こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

162話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 家族ごっこはもうやめます⑥
突然、後ろから大きな爆発音が響いた。
「ドォン!」
まるで巨大な岩が崩れ落ちたかのような轟音に、ナビアは驚いて振り返った。
後ろから吹き寄せる風に髪が乱れ、灰色の煙が舞い上がっていた。
その中に、大きな何かが地面に倒れているのが見えた。
そして、その上に男が身をかがめていた。
「お父さん?」
煙をくぐり抜けて見えたその男は、他でもないラトクだった。
ラトクは突然聞こえてきた娘の声にハッとし、驚いた表情でそちらを振り返った。
『確かに「お父さん」という声が聞こえたが……。』
娘が切望していたのは、こんな寂しい歓迎だったのか?
そう思いながら、彼はここが天国ではないことに気付いた。
「ここは……何だ?」
『この建物は、何がどうなってこんなにボロボロになったんだ?』
それよりも、彼の心を捉えたのは、こんな場所にある建物など本来気にも留めるものではないという事実だった。
彼の視線は驚きの表情を浮かべながら、目の前で立ち尽くすナビアに注がれていた。
さっき娘の声を聞いた気がしたのは、どうやら錯覚ではなかったらしい。
『アグニスにまつわる伝説のゲートが開かれたのか? だとして……。』
「なぜお前がここにいる?」
ラルクは驚愕に満ちた表情で、まるで目の前の存在を信じられないかのように、ぎこちなく問いかけた。
彼はその場から跳ねるように立ち上がった。
娘を見つけた喜びよりも、なぜこんな不潔な場所で一人きりでいるのかという疑念の方が強かった。
彼はナビアのすぐ前まで、ふらつきながらも早足で近づいていった。
ナビアは自然と父親を見上げると、知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。
ドン!
しかし、その笑みは突然、後頭部に受けた蜂の一刺しのような痛みで消えてしまった。
「……あれ?」
ナビアは遅れて手を後頭部にやると、かすかに声を漏らした。
しかし、実際のところ、全く痛みは感じなかった。
ただ、疑問が湧いてきた。
『なんで私、叩かれたの?』
ナビアの涙ぐんだ瞳が、わずかに光を帯びながらラルクを見上げる。
彼は娘のその瞳の輝きを見て、冷や汗をかきながら声を振り絞った。
「父さんが帰ってくるまで待っていろと言っただろう。どうして待てなくて、こんな場所に一人で来たんだ?」
ナビアは、これくらいは大したことではないと言おうとして口を開きかけたが、思わず言葉を呑み込んだ。
それを言ったら、ラルクがまた怒りだしそうな予感がしたからだ。
けれどもラルクは、まるで彼女の心を見透かしたように、無言でじっとその表情を観察していた。
彼は、「どういうことだ?」というような目つきで、今度はナビアの赤らんだ頬をじっと見つめた。
「俺、何も言ってないんだけど……」
「私、何も言ってないのに……」
ナビアの弁明がまとまりなく崩れていくのを見て、ラルクは困惑の色を浮かべた。
彼は全てをしっかりと理解した。
ナビアの腕を離しながら、片目を細めて少しきつめの声で言った。
「悪いことをしたら罰を受けなければならない。」
「はい……。」
「『ごめんなさい』と言わなきゃだめだ。」
「ごめんなさい、お父さん。」
ナビアはなぜかほっとしたような、妙にすっきりとした気持ちになった。
『お父さんに叱られた。』
一人で危険なことをしたと言われて叱られた。
それが正しい指摘だとは思えないけれど、確かに怒られた。
それなのに、どういうわけか満足感のようなものが湧き、自然とほほえみがこぼれた。
ラルクは呆れた表情で批判するように見つめた。
「まったく。『ごめんなさい』と言いながら笑うなんて、どういうつもりだ?」
ナビアはおかしくて笑っていたが、その笑いがラルクに向けられて思わず爆笑した。
「会いたかったんです、お父さん。」
ラルクは、それが軽々しく流していい話ではないと思い、厳しい父親のように言おうとしたが、すでに口元がピクピクしていた。
『ふむ、今回は大目に見るか。』
とりあえずカオスのせいで募っていた苛立ちが、ナビアの笑顔を見ると一瞬にして消えてしまった。
ラルクは苦笑いしながら、ナビアの頭をいたずらっぽく撫で、ニカンと視線を合わせた。
そのとき、ニカンが何か言おうとして口を開いた瞬間だった。
ラルクは「シッ」と言いながら、黙るよう唇に指を当てた。
「……!」
ニカンは何も言わずに口を閉ざした。
突然声が出なくなったのだ。
それはウッドとビビアンも同じ。
ラルクは、自分の娘との時間を、そんな雑音のような連中に邪魔されたくなかった。
彼はナビアに視線を戻した。
アグニスの人々を見るときとは違い、その目には優しい微笑みが浮かんでいた。
「そんなに会いたかったのか?」
その声は穏やかだった。
ナビアが彼の言葉に頷くと、ラルクの微笑みはさらに深まった。
「この世でお前が一番好きだよ。私たちの娘だもの。」
彼が興味津々に尋ねた。
「どれくらい会いたかった?」
質問のレベルが非常に幼稚なほど控えめだった。
しかし、ラルクにとっては非常に重要な問題だった。
「お父さん、忙しいんじゃないの?」
ナビアは聞くそぶりもせず、感情の整理を終えた。
ラルクは厳しい表情を浮かべた。
ナビアの発言はつまり、もう見るべきものを見たから戻れという意味だ。
「うちの娘、いつからそんなに冷静になったんだ?パパだけに会いたかったのか?一日が一年、いや十年に感じられるのはパパだけだったのか?」
「……。」
「『暑さがこたえる』なんて言葉はこういう時に使うんだよな」と彼は言った。
人生で一番嫌いな人たちの前で、こんなふうに態度や言葉を全く考えずに見せつけるなんて、ナビアは地面に隠れたいほどの気持ちになった。
「今はそんな話をしている場合じゃないでしょう、お父さん。」
「じゃあ、いつそんな話をするべきなんだ?」
ラルクはぶっきらぼうに問い返し、顔をしかめながらアグニスの連中に視線を向けた。
『本当に、こいつらのせいでこんなことになるなんて。』
もしこいつらがいなかったら、ナビアは間違いなく「空ほど広い世界の中で、お父さんに会いたかったです」と言ったはずだ。
もちろんそれは、ラルクの一人よがりな考えに過ぎなかったが。
「場所がちょっと悪いだけだな。」
ラルクは音を立てて飛び跳ねるような仕草を見せた。
邸宅を見回しながら、彼は両手でナビアの耳をふさぐ。
その後、彼は顎を上げ、軽く唇を引き結んだ。
「ふー。」
「お父さん……?」
ナビアが不思議そうな顔で彼を呼んだとき。
ゴワァァァァン——!
