こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
ネタバレ満載の紹介となっております。
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又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。

99話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- 二人の候補者
しばらく後。
皇宮には、内陸と呼ばれる諸国の貴族たちが一堂に集まっていた。
皇太子を選定する非常に重要な日であり、会議に参加する人々の表情は一様に厳しかった。
明確な総数が定められていない今回の代表団には、貴族たちだけでなく、神殿側の代表者たちも混ざっていた。
神殿の権勢が大きいだけに、その票もかなりの9票を占めていた。
デイモンが神殿を懐柔しようとしている理由がそこにあった。
「今日はどんなお気持ちですか?」
「これ以上良い気分はないくらい、非常に良いです。」
神官たちに囲まれながら会議室へ向かうデイモンは、常に微笑みを絶やさなかった。
今日の会議が終われば、待ち望んでいた皇太子になれるという考えに、自然と微笑みが浮かんだ。
「ノアがいなくなって本当に幸運だ。」
弟である第七皇子ノアは、皇太子候補の中で最も有力な人物だった。
かつてデイモンが何も知らずに気まぐれで遊びにふけっていた間に、すでに皇帝の心はノアに向かっていた。
それが変わったのは、3年前、ノアが病に倒れ伏したことからだった。
それがどれほど幸運なことだったか。
今やデイモンに対抗できる相手はいなかった。
さらに神殿の票まで後押しされ、皇太子の地位は既に確定したも同然だった。
鼻歌を歌いながら歩いていたデイモンは、ふとガラスに映る自分の姿を見て、満足げに微笑んだ。
特別に今日のために注文した正装は非常によく似合い、髪型も完璧に整えられていた。
何もかもが申し分のない完璧な日。
これから展開される自分の華麗な人生を思い描きながら、会議室へ向かう足取りはさらに速くなった。
もう少しで会議室に到着するというところで、階段を上がっていたデイモンは、前を歩いているチョスア侯爵を見つけた。
彼も一票を持っているため、デイモンは作り笑顔を浮かべて侯爵に先に挨拶をした。
「お久しぶりです。お元気でしたか?」
「ご機嫌いかがですか、皇子殿下。」
楽しそうに見えるデイモンを見たチョスアは内心で冷ややかに思った。
『まだ知らないようだな。』
ノアが今日候補として現れることを知っていれば、デイモンがこれほど機嫌よくしているはずがない。
無駄に会話を続けて失言でもしてしまわないよう、チョスアは慎重に対応することにした。
「どうしてあんな態度なんだ?」
チョスアの態度に何か奇妙なものを感じ、胸騒ぎを覚えたその時だった。
デイモンの顔が紙のように青ざめ、目の光が曇った。
どういうわけか恐ろしい表情を浮かべた彼の姿に、周囲の空気まで凍り付いたかのようだった。
「あれは……」
自分によく似ている、しかしここにいてはならないノアを見つけたからだ。
会議室の前に立ち、入ってくる貴族たちに挨拶を交わすその姿は、極めて自然だった。
デイモンは一瞬、呆然として自分が見間違えたのではないかと思い、目をこすった。
しかし、ノアの姿は消えることなく、今やまっすぐこちらへ歩み寄ってきていた。
「今、私だけが目に入りますか?」
「一体どういうことなのか。第7皇子殿下に間違いないようです。」
デイモンが信じられない状況を理解しようと苦労している間に、ノアもデイモンを見つけた。
ノアは口元に微笑みを浮かべながら、デイモンのほうへ大股で近づいてきた。
「ノア……」
デイモンは険しい表情で唇を噛みながら、ぎこちなく目をそらした。
「久しぶりだね、兄さん。」
いつの間にかすぐ目の前に来たノアは、デイモンの隣にいる神官たちに挨拶を交わしながら、余裕のある笑顔を見せた。
怒りを抑えきれないデイモンが、すぐにノアを引き寄せ問い詰めた。
会わない間に雰囲気が大きく変わり、背も伸びて自分と大差ない体格になっていることに気づいた。
「お前、なぜここにいる?消えた奴がここに来るなんて、どういうことだ?」
「まだ聞いていないのかい?父上から、再び皇宮に戻るよう命じられたんだよ。」
「は?」
デイモンは呆然としながら言葉を失った。
自分だけが知らされず、父と秘密裏に決まっていた事実に怒りが湧き上がった。
「そんなのありえないだろう?手続きが間違っているじゃないか。」
「その通りです。我々神殿側にも何の報告もありませんでした。」
隣にいた神官たちも初めて聞く話だと言いながら驚いていた。
ノアが追放された理由が神に背いた病気に関係していることから、彼を許容できないという意見だった。
「その件は会議で話し合うことにしましょう。まずは中に入りましょう。」
しかしノアは、デイモンと神官たちの視線をものともせず、目をそらさず、言うべきことを全て言い終えると、そのまま会議室へ堂々と入っていった。
「本当に変わったな、あいつ。」
無知で弱々しかった性格がどうやってあそこまで変わったのかは分からないが、彼がまるで別人のように見えた。
デイモンは込み上げる感情を抑えきれず、手近にあった壁を力いっぱい殴った。
しかし、会議の直前にノアと争うことはできないため、不安な気持ちを抑え込み、彼もまた会議室へ入った。
今日の会議には、皇帝と接触するために皇宮に来たラビエンヌも出席することになっている。
彼女はまだ聖女ではないが、その代理の資格で参席していた。
衣服を整えに行って戻ってきたラビエンヌは、ちょうどノアを見つけて驚愕した。
「どうして?」
ラビエンヌが受けた衝撃はデイモンにも匹敵するものだった。
彼女は消えたノアを今でも探し続けていたのだ。
一方、ノアはラビエンヌを見ても無表情で、冷淡に背を向けた。
ほとんど他人のような振る舞いだった。
ラビエンヌは服のシワを整えながら、心を落ち着けようとした。
すぐにでもノアを捕まえて、どういう経緯で戻ってきたのか聞きたかったが、今はその場ではなかった。
会議が終わった後に話そうと心に決め、静かに自分の席に戻った。
だが、父であるブラウンス公爵でさえも驚くほどの混乱した状況だった。






