こんにちは、ちゃむです。
「家族ごっこはもうやめます」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

175話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 赤ちゃんになったナビア⑩
「プッ。」
エルキンは衝撃を受けたラルクを見て、まるで良い気味だというように笑う。
「普段から慎ましくしていないといけないんですよ、公爵。」
エルキンは「おやおや、我らが公爵様、まだ何か召し上がりたいものは?外縁の村々が何でもお持ちしますよ。」とラルクをからかった。
ナビアはリンゴの一片を手に取り口元に運び、指先は果汁でしっとりと濡れていた。
「ベタベタ……。」
ナビアはべたつく感触が嫌で、ミカンの一切れをしぶしぶ口に運んだ。
エルキンはハンカチを取り出して丁寧に拭き取りながら、不服そうな顔で言った。
「これじゃ一週間の間、公爵邸で気を使わないといけませんね。」
ラルクは即座に答えた。
「さっさと出て行け。」
「エセルレッド公爵家ではお客様をこんな風に扱うんですか?」
「知らなかった?ここはくだらないゴミを処分する場所だって。」
「……自慢ですか?」
ナビアは冷静に言い返す2人のやり取りを眺めていた。
ナビアはラルクに果物の一切れを差し出しながら言った。
「けんかしないで。」
「ありがとう、ナビア。」
エルキンはいつもの落ち着いた、冷静な態度でそれを受け取り、大人らしく礼を述べた。
ラルクはナビアに果物を食べさせてほしいと口を開けた。
「あ。」
誰かに見られるのを恐れるようなその仕草に、エルキンが深いため息をついた。
「どうか、大人らしく振る舞ってください、公爵様……。」
とは言え、ナビアはラルクの口に果物を押し込みながら、何も言わず、ただその手を動かした。
その仕草は無駄な手間だったが、やらざるを得ない様子だった。
ラルクは果物を自分で食べようとすると面倒くさそうに怒り出した。
だから彼に頼まれるままに与える方が楽だった。
「くだらないことを言うな。それがご飯になるのか?」
そう言いながら、ラルクは果物を食べる娘を微笑ましく見守った。
ラルクは控えめに笑いながらエルキンの肩を軽く叩いた。
エルキンは堪えきれず、ナビアを抱えたまま席を立って移動した。
「どこに行くんですか? 何も言わずに?」
「ついてこないでください。」
「君、僕たちの間に何か問題でも?」
「向こうに行ってください! なぜ私の隣に居座るんですか!」
彼らが和気あいあいとした奇妙な言い争いを始めたとき、応接室の扉が急に開かれた。
「お嬢様!」
休暇中だったネロが血相を変えて駆け込んできたのだ。
「お嬢様は?お嬢様は大丈夫なのですか?」
彼は昨日、ナビアに何らかの問題が生じたとの短い知らせを受けたばかりの状況だ。
大切なお嬢様に問題が発生したとは!
ネロはすぐさま休暇を切り上げ、夜通し馬を飛ばして朝方にエセルレッドに到着した。
彼は邸宅に入るや否や、目の前にいたマーガリットに尋ねた。
「お嬢様はどこにいらっしゃるのですか!」
「お嬢様は3階の応接室に……」
ネロはそれだけを聞くと、応接室に向かって走り出した。
しかし、どこにもナビアの姿は見当たらなかった。
代わりに見慣れない赤ん坊が目に入った。
「赤ん坊?」
うろたえながらも。
果物を食べていたナビアは、特に何の反応も示さなかった。
食事中に口を開くのは無礼に当たる行為であるため、彼女は手に付いた果物のかけらを舐め取ってから口を開いた。
「ネロ、私だよ、ナビア。」
ネロはその場で固まってしまった。
「まさか、お嬢様?」
「うん。」
ナビアが肯定すると、ネロはさらに混乱した表情になった。
「ああ、お嬢様がどうしてこんな姿に……?」
ラルクは朝から煩わしいことばかり続いていると、苛立ちを抑えきれなかった。
決して娘の関心を引こうとしてそうしているわけではなかった。
「説明はエルキンに聞いて!」
「え?ちょっと……!」
ラルクはエルキンの腕に抱かれていたナビアをそっと引き離し、補助装置まで冷静に運びながら彼女の小さな指を握った。
「パチン!」
ナビアは驚いた表情で前を見つめた。
一瞬のうちに視界が3階の応接室から外に移動していた。
