならユリアの助けになるでしょう。』
最初からこのような噂が流れたのも、公爵夫人が店に通っているという噂が積極的に広まったのも、すべて彼女が自分の娘、ユリアのために仕掛けたことだった。
『私は… 母のような母にはならないわ。』
やりたいことを我慢して、抑え込むことがみんなにとって良いことだと思っていた。
—どうせ生まれた子なら、あなたが望み育てられる公爵夫人になるほうがいいのよ。社交界で離婚した婦人の立場がどんなものか、あなたもよくわかっているでしょ?
「良き夫人として生きること、それが良い人生なのよ」と、彼女の母は語った。
しかし、プリムローズ公爵夫人は、自分の娘にそう教えたくはなかった。
『ユリア、あなたはやりたいことをやればいいのよ。』
ほかの女性を愛しているという婚約者にすがったり、別の男性を探したりする代わりに……やりたいことをしているユリアの姿が誇らしかった。
応援してあげたかった。
私生児を産んだ夫を黙って支えながら生きている自分の姿が正解だと思わせたくなかった。
「プリムローズ公爵夫人が使っている化粧品って、ユネットのものなんだって?」
「そんなに効果があるらしいよ。」
そして、その噂は貴族の間だけにとどまらなかった。
いつの間にか身分を問わず、ユネットに訪れる人が増えていった。
そして、それは普通の化粧品店とは異なる光景を生んだ――。
「まあ?」
〈ユネット〉のインテリアにはユリアの意向が大きく反映されていた。
「少し堅めな印象があっても、信頼感を与えたいんです。」
華やかでキラキラした感じよりも、落ち着いていて端正な印象。
神秘的で魅惑的、奇跡を起こす魔法薬を売るかのように見える他の化粧品店とは違っていた。
店を見て驚く表情を見るだけで、〈ユネット〉に初めて来た人を見分けられるほどだという冗談も出るほどだ。
「うーん、あそこに貼ってあるリストが、プリムローズ公爵夫人が買った商品ってやつ? だったらあれが……」
「商品はそのままご提供できますよ。」
そしてもう一つ驚かされたのは、店員がすぐに商品を差し出さなかったという点だった。
「ところで、お客様の肌タイプはどのようなものでしょうか?化粧品は何よりご自身に合うものを使ってこそ効果が出るんです。」
「は、肌タイプ?」
〈あなただけのための化粧品〉
店員は店に掲げられたスローガンを指しながら、にっこりと微笑んだ。
「人の性格がそれぞれ違うように、肌も違うんです。ご自身の肌タイプが分からないようでしたら、私どもが診断をお手伝いしてもよろしいでしょうか?」
「えっ…いい化粧品って、誰が使っても同じじゃなかったのか?」
商品を買おうとする試みを止められたにもかかわらず、客たちはその態度にかえって信頼を感じた。
『几帳面だな……。ただ注文通りに売ればもっと利益になるのに。スタッフももっと必要になるだろうに。』
購入が制限されても不満は感じなかった。
やたらに売らない姿を見て、かえって信頼が増した。
そしてこれは、完全にユリアの教育の賜物だ。
「皆さんはすぐに〈ユネット〉で働けるわけではありません。」
人の肌タイプに合った化粧品や、顧客対応に関する教育が必須で行われていた。
「大きく分けて脂性肌、乾燥肌に分けて説明しますね。」
「脂性肌は顔がテカりやすく、ニキビができやすい傾向があります。油分が多い製品、例えばココナッツオイルは適していません。」
「乾燥肌は角質ができやすく、粉っぽくなり、つっぱる感じが強い方です。保湿と油分の補給が重要で、ペパーミントが入った化粧品は注意して使う必要があります。」
「特に敏感肌の方は、自分に合わない成分を避けるために、徹底したテストが必要です。」
さらに、部分的に乾燥していたり、他の部分は脂っぽかったりする場合など、ユリアはさまざまなケースについて説明した。
「このように人それぞれ肌は違うので、やみくもに売ってはいけません。まず肌タイプを聞いてください。」
難しい話だった。
ただ化粧品を売るだけだと思っていた何人かの人たちは、戸惑いと困惑を覚えた。
そんな彼らの心を見透かしたように、ユリアは教育中にふっと笑った。
「ただ適当に売ればいいのに、なぜここまでするの?と思うかもしれませんね。」
「それは……」
「もちろん、人の命に関わるような成分は入っていません。でも、誰かにとって良い化粧品が、別の誰かにとっては毒になることもあるんです。」
多くの暗記を必要とする内容や、失敗すれば困ることもある。
しかしユリアの教育は体系的で丁寧だったため、受ける側も無理なくついていくことができた。
美しさは素晴らしい価値ではあるが、ユネットで販売する化粧品は、単なる美肌のためだけのものではなかった…。
「ここで売る化粧品が、人にポジティブな影響を与えられるということを、しっかり理解してほしいんです。」
その理念は、教育を行う十分な動機にもなっていた。
また、ユネットは社員の福利厚生にも気を配っていた。
なかでもユネットの予備スタッフたちが最も感動したのは、まだ正式な社員ではないにもかかわらず、研修期間中に給与が支払われたことだった!
