こんにちは、ちゃむです。
「大公家に転がり込んできた聖女様」を紹介させていただきます。
今回は47話をまとめました。
ネタバレ満載の紹介となっております。
漫画のネタバレを読みたくない方は、ブラウザバックを推奨しております。
又、登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
47話 ネタバレ
登場人物に違いが生じる場合がございますので、あらかじめお詫びさせていただきます。
- ドロレス夫人
ちょうど半日後、エスターはぐっすり眠って元気を取り戻した。
簡単に食事まで終えてビクターと一緒にホテルを出る。
「馬車は4時に予約しておきました。まだ2時間ほど余裕があるので、衣装室に寄ればぴったりですね」
「衣装室?あ・・・服が破れたから」
エスターはいらないと言おうとしたが、破れた裾を見てうなずいた。
このまま帰ると、家族が心配するかもしれないという考えだ。
新しい服に着替えて帰った方がいいだろう。
ビクターはエスターが寝ている間に熱心に探していた衣装室に案内した。
「ここです。一番有名な衣装室を教えてくれと言ったらここだけ言っていました。皇室にも行ってるそうです」
「本当に華やかだ」
普通の人なら、華やかな外観に怯えて帰るほどだ。
花と彫像で飾られた道には赤いカーペットが敷かれており、その道の端に黄色いドアがついていた。
ビクターはそれを見て驚きながら言った。
「これは全部黄金みたいですね?」
「うん。黄金を固めて作ったみたい」
太陽の光に反射したドアがあまりにも光って目がくらむほどだ。
エスターは目をしかめながらドアをたたいた。
すると、ドアが内側から先に開いた。
「いらっしゃいませ!メルゼルです」
高級衣装室らしく、下女たちも普通の貴族のお嬢さんたちと同じくらいおしゃれに着飾っている。
「初めてですね?お探しの服がございますか?」
「う一ん・・・ただ今着ているワンピースみたいなものだったらいいな」
メイドはエスターの服を素早く見回す。
そして、粗い生地にありがちな平民服であることを確認してから笑った。
「どうしましょうか?私たちの衣装室は、そういう生地は扱ってないので。いっそ市場の方に行ってみるのはどうですか?」
「とりあえず見せて。私が自分で決めるから」
「ついて来てください」
大したことのないお客さんだということを確信したのか、下女の態度が微妙に変わる。
露骨に無覗はしないが、1階に案内しながらも妙に恩着せがましく言った。
「ゆっくり見てください。あ、なるべく服に手を触れないでください。全部本当に高いものだから。・・・払えないかもしれませんので」
「お嬢さんにこれは何の無礼なことだ?」
心配するふりをして皮肉な言い方にビクターがかっとなって女中を叱った。
「ビクター、いいよ」
しかし、エスターは何の返事もせず、下女をさっと通り過ぎる。
1階の中央にちょうど服がいっぱい入ったハンガーが置かれていた。
何でも一つ選べばいいだろう。
その時だった。
上の階できしむ音がはっきりと耳に入ってきた。
「なんと。あの破れた服を見てください。気の毒な気もするわ。あんな格好でどうやってここに入ろうと思ったんでしょうか?」
「そうですね。身の程も知らずに暴れる様だなんて」
「まだ子供のようなのに何が分かりますか。全部、親のせいです。家庭教育をどのようにさせたのか・・・見るまでもない家庭だと思います」
エスターはため息をつきながらゆっくりと頭を上げて彼らの顔を確認する。
白い羽毛が刺さった帽子をかぶって最新流行服で精一杯に着飾った姿が、ばっと見ても貴族夫人たちだった。
「あら!あの子、今私たちの話を聞いて見てるんですか?」
「そうみたいですね。あの目つきを見てください・・・怖くてたまらないわ」
彼らはエスターと目が合うと、何を見るのかというように激しく睨んだ。
露骨に不快そうな目つきだ。
「お嬢さん、私が上がって謝れと言います」
「もういいよ」
エスターはピクターの元気な動きを止め、再び頭をハンガーに向ける。
「怒ってもいないんですか?」
「うん、もう一度会う人でもないし」
こんなことを一度や二度経験したことがない。
知りもしない人のために感情消耗したくなかった。
エスターはかかっていた服の中から適当に選ぶ。
気に入ったわけではないが、ただ無難だった。
「これにする」
「もう見ないんですか?」
「服はみんな同じじゃない」
「でも、ここまで来たのに・・・」
残念がるビクターと違って、エスターはすでに心を固めた後だった。
ところが、上の階から新しい声が聞こえてくる。
とても穏やかな声だった。
「ベス夫人、キャサリン夫人」
一気に心をつかむような魅惑的な話し方に、エスターの頭も上を向く。
「うちのショップに入ってくる方は全部私のお客さんです。あんなに愛らしいお嬢さんが私の服を着てくれるなら光栄ですよ?」
「あら、ドロレスマダム!今日は出られないと聞いたけど。私たちは、ただショップの品位が気になって言っただけです」
エスターに対する布陣たちの態度は全く違っていた。
「奥様たちが私たちのショップをどれだけ考えてくださるかよく知っています。それでもショップの中ではご注意ください」
「そうします。ごめんなさい」
「必要なものがあれば、いつでも呼んでください」
自分を追い出すのではなく、むしろ味方になってくれるなんて。
(あんな人もいるんだ)
エスターは不思議そうにあたりを見回した。
早く計算して出るつもりだ。
ところが、その時ドロレスが階段を下りてきた。
彼女は満面の笑みで目を丸くしたエスターに歩いてくる。
「こんにちは。私は美容室を担当しているドロレスです」
「はい」
エスターは目をばちばちさせて華やかに打つ立派なドロレスを眺めた。
「不愉快だったでしょう?私が代わりに謝ります。あまりにも常連が多いので、新しい人が来たら警戒をしてしまうようで」
本当に申し訳ないという表情で耳元でささやく彼女が、飾り気に感じられなかった。
「気にしません」
「心がとても広いですね」
ドロレスは微笑み、エスターの後ろのビクターをちらりと見た。
(没落貴族かしら?)