クリードが使用する別棟だ。
ナビアが窓辺に座り、本を読んでいるクリードの姿を見つけると、思わずにっこり笑った。
「クリード!」
中で本を読んでいたクリードは耳をピクッと動かし、すぐさま視線を上げた。
彼はラルクとナビアを見つけるやいなや、同じように笑顔を見せながら窓を勢いよく開けた。
「姉さん!」
ラルクは窓を通じてクリードの別棟に入っていった。
それだけでなく、他の誰もこの場所に入れないように扉をしっかり閉めた。
「これなら静かになるだろう。」
ナビアはラルクの腕の中で身をよじりながらも、手がまたべたついていることに気づいた。
「パパ、手がべたべたする。」
「拭いてあげるよ。」
ラルクはすぐに湿らせたハンカチを呼び出し、ナビアの手や口元を丁寧に拭いてあげた。
ナビアの状態が再びすっきりすると、満足そうに手を軽く叩きながらクリードのところへ向かった。
「兄さん、渡して。」
クリードは心配そうにナビアの手をしっかりと握り、彼女を安全な場所へ連れていった。
丸いラグを敷いたその場所は、彼ら専用の遊び場として整えられていた。
その隣には、ラルクが横たわるために置いた細長いソファがあった。
ラルクはまるで見られたくない猫のようにソファに横たわりながら、クリードに話しかけた。
「子猫ちゃん、訓練はしっかりやったか?」
「はい。」
「このスンニムが一度見てくれた?」
「いいえ。」
「恥ずかしがり屋だな。」
クリードは全く恥ずかしがる様子もなかった。
ラルクはケラケラ笑いながら、「まあ、それだけ素直さが多いから、後で赤くなって戻ってくるだろう」と言って満足そうだった。
クリードはただ無表情に果物を切り分け続けるだけだ。
ナビアはどうしてあんな様子なんだろうと不思議そうにラルクを見つめていた。
ラルクはちらりとクリードを見て話しかけた。
「気にするな。」
「うん、気にしない。」
冷淡な反応にラルクの目が見開かれた。
「おい、子猫たち……お父さんと遊んでくれよ?寂しいじゃないか!」
ラルクは子どもたちを思い切りくすぐりながら気を引こうとした。
「きゃあ!」
ナビアもクリードも、彼の手を避けようと身をよじらせながら、けたたましく笑い出した。
ラルクは満足するまで子どもたちをからかったあと、ようやく解放してやった。
「……。」
気づけば、微かな寝息だけが聞こえていた。
子どもたちは遊び疲れて眠ってしまったのだ。
ラルクは薄い毛布をかけてやり、隣に横たわりながら、無邪気に眠る子どもたちをじっと見つめていた。
彼は子どもたちが寝ている姿を眺めるのが好きだった。
これ以上に穏やかな光景はない。
「二人とも、いい夢を。」
・
・
・
赤ちゃんになってから、もう一週間が経った。
ナビアは朝から緊張した表情で黙り込んでいた。
ラルクの予想では、今日ナビアは元の姿に戻るはず。
『いつ戻るんだろう?』
赤ちゃんになったことで特に悪い点はなかったが、やはり疲れるものだった。
自分で何かを思い通りにすることができないことももどかしく、ラルクが頻繁に構うのも面倒だった。
正午が近づくと、ナビアの耳に時計の針が動く音が聞こえた。
カチッカチッカチッ!
そして。
「元に戻った!」
1歳の赤ちゃんだったナビアは、白い光に包まれたかと思うと、9歳の姿に戻った。
ナビアは慌てて全身を確認し、1週間前と全く同じ姿に戻っていることを確かめる。
ラルクは後ろで不自然な体勢のままリンゴをかじり、何とも言えない表情を浮かべていた。
使われていない赤ちゃん用グッズがまだ一つ残っている、と思った。
彼は穏やかな声でナビアを呼んだ。
「ナビア、ちょっといいかい?パパが君の懐中時計を修理してみたんだけど……」
ナビアは冷たい表情で簡潔に答えた。
「いりません。」
「……まだパパは何も言ってないんだけど?」
「赤ちゃんにまた変身させようとするつもりでしょう?それ以外に何か言うことがあるんですか?」
「……。」
赤ちゃんの頃の冷淡なナビアが、9歳になってもそのまま引き継がれているような気がした。
その後、ナビアは業務のために懐中時計を使用する必要があるとき以外は、それを身につけることはなかった。
「もう二度と赤ちゃんにはならない。」
本当にハラハラさせられた一週間だった。