突然、頭上で轟音が響き渡る。
「!」
ナビアは驚いて硬直し、顎を上げたまま凍りついたかのように身動きが止まった。
「なんてこと……。」
空が見えた。
とても青く澄み切った空が天井を覆っていた。
つまり、2階や3階が消失したことを意味していた。
建物が崩壊する際に残骸が下に落ちて積もることはなく、きれいに消えてしまったかのようだった。
ニカンは呆然とした表情を浮かべていた。
ビビアンも力が抜けたように地面にへたり込んで、ぼんやりと空を見上げていた。
ウッドも固まったまま動けずにいた。
ナビアは視線を下ろして、自分とラルクが作り上げた光景を確認した。
地面に散らばった遺体の上に陽の光が明るく降り注いでいた。
使用人の多くはすでに逃げ出していた。
この場所に満身全霊を捧げて研究を行った学者たちも何人か逃げ出したが、いくつかの建物に巻き込まれて命を落とした者もいた。
逃げ延びた者たちも、結局は無事では済まないだろう。
「満身全霊の気運が満ちれば、人間が打ち勝てるものではない。」
おそらく、その力を使えば、彼らを追跡することも可能だろう。
ニクスの権能に加えられたカオスの「混沌」は、満身全霊が持つ規格外の力と想像力が組み合わさったものだ。
「何にせよ、これで本当に終わりだろう。」
古い建物をすべて破壊しただけだが、それでも人々の記憶に残るような事件となるだろう。
ナビアはこれ以上ここに留まる理由がないと感じ、王宮へ戻るつもりだった。
「私はこれから王宮に戻りますが、父さんは神殿へ向かわれるのですか?」
ラルクは杖を手に取りながら、神の遺体を見つめて黙り込んだ。
「うん、それを持って行かないとね。」
彼は冗談っぽくつぶやいた。
「父さんが戻るまでクリードと一緒にいるんだよ。父さんが無駄に作り話をしたわけじゃないんだから。」
「分かりました。」
「皇宮に送るよ。ここでの後始末は父さんが片付けるから、準備皇太子に伝えて整理しておいて。」
「はい。」
ラルクは神の守護者のように、娘の額に軽く触れた。
「では、明日会おう。」
パチン!
指を鳴らすとともに、ナビアの姿はそこから消えた。
ラルクは体をくるりと回してニカンを見た。
「さて、そろそろ本格的に後片付けを始めようか?」
彼が皮肉っぽい笑みを浮かべると、それをきっかけにニカンを含む二人の子どもたちが声を上げた。
しかし誰も容易に口を開けなかった。
彼らに迫るラルクの気配が、極めて威圧的だったからだ。
最終的に、ニカンは血を吐くような思いで尋ねた。
「何を、何をしようというんですか!」
「何をするだと?」
ラルクは軽やかに体を動かした。
ドドドッ、背後で何かが崩れる音が響き、それが意外にも彼らを驚かせなかった。
「ただの古い建物を壊した程度で終わると思ったのか?建物を壊してみたところで、やつらが傷つくわけでもないだろう。」
「……」
彼が彼らに直接手を出さなかった理由はナビアのためだった。
その子が復讐を自ら成し遂げるのが良いと判断したのだろう。
今日という日はナビアにとって、アグニスへの自身の復讐を完了し、後腐れなく去るための日となった。
ここで父親が話を切り出した。
「暴力なんて、子どもの精神に良いわけないだろう?」
ラルクはほとんど力を使わずにニカンの襟を掴み、一気に持ち上げた。
「見ろ!これが放置の結果だ……!」
ニカンが叫び声を上げながら暴れると、ラルクは静かに制してみせた。
彼はためらいなく拳で頭を叩きつけた。
バキッ!
「まだ始めてもいないのに、もう怯えてどうする?」
「……」
「抵抗すればお互い力を消耗するだけだろう。楽に行こうじゃないか?」
「お、お助けください!何でもしますので、命だけは……!」
「まぁ、死にはしないだろうが、事故で死ぬ可能性はある。」
それは避けようがないことだ。
ラルクは冷ややかに笑った。
その笑顔はアグニスの人々の目にはまるで悪魔のように見えた。








