偽の聖女なのに神々が執着してきます

偽の聖女なのに神々が執着してきます【126話】ネタバレ




 

こんにちは、ちゃむです。

「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。

ネタバレ満載の紹介となっております。

漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。

又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

【偽の聖女なのに神々が執着してきます】まとめ こんにちは、ちゃむです。 「偽の聖女なのに神々が執着してきます」を紹介させていただきます。 ネタバレ満載...

 




 

126話ネタバレ

登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

  • ディエゴIF③

「アリエル様、どうか私を失望させないでください。」

「ですが、これは……これは……。」

魔界に来て二日目、目の前に並んだ料理を見て思った。

「これ、本当に美味しいですね。」

魔界でも十分に生きていけそうだ、ということだ。

[愛の神オディセイが、とうもろこしのお菓子を口いっぱいに頬張りながら涎を飲み込みます。]

ヨーグルト味のダクアーズを食べながら、私は幸福感に包まれた。

並べきれないほどのデザート――苺クレープと生クリームモンブラン、ブルーベリータルト、ホワイトチョコガナッシュ……私の好物ばかりがずらりと並んでいた。

[破壊の神シエルはガナッシュを嫌っています。]

「アリエル様がお好きだと聞いて、私も嬉しいです。」

私の前には赤いドレスを着た十二歳くらいの少女が、頬を赤らめて座っていた。

彼女の名前はアベルライといい、魔族の中でも高位の神格を持つ存在らしかった。

あの日、壁を壊して入ってきて、騎士たちを一瞬で怯ませたことを思えば、その力は計り知れない。

「……私、あなたを見たことがあります。鞭を振るいながら『女王に従え』と叫んでいた姿を。」

そしてアベルライというこの子は、どういうわけか私の屈辱的な映像を鑑賞していた魔族だった。

彼女は魔族の一人に違いなかった。

私を見た瞬間、目を輝かせたのだから。

その後、彼女は自分の城へ私を招き入れ、このように手厚くもてなしてくれている。

特に城で出される料理はまるで天上の味のようで、驚くほど素晴らしかった。

「アベラ。ただお姉さんって呼んでいいのよ。かしこまって“様”なんてつけないで。」

「本当に、なんて光栄なんでしょう。アリエルお姉様!」

[正義の神ヘトゥスが、魔族と親しくするあなたの姿にため息をつきます。]

青みがかった暗い髪をした彼女は、赤い瞳を輝かせながら慈愛に満ちた表情を浮かべていた。

魔界は、私が思っていたほど暗くて恐ろしい場所ではなかった。

『もちろん、空気のように溢れ出る魔力や大地の景色は普通ではなかったけれど……』

十分に面白いものも多く、美味しいものも多いように思えた。

私は彼女と一緒に数多くのデザートを楽しんでいたが、不意に口を開いた。

「ところで、アベラ。」

アベラの赤い瞳が不安そうに揺れた。

何度か言葉を発しようとしたが、城の壁に掛けられた数枚の絵に目を止め、唇を閉ざしてしまった。

赤いドレスを着た金髪の女性の絵は、どう見ても私に似ていた。

おそらく、その女性はアベラにとって大切な人だったのだろう。

家族か、あるいは友人だったのかもしれない。

そして、彼女が私に抱く好意の理由の一つは、私がその女性に似ているからなのだと感じた。

「私を待っている人がいるんです。だから、これ以上は長居できないと思います。」

[知識の神ヘセドは、キャスが待っているというあなたの言葉に同意します。]

[破壊の神シエルは、カイルを思い浮かべて尻尾を振ります。]

[芸術の神モンドは、レイハスを懐かしみます。]

その言葉に、アベラが目を細めてこちらを見つめた。

「ダメよ。まだテーブルにはデザートがこんなにたくさん残っているのよ。それに、あなたにおもてなししたいことが山ほどあるんだから。」

「でも、アベラ……」

私の言葉に、アベラは席から立ち上がった。

まるで何も聞かなかったかのように、純真な笑みを浮かべて。

「お姉さま、明日はジェカーニェ領地に一緒に行きませんか?魔界の中でも景観が一番美しい場所に属しているんです。食べ物もここに負けないくらい美味しいから、きっと満足されると思います。」