平凡な服装だが、護衛を連れて歩くのが気になった
それに、こんなことを経験しても毅然とした雰囲気とは。
ドロレスはもう少しエスターに話しかけることにした。
「そのワンピースが気に入りましたか?」
エスターはその親切さに負担を感じてこっそりと後ずさりする。
「私の目にはみんな似ているように見えましたから」
「なんてこった!それは私たちの服に対する侮辱です。機会をくださったらお詫びの意味で私が似合いそうな服を選んであげますよ」
悩む暇もなくドロレスがハンガーを調べ始めた。
楽しそうに見える彼女を止めることができなかった。
「これも似合いそうだし。きゃっ!これはもっとよく似合いそうです。これがいいね」
ドロレスはあっという間にワンピースを10着ほど選んでエスターに当ててみた。
快活な声で毎回どれほど褒め言葉を並べるのか、気が気でないほどだ。
「全部よく似合いますが、ここにあるのは平凡すぎて・・・う一ん、ちょっと上について来てくれますか?」
「さっきの下女は1階だけ見れば十分だと言ってましたが?」
「うちの女中ですか?」
ドロレスが立ち止まり、エスターを案内した下女に目を向ける。
「今回新しく入ってきた下女なので、教育が不十分だったからかもしれません。私がしっかり教育するように言っておきます」
ドロレスは勢いに乗ってエスターを2階に案内した。
うかうかと手をつかまれてついて行かないわけにもいかなかった。
「これは実は私が皇居に送ろうと大事にしておいたワンピースなんですが・・・お嬢さんともよく似合うようでお見せします」
一番前に並んでいるドレスは上品な緑色で、エスターの肌の色にピッタリだ。
波模様のネックラインと適当に入ったパフ袖が特に綺麗だった。
「いかがですか?」
「綺麗ですね」
服にはあまり関心がなかったエスターさえドレスから目を離すことができなかった。
「実はさっきお嬢さんを見た瞬間、あの服が思い浮かびました」
ドロレスは満足そうに服について熱心に説明する。
そのように一人二人と集まったワンピースがいつの間にか8着にもなった。
「あら、私が予算も聞かずに服をあまりにもたくさん紹介しましたね。絶対に負担に思わないでください」
服を持ってついて回る下女の数が増えると、ドロレスも気を取り直して恥ずかしがった。
エスターの服装から見て、一番安い服を一着買うのも手一杯に見えたからだ。
「うん」
エスターは山のような服をじっと見つめながら決心した。
何枚も買うつもりはなかったが、どうせ手にはダイヤがいっぱいある。
こんな時に使わないといつ使うんだろう、と思って元気よく言った。
「私、これ全部買います」
「やっばり1着だけ・・・これを全部ですか?」
一着買うのも無理だと思っていたので、ドロレスの顔には驚きと戸惑いが広がった。
「はい。全部でいくらですか?」
「私たちの衣装室の服は値段が高いですが、本当によろしいですか?」
「くふ」
大公の娘の前でお金の心配をするのがおかしかったビクターは、一人で笑いをこらえるために後ろを向く。
一方、エスターの表情が少し暗くなった。
あまりにも怖がらせるので、持ってきたダイヤでは足りないのだろうか。
「これでは足りないでしょうか?」
エスターは中に入れておいたポケットを取り出した。
さまざまな大きさのダイヤがたくさん入っている。
何も考えずにポケットをのぞき込んだドロレスの目が丸くなった。
「いや、お嬢さん!!これは全部どこで手に入れたんですか?もし保証書がありますか?」
「いいえ、私のものなので保証書はありません」
保証書が必要だとは知らなかったエスターは慌てて弁解した。
「お嬢さんのものですって?まさか鉱山をお持ちですか?」
「はい」
自分の鉱山を持つことは、ある程度の金持ちでなければ不可能だった。
ドロレスはエスターの服装とダイヤを交互に見て、本物かどうかを確認するためにダイヤを取り出す。
(この光沢は確かに本物だ)
確実な価値は鑑別を任せなけれはならないが、本物のダイヤは確実だった。
「これで三つあれば十分です。鑑定をした後に小銭をお送りします」
「いいえ、小銭は結構です」