「私、今日は働いてもいないのにお給料をもらえるんですか?」
「皆さんがユネットのために使った時間には、それだけの価値があるんですよ。」
それほどまでにユリアは化粧品の知識を重要視していた。
そしてそれは口先だけではなかった。
研修を受ける予備スタッフの中で、ひときわ目立つ存在がいた。
物怖じしない態度、歯に衣着せぬ物言い、印象的な容姿。
他の場所で働いたときにも売上を伸ばしたことを誇りにしている人物だった。
しかし——
「テストに合格できませんでしたね。教育中も集中せず、雰囲気を乱していたという話も聞きました。」
「申し訳ありません。でも、私がそれだけ自信を持っているということも、ぜひ知っていただければと思います。私は単に知識だけでなく、お客様に寄り添いたくて……」
「いいえ。〈ユネット〉は化粧品をどれだけたくさん売れるかだけを見ていません。」
化粧品の知識がなければ、決して販売員として立たせることはできないと、ユリアは断固として言い切った。
「長い間、肌に悩んできた方に、間違った知識で合わない化粧品を売って、かえって状態を悪化させてしまったらどうしますか?」
「でも!」
「化粧品を作ったのは私ですが、実際にお客様に販売するのは、直接お客様に接するスタッフの皆さんです。」
ユリアはさらに、ユネットの化粧品で人を最もよく助けられるのは社員たちだと強調した。
「試験に合格した方だけがユネットでお客様と接することができます。」
そのため、いくら優れた経歴があっても、予備スタッフはその日、合格しなければならなかった。
そしてその日の出来事は、社員たちにとって教育に対する強い動機付けとなった。
『私たちはただの化粧品店の店員とは違う。』
『教育費まで支給されながら学んだのに、一人前にならないわけにはいかない。正社員になった今では福利厚生も良くなったし、結果を出さなきゃ!』
『あんなに大変な思いをして試験に合格したのに、あれを無駄にするわけにはいかない!』
正社員になるための試験の難易度は、決して甘いものではなかった。
スタッフたちは誇りを持って〈ユネット〉で働いていた。
いい加減に化粧品を売ろうとはしなかった。
まずはじめに来店したお客様の話を聞こうとした。
「お客様は、どのような点が一番ご不便ですか?」
「私は肌が乾燥していて……」
「そうでしたか。お客様は乾燥肌のようですので、この保湿クリームよりもしっとり感の強い製品をおすすめいたします。」
〈ユネット〉のスタッフたちは全員、落ち着いた白衣を着て働いている。
それは、ユリアが意図していた通り、専門的で清潔な印象を与えていた。
また、他の化粧品のように「これさえ使えば必ず美しくなる」「男性の視線を釘付けにする」といったキャッチフレーズも使わなかった。
「まあ……貴族にだけ店員が丁寧に説明してるわけじゃなかったのね?」
ユネットでは訪れたすべての客に1対1のカウンセリングを行っていた。
さらに「サンプル」というものまで渡していた。
「ご不安でしたら、サンプルを一度お試しになってみませんか?」
「えっ、これを無料でくれるんですか?」
化粧品を無料で配るというのは衝撃的なことだった。
使ってから買えるなんて。
だがサンプルだけでは終わらず、人々は商品を受け取っても、改めて感嘆していた。
『パッケージがとてもきれいで清潔感ある。』
無駄な装飾もなく、派手に飾られてもいないシンプルなパッケージ。
『成分がよく見える。』
自分に合わない成分を避けられるようにし、有害な成分が含まれていないことを知らせるために使用された原料をすべて表示しているとスタッフは説明した。
「当店〈ユネット〉はお客様を第一に考えております。まずお使いになってみて、お客様に合う成分かどうかご確認ください。」
「まあ。私がダメな成分は入ってないの?じゃあ、安全な化粧品ってこと?」