【知識の神ヘセドは、魔界でも神託が通じるかどうか試してみます。】

窓の外から轟音が響いた。

【正義の神ヘトゥスは、まだその時ではないと告げています。】

私はため息をついた。

『お姉さん』と呼んでほしいと言った理由がこういうことだとは思わなかった。

アベラはどこか寂しそうに見え、私を帰すつもりはなさそうだった。

それに、私に好意を示してくれているアベラの気持ちを踏みにじりたくはなかった。

いくら魔族とはいえ。

「いいでしょう?お姉さん?」

にこやかに微笑む彼女を見て、私は何と答えるべきか一瞬迷った。

「閣下、ケルベロス辺境からお客様がいらっしゃいました。」

[愛の神オーマンが目をきらきらと輝かせます。]

従者の言葉に、アベラの顔がぴくりとこわばるのが見えた。

「ケロ卿?……通せ。」

ケロといえば……以前に会ったディエゴの使役魔のことだろう。

「王命を受けて参ったとのことです。」

魔界の体制について、本で読んだことがあった。

魔王の力は絶対であり、貴族たちはそれぞれの領地を治めている。

もし貴族が魔王の命令を拒めば、それは体制への反逆とみなされ、魔王はその貴族を容赦なく粛清するのだという。

時には魔王自ら、いくつかの一族を見せしめに滅ぼすことすらあるらしい。

アベラは少し困ったような表情で私を見つめた。

「お姉さん。お客様がいらしたから、しばらく部屋に入っていただいた方がいいと思うの。」

「私も一緒にお迎えしたいです。」

そう言うと、アベラの瞳の輝きが翳った。

しばらく沈黙したあと、彼女は寂しそうな目で私に尋ねた。

「やっぱり……お姉さんは私と一緒に過ごすのがお嫌なんですか?」

[知識の神ヘセドが代わりに苦笑します。]

私は小さくため息をついた。

「アベラ。」

しかし私が言葉を終える前に、アベラは思いがけず怒りをあらわにした。

「嫌です!何を言われても、姉さんを行かせたりしません!」

鋭い声に、一瞬で緊張が走った。

そして何かがうごめくようなものが、私の足首を掴んだ。

魔界に落ちていくときと同じ感覚だった。

「はあ……」

私は目を細めてアベラを見つめた。

「やはり私を連れてきたのは、あなたでしたか。」

[芸術の神モンドがじっと口を閉ざします。]

まるで魔界の奴隷商のせいで危機に陥った私から好感を得ようとして、そんなシナリオを作ったかのようだった。

[愛の神オディセイは、あなたを手に入れるためなら正々堂々とした方法を用いるべきだとして、正しい手続きを経て候補登録をしろと主張します。]

アベラの沈黙が、私の言葉に確信を与えてしまった。

しばらくしてアベラは切なげな瞳で私に告げた。

「私と一緒に暮らしましょう、お姉さん。美味しい食事を永遠にご用意します……。お姉さんが望むことなら、何でも叶えてあげられますから。だから……」

[愛の神オディセイはふらつきを止め、食卓の上のデザートをじっと見つめます。]

[芸術の神モンドがごくりと喉を鳴らします。]

それでも駄目だ。

私は体の奥深くから湧き上がる神聖力を感じ、手にシエルの力を集めた。

そして腰を屈め、アベラを縛る「糸」に手を伸ばし、それを簡単に断ち切った。

アベラの瞳が揺れるのが見えた。

少し後、彼女は手を引き、彼女の掌から漆黒の魔気があふれ出た。

ディエゴほどではないが、無視できない力を持つ魔気――。

それから守るために、私も神聖力を広げようとしたその時だった。

ドアが勢いよく開かれ、強靭な魔族の脚がアベラの首を絡め取り、彼女の体を宙に持ち上げた。

「くっ……!!」

そして扉の中へと入ってきた男の姿に、私は思わず歓喜した。

[嫉妬の神オーマンの口元が吊り上がります。]