エスターは首を横に振る。
ダイヤはまた掘ればいいし、後で書類をやり取りするのがもっと面倒だと思ったからだ。
「鉱山で成金になった家の子ではないでしょうか?」
「お金もたくさんあるのに、どうしてあんな風に歩き回るのか分かりません」
エスターを無視した夫人たちは、エスターがてきばきとドレスを買うのを見て、恥ずかしがりながら呟く。
エスターは横目で彼らの顔を再確認した。
今は見過ごしているが、顔を覚えておくつもりだった。
しばらくしてエスターは買ったばかりの服の中から一着を選んで着替える。
破れた服はビクターが受け取って別に用意した。
その間、下女たちが残りの新しい服を全て丁寧に包装する。
しかし、包装された箱が多すぎて持っていくのが困難なほどだった。
「馬車に全部乗せましょうか?」
「大変そうですね」
このままでは馬車のスペースがいっぱいになって座るスペースがないと思った。
エスターは箱の包みをじっと見つめる。
するとドロレスが「心配するな」と口を挟んだ。
「住所を教えていただけれはお送りします。持って行かれるには多すぎますね」
「この辺じゃないので」
「心配しないでください。どこへでも送りますから」
大丈夫だと断るには、すでに計算してしまった服が目にかかった。
エスターはドロレスの好意を受け入れることに同意する。
「それではテルシア大公邸に送ってください」
紙に住所を書き留めようとしたドロレスが、ぴくっと固まってしまった。
「大公邸ですか?そこはどうして・・・?」
慌てた様子が歴然としたドロレスを見て、エスターが声を下げる。
「そこに住んでいますから」
「・・・まさかお父さんはあの有名な戦場の殺人・・・いや、ドフィン大公様ですか?」
「はい、私の父です」
他人に父親と紹介するのは初めてなので、エスターは少しぎこちなかった。
それでもなんだか肩がすくんだ。
(あの噂って本当だったの?)
その瞬間、ドロレスは最近間聞いたゴシップを思い出す。
ドフィン大公が女の子を養子にしたという噂を。
みんな偽物だろうと鼻を鳴らしたが、本物だった。
幼い女の子が鉱山を持っているというのが尋常ではなかったのに、なんとドフィン大公の娘だなんて。
どうしてもっと気をつけなかったんだろうか・・・!
「なんと!私が大変失礼しましたね。大切なお客さんだと知っていたら、もっと気を使って仕えたと思いますが」
ドロレスは背筋がぞっとするのを感じながら、状況を収拾しようとした。
布陣たちが悪口を言った内容、特に親に言及したことが、大公に伝えられたりするとしたら?
(店を閉めることになる)
冷静で残忍さが天を突くという大公なら、このような衣装室を消してしまうことは仕事でもなかった。
「今日、私たちの衣装室で少しでも不快感を感じたら、本当に申し訳ありません。どうか心を睛らして行ってください」
「そんなものはありません」
エスターはドロレスが自分にたじろぐとすぐに首を横に振った。
「他に必要なものはありませんか?」
「はい、もう行きます」
「私が前までお送りします」
「いいんだけど・・・」
一層丁寧になったドロレスが衣装室の外までエスターを見送った。
女中たちも相次いで出てくる。
それだけでなく、ショップ専用の馬車も貸してくれて、馬車を予約しておいた所まで気軽に来ることができた。
「すごく親切な人だったよね?」
「はい。意図が少し見えましたが、一応そうだと思います。服を選ぶセンスもいいですし」
エスターも自分の身分を聞いて変わったドロレスの態度を感じた。
それでも最初に自分を助けてくれたのは純粋な好意だ。
何よりきれいな服を買って気持ちよかった。
(ショッピングはこんな気分なんだ)
何かを直接買ったことがないため「生きる」という行為が与える楽しさを初めて感じたエスターだった。
それに、欲しいものを値段に関係なく思う存分買える財力とは、思ったより刺激的で良かった。
「それでは出発しましょうか?」
「うん、行こう」
エスターは窓の外を見てにっこり笑う。
もう家に帰る時間だった。
ドロレスの態度には好感を持てますよね。
エスターがお買い物ではしゃぐ姿が微笑ましいです!