最初は、ただ有名人が使っているからと軽く見る人もいた。
しかし再購入率が非常に高く、訪れた人々がこぞって「良かった」と口にするようになった。
「私がただ言ってるだけじゃないのよ。あなたも行って使ってみればわかるから!」
「…まあ、サンプルを無料でもらえるっていうし、損はないでしょ。」
そして好奇心から訪れた人たちは、ユネットを実際に見て態度を変えて帰っていった。
「ねぇ、ただ宣伝が上手いだけの店じゃないの?」
人はまた人を呼んだ。
開店直後に多かった客が減る様子は見えなかった。
いや、むしろもっと増えた。
その結果、ユリアとエノック皇太子の予想を上回るほどの売上が出た。
「ねぇ、プリムローズ公爵家では、公爵夫人だけじゃなくて騎士たちまでユネットの商品を使ってるらしいよ?」
さらに、ユネットの開店時期がちょうど夏だったことも良い影響を与えた。
プリムローズ公爵家の騎士たちが使っている日焼け止めとアフターサンクリームが噂になり、「化粧品なんて騎士には関係ない」と思っていた人たちまで興味を持つようになったのだ。
「この無知な奴らめ。ただ肌が荒れなければいいってもんじゃないんだぞ?」
「うちは本家の家門で代々使われてきたものがあるのに……」
ただの身だしなみではなく、騎士道を知る立派な騎士になるために欠かせない必需品。
「デオドラント……?」
「その汗臭さを漂わせたまま行ったら、君が仕えてるって言ってたレディは吐き気を催すだろうさ。」
当初は基礎化粧品のようなラインが注目されていたが、
日差しが強くなるにつれて、日焼け止めやデオドラントといった製品の購入率が急上昇した。
「お、ジェルタイプのもあるんだけど、汗かいたときに使ってみたらめちゃくちゃさっぱりするんだよ。」
「プリムローズ公爵が騎士団で使ってるって? ああ、騎士って言えばあの団体じゃないか!」
騎士たちが身だしなみのために使っているという噂は、さらに販売にポジティブな影響を与えた。
『うまくいくとは思っていたけど……こんなにうまくいくなんて思わなかった。』
ユリアはぐったりした体をそっと起こした。
まだ在庫が足りなかった。
「うう……製品の再供給をもっとしないと。」
フローレンスがよく対応してくれているとはいえ、予想以上の注文の集中により、ユリアも製造の手配に集中しなければならなかった。
それでも成長の恩恵が続いたおかげで、最初よりも多少は余裕が出てきた気もした。
「おお、プリムローズ公爵夫人。これはまさに……」
「はい。今までのとは違う化粧品です。」
さらにプリムローズ公爵夫人は、海外を訪れた貴族にもユネットの化粧品を紹介した。
すでに海外輸出を視野に入れていたのだ。
まだ初期段階のため、国内需要に応えるのも難しいが、あらかじめ販売ルートを確保しておいて損はなかった。
『お母さま… 私のことをこんなにも信じてくださるなんて。』
それほどまでに、ユリアとその成果を信じてくれていると感じて、胸がいっぱいになった。
いつも控えめだった娘なのに。
「お金がもっと必要なら言いなさい。公爵家の資金でなくても、私が援助できるわ。」
「そんなふうにおっしゃっていただけるだけでも、心強いです。」
皇室の相談役とはいえ、むしろ我が帝国の上層部にあたる立場で、皇太子が直接動くのは難しい海外のことは、プリムローズ公爵夫人のような上級貴族に、それとなく伝えてもらうのがちょうどよかった。
「実はお願いがあるんです、お母さま。」
しかし今は、海外輸出よりも他に重要なことがあった。
「ビビアン皇女殿下が社交界に復帰されるそうですが、隣でシャペロンとしてご出席いただけませんか?」
皇女の社交界復帰が迫っていた。

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