[正義の神ヘトゥスがぱっと笑ったが、すぐに咳払いして取り繕います。]

普段のやや飄々とした態度は影もなく、冷ややかに険しい表情のディエゴがアベラへと手を伸ばしていた。

その背後では、ケロが私に向かってにやりとウィンクを送っていた。

「美覚の伯爵、魔女アベラ。」

「くっ……ひっ……うっ……魔王様……」

顔色が青ざめたアベラは、ディエゴの魔気に大きく縛られたまま震えていた。

[慈愛の神オーマンは、あなたとディエゴの濃厚な愛の姿を想像し、一人で楽しんでいます。]

「ちょっと待ってください。」

アベラが私にしがみつき、必死に防ごうとした。

とはいえ、十二歳ほどの幼い子をここまで追い詰めるのはどうかと思った。

「ディエゴ。まだ子どもなのだから、会話で解決しましょう。」

一瞬たじろいではみたものの、彼女のおかげで飽きるほど美味しいものを食べられたし、そろそろ神殿に戻る頃合いだと考えていた。

「子ども?六百歳が人間の観点でも子どもでしたか?」

しかし、その次に続いたディエゴの言葉に私は思わずのどを詰まらせた。

「ろ、六百……歳ですって?正気なの!?」

じゃあ、六百歳の相手に「お姉さん」なんて呼ばせてたってこと?

しかも嬉しそうな顔をして「お姉さん」なんて呼んでたあの子は一体何なのよ!?

ディエゴの手がわずかに動いただけで、まるで稲妻に打たれたようにアベラは床に叩きつけられた。

「ま……王……くっ……」

あんなに幼く見える子が600歳……600歳……文化的衝撃だ。

「お姉さまは渡さない!」

[知識の神ヘセドが微かに笑みを浮かべます。]

[運命の神ベラトリクスがヘセドを冷静に制します。]

アベラの赤い瞳がぎらりと光った瞬間、床に影のように広がっていた魔物たちが、一斉にディエゴとケロを取り囲んだ。

「……!」

驚いて息を呑んだとき、まばたき一つしないディエゴの影から、魔物たちを容易く制圧する仮面の騎士たちが飛び出した。

彼らは主君を襲おうとした魔物たちを鮮やかに倒し、すべてが消え去ると、再び影の中へと戻っていった。

『わ……私、今とんでもないものを見たんじゃ……?』

ディエゴがどれほど強大な存在なのか、改めて思い知らされる瞬間だった。

[正義の神ヘトゥスが大いに満足しています。]

「くっ……」

アベラは魔物たちがすべて倒された衝撃からか、口から血を流した。

室内が静まり返ると、ケロの解説が響いた。

「ミカクの魔女アベラは人間を弄ぶことを好みます。歩けなくなるほど肉をえぐって捕らえ……食べるのではなく解放するのです。数百年間、その嗜好は変わらず、ただ一人の人間だけは特別でした。」

考えてみれば、人間の七大罪の一つは暴食。

確かにそれらしい趣味ではある。

そして「ただ一人の人間」という言葉で、私は城の壁に掛けられていた、自分に似た人物の肖像を思い出した。

「200年前か。無限の快楽を楽しんでいた人間の女性がいて、彼女を連れてきては美味しい料理を好きなだけ食べさせたんです。けれど、いくら食べても彼女は太らなかった。アベラは面白がってさらに多くの食事を与えましたが……やはり彼女は太りませんでした。」

私に似た異常な体質……。サレリウムでの出来事が思い起こされ、私は不吉な予感を覚えた。

[死の神カイロスが名簿を繰り返し確認しながらうなずきます。]

まさか……あなたが……そうか。

祝福された体質の持ち主だったのですね。

「彼女はアベラにとって最も長く仕えた愛玩動物であり、やがては友人となりました。おそらくは深い友情を分かち合ったのでしょうが……人間の寿命というものは……」

「まあ、そういうことだろうな。その後、失意のうちに沈んだという噂を聞いたが……まだ忘れられないようだな、アベラ。」

「誰が人間ごときを……!」

そう言い放ったアベラの瞳は赤く染まっていた。

「永遠に私の食事を口にさせてやると言ったのに、裏切った……あの卑しい人間を忘れられないっていうの!?」

[愛の神オディセイが、しばし憐れむような目でアベラを見つめます。]

アベラの目尻に涙が溜まった。

『忘れられない……やっぱり……』

ディエゴの手が再びアベラに伸び、鎖のような魔力が彼女の首を締め上げた。

「くっ……!」

アベラが苦しげなうめきを漏らす。

「ディエゴ……」

私は思わずディエゴの名を呼んだ。

普段とは違い、怒りに満ちて歪んだ表情のディエゴは、冷たい視線で私を見据える。

私は肩をすくめ、笑みを浮かべた。

「もう私は大丈夫です。」

「……俺は大丈夫ではない。見知らぬ魔女ごときが、どうしてお前に触れた。」

[嫉妬の神オーマンが激しく「俺は大丈夫ではない」と同調します。]

[破壊の神シエルが、悲しげに頬を赤らめながら視線を逸らします。]

ケロが言葉を付け加えた。

「そうだ。アリエル様はディエゴ様の獲物だ!ディエゴ様だけがアリエル様を満たすことができる。」

[慈愛の神オーマンが、ケロの露骨な言葉に衝撃を受け、顔を赤らめます。]

殺気を帯びた彼の紫がかった瞳はアベラを見据えており、私はそっとディエゴの背に身を寄せた。

するとディエゴは驚いて小さく息を呑んだ。

彼の体から力が抜けていくのを感じた。

その手から、アベラの首を締めつけていた魔力が消え去ったのだ。

アベラは苦しげに咳き込みながら息を整えていた。

私はディエゴを抱きしめていた腕をそっと離すと、赤く染まった彼の顔がこちらを向いた。

私はその唇に指を添え、静かに言った。

「……少しだけ。」

彼の眉がぴくりと動く。

私はアベラのもとへ歩み寄り、神聖な力を宿した手で彼女の顎をそっと支え、まっすぐに見つめた。

アベラの赤い瞳が揺らぎ、迷いが滲む。

「……お姉さま。」

「私は、あなたが探していたあの人じゃありません。そして、姉でもありません。」

「かっこよければみんなお姉さんなんです。」

「黙れ。」

「……」

[死の神カイロスは、アベラの彼女は強制労役場で一生懸命無限労働の代価を払っているので心配するなと伝えます。]

カイロスの言葉は無視して、私は言った。

「とにかく、こんなふうにまた私を困らせるなら、黙ってはいませんよ。」

私の神聖力にかなり馴染んでいるのか、アベラの瞳が揺れ、涙がこぼれ落ちる。

彼女はかすかに笑みを浮かべながら、私に向かってうなずいた。

「……はい。ごめんなさい。」

――600年も生きてきたのに、まるで子供のようにしょんぼりした顔を見せるなんて。

私は胸の奥で小さくため息をついた。

「でも、アベラのくれた料理は本当に美味しかったから……また時々、神殿に遊びに来てください。ティータイムでもしましょう。」

[愛の神オディセイは、あなたに「ぜひデザートのレシピを持ってきて教えてほしい」とお願いしています。]

「はぁ……」

妊娠をしたことはないが、もしもいつか結婚して妊娠したら、きっと出産のとき思い出すような味だった。

私の言葉にアベラの目が輝いた。

感動に揺れる彼女の顔を見ながら、私はサレリウムの無限食事法と彼女の友情を思い起こすことができた。

「デザートのレシピを持ってきて、神殿で一緒に作って食べるのもいいですね。」

[愛の神オディセイが拍手を送ります。]

再び希望に満ちた瞳で串焼きを頬張るアベラを抱き起こしたとき、ディエゴと目が合った。

彼の濃い視線は、まるで食らいつくかのように強く私を見つめていた。

しばらくしてワープを通じて到着した魔王城は、重々しくも陰鬱な雰囲気を放っていた。

魔王城の屋根は、まるでトゲのようにそびえ立つ鉄塔で埋め尽くされ、絶え間なく稲妻が走っている。

仕える者たちは一様に不気味な風貌で、顔立ちは整っていても、その眼差しは鋭く冷たかった。

人間のように見えるが、人間とは違う存在だと直感で分かる。

窓の外には、黒きワイバーンに跨がる魔族の騎士たちが訓練する姿があり、その光景は圧倒的だった。

私はディエゴの執務室で、ケロが用意したお茶を一口含んだ。

「ここの天気って、いつもこんな感じなんですか?」

「稲妻のことですか?あれは天気ではなく、魔族そのものの気配ですよ。」

「王城魔力の主な供給源です。魔界のエネルギーを集める装置ですね。」

[神々は魔王城の風景を見回しながら、不思議そうに眺めています。]

「……あ……」

ひっきりなしに閃光を放ちながら落ちる稲妻を見つめていた私は、ディエゴに視線を移した。

稲妻の青い光に時折照らされる銀色の髪と、紫色の宝石のような瞳、そして他のときとは違う暗い色合いの礼服。

ディエゴが魔王であることは知っていたが、こうして魔界にまで来てその姿を見るのは初めてだった。

いつもは冷たく、どこか余裕に満ちたように見えていたディエゴの表情が、今は硬く引き締まっていた。

私はなぜかこの瞬間、彼が魔王なのだと――その時、初めてはっきりと実感した。

「なぜアベラに囚われていたのですか?」

「……」

「聖力を使えば、十分に抑えられたはずでしょう。」

[芸術の神モンドは、ディエゴの言葉に同意します。]

「でも、好意を示してくれる相手に無理やり従わせる必要はないと思います。それに……彼女の用意したデザートは、本当に絶品でしたから。」

私の言葉に、ディエゴは小さくため息を漏らした。

「あなたが魔族に偏見を持っていないという事実……それだけで驚かされますね。なるほど、すべてのことには長所と短所があるのですね。」

「それは……どういう意味でしょうか?」

机に寄りかかっていたディエゴは立ち上がり、こちらに歩み寄ってきた。

一歩、二歩とさらに近づいてくる。

そして目の前に辿り着いた時、ディエゴの黒い杖が私の顎の端をそっと持ち上げた。

「恐れる必要がある、ということです。魔族と人間は……本質的に異なるのですから。」

彼の瞳を見た瞬間、無礼に対する不快感と、別の次元の感情が押し寄せてきた。

「再びこんなことが起こることはないでしょうが、少なくとも自分を守ろうという意志は持っていなければなりません。」

獰猛で激しい、しかし純粋な光。

その視線は私を緊張させ、体を自然と強ばらせた。

[正義の神ヘトゥスは、ごくりと唾を飲み込みます。]

[すべての神々が、あなたとディエゴに集中して視線を注いでいます。]

その時、窓の外で稲妻が走り、その光に照らされた彼の瞳が鮮烈に輝いた。

ディエゴは、人間のか弱い首など簡単にひねり潰せるような存在。

その黒い瞳を見ているだけで、私は得体の知れない恐怖を覚えた。

「……」

けれど、私は目を逸らさなかった。

真っ直ぐに彼を見つめ返す。

私の揺るぎない視線に、ついにディエゴのまつ毛がかすかに震えた、その瞬間まで。

「警戒はしますが、怖くはありません。」

私の言葉に、彼の視線が深まった。

「本質的に違うという言葉にも同意しかねます。」

アベラが私を襲ったのは衝動的だったが、彼女は人間と本当の友情を築き、亡くなった人間を心から恋しがっていた。

『魔族もそんな感情を持つことができるなら、人間と何がそれほど違うというのだろう。』

ディエゴの赤い唇がかすかに震え、ため息が漏れた。

そして片手で壁を押さえ、私をさらに強く追い詰めた。

ディエゴの危うい気配がすぐ目の前まで迫ってきた。

「アリエル。」

その声が私の耳に届いた。

[正義の神ヘトゥスが私の口を塞ぎます。]

「私は……あなたも優しい人だと思います。最初は、どうしても受け入れがたくて嫌だったのも事実ですが……」

かつて私が見たレドの予言の中で、ディエゴ・ベステレはアリエルにとっての死亡フラグそのもの、暗雲の象徴だった。

特に私にとっては決して良い兆しではなかったため、彼を避けていたのだ。

しかし今や予言はなく、彼は魔王であるにしても――私を救ってくれた。

扉を開け放って現れ、冷徹な眼差しでアベラを攻撃したあの姿は、今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。

だが同時に、彼が少なくとも私を大切に思っているのだと感じられたのだった。

「だから、私たちがもしかしたら……友達くらいにはなれるんじゃないかと思うんです。」

私の言葉に、ディエゴの宝石のような瞳が揺れた。

彼の視線はしばらくの間、じっと私に注がれていた。

真正面から彼を見つめる私を見て、ディエゴの唇にふっと微笑みが浮かんだが、すぐにその唇は引き結ばれた。

「どうでしょう。私は、あなたと友達になりたいとは思いませんけど。」

息が触れそうなほど近い場所で、彼はまだ私を見つめ続けていた。

「それなら……仕方ないですね。断られるとは思いませんでした。」

私の建物のために、建物よりも高価な地下室を買ってくれた彼に、私は感謝していた。

だからその瞬間から、私は彼への警戒を解き始めていたのだ。

私は戸惑っていた。

けれど、今やディエゴが手を差し伸べてきたのだ。受け入れるしかない。

だが彼から逃れようとその硬い胸を押しても、まるで動かなかった。

少し狼狽しながら彼を見つめていると、彼が口を開いた。

「友人以外のことに……興味があります。」

私は彼の言葉を理解できなかった。

「友人以外……ですか?」

「教えて差し上げましょうか?」

[自愛の神オーマンが激しく咳き込みます。]

[愛の神オディセイがヘドバンを始めます。]

私は喉をゴクリと鳴らした。

そして一瞬、すっと近づいてきた彼の唇が、私の唇にかすかに触れて離れた。

「……!!」

驚いた私は大きく目を見開いた。

「知り合いなら、こういうこともする間柄さ。」

ほんの一瞬触れただけで、すぐに離れたはずなのに、唇には彼が通り過ぎた感触がそのまま残っていた。

[神々は口をしっかり閉じたまま、それぞれの仕草で歓呼を表します。]

顔が一気に熱くなった私は、彼の胸を押し返した。

今度はあっさりと押し返され、距離を取ることができた。

しかし彼の口元に浮かぶ余裕の笑みに、私はまるでからかわれたような気分になった。

「この変態魔王!」

――そういえば、アベラに会う前に男たちから聞いた言葉を思い出した。

「新しい魔王について噂が絶えない。寝所には必ず男女入り乱れて五人以上を招き入れるらしい。」

「苦痛を与えるのも、苦痛を受けるのも楽しむそうだ。しかも魔物でさえ相手にしないとか……人間の女なら一体どんな末路を辿るのか、気になるな。」

一瞬、ざわざわとしたざわめきが広がった。

そうだ、再び周囲は感動に包まれる。

「聞かれたから答えただけですが、不快でしたか?」

「言い訳しないでください! 変態。」

[慈愛の神オーマンは、あなたの極端さを楽しんでいます。]

彼から後ずさりした私は壁にぶつかった。

ディエゴは近づかず、ただ私を見つめながら言った。

その穏やかな声が耳を震わせた。

「ずっと惑わされていました。そんなはずがないのに。」

「……」

「これからお連れします。」

「……え?」

彼の言葉に私は意外さを感じた。

[慈愛の神オーマンが渋い表情を浮かべます。]

[正義の神ヘセドの天秤が名残惜しそうに揺れます。]

「なぜ、ずっとここに留まりたいのですか?」

少しして我に返った私は、コップを揺らした。

そして震える手で彼の手を握った。

胸はどきどきと高鳴っていた。

 



 

 

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